「我が名はデュークオルグ・ロウキ・・・我千年の怨み晴らさんと、蘇りし者也」(Quest 15)
「生き抜いてくれ・・・たったひとりで。それが狼の宿命・・・」(Quest21)
CV:竹本英史
スーツアクター:魁将馬
概要
物語中盤より登場する、第3のデュークオルグ。
漆黒の鎧に狼のような容貌、そして金色に光る目が外見上の特徴で、第2クールにおけるガオレンジャーの強大な敵として、彼等の前に幾度となく立ちはだかる。
1000年前の戦いの時点で既にその存在が確認されており、当時のガオの戦士達によって封印の憂き目に遭い、棺に収められた状態で奥秩父の鬼塚山にて長らく眠りについていた。しかし現代に至り、その実力に目を付けたハイネスデューク・ウラが自らの戦力に加えるべく、その封印を解いたことで蘇るに至った。
性格
その名に違わぬ一匹狼的な気質や自らを長き封印に追いやったガオレンジャーへの強い復讐心から恩人であるはずのウラの軍門に下るのをよしとせず、またオルグとしての地位や名声にも全く興味を示さず、事実上の第三勢力として独自の行動を展開。ウラの方も「変わり者」と評しつつ、基本的にはその行動を黙認する姿勢を示している。
ウラに限らず、立場上同格のヤバイバやツエツエが手を貸そうとした際にも軽くあしらうなど寡黙かつ不遜な姿勢を通しており、「勘違いするな」が口癖のようになっている。敵とみなしているガオレンジャーに至っては苛烈な憎しみを向け、その打倒に執念を燃やしている。
一方で、自身と似た境遇にありガオイエローに復讐を誓うバイクオルグ、それに仲間がいない野良の狼犬など、何らかの共通点やシンパシーを感じた相手には、彼なりの情を見せることもない訳ではない。
前述した事情からマトリックスにも顔を出すことはなく、戦闘にかかわらない時は野山や川のほとりなど自然の中で過ごしているようでQuest.21では洞窟の中で寝泊まりや焚き火をしている様も描かれている。
能力
上級のオルグであるデュークオルグの中でも、極めて高い実力の持ち主でもあり、狼を思わせる人並み外れた素早い動きと卓越した剣術、それに「三日月剣」と呼ばれる大型の剣を武器に作中でも度々ガオレンジャー5人をまとめて圧倒してみせている。
三日月剣は近接武器としてだけでなく、幾重にも振るって衝撃波を飛ばす「クレセントウェーブ」や一薙ぎで広範に衝撃波を発する「ムーンライトソニック」といった具合に遠距離の敵にも対応することが可能で、いずれも高い威力を発揮する。衝撃波は手から放つこともある。
もう一つの武器として三日月剣と同様に弧を描いた形状の魔笛を携えており、こちらも小刀として振るうことができるが、その真価はやはり笛としての面で発揮される。普段も独りで過ごす際にこの笛をしばしば奏でているが、戦闘においても姿を現す際に音色を響かせる他、本体に備わった3つの穴に闇の宝珠を装填し邪な音色を奏でることで、自身の下僕たる「魔獣」を召喚・使役することができる働きを持つ。
この魔獣は、ガオレンジャーのパートナーたるパワーアニマルとほぼ同質の存在であるが、狼鬼と同様に邪気に染まっており(それを表しているのか、宝珠も本来の色からくすんだセピア色へと変化している)、単体でもそして合体したガオハンターの状態でもパワーアニマルや精霊王を凌ぐほどの強さを持ち合わせている。
さらに狼鬼は元々使役していた3体以外にも、宝珠を奪い自らの持つ強大な邪気を注ぎ込むことで他のパワーアニマルまでも魔獣に転化させることができるという、極めて厄介な特性を持ち合わせている。本来、オルグとは相反する存在であるガオの宝珠やパワーアニマルに対して、その性質を捻じ曲げ自らの手先へと仕立てられる辺りからも狼鬼の持つ力の規格外な強さと異質さが窺える。
他にも手から衝撃波を放つことができたり、さらには「ツエツエのやることぐらい、俺にもできる!」と、彼女の使用するオルグシードに似た「ウルフシード」を用いることで、オルグ魔人を巨大化させることさえもできる。
このようにあらゆる面で高い実力を有する狼鬼であるが、そんな彼にも唯一とも言える弱点が存在する。それは彼の持つ力の強さが「月の満ち欠けと連動する」ため、満月に近づけばその分強くなる反面、逆に新月に近づくと弱まるというものである。狼鬼自身もその点は自覚しているのか、作中でも新月に差し掛かった頃に一度姿を潜めていたことがあり、新月が過ぎて活動を再開した際には「なんと不自由な身体」とぼやいてみせてもいる。
謎と正体
狼鬼は前述した気質や他者との関係性、それに魔獣(パワーアニマル)とも密接に関連した能力からも窺えるように、オルグとしては明らかに異質な存在である。
彼を異質たらしめる所以は謎に包まれており、そもそも狼鬼自身でさえ全く思い出せる状態にない。テトムが自身の祖母にして、先代のガオの巫女であるムラサキから受け継いだ情報も時間の経過で曖昧になっており、唯一真相を知っているであろうウラが時折意味深な発言をみせる程度である。
また、物語が進むに連れて「狼鬼が純粋なオルグなのか」という点でも、以下に列挙したように不可解な点が徐々に浮かび上がっていくこととなる。
- 敵であるはずのガオホワイトこと大河冴が、怪我をして気を失った際になぜか彼女を手当てする
- テトムの存在からムラサキの名を思い出し、彼女の面影をテトムに重ねる。また彼の記憶の中のムラサキは、彼と親しげにしていた
- ガオイエローとの一騎討ちの際に手傷を負い、本来オルグから流れるはずの緑色の血ではなく、人間と同じ赤い血を流していた
極めつけは、突如虚空に現れた謎の存在――ガオゴッドからの記憶を取り戻させようとするかのような呼びかけである。ガオキングとも似通った姿を持つガオゴッドもまた、やはり狼鬼の記憶の中に微かに浮かび上がっていた存在の一つであるが、その呼びかけに影響されてか無意識裡にオルグ魔人を切り捨てるという、オルグとしては明らかな奇行に走るなど、ガオゴッドの出現は狼鬼のアイデンティティを大きく揺るがす格好となった。
ガオゴッドからのメッセージはテトムも受け取っており、そこから1000年前のガオの戦士は「6人」だったという事実を思い出し、彼女からそれを伝えられたガオレンジャーは数々の状況証拠から、「狼鬼は元は人間――それもガオの戦士であった」という推論を導き出すに至る。
それと時を同じくしてガオゴッドの介入を憂慮したウラの策略により、狼鬼は「オルグ羽虫」を埋め込まれ、彼の忠実な下僕へと仕立て上げられてしまう。折しもガオレンジャーは前述の事情から「狼鬼を人間に戻す」方向にシフトしつつあったのに加えて、ガオバイソンが戦闘中の負傷により戦線離脱し、大幅な戦力低下を引き起こしており、記憶を改竄され「迷い」も「人間味」もなくなった狼鬼の猛攻の前に、彼等は絶体絶命の危機に立たされることとなる。
そんなガオレンジャーの危機を救ったのは、ガオゴッドによる三度の介入であった。彼の神託から、狼鬼の正体が1000年前のガオの戦士の一人・シロガネであったことが明らかになると共に、ガオゴッドの引き起こした月食により狼鬼も一時的にシロガネとしての姿を取り戻し、自身が狼鬼となった経緯をガオレンジャーへと打ち明けたことで、先の推論が正しかったことが証明されたのである(詳細はシロガネの記事やこちらも参照)。
しかし、ここでもまたウラの横槍が入った上に、ガオゴッドも限界を迎え月食を維持できなくなり、シロガネは再び狼鬼の姿へと戻ってしまう。満月の影響で力が最高潮に達した狼鬼は、ガオハンターとともに再びガオレンジャーを窮地に追い込んだ──のだが、ガオバイソンが助っ人として呼び寄せた、ガオライノスとガオマジロの参戦により形勢は逆転。新たな百獣合体・ガオキングストライカーの放つ「強蹴一閃・ライノシュート」でガオハンターが敗れたのに伴い、狼鬼もまた体内に巣食っていた羽虫の消滅と「闇狼の面」の破壊で邪気から解き放たれ、シロガネへと完全に戻ることとなった。
かくして、狼鬼という存在はこの世から消滅し、彼がウラへ献上していた4つのガオの宝珠もまた、ガオシルバーとしての力を得たシロガネの活躍で奪還されるなど狼鬼を巡る長い戦いにも終止符が打たれた。
───かに思われたのだが…
狼鬼、ふたたび
「如何にも。お前が自由の身になれたのと同様、俺にも千年ぶりの自由が与えられたのだ。そして・・・復讐を果たすに相応しい、この姿となった」
シロガネ改めシルバーが現代での暮らしを始めてから間もなく、彼の前に滅び去ったはずの狼鬼が立ちはだかるという、思いもよらぬ事態が発生する。
先のガオレンジャーとの戦いでシルバーこそ解放されたものの、邪気自体は消失しておらず、こちらもシルバーや3体の魔獣から解き放たれたことで、分散していた邪気も一つに結集し独立した存在として、狼鬼としての姿を取るようになったのである。
シルバーを依り代にしていた頃でさえ、前述した強さを発揮していた狼鬼であったが、邪気の結集によってその力はさらに増大しており、単騎でウラを倒すほどの実力を持つシルバーでさえも大いに苦戦を強いられる格好となった。
一方で狼鬼には復活に伴い新たに生じた弱点があった。
それはシルバーに代わる新たな身体として、砂もしくは泥でできた人形を用いていたことに起因する耐久性の低さで、作中でもシルバーの決死の攻撃により一度は敗北、身体が崩れて砂に戻ってしまっている。
最も裏を返せば邪気が宿っている闇狼の面さえ無事であれば、例え何度倒されようとも狼鬼を蘇らせることが可能であることも意味しており、その特性によって執拗なまでに迫る狼鬼の前に自責の念からガオレンジャーの助力を拒んでいたシルバーは再び危機に陥ってしまう。
しかしガオウルフの導きにより、シルバーのもとに駆け付けたガオレンジャーが再び共闘を持ちかけたことで頑なだったシルバーも「ガオウルフの頼みを聞き入れる」という名目で共に狼鬼に立ち向かうことを承諾。その連携によってさしもの狼鬼も一転して追い込まれた末にガオレッドの振るう破邪百獣剣とシルバーの破邪聖獣球の連続攻撃の前に再び大ダメージを負うに至った。
それだけの攻撃を受けても狼鬼は滅することなく、ウルフシードを自らの体内に取り込んで巨大化を果たすと、ガオキングストライカーとガオハンターを相手になおも猛威を振るってみせた。
絶体絶命の状況の中、シルバーはプールバーのマスターの見せたビリヤードの妙技にヒントを得る形で、リゲーターブレードをキュー代わりにガオマジロを撞いてスピンさせることにより、狼鬼の額の一本角をへし折ってダメージを与えることに成功。
間髪を容れずに繰り出された「悪鬼突貫・リボルバーファントム」を受け、限界を迎えた闇狼の面も粉砕されたことで、今度こそ狼鬼は滅び去ったのであった。
───ところがそれも束の間のこと。
先にシルバーに倒されていたはずのウラが再び6人の前に姿を現すや狼鬼を復活させたのが自らの差し金であること、そしてその狼鬼を形作っていた千年の邪気が未だ健在であることを明かし、その邪気を用いてシルバーへの復讐を宣言してみせたのである。
それは即ち、狼鬼の消滅が長きに亘る戦いや因縁の終わりではなく、むしろさらなる死闘の幕開けに過ぎないことを意味するものだった───。
備考
- デザインは原田吉朗が担当。「ダークヒーローとして狼のカッコよさを追求したい」という制作サイドからの要望を受けてデザインが起こされたもので、デザイン画稿からは「GAOSILVER 素体」という仮称が付されていたことが確認できる。腿に配された横線状の凸モールドは、ベースのレザースーツが曲がった際に生じるシワを抑制するためのものであり、原田もその点については上手く行ったと後に評している。
- 放送当時、高い人気を獲得したキャラクターともなったようで、ガオレッドとともにスーパー戦隊シリーズとしては初となる、スタンダードサイズのソフビ人形としても商品化され、その売れ行きも好調であったことを前出の原田が述懐している他、プロデューサーの日笠淳も狼鬼の成功を受ける形で、翌年の『忍風戦隊ハリケンジャー』にてヒーロー側にライバル要素が盛り込まれ、ゴウライジャーが登場することとなったと証言している。
- 原則として、記事名にもある通り漢字表記とされている狼鬼であるが、初登場時のみ字幕がカタカナ表記の「ロウキ」とされていたこともある。
- 演者のうち、CV担当の竹本は本作がスーパー戦隊シリーズ初出演であり、狼鬼としての出番が終了した後も、Final Quest(最終回)にて顔出しでの出演も果たしている。またスーツアクターの魁将馬は、前年の『未来戦隊タイムレンジャー』に引き続いての出演であり、こちらも月麿が入り浸っているプールバーのマスター役を兼任している。
- 意外なところでは、千葉ロッテマリーンズ所属のプロ野球選手・佐々木朗希の名前も狼鬼に由来しているという。佐々木が生まれたのは、正に『ガオレンジャー』が放送されていた2001年11月のことであるが、3歳上の兄がガオレンジャー(および狼鬼)のファンであったことや、「ろうき」なら他人と名前が被りにくいという母親の考えから、同音異字の「朗希」と命名されたという逸話が残されている。
関連タグ
ステイシー(ゼンカイジャー)/ステイシーザー 犬塚翼/イヌブラザー:いずれもスーパー戦隊シリーズの他作品に登場するヒーロー(ダークヒーロー)達。作中で繰り広げられる猛烈なギャグ展開の傍ら、一人だけシリアスに本筋に関わるという点で、狼鬼(およびガオシルバー)との共通項が見られる。奇しくも彼等の登場作品には、何らかの形でガオレンジャーも関わっており、犬塚に至っては「イヌ科モチーフでパーソナルカラーが黒」「戦隊内に鬼化するメンバーがいる」ところまでニアミスしている
魔戒騎士:『牙狼』シリーズに登場する戦士・ヒーローの総称。狼鬼と同様に、その殆どは狼を模した面と全身を覆う甲冑という出で立ちである