概要
岡村直宏による『仮面ライダーアギト』のノベライズ。本編のメインライターを担当した井上敏樹が監修を行っている。2013年1月31日発売。
『小説 仮面ライダー龍騎』、『小説 仮面ライダーキバ』のように本編のリメイク作品。
翔一の担当医、美杉の酒癖の悪さ、G3の量産など『仮面ライダーアギトスペシャル 新たなる変身』に由来する要素が散見される。
特徴ならびに原作との差異
- 前作『クウガ』との関連性
アギト本編は『クウガ』と似て非なる世界という設定で、こちらでも未確認生命体と呼ばれる存在が過去に出現したとされていたが、本作では突如として不可能犯罪を行うアンノウンが出現したという設定に変更されており、原典のクウガを匂わせる要素は完全に排除されている。
G3も最初から対アンノウン用に開発されたという設定になっている。
- あかつき村事件
本編における「あかつき号事件」に相当する出来事。3年前に多くの村人が惨殺され、真魚だけが氷川に救助されて生存した。
本作では真魚を主軸に3人の仮面ライダーの物語が展開される。
- アギトの存在
大幅なアレンジが加えられているが、本編におけるアギトの力の根源と相通ずるものがある。
登場人物
美杉家
主人公。山中で倒れていたところを発見された記憶喪失の青年。TV本編と性格は殆ど変わらない。津上翔一という名前は記憶喪失だった彼に仮につけられた事になっている。
料理の腕前に関しては本編同様プロ並みだが、独創的な料理を作ることが多い。
アギトとしては原作におけるグランドフォームのみ登場。並みのアンノウンは難なく倒せるほどの力を持っている。
地の文での表記は「翔一」。
本作における準主人公兼ヒロイン。主要人物の中では最もアレンジが加えられている。
かつてあかつき村という山村で暮らしていたが、自分以外の村民が全員惨殺され、唯一の生存者となる。
悩み事があると折り紙(特に箱)を折る癖がある…人の心を捨てようとするオルフェノクや獣人とは無関係。
自身の超能力を恐れており、周囲にあまり心を開いていない。
翔一に対しては親愛や恋愛感情などを抱いており、本編と比べて依存気味。
氷川に対しては上述のあかつき村での事件で助けてもらったことで信頼している。
涼に対してはアンノウンに襲われた所を助けてもらったことをきっかけに出会い、人ならざる力を持つ者同士交流を深めていく。
超能力はサイコメトリー、サイコキネシス、回復能力、予知能力を使用。
本作を読んだ人によっては*真魚を主軸にした逆ハーレム*と比喩されることも。
地の文での表記は「真魚」。
美杉家の主人で心理学の教授。本編では翔一や真魚と兄弟のように接している実子の太一が登場しない為か、真魚との間にはやや距離がある。過保護な面も強調されており、真魚にボーイフレンドがいる疑惑が浮上した際に翔一に調査を頼むほど。
地の文での表記は「美杉」。
警視庁
G3ユニット
G3装着員としてG3ユニットに所属し、アンノウンと戦う警察官。本編と性格は殆ど変わらない。
本編では明かされなかった家庭事情が判明している。
地の文での表記は「氷川」。
G3システムの開発者にしてユニットの管理官。性格は本編と殆ど変わらない。氷川と尾室を連れて毎日焼き肉を食べる。
焼肉ではホルモンなどのぐにゃぐにゃした食感のものが好みという設定が追加されている。
G3システム装着員最終審査において氷川を選出した経緯が描かれている。
地の文での表記は「澄子」。
G3ユニットのメンバー。何もかもが平均的な男。しかし小沢曰く「むしろそこがいい」らしく、これがユニットのメンバーに選出された理由だと語られている。性格は本編と殆ど変わらない。
地の文での表記は「尾室」。
捜査一課
捜査一課のエリート。澄子とは犬猿の仲で、何かとG3ユニットに突っかかる。性格は本編と殆ど変わらない。
ベジタリアン及び酒臭い息で酔うほどの下戸という設定が追加されている。
TV本編でコンビを組んでいた河野浩司は登場せず、捜査一課としての活動は描かれない。
地の文での表記は「北條」。
葦原涼の関係者
ギルスに変身する能力を手に入れてしまった青年。性格は本編と殆ど変わらないが、行き着く結末は大きく異なる。
本編で明かされなかった幼少期が明かされたが、父の和雄に関する設定が本編と大きく異なる。
初めてギルスに変身したときの描写は同シリーズのある怪人を思わせるものとなっている。
風谷真魚とは本編とは異なる出会いをし、次第に彼女に魅かれていくが…。
仮面ライダーとしてはギルスの通常形態のみ登場。本編同様涼はギルスに変身する度に老化現象に苦しめられる。
地の文での表記は「涼」。
涼が所属していた水泳部の元マネージャー。
地の文での表記は「真由美」。
オリジナルキャラクター
- 小林雪紀
スイーツ好きな21歳の大学生。翔一に接近し、真魚に微かな嫉妬心を抱かせる。
地の文での表記は「雪紀」。
アンノウン
本編同様、ある目的の為に超能力者を狙い不可能犯罪を起こす怪人。
各ロードの犯行の手口や言動は本編と同じ。TV本編では複数存在した個体でも本作では一体で活動している。
実際に登場したアンノウン
初陣のG3を圧倒するが、突如現れたアギトにより撃破される。
真魚を標的にするが、G3により撃破される。
スコーピオンロードに続いて真魚を狙うが、ギルスにより撃破される。
ギルスにより撃破される。
アギトにより撃破される。
鎌による斬撃の他、カマイタチのような衝撃波を放つ。ライダー同士の戦闘の中で撃破される。
本作の事実上のラスボス。
エピローグに登場する。
存在を仄めかされたアンノウン
G3のロールアウト以前にも不可能犯罪の事例は報告されていた。いずれも犯行の手口しか判明しておらず実行したアンノウンは不明だが、実際に登場したアンノウンの犯行の手口はTV本編と同じであるため、これらの不可能犯罪についてもTV本編に登場したアンノウンが意識されていた可能性が高い。
事件 | 実行犯(推定) | 備考 |
---|---|---|
天井や床をすり抜けた転落死 | スティングレイロード | 最初に確認された不可能犯罪。地の文で言及。 |
人体の自然発火による焼死 | ハイドロゾアロード | 澄子が回想する報告例。 |
壁の中の死体 | ビーロード | 〃 |
食後の餓死 | シーアーチンロード | 〃 |
縄文時代の地層から発見された、死後数日しか経っていない遺体 | トータスロード | 真魚が読むネットニュースで報じられる。 |
関連項目
すもももももも…本作の監修を務めた井上がシリーズ構成を務めており、著者の岡村が脚本家の一人として参加していた作品。