「生きるってことは、おいしいってことじゃないですか」
「死を背負ったりしたら不味くなります」
「人の運命がお前の手の中にあるなら、俺が…俺が奪い返す!」
演:賀集利樹
変身する仮面ライダー
概要
「既に仮面ライダーである過去のない男」
『仮面ライダーアギト』の主人公であり仮面ライダーアギトに変身する青年。1980年4月1日生まれ(因みに誕生の月日が鞍馬祢音/仮面ライダーナーゴと同じ)の21歳(第23話より)。
変身ベルト・オルタリングの力によってアギトに変身し、アンノウンを察知する能力を有している。
自分のいるべき場所があるっていいという考えのもと、人々の居場所を守るために戦う。
アンノウンとの戦いを通して氷川誠や葦原涼と出会い、彼らと理解を深めていった。
海岸で記憶を失って倒れていたところを女子高生に保護され、2000年9月27日以降は心理学者・美杉義彦の家に居候している。保護された後はしばしの間入院しており、その際に彼を診察した心理学者・国枝東が美杉の友人であった。
保護された際は服を着ていたために溺れて漂着したとは考えにくく、同時に外傷がなかったために誰かに襲われたとも考えにくかった。その際、ポケットに入っていた封筒(中身は既に空)に「津上翔一」と書かれていたことから、この名前を名乗っている。
人物
性格は温和でやや脳天気、マイペースで天然ボケな部分もある。しかし、あまりにも正直なためにポーカーフェイスを必要とする駆け引きや勝負事は苦手(劇中でババ抜きは連戦連敗だった)。
価値観は自分基準であるため、(悪意はないのだが)無神経とも取られかねない言動を見せる(氷川の不器用さを指摘するシーンがファンの間でよく槍玉に挙げられる)。よくダジャレを言うが、あまりに寒かったり、分かりにくいので場の空気を凍らせるレベル。
記憶喪失であることも気にしておらず、第9話では昨日のことを覚えていなければ見るもの全てが毎日新鮮だからという理由で「毎日毎日記憶喪失になりたい」と語っていた。そのため、記憶を取り戻すことにあまり執着していない、場合によっては(美杉家の面々との縁切れを恐れてか)気乗りしていないところが散見される。
料理や掃除、家庭菜園など美杉家の家事を一手に担っているので主夫と化している。美杉家の庭に無農薬の家庭菜園を作っており、その手入れが趣味。ただそのお陰で、1ヶ月大根料理が続くなど食卓に同じ食材ばかりが並ぶことも多く、美杉家の住人たちを呆れさせている。
料理は趣味兼特技であり、来客には手製の料理を(勝手に)振る舞うことが多い。腕前は確かなのだが、創作料理となると白菜とグレープフルーツを合わせた何かを作ろうとするなど、時折珍妙なセンスを見せる。また、魚の口に小指を入れるだけで新鮮なものを選ぶという謎の特技を持っている。
木工も得意でベッドをキットではなく木材から作るという技巧も見せている(その過程で氷川に手伝いを頼んだ結果、ノコギリが数本犠牲になったが)。
この他にも記憶喪失の身の上であるにもかかわらず、運転免許を取得している他、コップを使った手品やテニスが得意(手品は北條透もなぜかハマってしまった)であるなど、家事スキル以外のスペックも高い方である。特にテニスはフライパンを使ってインターハイ準優勝者である氷川を下したので、ファンの間では伝説になっている(さすがにフライパンを禁止された際には氷川に負けているが)。
なお、劇場版を見る限り、意外にもピアノは苦手な模様。
劇場版では氷川に生きることはどんなことかと聞かれ、上述の「生きるってこと」云々の台詞を発して独特のセンスで答えている。氷川にとってはただ生きることが素晴らしいと解釈されたが、どういう意図での発言なのかは不明。
第24・25話では仮面ライダーG3-Xを装着し、スティングレイロード ポタモトリゴン・ククルスを撃破。それを機に北條と対面するが、程度の低い人物と思われていたらしく、本当にG3-Xを装着してアンノウンを撃破した民間人なのか疑念を抱かれていた。
第37・38話でアギトであることを北條に知られた際には、(翔一本人は観念したようだが)「実は俺、アギトなんです」と明かしたものの口調が理由でなかなか信じてもらえなかった(北條から翔一がアギトだと聞いた小沢澄子は納得していた)。
第39話で氷川が小沢や北條とアギトの話をした際、翔一をどう思うか訪ねられるが、氷川はなぜ翔一の名前が出てくるのか疑問に思い、まったく気づかなかった。
氷川を当初は「金剛寺さん」なる名前で覚えていた。劇場版では自分がハンバーガーショップの客に知り合いの「金剛寺」だと勘違いされるという小ネタがある。
終盤の展開(以下ネタバレ注意)
第43話にて、本名は沢木哲也であることが判明。
現在沢木哲也を名乗っている人物が本当の津上翔一であることは、沢木の初登場時点から判明していたため、両者の名前が入れ替わっていることが明らかになった。
なお、両親とは幼少期に死別している。
自殺した姉・雪菜の死の真相を知るべく、その恋人であった本物の津上=沢木に会いに行こうとしてあかつき号に乗船し、闇の力との交戦で敗れた光の力と遭遇。
遭遇直後水のエルに狙われるも、最期の力を使って太古から跳躍してきた光の力により、アギトとしての力を強制的に引き出された(このときの余波に巻き込まれた他の乗員乗客も、強制的にアギトの力を引き出されている)。
そしてアギトとして覚醒し水のエルと交戦、矛を収めた水のエルによって海へと叩き落とされる。このときのショックで記憶喪失になり、約2週間気絶したまま海を漂流した末(「アギトになってなかったら完璧に死んでましたねきっと。アギトになってラッキーでした!」とは本人の弁)、瀬戸内海周辺の浜辺に漂着した。ここから保護された後で居候の身となり、本編に繋がることになる。
完全に記憶を取り戻した後は、周囲には既に津上翔一で定着していたためこの名義で通すこととなった。
なお、かつては「好きなことをやれ」という姉の後押しもあって調理師の専門学校に通っていた。そのため、記憶が戻ると料理の腕前がプロ並みになる。
終盤、その調理師学校時代の恩師である倉本に再会し、美杉家を離れて彼のレストラン・Marに勤めることとなる。
親しくなった同僚の岡村可奈がアギトに覚醒してしまい、恐怖に耐えきれずに死を選ぼうとした彼女にアギトとして生きて戦う決意を語ることで、再び生きる勇気を与えた。
最終回(第51話)では、シャイニングフォームで放った強化シャイニングライダーキックで地のエルを倒し、闇の力による人類滅亡計画を阻止した。それから1年後、レストランAGITΩを開業し、杉家の面々が外食をしに、頻繁に訪れている。
なお、レストランAGITΩは、本編後の世界線の一つとして描かれた17年後の『仮面ライダージオウ』の時点でも営業していることから、店としての評判は非常に高いことが窺える。
客演
『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』
終盤の1カットのみ登場。一応他の場面でもアギトとして登場しているが、声は本人でなく別の声優が担当している。
大ショッカーとの戦いを終えて元の世界へ帰りゆく間際に、南光太郎やモモタロスとともに門矢士に激励の言葉を投げかけた。
「士、ここからが君の本当の旅だ」
この2人を筆頭に士を敵視している(であろう)者が多い平成一期組の中では、珍しく野上良太郎ともども士に悪感情を抱いていない。
『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』
アナザーアルティメットクウガ率いる怪人軍団との最終決戦にアギトが登場。翔一としての姿は見せていないものの、声は賀集利樹が担当していることから、恐らく翔一の変身したアギトだったと考えられる。
「皆の居場所は、俺たちが守る!」
『仮面ライダージオウ』
EP31・EP32に登場。
翔一として顔出し出演するのは上記の『オールライダー対大ショッカー』以来10年ぶり、さらに変身シーンを披露するのは『アギト』放送終了以来およそ17年ぶりとなる。
活躍
- EP31『2001:めざめろ、そのアギト!』
レストランΑGITΩは営業中だが、翔一自身は事件が起きるまではフランスへ料理修行に出かけていた。その後、風谷真魚の連絡からG3ユニットが謎の怪物に襲われたという事件のニュースを知り、日本に帰国する。
そして、アナザーアギトの気配を察知して現場に向かい、ツクヨミを襲っていたアナザーアギトの前に現れ、アギトに変身して戦闘を開始。
しかし、それはアナザーアギトを使ってアギトを誘き寄せるためにタイムジャッカーのスウォルツが仕掛けた罠であり、アギトの登場とともに増殖したアナザーアギトが次々と現れ始め……。
- EP32『2001:アンノウンなキオク』
ツクヨミを人質に取られ、ウールがライドウォッチを生成したことによってアギトの力を奪われてしまう。
その後、アギトの姿で暴れるアナザーアギトの対処は常磐ソウゴたちに任せて、気落ちしていたツクヨミに料理を振舞い(ラタトゥイユと思われる)、自分もかつて記憶喪失だったことを話し、ツクヨミを勇気づけた。
その後は仮面ライダーG3のスーツを着て大量のアナザーアギトがいる戦場に駆けつけ、ソウゴがアギトライドウォッチを取り戻した後、それを受け取ったことで力を取り戻し再びアギトへと変身。そしてジオウトリニティを見て「俺も負けられないな!」とトリニティフォームにフォームチェンジし、六身一体によるダブルライダーキックでアナザーアギトの本体を倒した。
事件解決後、最終的にアギトライドウォッチをソウゴに託しており、彼に「王様になってよ。王様って人、俺会ったことないからさ」と激励し、ツクヨミにも「俺も新しい料理作って待ってるよ」と告げてから、(恐らく)再びフランスへと旅立っていった。
『ジオウ』における余談
『アギト』は劇中で仮面ライダーの単語が出てこない作品であったことを踏まえてか、仮面ライダー関連の話題の際には「ライダーの力っていうの」と語っているなど、翔一が仮面ライダー関連の単語に馴染みがないことを表す言い回しとなっている。
歴史が変化していない残りのライダー組を見ると、「仮面ライダーという都市伝説」「鬼と呼称される存在」「マスクドライダー」「ライダーと呼ばれる人造の戦士」「怪人の幹部が仮面ライダーと命名した」とあるが、が、どちらにせよアギトの力を「仮面ライダーの力」とすぐに認識するのは彼が初めて仮面ライダーと名乗った作品も考慮すると、無理だとは思われる。
漫画版『クウガ』
雰囲気がガラリと代わり、五代雄介をより軟派な感じにした風貌になっている。また一人称も「僕」となっている。
原作でパン屋に一時就職したという設定のオマージュからか、会社員からパン屋に転職するべく地道に努力を重ねている。
本作ではあかつき号事件は起きていない上にアギトが原典のクウガに近い存在という設定から、姉から霊石を受け継いでアギトに変身する能力を得た。
原作同様に朗らかで心優しい人物であることに変わりはないが、原作以上にアギトであることに苦悩しており、それ相応の危うさを秘めた人物となっている。事実として五代のためと称して危険な未確認生命体と見なしたサチを殺害(実際は翔一に殺人を犯させないためのサチの自害)したり、恩師であるパン屋の店長を襲った土倉さやかの変身するアギトを痛めつけたりするなど感情が暴走しやすい傾向にある。
…上述の通り、原作では津上翔一は彼の本来の名前ではないのだが、これは漫画版のオリジナルキャラクターとして姓が同じ駿河徹也(てつや)が登場しているのが理由だと思われる。
余談
- 二輪免許の件だが、製作スタッフによるクレームへの皮肉なのではないかと言われている。実際の法律でも身元不明で戸籍の存在が確認できない記憶喪失者の場合、身元保証人を立て家庭裁判所に申し立てを行うことで本来の身元が判明するまでの間の仮の戸籍を取得でき、運転免許の取得なども可能となる制度が存在する。
- アギトへの変身ポーズが回を追うごとに少しずつ変化していくのが特徴。特に中盤以降は侍の抜刀をイメージしたような動作が含まれるようになっている。
- 『仮面ライダーガヴ』の主人公であるショウマ/仮面ライダーガヴが既に身体と一体化した変身ベルトを持つ、記憶喪失、第1話で砂浜に流れ着いていた所を発見される、変身後の姿を怪人と誤認される等の特徴を持つ事から翔一を思い出した視聴者が多数いた。
関連タグ
仮面ライダーアギト 仮面ライダーアギト(キャラクター) あかつき号事件
風谷真魚 氷川誠 葦原涼 木野薫 美杉太一 沢木雪菜 榊亜紀 岡村可奈 アギトの会
門矢士、フィリップ、桐生戦兎:記憶喪失の主役ライダー。フィリップと戦兎は諸事情で本名とは別の名前を名乗っており、フィリップは姉がいる。
火野映司:平成二期第2作目の主役ライダー。性格や年齢、諸事情で本名とは別の名前を名乗っている、2号ライダーやヒロインとの関係性などの点が共通する。
飛電或人:ダジャレを言う主役ライダー。こちらには唯一ウケる人物がいる。
神山飛羽真:次世代シリーズ2番目の龍がモチーフの主役ライダー。当初は記憶喪失だった。
平成ライダー主人公