「本で世界を創る…?確かに、本には世界を変える力がある。だけど、それは人々を幸せにする力だ!」
「その人間が書いたのが本だ!人は…物語を創る力を持ってる!」
演:内藤秀一郎
変身する仮面ライダー
概要
『仮面ライダーセイバー』の主人公。仮面ライダーセイバーに変身する。
帽子やテーラードをはじめとしたドレスやモード系の服装を好み、ネックレス型ペンケースをはじめとした「written words」という作中オリジナルブランドから、ハイブランドに至るまで幅広く着こなす。
人物像
職業は小説家で、副業として「ファンタジック本屋かみやま」の店主も勤めている。
なお、近年の仮面ライダーには珍しいライダーとしての活動とは関係の無い定職に就いている主人公である。(最近の仮面ライダーの主人公は学生などで職に就いていなかったり、働いていてもアルバイトやフリーターまたは、ライダーとしての活動が職業にあたるというケースが非常に多かった。)
また、これまでに職業に就いている主人公は数あれど、副業をしている(=定職に就くのみならず兼ね職も持っている)主人公はシリーズで初(一個後の主人公もライダーを契約社員とする形でさっそく同様になったが)。
第1章の芽依の台詞によれば、「本屋は小説家がダメな時の副業」という事なので、世間でありがちな「本屋を営む傍らで小説執筆」ではなく、あくまで小説家の方が本業という扱いらしい。
好きな本のジャンルはファンタジー。子供好きで、締め切りが迫っていても子供達への童話の読み聞かせを優先する程。
子供達との関係はかなり密接で、個々人の誕生日に本をプレゼントする約束を結んでいる。
また、その本の内容が受け取る子供の性格に合うように吟味している。
この様にマイペースだが「約束は自分の人生、守るべきもの」が信条で、「約束する」が口癖。小説家としても締め切りはきちんと守る。第1章での開始直後は「まだ頭の中」という状態であったが、終了直前には書き終えており、進捗速度にムラがあるが、出来る時はかなり速筆の様子。尚、デジタルの普及している今時には珍しく、原稿用紙に万年筆で執筆している。
当然出版している作品もあり、代表作「ロストメモリー」の帯には「ファンタジー界に革命を起こす1冊!」と綴られている。須藤芽依も作品について認知しているあたり、相応に有名ではある模様。
芽依のテンション高めな言動に振り回される事もあるが、どんな時でも好奇心を失わない姿勢はむしろ好ましく思っており、大抵のことは笑って流している。また、その明るさは彼の戦う理由の一つになっている。また、飛羽真も芽依に負けないくらい奔放でマイペースであり、それで逆に芽依を困らせることもある。
非常に寛大であり、他人が不遜ともとれる行動をしていても基本的に否定しない。ただし、「諦めること」と「本の力を悪事に使う」ことには強い否定の姿勢を示す。
取り分け、ルナや賢人といった幼い頃からの友人たちを理由とした場合、周囲が気圧される程に取り乱してしまうときもある。ルナが目の前で消えたときは声が枯れるまでルナの名を叫び続ける、闇黒剣を手にした賢人が賢人自身を犠牲に事態の収束を図っていると知った際は「物語の結末を勝手に決めるな!物語の結末は俺が決める!」と豪語するなど、普段の振る舞いからは想像できない激昂を見せる。
この他、マスターロゴスに対して世界をもう一度守るよう改心を促すなど、敵に対しても寛容な所がある(最後まで改心する事は無かったが)。
創作のタネにする為なのか手帳を持ち歩いており、文芸職ではあるものの、ワンダーライドブックを正確に描画する辺り、絵心もある。
戦いの際にはファンタジー文学の知識が役立つ事もあり、キリギリスメギドとの戦いでは土豆をあえて地面に蒔く事で巨大な豆の木を生やしてみせたり、アリメギドに女王蟻が存在する事を見破った事も。
また、メギド魔人の言動や外見から由来を推し測り、攻略の糸口となる書籍を発見する等、洞察力にも優れ、アヴァロンへの道を開く事にも成功している。だが、それが仇となって剣よりもワンダーライドブックの力に頼り切ってしまう傾向にあるらしく、大秦寺からは飛羽真の剣からは何も響いてこないと評される。
しかし、二度目の決闘で飛羽真が背負ってきたものに対する思いを火炎剣烈火に込め、聖剣の秘めたる力の片鱗を発揮させた為、本当の意味で剣士としての一歩を歩み始め、遂にカリュブディスメギドとの戦いで火炎剣烈火の真の力を覚醒させる。この間に起こった戦いでユーリが新型メギドと人間を切り分けられる事を伝えていなかった為にすれ違いが生じるも、却ってこれが自身の覚悟をユーリに認めさせるという良い影響が現れている。
以降の戦いでも剣士達と心を通わせる為の手段として剣でのぶつかり合いを選ぶ事が多く、その甲斐もあってか、終盤時点では大秦寺同様に剣に乗せられた剣士の思いを読み取れるようになったようで、あまりにも薄っぺらい動機で世界を滅ぼそうとするマスターロゴスの剣を「軽い」と評した。
サウザンベースの策略とソードオブロゴスに対する疑念から一時期、仲間達から追われる身となった彼だが、これらの出来事は彼の心身を成長させ、仲間達と本当の絆を結ぶ上で必要なものだったと言える。
親友を失う・一緒に戦った仲間全員と決裂状態になり襲われ続ける・自分達が行動している裏で何人もの人達の命が失われている事実を知る等苦しい状況に置かれ続けながらも決して曇ることのないメンタルの強さを発揮している。そのためなのか、他の登場人物と比較しても重傷や瀕死レベルの負傷を受けることがかなり多い(対照的にメンタル面でのダメージは2号ライダー枠の倫太郎が請け負っている)。
配役について
ここ近年、仮面ライダーの主人公には10代、20歳など若手の起用が当たり前になっている中、演者の内藤氏は本作開始時点で24歳と主役にしては歳が平均よりやや上である。
内藤氏は身長187cmという長身を誇り、これは平成、令和の主人公ライダーを演じた俳優としては最長身、昭和ライダーに目を向けてもこれまで歴代主人公ライダー俳優最長身だった仮面ライダーZX/村雨良を演じた菅田俊氏に並ぶタイ記録でもある。
芽依役の川津明日香氏と同じ事務所であり、オーディションの合格発表時にはドッキリを仕掛けられたという。
設定の変更
基本的に戦いの中で成長することで強くなっていくライダー作品の主人公であるが、飛羽真はその中でも兼業作家の一般人が戦いに巻き込まれたという設定から、特に強さに対して説得力がない主人公と指摘されることが多い。また、ルナや賢人に対する態度も、十五年間も忘れておきながら命がけで助けようとするという、視聴者から見れば感情移入しづらい設定になっている。
これらの設定の矛盾や違和感は、コロナ禍による急な設定変更による影響である。
『フィギュア王』No.284のインタビューによると、元々飛羽真はルナを救う手がかりを求めて剣術の鍛錬を重ね、知識を蓄えていた主人公になる予定であり、ストーリー自体もルナを探して各地を旅する物語になるはずだった。
しかし、コロナ禍の影響からストーリー自体が撮影所内で行われるかなり限定的なものになり、それに伴って飛羽真自身の設定も、兼業作家へと変更せざるを得なくなり、ルナや賢人に対しても、かつての記憶を失っている。という設定になったことが明かされている。
それもこれらの設定変更は、第一話と第二話の原稿が完成され撮影に入る直前という、制作側からすれば最悪のタイミングであったため、特に序盤の飛羽真の言動や行動はかなり唐突で突飛なものに感じられる箇所が散見される。
これらのことから、ライダーファンの間では天道総司が撮影直前で津上翔一になったと例えられることがある。
謎
物語開始時点で既にブレイブドラゴンワンダーライドブックを入手しており、のちに聖剣ソードライバーに選ばれるきっかけとなった。新堂倫太郎曰く「普通のホモサピエンス」ではないらしい。
剣士が本の魔物と壮絶な戦いを繰り広げ、“謎の少女”が助けを求めるという、謎の夢を頻繁に見ている。謎の少女が次元の裂け目に吸い込まれそうな時に小指で必死に繋ぎ止めようとしたことから、なんらかの約束をしていた事の暗喩とも取れる。
15年前、メギドが引き起こした事件に巻き込まれたが、その時の記憶を失っており、幼馴染の富加宮賢人や「もう一人」の事も忘れていた。しかしソフィア曰く、「それが彼がセイバーに選ばれた理由」らしい。
物語が進むに連れ徐々に記憶を取り戻していき、謎の少女=幼馴染のルナであること、15年前に自身を救ってくれたのが先代の炎の剣士=上條大地であることを思いだした。
中盤からは明らかに普通のホモ・サピエンスではない事を強調するように肉眼で時国剣界時のカラクリを見破るなどの特殊能力を発揮し始めている。
さらに11の聖剣と19の本とルナを用いた儀式にて、空中に刺さった火炎剣烈火を引き抜いて儀式そのものを中断してしまった。その後は火炎剣を通じて他の聖剣所持者の戦闘を察知する等、離れ業に磨きがかかっている。バハトとの決戦では生身の状態で発光させた火炎剣烈火を仮面ライダーファルシオンにダメージを与えている(この時に変身もしていないのに、セイバーの姿が浮かび上がっている)。
ユーリによって後に明かされたところによれば、飛羽真に付きまとう「力を手にする運命」とは、「世界をつなぐ存在」であるルナに「選ばれた」のが理由であるらしい。
これによって飛羽真はワンダーワールドの力全てを手にする宿命を背負ったが、同時にワンダーワールドの守護者となり、現実世界から消滅することを定められてしまっているという。
しかし飛羽真はこれまでに何度も闇黒剣月闇が見せた災いの予知を覆しており、第1章からの決めセリフ「物語の結末は、俺が決める!」が、比喩表現に留まらず世界の造物主の如き意味合いとなり出している。
第45章の巻末付録では彼が「普通のホモサピエンス」ではない理由について言及されており、それは「全知全能の書」の分かたれた存在であるルナによって英雄=物語の主人公に選ばれた存在であるからである(後述)。
Wonder_story
幼少期にルナを含めた三人で愛読していた飛び出す絵本。
現在は飛羽真が所持し、手元に置いて持ち歩いている。
ただ、どうやら単なる絵本ではないらしく、3ページの「龍に乗った騎士が大地を破壊する」場面から先が空白になっている。
ドラゴニックナイトやプリミティブドラゴンの覚醒時などに呼応する描写があったことから、これ自体も全知全能の書の一部か、そうでないにしても何かしらの関係がある可能性が否めない。
なおこの竜騎士は第1話で飛羽真が火炎剣烈火を手にしたときに一瞬だけ出現している。
竜騎士のページの全文は「空を覆う黒い雲。激しい音が鳴り響く。君は希望を信じることが出来るだろうか。世界がほどける時、竜が炎の剣を呼び覚ます。剣は剣士を選ぶだろう。真っ赤なマントをたなびかせキラリと輝く仮面の剣士。それは世界を救う伝説の剣士」というもの。
倫太郎がこの一説を引用する場面もあったことから、ソードオブロゴスに伝わっている可能性もある(幼少期の飛羽真は上条の知己=組織と間接的にかかわっていた)。
その正体は飛羽真を主人公に据えたシナリオであり、これまでの言動や成果の全てはこの本によって予め定められていたものである。なお、ページはストリウスがグリモワールワンダーライドブックを手にした所で終わっており、続きはない。
また、ソードオブロゴスとは無関係だった一般人だったにも拘らず、序盤の時点で古代文字を読めたのはこの絵本に同様の文字が書かれていた為だという。
余談
- 彼が書斎に飾っている絵本の中には、『仮面ライダーウィザード』の奈良瞬平が大切にしていた「森の魔法使い」がある他、置き時計は不思議の国のアリスに登場する時計ウサギの懐中時計を模したデザインであり、両脇にはアリスとウサギの像が据えられている。なお、書斎の設定は放送前のPVで確認できたボツ設定である。
- 名前の由来は「紙の山」と「刀」なのではないかと思われる。
- なお劇中の衣装はハイブランドまで混ざる形でかなり多岐に渡るが、これは企画チームが飛羽真の職業が小説家であることから「偏屈で気難しい人」という固定観念がつくことを懸念し、前作で迅のスタイリング等を手掛けた村瀬昌広氏を衣装選び担当とし、服装から明るく目を引くようなオシャレなキャラを目指したことが理由である。ドレス寄りのコーデを好む(職業柄スーツ寄りになる例を除けば、他は士や翔太郎程度である)のは平成以降のライダー主人公では珍しいが、その中でも特にオリジナリティ溢れる仕上がりとなっている。
- また、仮面ライダーシリーズでは珍しく家族の存在がほとんど語られていない主人公である。
- 中国やその影響を受けた日本の一部のファンからは、「約束超人」という愛称で親しまれているほか、劇中での呼び名から「私の英雄」というファンも。
関連タグ
津上翔一:前世代シリーズ2番目の龍がモチーフの主役ライダー。当初は記憶喪失だった。
剣崎一真:剣に纏わる作品の主役ライダーの先輩、怪人に対抗する組織に属する、仲間達と共に黒幕を打ち倒す、ラスボス怪人ライダーと激闘を繰り広げる等の共通点が存在する。ただし、迎えた結末は正反対だった。
五色田介人:ニチアサ同期の主人公。スーパーヒーロー戦記にて共演。
令和ライダー主人公
外部リンク
以下、最終章のネタバレにつき閲覧注意。
終わる世界、生まれる物語。(最終章ネタバレ)
滅びの塔を舞台とした最終決戦で、飛羽真を奈落の底に突き落として、勝ち誇った笑い声を上げるストリウス。
だが飛羽真の体は、1冊のワンダーライドブックによって宙に浮かび上がった。
「僕、お兄ちゃんのお話、もっと聞きたい!」
プリミティブドラゴンの少年が救ってくれたのだ。飛羽真はプリミティブドラゴンに変身し、戦闘再開。
だが終焉に近づくワンダーワールドの影響でプリミティブドラゴンワンダーライドブックが消滅し、変身も解けてしまう。
ストリウス「遂にライドブックの力が失われたようですねえ…!あなたの信じていた全ての物語が消えるのです!」
そこへ消えかけながらも必死の思いでルナが駆け付けた。ストリウスは彼女の目の前で、あがく飛羽真にとどめを刺さんとする。
ストリウス「ああ…残念です。もっと美しい最期だと思ったのに!」
しかし倫太郎と賢人がそれを阻んだ。
倫太郎「水勢剣流水に誓い、大切な人達は僕が守る!」
賢人「俺はお前達を守る!」
飛羽真はルナを抱き起こすが、彼女は
「やっと見つけた…君を……飛羽真のお話が聞きたいな…新しい物語を創って…」
と言い残し、呼び寄せた聖剣の力でワンダーオールマイティワンダーライドブックを生み出して消滅した。
その新たなブックの表紙を開く飛羽真。仲間達とルナの思いが伝わってきた。
尾上「子供達の未来」
大秦寺「聖剣の声」
蓮「強さの果て」
倫太郎「大切な誓い」
賢人「大切な友」
ルナ「大切な約束」
飛羽真「全ての思いを紡ぎ…」全員「物語は永遠に続く!」
このまま世界を終わらせない。運命も未来も自分の手で切り開くのだ。
飛羽真「信じる力が……未来を変える!」
飛羽真・倫太郎・賢人「変身!」
『烈火全抜刀!』
『A NEW STORY IS BORN!WONDER! WONDER! WONDER! ALL ALL ALL ALLMIGHTY!』
飛羽真はオールマイティセイバーに、倫太郎と賢人もブレイズとエスパーダに変身して、ストリウスに挑む。三剣士の猛攻と、数々のワンダーライドブックから繰り出される攻撃に抗いながら、ストリウスは「物語に力などない!」と叫ぶが、
セイバー「お前はなぜ、詩を書こうと思った?」
ストリウス「そんな事、とっくに忘れたわ!」
セイバー「いや、覚えているはずだ!物語は心の中で消えはしない!」
というセイバーの問い掛けに動揺する。「うるさい!消えろーっ!全て消え去ってしまえぇーっ!」と絶叫しながら攻撃を放とうとするも、三剣士の勢いはそれを上回った。
ブレイズ「僕は僕を絶対に諦めない!」『ライオン!一冊斬り!ウォーター!』
エスパーダ「俺の思いを貫く!」『アランジーナ!一冊斬り!サンダー!』
セイバー「物語の結末は俺達が決める!」『オールマイティ必殺斬り!』
『グランドフィナーレ!』
三人同時の必殺斬撃を受けたストリウスは遂に敗北し、人間態に戻った。
その脳裏にはるか昔の記憶が甦る。自作の詩を人々に読み聞かせ、称賛を浴び、その傑作の出来に快哉を上げる己の姿の記憶が。しかしそれは『全知全能の書』にあらかじめ書かれていたものであり、自分はそれをなぞったに過ぎなかったのだ。
セイバーのベルトのブックを見つめながらストリウスは呟く。
ストリウス「それが新しい物語か…」
だがもう遅い。いくら奴が新しい物語を生み出そうと、世界の終焉は止められない。人間は全て『全知全能の書』に書かれた運命の通りに滅びゆくだけなのだから……。
ストリウス「それでも……もうじき世界は終わる……」
絶望にうなだれたまま、ストリウスの体は崩れ、消え去っていった。
滅びの塔が崩壊を始めた。天変地異が広がり、空も街も闇に塗り潰される。
『ファンタジック本屋かみやま』やソードオブロゴスの書棚から、そして世界中から本と物語が消えてゆく。それでもなお芽依は、パソコンの画面に向かって懸命に文字を打ち続ける。
「この世界が消えるとわかった時、あなたはどんな物語を思い出しますか?」
「あなたの物語が世界を救うの」
芽依は「お願い…!」と最後の望みを賭けて投稿ボタンを押した。
その頃、滅びの塔から脱出したものの、突如苦しみ出した飛羽真の体は消滅し始める。
倫太郎「一緒に世界を救うんじゃなかったんですか!」
賢人「約束しただろ?消えるな、飛羽真!」
二人の嘆きも空しく、飛羽真の体は崩れてゆき、世界は闇に呑まれ……。
「僕には忘れられない物語があります」
芽依の元に一通の返信があった。彼女の必死の呼び掛けが届いたのだ。
そして闇の中に取り残された飛羽真の耳にも「昔々、あるところにサンタさんいました」「僕の好きな絵本は『桃太郎』です」等々、子供達の声が聞こえてきた。子供だけではない、大人も皆それぞれの愛する物語を語っている。
飛羽真「世界が物語で溢れている…わかるかい、ルナ…」
「『北風と太陽』、この本のおかげで本を創る仕事に就いて…うちも太陽のような人になりたい!」という、芽依の明るい笑顔が見えた。倫太郎、賢人、蓮、尾上、大秦寺、ソフィア、ユーリ、玲花、凌牙…仲間達もそれぞれの笑顔を見せている。人々の思い、それぞれの心に物語がある限り、世界は続いてゆくのだ。
飛羽真「みんな……ありがとう……」
一年後。
公園で楽しげに遊ぶ子供を見つめながら、賢人は一人物思いに耽る。人々が思い描く『大切な物語』の力により完全な世界の崩壊は免れた。だがその代償は大きかった。
賢人「飛羽真が消え、世界は救われた。ワンダーライドブックは残ったが、そのページは開かず、光の剣も力を失った。消えてしまった多くの人達も戻ってこない。まだ全てが終わったわけじゃない。だけど…飛羽真、一ついい事もあったぞ」
飛羽真の著書『エターナルストーリー』が長谷川一圭賞を獲得したのだ。飛羽真に代わって表彰された芽依は、壇上でスクリーンに映し出される飛羽真の写真をバックにスピーチをする。
芽依「この本には神山飛羽真という作家の思いが、全て込められています。本には世界を変える力がある。人々を幸せにする力が…。そして未来は作られる。本気でそう信じる力で溢れています。そして物語を愛している全ての人達の思いが、きっと世界を救ったんだと思います。物語は消えたりしない。私は…今もどこかで神山飛羽真は新しい物語を創っている……そう信じています」
芽依は、写真の飛羽真に呼び掛けた。
芽依「ねえ…聞いてる?飛羽真。どこにいたって、必ずうちが原稿受け取りに行くよ。締め切り守らなかったら、承知しないから!約束したからね…」
そう笑顔で言いながら、芽依の瞳から一筋の涙が流れ落ちた。客席の倫太郎も目を潤ませながら、立ち上がって拍手を贈る。
芽依「みんな…飛羽真を待ってる…!」
その頃。
飛羽真は『ワンダーストーリー』と書かれた原稿用紙を整え、『ファンタジック本屋かみやま』の外に出た。外にはワンダーワールドの不可思議な光景が広がっている。
飛羽真「誰かに与えられたものでもない。みんなの思いが新しいワンダーワールドを創った。俺は一人、ここで物語を書いた。やり残した事を終わらせるために」
突如、ノーザンベースのワンダーライドブックが輝いたかと思うと、滅びの塔の決戦で皆に生命を分け与えて消滅したはずのユーリが甦った。
芽依の立つ壇上に、ワンダーワールドに街ごと取り込まれた白井編集長が出現し、他の消えた人々も次々帰ってきた。
飛羽真は新たに『ワンダーストーリー』の続きを書き加え、刃王剣十聖刃とワンダーオールマイティライドブックの力を合わせる事で新しいワンダーワールドを構築、運命通りに新たな管理者となった。さらにカリュブディスの贄とされた人々の物語も一人一人丁寧に書き続け、ユーリを含めた彼らを元の世界に帰還させる事に成功したのである。
芽依「もしかして…!」
公園にいる賢人のところに、皆が走ってきた。口々に「もしかして…」と期待に胸を膨らませている。そして一同が見つめるその先には……
芽依「おかえり…」
笑顔の飛羽真の姿があった。歓喜に沸く仲間達。
ルナ「飛羽真…新しい物語を書いたんだね」
タッセル「これでみんな元の世界に戻れたはずだ」
初代マスターロゴス「世界はやっと均衡を取り戻しました」
レジエル「何が世界を変える力なのか、ようやくわかった」
ズオス「俺達自身が力だったんだな」
ストリウス「人の思いが…物語が世界を創る…やはりあなたは私の英雄だ」
マスターロゴスや、レジエル、ズオス、そしてストリウスも皆、邪心から解き放たれた晴れやかな笑顔を浮かべていた。
飛羽真「だから、俺はただの小説家です」
バハト「お前のいるべき場所は、ここじゃないだろ?」
ルナ「飛羽真の物語を、みんなに届けて」
そして飛羽真自身も、ワンダーワールドから仲間達の元へ帰ってきたのだった。
芽依「おかえり!飛羽真」
飛羽真「ただいま」
ルナ「離れていても…」
飛羽真「これからも3人…」
ルナの声が聞こえた飛羽真と賢人は抱き合って笑いながら走り出した。
ルナ「ずっと一緒!」
飛羽真・賢人「ずっと一緒だーっ!」
物語の結末を決めた救世主の物語はこれからも続いて行く事だろう。そしてその意志を継ぐように新しいヒーローが現れる…。
その後は大秦寺が新たな剣を作る。尾上が教師になる。倫太郎は神代兄妹、ソフィアと共に新体制のソードオブロゴスで世界を守る。ユーリがもっと世界を知る等新たな道を進む中、飛羽真は小説家としてもっと色んな物語を書いていくため火炎剣烈火を返却して剣士を引退した。
後日談の『仮面ライダービヨンド・ジェネレーションズ』では、倫太郎の呼びかけに応じ一時的に剣士として復帰している。
『深罪の三重奏』
8年後、ある事件により「東京都かがり市第二地区9丁目6号」にあった『ファンタジック本屋かみやま』が火事で消失し、陸とペットのラッキーを発見して、新たな地で2代目『ファンタジック本屋かみやま』を開き、執筆活動と経営、育児に励んでいたが…
『アウトサイダーズ』
本作に飛羽真本人は登場しないが、仮面ライダーゼインがクロスセイバーのゼインカードを使用して刃王剣を召喚する場面がある(設定上ゼインカードはオリジナルの仮面ライダーから借りた力を使用しているため、一応ゼインと飛羽真は面識があると思われる)。