この国際条約は、正式名称を偽造品の取引の防止に関する協定といい、偽造品や海賊版、インターネット上の著作権侵害を取り締まるための国際的な法的枠組を取り決めるため、今まで話し合いの場とされていた世界貿易機関( WTO )や世界知的所有権機関( WIPO )、国際連合( UN )といった既存国際機関と別の機関を設立し、独立した組織として交渉の場を持つことを目的としている。
問題点
この条約で取り締まりの対象となるのは、いわゆる「偽物」であるが、当初条文が公開されず、外務省が「条文案の日本語訳の作成予定はない」と公言したことから責任の所在がどこにあるのかが不明である点、法案の策定において関係者が誰であるか不明な点が多く、少なくとも先進国側の著作権の所有者がかかわっていることが問題とされている。
その後条文の日本語訳は公開されたが、条文があまりにも漠然としていることから、多大な制限がかけることが可能になる恐れが示唆されている。
それにより二次創作などまで規制がかかると解釈され、日本国内においても反対運動が行われた。
また、それまでの模造品等に化せられたルールをインターネット上にも適用しようとしているため、それまでのインターネットのルールと相容れず、特にヨーロッパにおいてはインターネット上における表現の自由を犯すとして問題とされた。
さらに、国境なき医師団などは発展途上国で使用されるジェネリック医薬品に関してもこの期間および法律により制限がかかると危惧している。
進捗状況
2011年10月、この条約はアメリカ合衆国、オーストラリア、カナダ、大韓民国、シンガポール、日本国、ニュージーランドおよびモロッコの8カ国によって署名された。
2012年1月には欧州連合及び欧州連合加盟国のうち22カ国( 具体的にはオーストリア,ベルギー,ブルガリア,チェコ,デンマーク,フィンランド,フランス,ギリシャ,ハンガリー,アイルランド,イタリア,ラトビア,リトアニア,ルクセンブルク,マルタ,ポーランド,ポルトガル,ルーマニア,スロベニア,スペイン,スウェーデン及びイギリス )が署名し、署名の数は合計31になった。
協定は6カ国による批准の後効力が発生する。
日本では2012年9月6日に衆議院本会議において批准することが賛成多数で可決された。
しかしEUでは批准が否決され、その他の国では採決が行われず2016年現在、批准国は日本のみであり、まだ発効していない。
いずれにせよ今後この協定は日本以外に批准しそうな国は出てきていない現状において、ACTAが発効する可能性は低いといえよう。
日本における状況
なお日本国内においてはACTAは8月3日、衆議院外務委員会にて可決され、後に野党が別件で審議拒否する中衆議院本会議において批准することが与党である民主党などの賛成多数で可決されたものの、これにより二次創作が規制されたり、インターネット上のサイトが強制閉鎖させられる事は無かった。
詳しいことは下のサイトを参照の事。
internet Watch:衆議院外務委員会が「ACTA」承認、ネット規制強化は「誤解」と繰り返し否定
記述内容を要約すると、「条文が説明不足すぎて読み手に間違った解釈を与えてしまった」ということである。