概要
1990年11月21日に任天堂から発売されたスーパーファミコン用レースゲーム。
現代より遠い先の未来を舞台に開催される『F-ZEROグランプリ』を題材に、
反重力を生み出すマシンのデットヒートを繰り広げる。
F-ZEROグランプリとは
西暦25××年より開催された、専用のマシンとサーキットを使用して行われる宇宙規模の大レース。宇宙規模で熱狂的な人気を博しており、グランプリ優勝者には多額の賞金と最高の名誉が与えられる。
『F-ZEROグランプリ』の前身は20~21世紀に地球で行われていた『F-1レース』、
および24世紀の『F-MAXグランプリ』であると言われている。
24世紀後半から活発になった惑星間交流の恩恵を受け、宇宙交易により巨額の富を築いた富豪達は、「最も速く、最も過激なレース」をギャンブルの対象にしようと考え、
『F-ZERO実行プロジェクト』を設立したのである。
特徴
シリーズを通して、スピード感とアメコミを彷彿とさせるユニークな世界観がコンセプト。「マシンが反重力発生装置で1フィート浮いて走行する」という設定を活かした立体的なコースは、大迫力のレースをさらにダイナミックに演出する。
後に同社から発売された『マリオカート』のようなアイテムなどによる一発逆転の要素が少なく、マシン性能の理解と自らのドライビングテクニックが試される。
レース中にマシンがコースアウトするかエネルギーを使い果たすと、その時点でリタイアとなる。それを利用して、レースそっちのけで潰し合うアクションゲームとして楽しむ遊び方もある。
…と言うか、潰しあいをメインとしたデスレースなんてモードもあったりする(後述参照)。
シリーズ作品
タイトル | 機種 | 発売年月日 | VC対応機種 | Nintendo Switch Online |
---|---|---|---|---|
F-ZERO | SFC | 1990年11月21日 | Newニンテンドー3DS/3DSLL/WiiU | 配信中 |
BS F-ZERO GRAND PRIX 2 | SFC サテラビュー | サテラビュー配信 | なし | なし |
F-ZERO X | ニンテンドウ64 | 1998年7月14日 | WiiU | +追加パックで配信中 |
F-ZERO X EXPANSION KIT | 64DD | ランドネット配布 | なし | なし |
F-ZERO FOR GAMEBOY ADVANCE | GBA | 2001年3月21日 | WiiU | +追加パックで配信中 |
F-ZERO AX | アーケード | 2003年6月 | なし | なし |
F-ZERO GX | GC | 2003年7月25日 | なし | なし |
F-ZERO ファルコン伝説 | GBA | 2003年11月28日 | WiiU | +追加パックで配信中 |
F-ZERO CLIMAX | GBA | 2004年10月21日 | WiiU | +追加パックで配信中 |
F-ZERO 99 | Switch | 2023年9月15日 | なし | 配信中 |
VC(バーチャルコンソール)は2023年3月28日午前9時をもって配信終了。
現在はNintendoSwitchOnlineにおいて『F-ZERO』が、これに加えて「+追加パック」では『X』『FOR GAMEBOY ADVANCE』『ファルコン伝説』『CLIMAX』が配信されている。『F-ZERO99』はNintendoSwitchOnline加入者限定ソフト。加入者は無料でダウンロードプレイ可能。
また、スーパーファミコンミニに『F-ZERO』が収録されている。
メディア別
- アニメ
2003年〜2004年放送。アニメ版オリジナル設定およびキャラクター関連のイラストなどでは「ファルコン伝説」タグを付けられている事が多い。
同タイトルのゲーム版や『F-ZERO CLIMAX』はこのアニメ版をベースにした作品である。
- 小説
『F-ZERO…そしてスピードの神へ』(作: 尾崎克之)
1992年2月5日発売。初代F-ZEROを下地に独自の要素を多く盛り込んだ一冊。主人公はスワン・リー。
- 漫画
『F-ZERO小学校 伝説のファルコン先生』(作:矢高鈴央)
ファルコン伝説のキャラクター達が小学校の生徒や教職員設定で話を展開する学園パロディのギャグ漫画。
『F-ZERO CLIMAX(特別読切り漫画)』(作:板垣雅也)
『CLIMAX』を元にした読切作品。
シリーズの沈黙
『CLIMAX』以降の新作は2023年の『F-ZERO 99』まで約19年間動きを見せていなかった。スマブラにキャプテン・ファルコンが参戦している事や、マリオカートシリーズでもかなり本格的なF-ZEROコースが実装された事も相まって、認知度自体は非常に高く、国内外問わず多くの層から新作発売を望む声は絶えず発せられている。レースゲームである関係上、必然的に同じ任天堂の『マリオカート』シリーズと役割が被ってしまう上、あちらと比べて難易度が高く、ライトユーザーには敷居が高すぎるのでは?という意見も散見されている。
公式側の発言として、宮本茂氏からは「斬新なアイデアが浮かばない」ことを開発に繋がらない理由として述べている(IGNより)
そしてF-ZERO99へ
『F-ZERO 99』は初代『F-ZERO』をベースにした作品でありグラフィックはSFC当時のままだが、バトルロイヤルに特化したゲーム性になっている。単なるバトルロイヤル化と侮るなかれ、99人対戦に向けた新要素と歴代シリーズからの一部システムを抽出することで従来のF-ZEROらしさを保ったままバトルロイヤルとして成り立たせることに成功しており、バグの修正や調整以外のアップデートはSFC版には存在しなかった新要素や期間限定イベントが、配信から1年以上経った現在も尚継続されている。更に1周年記念イベントと同時にサテラビュー版限定要素も取り入れられ、同日にはアニメ版権のゲーム『ファルコン伝説(GBA版)』と『CLIMAX』がNintendoSwitchOnlineでの配信が決定された(しかもカードe+を読み込むことでしか体験できなかった要素の収録や、海外未発売である『CLIMAX』が海外版にも対応)。過去作の手直しや移植という現状であるが、少なくとも2023年以降の動きは、長期に渡る沈黙が続いていたF-ZEROシリーズにとって大きな一歩とも言えるのではないだろうか。
『99』の反響次第では現代のグラフィックに進化した完全新作のF-ZEROが発売されるかもしれない。
ゲームモードと仕様
タイムアタックやプラクティス等レースゲームならではのものは勿論、様々なモードが用意されている。
グランプリ
本シリーズのメインとなるモード。作品によって異なるが、優勝する事で新たなクラスやカップ戦、F-ZEROマシンが解禁される。作品ごとに必要周回数やスペアマシンの獲得方法が異なる。
- スペアマシン
グランプリにおけるいわゆる残機の事で、0台の状態でリタイアしてしまうとゲームオーバーになる。初代では総合獲得ポイントが10000pts.を超えるごとに、X、GXではサイドアタックやスピンアタックでライバルマシンを5台リタイヤさせると1台増加する。
- セッティング
初代、forGBA、CLIMAX以外ではレース開始前に加速重視か最高速重視による調整(エンジンセッティング)を行うことができる。
- インタビュー(GX)
グランプリで総合1位を取ると表彰式後に始まり、三つの質問内容の中からプレイヤーが一つ好きな質問を選ぶことができる。質問内容は選択クラスやカップ戦によって変化し、パイロット一人につき16もの質問が用意されている。中にはパイロットプロフィールに記載されていない情報も多数含まれている。
対戦
複数のプレイヤーと遊ぶ際、作品によっては対戦に関する設定を行える。Xではオプションから、GXではレース開始直前に設定可能。
『X』
- VSコンピュータ
2人または3人での対戦の時に有効にするとCPUが自動的に参加し、4台でレースを競うこととなる。
- VSハンディマッチ
+1で先頭のマシンとの距離が離れている場合ブースターのエネルギー減少が通常より少なくなり、+2ではこれに加えて通常のスピードもアップされる。GXでは「ハンディキャップ」と呼ばれる。
- VSスロット
他のプレイヤーより先にリタイアしてしまった際にスロットマシンが現れて絵合わせを遊べるようになる。3つの絵柄が揃えば走行中のマシンのエネルギー残量を半分、もしくは一気に0まで減らすことができる。どのマシンのエネルギーを減少できるかは絵柄次第。
このスロットゲームは本作限りである。
『GX』
「バトル条件」として上述の通りレース開始直前に設定が可能。ハンディキャップやCPUの有無に加えて周回数(1〜20まで)やメーターが尽きた時にコースへ復帰する復活、2人対戦時の画面分割を設定できるようになった。
また、クラッシュ直後に復帰して再スタートできるというルールはAXとCLIMAX(難易度NOVICEのみ)、GBAで発売されたシリーズ全ての対戦モードにも採用されている。
デスレース(X)
最後の一台になるまで29台のライバルマシンに攻撃を仕掛けリタイヤさせていくゲーム。クリアすればタイムが記録されるため、タイムアタックとしても遊べる。コースは一種類のみで難易度の選択も無い代わりに、周回数に制限がなく、ブースターも初めから使用可能。
CLIMAXには一つのモードとしては登場しないが、後述のサバイバルモードにライバルマシンを破壊するお題「DEATH RACE」が含まれている。
ストーリーモード(GX、ファルコン伝説)
『GX』
GXでは指定時間内に全カプセルを回収してゴール、ボスのマシンを破壊してからゴールする等、グランプリでは体験できない一味違ったゲームが楽しめる。それぞれ3段階の難易度が設定されており、最高難易度をクリアするとAXのマシンとパイロットがショップに並ぶ。操作可能となるマシンはブルーファルコンのみで、キャプテン・ファルコン視点で物語が進んでいく。
『ファルコン伝説(GBA)』
GXとは形式が異なる計8名のパイロットによるストーリーモード。
ゲーム開始時はリュウ・スザクしか選べず、シナリオを進めることによって別の登場人物のストーリーを解放できる。進行状況によってはバッドエンドに突入してしまうことも。
コースエディット(X EXPANSION KIT、CLIMAX)、クリエイトマシン(X EXPANSION KIT、GX)
自分だけのオリジナルコース、マシンを作成できるモード。
サバイバル(CLIMAX)
パイロットごとに設定されたミッションバトルをクリアしていくモード。1位や特定スピードを維持、ライバルより速く特定の位置に停止、エネルギー残量0でレースを行うなどといった様々なミッションが用意されている。
ゼロテスト(ファルコン伝説(GBA)、CLIMAX)
マップ上コースの赤く塗られた一部分を定められたマシンで走り、目標タイムを目指すモード。セッティングは不可。
登場キャラクター/マシン
F-ZEROのキャラクターを参照。
『THE STORY OF CAPTAIN FALCON』
初代F-ZEROの取扱説明書に掲載されている漫画で、タイトル通りキャプテン・ファルコンを主人公とした物語。擬音を含めて作中の言語は全て英語で書かれているが、30ページからは日本語訳も載せてある。
『F-ZERO』は元々ゲーム内に人物を登場させることを想定して開発を進めていたわけではなく、開発をほぼ終えていた頃にデザイナーの今村孝也氏が関係者から「スーパーファミコンのイメージキャラクターを作りたい」との注文を受けたことが始まり。試しに描いたアメコミ風の漫画をNOAスタッフに見せたところ評判が良かったため、最終的に説明書内の漫画という形で採用されることとなった。参照
2017年、『スーパーファミコンミニ』の公式サイトにて当時の説明書が全ページPDFで公開されたことにより、現代においても本作を気軽に閲覧することが可能となった。また、2023年には『99』にて本作品のコマの一部がゲーム内で流用されており、アップデートにより追加されたスタンプ機能では登場人物達の表情をアレンジしたものが使われている。
用語
F-ZEROマシン
反重力発生装置G-ディフューザーシステムによるホバリング走行と、動力である超小型プラズマエンジンの爆発的なパワーにより超高速走行を可能としている。軽く音速を超える車輪を持たないボディは限りなく戦闘機のそれに近い。
F-ZEROサーキット
コースの路面両脇にある反重力ガードビームによって遥か上空(初代の説明書によれば最高のもので地上300フィートの位置)に設置されており、惑星都市によっては複数のサーキットが備えられている。グランプリ開催期間以外ではパイロット達の練習場として解放されている。
銀河宇宙連邦
パイロットのジョディ・サマー、ジョン・タナカ、リリー・フライヤーの3名が属する組織。惑星タコラとは抗争関係にあるほか、ブラックシャドーの発言から7つの銀河を統括していることが判明している。
BS団
ブラックシャドーが率いるF-ZEROにおける代表的な悪の組織。有能な部下の多くを捕らえたキャプテン・ファルコンをレース上で血祭りに上げるためにブラックシャドーとブラッド・ファルコンが参戦している(ただし、F-ZERO Xグランプリではキャプテン・ファルコンを血祭りに上げるどころか逆にコテンパンにやられてしまうという失態を演じてしまったとのこと)。乗機はBS団の秘密研究所で製造されたもの。
4年前の大事故
かつてのF-ZEROグランプリ開催中に起きた事件。数年間グランプリが自粛されることとなり、これを機にレギュレーションの大幅改定および公式ルールの見直しが行われ、その上でグランプリが再開された。また、ブラッド・ファルコン誕生の切っ掛けとなっているほか、重症により全身サイボーグ化したマイティー・ガゼルなど一部パイロットにも大きく影響をもたらした。事故の発生原因は不明であるが、好戦的な性格を持ち合わせたヒットマンのピコが疑われている。
時空警察
パイロットのフェニックスとQQQが属する警察組織。29世紀に本庁が存在する模様。
所謂F-ZEROの世界のタイムパトロール組織で、29世紀よりも過去や更に未来の時代で歴史改変を防ぐべく活動している。
また、上記の4年前の大事故の後に起こったパイロットの行方不明事件の捜査も行っており、その結果、デスボーンが容疑者として当局の捜査線上に浮かび上がっている。
規則上、任務に関係ない未来の情報(例として、未来の流行やF-ZEROのルールの詳細など)を過去の時代の者に教えたり、F-ZEROグランプリの優勝賞金を受け取る事は禁止されている(ただし後者の規則はロボットであるQQQは該当しない模様)。
人材募集は様々な時代を超えて行われているらしい。
その他
開発秘話
『F-ZERO X』のBGMは実は本体の音源を使ったものではなく、実際に演奏したものを収録している。ただし、処理関係に影響する為ストリーミング方式かつモノラル音源(EXPANSION KITではステレオ音源になっている)。その為、ROMの大半のデータはこのBGMデータである。
他作品との関係
世界観の裏設定から、同社発売の他シリーズのゲームとのつながりや、その他パロディ的要素が多くみられる。以下その一例。
- 『マリオカート』シリーズ:『Wii』以降は特定の条件を満たすとブルーファルコンを模したカートが使用可能になる作品があったり、『8』ではコースの一部または全域を半重力で走ることが可能となった他、追加コンテンツとしてブルーファルコン(カート)とミュートシティとビッグブルー(コース)が登場した(『マリオカート8デラックス』では初めから収録済み)。
逆にF-ZEROシリーズには『F-ZERO X』のJOKER CUPで「レインボーロード(N64版)」がコースとして登場し、F-ZEROの登場人物であるEADはマリオがモデルとなっている。
- 『スターフォックス』シリーズ:F-ZEROマシンに使われている推進機「G-ディフューザーシステム」は、『スターフォックス』シリーズの科学者アンドルフによって開発されたもの。また、キーパーソンの1人であるジェームズ・マクラウドが設定を変更されてF-ZEROシリーズに登場した他、『コマンド』ではF-ZEROシリーズの登場人物の1人であるオクトマンが敵キャラクターとして登場しているなど、他シリーズの中でも特に関連が強調されている(ただし、原作では狐の姿のジェームズが本シリーズでは地球人に極めて近い姿であるなど、明確に両作品がパラレルとも取れる要素も存在する)。
※『メトロイド』シリーズに「銀河連邦」という組織が登場していることから同一の世界観と思われやすいが、F-ZEROに登場する連邦の正式名称は「銀河宇宙連邦」であり、現在明確に世界観を共有しているとの情報はファンの間による憶測の域を出ていない。仮に同一世界観ということが本当だとしたら胸踊るものがあるのは確かだが、少なくとも公式からの正式なアナウンスがあるまでは多方面に誤解を生じさせないよう断定は控えるようにした方が良い。