概要
攻撃力や輸送力、或いは低コストや操縦性などを追求しすぎた結果、防御力をどっかに落っことしてしまって「撃たれたら即アウト」の防御力になってしまった姿を形容する言葉。
「紙のような装甲」という意味である。
ただ、特に兵器の場合は決して思想や設計のミスばかりが紙装甲となる理由ではなく、「わけあって防御力を後回しにした」という場合もあるので一概に紙装甲=悪とはいえない。
兵器を含めた機械を開発する際それに割り振られるリソースは有限のものであるため、そのリソースを「どんな目的の製品を作るか」で割り振り、結果的に防御力に割り振るはずのリソースを他の面に回すことにより紙装甲となる場合もよくある。
「大戦略」や「ファイアーエムブレム」などの戦争を題材にしたSLGをプレイした経験のある方ならイメージが湧きやすいだろうが、ある箇所に問題があるならその問題点を補える者とチームを組めばいいだけであり、お互いの「長所」を活かすことにより結果的に効率のよい運用が可能になる(コンバインドアームズ)。
要するに、防御力が無いなら「防御力を犠牲にしてまで手にした高火力で火力支援に徹する」とか、「強力な輸送能力で後方支援に徹する」といった運用をすればいいだけの話ということである。
また、旅客機のように「民間向けのものとして当然のあり方を追求した結果、紙装甲となる」ような場合もある。そもそも民間用途では鉄砲玉やミサイルがこっちに飛んでくることなんて普通はないのである。だから防御力皆無なのが当然だし、機体強度は必要最小限で十分、ということだ。
紙装甲の例
三次元
- 旅客機
- 零式艦上戦闘機
- 攻撃力・運動性・航続力を重視しており、その代償に防御力は皆無であった。後期の型では運動性能を若干犠牲にして防弾・消火装備が追加され、重武装の連合国軍機にある程度対抗できるようになっている。
- 一式陸上攻撃機
- 豆戦車
- 戦車同士の戦闘ではなく、暴徒の鎮圧や植民地の警備を主任務とする。装甲や武装は威圧効果を狙ったハッタリに近いもので、暴徒の火炎瓶や投石に耐えられれば良いとされた。
- 特三号戦車
- 「戦車を飛行させる」というネジが数本フッ飛んだ発想を実現させるため、車体を軽量化。そのため防御力皆無という本末転倒の車両に仕上がった。
- 空挺戦車
- 「航空機による戦車の輸送」という目的のために車体を軽量化しており、防御力は低い。一応追加装甲による防御力向上が可能なものも。
二次元
- TIEファイター(STARWARS)
- 「戦闘機と言うよりは宇宙戦闘フレーム」と評されるように、防御力は皆無。
- バカガラス(風の谷のナウシカ)
- 「なんちゅー脆い船じゃ…」のセリフが表すように、ペジテのガンシップの機銃掃射で撃墜される程度の防御力。おまけに回避行動も絶望的な機動力。恐らく輸送力重視の設計と思われる。
- なお、原作コミックではペジテのガンシップだけでなく、ヘビケラ(の群れ)にも食い破られて落とされている。なんちゅう脆い船じゃ・・・。
- コルレル(機動新世紀ガンダムX)
- ストライクフリーダムガンダム(機動戦士ガンダムSEEDDESTINY)
- 本編では機動性重視のため装甲の細分化による副作用で装甲の防御力が低下していると説明がある(実際はフレーム全てがPS装甲になっているなど物理的な耐弾性はむしろ高いが)。そもそもパイロットの力量から初出撃でグフイグナイテッドのスレイヤーウィップで手脚を絡めとられた以外、劇中で目立った被弾や機体ダメージは皆無。まさしく「当たらなければどうということはない」という展開であった。
- 「EXVS」シリーズで総じて他の機体よりも耐久力が低い方が、むしろ紙装甲として目立っているのかもしれない。
- バイパーII サイファー マイザー(電脳戦機バーチャロンシリーズ)
- いずれも機動力(特に空中での)を重視して設計されているため。
- アーマードトルーパー(装甲騎兵ボトムズ)
- 生産性特化で人命を“換えの効くパーツ”程度にしか考えない、アストラギウス銀河の戦争の在り方を如実に体現した兵器。コックピットがそのまま胸部として設計された辺り、一発の被弾がどれだけ危ういか御理解いただけよう。
- 別名「動く棺桶」。
- 南方棲戦鬼(艦隊これくしょん)
- 耐久値は鬼・姫クラスだが装甲値たったの10。上位種の南方棲戦姫はちゃんとした装甲値に。
- ボスボロット(マジンガーZシリーズ)
- ガラクタを材料に作られたため。ただしコクピットのある頭部は意外と頑丈。
- ダイ・ガード(地球防衛企業ダイ・ガード)
- 民間企業が運用してるためか、初期は「トタンよりマシ」程度の装甲だった(経費節約のため)。物語が進むにつれちゃんとした装甲に強化された。
- ファミコンウォーズシリーズの偵察車・軽戦車
- STGの自機の大半
- イングラムを含む大半のパトレイバー(機動警察パトレイバー)
- 用途が警察用であり、重火器を有する勢力を相手にすることを考えていない為。装甲材はFRPやプラスチック等。
- ゴルタリオンXIII世(ラストオリジン)
- Sランクの保護機(いわば盾役)…なのだが素の回避力は0%、属性耐性も全て0%、防御力は回避盾よりはマシ…とも言えない程度、極めつけにHPはレベルアップすると最大HPが減少するという前代未聞の性能。
- さらには限界突破に相当するコアリンクではどのキャラでも上昇するはずの最大HPが一切上昇せず、専用装備は攻撃力を大きく上げる代わりに最大HPと防御力を下げるという徹底ぶり。
- こんなのが本当に保護機なのかと思ってしまうだろうが、彼は特定の編成時に限り「HP90%以上の状態から即死するとHP91%以上の状態で復活。回数は無制限」というこれまた前代未聞のパッシブスキルを有している。紙装甲なのは悩みの種ではなく、むしろ紙装甲でないと困るタイプ。カスダメを与えてくる敵が天敵。
番外
- 無敵星人(日常(あらゐけいいち))
- 見ればわかるが文字通りの紙装甲。
- チップ=ザナフ(ギルティギアシリーズ)
- 北上(艦隊これくしょん)
- カミツルギ
- 文字どおりの紙、どくタイプ以外の全ての特殊攻撃でHPが消し飛ぶ。
- かみ(魔界塔士サガ)
- 創造の神にしてラスボスなのだが、戦闘フラグミスが原因でよりによってチェーンソー一撃で紙のごとくばらばらになって死亡。かみはバラバラになったは名台詞。たびたびパロディにされる。
- Mettaton(Undertale)
- 基本形態はDEFが255もあり、こちらの攻撃は一切通用しない。これは全敵キャラ中ブッチギリの最高値なのだが、変身してEX形態になると大幅にDEFが減少しこちらの攻撃が通じるレベルに落ち着いてしまう。
- 某ルートで戦うNEO形態に至っては、全キャラ中第3位の攻撃力を得た代償なのかDEFが9まで減少してしまい、ここでついに紙装甲となる。装甲の薄さについては自覚があるようで、創造主のAlphysに対し「もっと装甲に気を遣うべきだよ…」と愚痴っている。
- 弐式炎雷(オーバーロード)
- 前述のチップよろしく紙装甲のニンジャで、紙装甲高速機体の火力特化に魅力を感じ、「防御力とかゴミだよ」と言い切る徹底ぶり。
- その一方「背後から忍び寄って首を掻っ切るのは余裕」と豪語するほどの隠密と攻撃に特化したステータスで、敵を発見するとすぐに仲間に鳴き声で敵襲を知らせるモンスターをどうやってやり過ごしたのか聞かれ、「静かににじり寄って、首を切り裂いて一撃死させれば、仲間に敵襲をしらせたりしないよ」と答え絶句させていた。ばれたら一瞬で死ぬだろうけど、そのギリギリ感がたまらないらしい。
- ちなみに別のロボットゲームでも同様に紙装甲火力特化仕様の高速機体を使っており、そちらもやっていた仲間に呆れられている。
現実のおける紙装甲
ちなみに古代中国はマジで紙を鎧に製造し・大規模応用した時期がある。しかも普通の鉄装甲にも負けない頑丈さで軽い、本スラングが表す意味と真逆の逸品である。
その強靭さの秘密は紙や綿布などの繊維を何十枚重なるもので、刃物どころか矢でも撃ち抜くことが困難、オーバーテクノロジーにも見えるものである。唯一の欠点は耐久性が低く、強靭であっても頑丈じゃないので壊れやすい。ゲームで防御力が高いが耐久値が低い装備がそういうことであろう。
関連タグ
ATフィールド:鉄壁防禦の代名詞