ジム(MS)
じむ
機体データ
概要
名称のGMは「Gundam type Mass-production model(ガンダムの量産型)」もしくは「Gundam Model」の頭文字が由来であると言われている。タグとしては単にジムが使われる事が多い。
V作戦で開発されたガンダムの簡易量産モデルであり、機動戦闘の制御プログラムには、マチルダ・アジャン中尉がホワイトベース隊から持ち帰った、ガンダムのデータが用いられている。
簡易量産型ではあるものの、ガンダムが使用した武装は基本的に全て使用可能であり、ベースとなった機体の優秀さもあって汎用性は高い。
「先行試作量産型」「前期生産型」「後期生産型」といったシリーズの分類についてはジムシリーズを参照。
機体解説
RGM-79の「前期生産型」に分類される機体。
一年戦争当時、ジオン公国軍の主力量産MSザクⅡに圧倒され、これに対抗しうるモビルスーツの大量配備を連邦軍が急いでいた事もあり、性能よりも生産性が重視されている。
コストパフォーマンス追求の為に、装甲材がルナ・チタニウム合金からチタン系合金に変更され、コア・ブロック・システムも簡略化され非変形のカセットタイプのコア・ブロックが採用された(ただし、小改造でコア・ファイターを搭載する事は可能。また、この時に並行して作られたコア・ファイターの生産ラインはそのままコア・ブースターへと転用されている)。
しかし、ジェネレーター出力自体はガンダムより10%程度しか減少しておらず、ビーム兵器を運用可能な時点で既にザクⅡを超える性能であった。
また、スラスター推力はガンダムと変わっていない上、量産に際して不要な機能を削ぎ落とした事で軽量化も果たされたた為、カタログスペック上の運動性(パワー・ウェイト・レシオ)はガンダムよりも上である。
簡略化されたコア・ブロック・システムも、ジェネレーターの換装や全天周囲モニター・リニアシートの導入といったアップグレードのしやすさに貢献している。
『MSV』では前期生産型もさらに「前期型と後期型」に分けられている。この内「とにかく数をそろえる為、パーツのクリアランスを極端に緩くした」のが前期型であり、基本設計を無視して性能の低下を招いた事から粗悪品、粗製乱造と貶められている。ただしこの前期型は生産数が極めて少なく、間もなく装甲板の変更や細部を見直した後期型が順次投入された。このため後期型は「実戦タイプ」と呼ばれる事もある。
『マスターアーカイブ』では前期型をA型、後期型をB型として扱っている。
前期生産型とアムロの戦闘データは別工廠で開発が進行した「ジム後期生産型」にも反映された。ジム・コマンドやジム改に代表される後期生産型はより性能が高められており、一年戦争におけるジム系のハイエンドモデルと呼べる機体となった。
諸説あるが一年戦争中に派生機も含めて3800機以上が生産され、ザクをはじめとして、ズゴックやドム、ゲルググと言った高性能な量産機を投入するジオン軍に対して、その圧倒的な物量差で一年戦争の勝敗を決定づけたと言われている。
乗り手を選ばない高い操縦性や、コストパフォーマンスの面から様々な派生機が製造され、名実共に連邦軍のワークホースとなった。一年戦争を生き延びた機体のほとんどはジムⅡやジムⅢと言った形で近代化改修され延命、運用され続けている。
一方で、一部のエースパイロットは性能に満足しなかったとされ、その結果エースパイロット用の派生機(ジム・スナイパーカスタム(SC型)やジム・ライトアーマー(L型)等)が開発された。特にSC型に関しては、この時点でガンダムに匹敵するスペックだと言われている。
一年戦争後に本機に搭乗したシャア・アズナブルもその機体性能に満足する事が無く、「乗っても面白くない機体」と酷評しており、これがリック・ディアスの開発に繋がる事になる。
劇場版ではリック・ドムを撃破する等の侮れないレスポンスを持つ。しかし、劇中や派生作品でも大半がやられ役である場合が多く、あまり活躍していないイメージが強い。敵MSを撃破したり、善戦しているシーンも少なからずある為、結局パイロットの腕次第であると言う事だろう。
雑誌企画『M-MSV』にはRX-78ガンダムの性能をフルスペックの状態で量産した派生機「RX-81」、通称「ジーライン」が登場しているが、このジーラインはジムの上位機とも言える機体である。
ゲーム作品『機動戦士ガンダム 戦場の絆』や『機動戦士ガンダム ギレンの野望』シリーズ等では、性能向上を図ったジム指揮官機(型式番号RGM-79またはRGM-79S)が登場する。
外見に大幅な差異は無いが、通信機能の向上の他、作品によっては多少の増加装甲も確認できる機体もある。
通常型と違い、ビームサーベルが2本装備になっており「2本差し」とも呼ばれたとされる。
武装
頭部60mmバルカン砲
RX-78に採用されたTOTOカニンガム社製のものと同形式とも。こめかみに2門装備する。センサーの能力が向上し内部スペースに余裕ができたこともあって、装弾数が若干増えている。
弾薬はテレスコープ弾式、もしくは推進式を採用。前者の採用は収納区画の制限を考慮したためと言われる。ただし通常のテレスコープ弾では通常の弾よりも砲身消耗が激しく、多砲身式になったと言う。
衝撃緩和には内部の緩衝機構が作動。発射ガスを不均等分散排出し、反作用を最小限に留める。
牽制射撃やミサイル迎撃などに使用された。
ビーム・スプレーガン
型式番号はBR-M79C-1
ボウワ社が開発した拳銃タイプの携行式メガ粒子砲。射程距離・貫通力よりも近接戦闘における面制圧能力と連射能力を重視した設計で、ビーム・ライフルに比べ大幅に小型化され装弾数が増え1発あたりのエネルギー消費も節約された。その結果熟練度の低い操縦士にも使い易くなった。
本兵装はシステム・ウェポンとも呼ばれ、複数の機能と役割を果たすビーム兵器を低コストで実現するために開発された。ジム・スナイパーカスタム系が装備する79C-3型(R4型ビームスナイパーライフル)とは共通のフレーム構造を持っている。
「スプレーガン」の呼称は、その形状が塗装やエアブロー等に用いられる工業用スプレーガンに似ている事に由来する(アメリカの短機関銃グリースガンの呼称の由来と似ている)。
離れた距離からMSのような、高速で移動する標的に射撃を当てるのは至難の業であり、対MS戦は射撃戦も可能な限り接近して行うのが基本であった。その事からもスプレーガンの採用は合理的であったと言える。
ただし大気圏内では充分な性能を発揮できなかったため後述するような実弾兵器を使う事も多く、陸戦用ジムなどでは収束率を向上させた改良型が使用されている(というか近年の映像作品では実弾兵器を持つ事の方が圧倒的に多くビームスプレーガン自体がほとんど登場しなくなった)。
後に本武装の生産ラインを転用した改良型のBR-S-85-C2ビームライフルが開発され、ジムⅡやネモの標準兵装として運用されることになる。
型式番号はBSjG01。あらゆる物体を溶断する荷電粒子のプラズマを封じ込めビーム刃を形成する、当時の連邦系MS最大のアドバンテージとも言える近接ビーム兵装。
ガンダムと同型のものをランドセル左側に1本装備しているが、一部指揮官機は2本装備することもあった。尚、装備本数が1本になった理由として「ガンダムが2本同時に使用して戦闘する機会が極少数であった為、2本も要らない」と判断されたと言う説もある。
何故か多くの人間が利き手としない左手で抜刀するように設計されており、劇中では左腕に構えたシールドを投げ捨ててから斬りかかる場面も見受けられた。(これはアニメ用決定稿を描いた時右側に差すと頭に隠れて見えにくくなるから左側にした、というのが理由と考えられる。近年発売されてるプラモデルやアクションフィギュアは可動範囲が広いため右手でも左側に差したビーム・サーベルに手が届くようである。)
ガンダムと同様、ブラッシュ社製のXBR-M79-07Gを使用可能。
ジャブロー地下でシャア専用ズゴックと対峙したジムが装備していた。ただし次の登場カットではビームスプレーガンに持ち替えられており、単なる作画ミスとして片付けられることもしばしば。
ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション Code Fairy』では、陸戦型ガンダムと同型のXBR-M-79Eを携行した機体が登場する。
大型弾頭を使用する380mmロケットランチャー。
こちらもガンダムと同型のブラッシュ社製XHB-L03/N-STDを使用し、主に対艦・対要塞武器として運用された。
機体によってはランドセル右側に専用のマウントラッチを設けて縦向きに懸架しているものも存在し、ゲームでは「バズーカラック仕様」と呼ばれる事も。
シールド
左腕部に装備される六角形の大型の盾。
こちらもガンダムと同型のM-Sh-008/S-01025を携行するが、十字マークが省略されたモデルも存在していた。
他のシールドと区別する為「ラージシールド」と呼称されることもある。
余談だが、このタイプのシールドは連邦軍の標準装備として長く使用され、耐ビームコーティング剤の改良や軽量化などのマイナーチェンジを加えながらジムⅢまで脈々と受け継がれた。
その他
一部の作品では陸戦型ガンダム、陸戦型ジムが使用するショート・シールドとヤシマ重工製の100mmマシンガン、ジム・コマンド系が使用するHFW社製の90mmブルパップ・マシンガン等を装備する機体も存在し、戦闘地域や部隊によって、適宜カスタマイズされることがわかる。
関連動画
『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』におけるジム
→ジム(THE・ORIGIN)を参照
『機動戦士ガンダム サンダーボルト』におけるジム
地球連邦軍の主力量産機という立ち位置としては特段変わった所は無いが、関節のシーリングや全身各所に増設された姿勢制御用スラスターといった同作に登場する宇宙用モビルスーツの記号が取り入れられている。また、ふくらはぎに丸みが無くなった。
頭部形状は原典とさほど変わりは無いが、こめかみはバルカン砲ではなく機外行動用のサポートメカ「ハロ」を格納したハッチとなっている。
バックパックは大きく形状が変更されておりスラスターが5基真後ろに向いている他サーベルラックが削除され、代わりに上部から2本伸びるサブアームにそれぞれシールドを装備している。
武装についてはビームスプレーガンは引き続き装備しているがバルカン砲やビームサーベルは先述の通りオミット、左腕にEパック式の2連装ビームライフルを装備している。
コア・ブロック・システムについてはフルアーマーガンダムと同規格のエマージェンシー・ポッドを採用しており、脱出時には機首からスラスターアームがX字状に展開される。
Gファイターとのドッキング機構もガンダムから引き継がれているようで、作中では大型ランドセルを取り外した機体がBパーツとドッキングしたモビルアーマーモードを披露していた。
また本機は星一号作戦の際にジオン軍への心理的影響を考慮した「ガンダムヘッド」と呼ばれるタイプが投入されている。
こちらは名前の通りガンダムタイプの頭部パーツを搭載している他、原典よりややコンパクトなランドセルの下部にビームサーベルを一振マウントしている。
また、ガンダムヘッドの陸戦用カスタムタイプに陸戦型ガンダムS型が存在する。
その他サブアームのスロットにキャノン砲を搭載したジム・キャノンも登場している。
余談
FDP
雑誌企画『ガンダム・センチネル0079』に登場。
連邦の量産型MSに採用された航宙データパック(Flight Data Pack)のことで、小さなカセットに集積された基本動作や個人の操縦データからコンピュータが最適な行動を選び取る、自動制御技術にとって重要なもの。
後に発展システムと言える「IMPC」(Integrated Maneuver Propultion Control=統合機動推進制御)が開発され、特に優秀なパイロット達を集め、データ取りや戦技研究を行う「地球連邦軍教導隊」も結成された。しかしこれが一部将校のエリート意識を増長させ、反乱の大きな原因となっている。
やられ役
※有名な上画像のシーンはジムの初戦闘シーンである。
「ガンダム」のやられメカは?と聞けば、大抵ジムかザク(もしくはボール等)が挙がるだろう。
ソロモンにおける対ビグ・ザム戦での溶かされっぷりや、ジャブローでシャア専用ズゴックに貫かれる姿等、撃破されるシーンが多いことから、とにかく弱いと言う印象が先に立つ。
公式でもネタにされており、『機動戦士SDガンダム』では、やられる直前のジムが「どうせ私はやられメカ」という立札を掲げる有名な自虐ネタがある。
このため、「ジムでどうしてジオンに勝てたのかわからない」と疑問を抱いた視聴者もいたとかいなかったとか。
実は強い
上記の低評価のためか、劇場用作品『機動戦士ガンダムⅢ~めぐりあい宇宙~』では、ビーム・サーベルでリック・ドムを両断しているシーンなどが追加され、後のシリーズでも少なくない活躍が描かれるようになった。
実際の所、性能面で言えばカタログスペックを見れば分かる通り、ガンダムと比較しても装甲の素材が1ランク下がった程度で、それ以外は言う程差は無く、単にスペックのみで言えばリックドム以上、ゲルググ未満であり、性能で上を行く筈のゲルググもパイロットの実力で十分カバー出来る範疇である。
(加えてゲルググ完成時のジオンは深刻な人材不足でパイロットが学徒兵ばかりだった事も大きい)。
おまけにビーム兵器が通常装備の為、火力ならゲルググと同等である(バルカン砲も加味するなら上)。
寧ろガンダムより遥かに低コストながらそれだけの才能を維持している辺りコストパフォーマンスで言えばガンダムを大きく上回っている。
ジオンのMSに劣らないどころかゲルググ以外は太刀打ち出来ない性能、それでいて数で勝っている上にボールのような支援機にも恵まれているともなれば、連邦がジオンに勝てたのは当然とも言える。
やられ役に見えるのはあくまで演出の都合でしかないのだ。
また一部のゲーム作品では主役機を務める事も。これはガンダムタイプのMSやガンダム並の超高性能MSを、そのまま外伝で登場させてしまうと、本編や公式設定との矛盾が生じてしまう懸念があると言うメタ的な要素もあり、大半の外伝作品では連邦軍の部隊機には、量産化が進んでいるジムタイプの機体がうってつけと言う背景が存在する。
しかし、中には改修や組織強化の名目で、性能の向上が図られた独自仕様のジムタイプも存在する。特に有名なのがゲーム『コロニーの落ちた地で』に登場する「ホワイトディンゴ隊」仕様の黒いジムが挙げられる。
余談だが、一年戦争を題材にしたゲームは基本的に連邦軍側が主役となることが圧倒的に多く、バンダイなどにはジオン軍が主役でザクやドムを操縦したいというファンからの要望があったが、それが長く実現しなかったのは、それだと画面上に出てくる敵MSが(初期はバリエーションがそれほど多くなかった)ジムだらけになってしまう弊害があった為とされる。
上記のようにカタログスペックはそれほど低くないのだが、ゲーム作品においてはバランス調整などの関係でザクとどっこいどっこいの性能のことが多いのもやられ役の印象がある理由だろう。
バリエーションが豊富なジムシリーズだけあり、機種によってはガンダム以上の性能を持つ機体も存在する(例:ジム・スナイパーⅡ等)。派生作品ではジムが主役を張ることも多く、相応に活躍するケースが増えた。それでもやられ役としての出番が多いのは「量産機の宿命」と受けいれるしかない。
ビーム・スプレーガンの描写
「スプレーガン」という名前から発想されたのか、一部のゲーム作品では、ビーム・スプレーガンから発射されたビーム弾が、散弾状に拡散するように描かれている。しかし、全映像作品を含む大半の媒体で、散弾として描写された事はなく、ガンダム等が持つビーム・ライフルのビーム弾とは、射撃音以外の描写上の差違はほとんどない。
資料によって、ビーム弾の収束率に言及したもの、散弾を含む3つのモードを撃ち分けられるとするものがある。
フロントスカートのデザイン
フロントスカート(腰前部装甲)のデザインが二種類あり、1枚あるいは左右2枚の板のみで構成された「ノーマルタイプ」(イラスト左)と、後のジムⅡでも採用される中央の股間ブロックで左右に隔てられた「セパレートタイプ」(イラスト右)がある。
当初から存在したデザインは前者なのだが、後者は元々MG化された際に先行して発売されたMG版ガンダムの(ジムへのリデコを想定した金型構造になっていなかった)関節構造を流用した結果生まれたもので、『GUNDAM_THE_RIDE』『機動戦士ガンダム_MS_IGLOO』にてプラモデルの設計に用いたCADデータを流用する形で映像作品に逆輸入された。
HGUCでは前者のデザインで造形されているが、MG Ver. 2.0では両方のパーツが付属しており、どちらのデザインにも組み立て可能になっている。
立体物
1/250、1/144、1/100、SDガンダムフルカラー、GUNDAM CONVERGEにてラインナップされている。
1/250はガンダム情景模型シリーズでシールドとビームスプレーガンを装備したポーズ固定のものがザクⅡ、シャア専用ズゴックとセットで「ジャブローに散る」を構成するキットとして発売されている。
1/144はベストメカコレクションとHGUC、HG THUNDERBOLTで発売されている。
時にHGUCはビームサーベルがクリアパーツではないなど初期のキット故の弱点こそあるものの700円台と同ブランドの中でも破格のコストパフォーマンスを誇っている。
1/100は旧キット、初代MG、MG Ver. 2.0で発売されている。
MGはそれぞれガンダムの一部金型流用で作られており、コア・ブロック・システムなど共通の規格になっている箇所も多い。
ランドセル右側、ガンダムのサーベルラックが存在した箇所の処理については初代MGでは蓋、サーベルラック、バズーカラックの選択式になっており、MG Ver. 2.0ではサーベルラックを引き出し式にすることで非装備時は押し込んで目立たないようにしている。
SDガンダムフルカラーでは、ビームスプレーガンとシールドを構えた固定モデルでラインナップ。※現在、入手困難
GUNDAM CONVERGEでは、ビームスプレーガンとシールドを装備した固定モデルでラインナップ。※現在、入手困難