カタログスペック
全高 | 11.2m |
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重量 | 21.6t |
型式 | 東方様式・ワンオフ機 |
分類 | 近接戦仕様 |
所属 | フレメヴィーラ王国・銀鳳騎士団(旗機) |
主搭乗者 | エルネスティ・エチェバルリア |
概要
・注意!
この内容には「ナイツ&マジック」本編のネタバレを盛大に含みます!
本編をまだ読んでない方はブラウザバックを推奨致します!
エルネスティ・エチェバルリアが自身の夢を形として作り上げた幻晶騎士(シルエットナイト)。
銀鳳騎士団の旗機であり、同時に彼らの最高傑作でもある。
まさに「エルネスティのエルネスティによるエルネスティの為の専用機」で、彼の日本人の前世の記憶から用いられた、従来の幻晶騎士とは異なる鎧武者を模したフォルムと歯を剥き出しにしており、怒り形相を浮かべた面構えになっている。
腹部に中型炉「女皇之冠(クイーンズコロネット)」・背部に大型炉「皇之心臓(ベヘモスハート)」という複数の自作型魔力転換炉(エーテルリアクタ)を搭載しているのが最大の特徴で、全身の蓄魔力式装甲(キャパシティブレーム)と合わせ、他の幻晶騎士とは桁違いの魔力量を誇る。
その膨大な魔力量と機体各部の全方位噴射可能な魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)搭載により、幻晶騎士単体での飛行が可能。空戦仕様機(ウィンジーネスタイル)が登場するまでは、世界で唯一の飛行可能な幻晶騎士だった。
この事からも、幻晶騎士史上あらゆる面で規格外な性能を誇る。
しかし、その操縦系統は(この世界の)機械的な制御が追いついておらず、エルという生きた制御部が乗り込み直接制御(フルコントロール)する以外その性能をフルに発揮出来る手段は無いと言っても過言ではないのが現状である。
結果「地上最強の戦闘能力を持つ、史上最高の欠陥機」とも呼ばれている。
また操縦席もエルが使いやすいよう、彼が前世で使い慣れた物を模して操鍵盤(キーボード)の採用、そして小柄なエルに合うように座席のサイズの調整もされている。
そのフォルムと形相、そして圧倒的性能と活躍から他国からは「鬼面の死神=鬼神」の異名で呼ばれるようになる。
機能
女皇之冠/皇之心臓
エルが森都(アルフヘイム)で得た魔力転換炉の製造法を元に、自らの手で製造した魔力転換炉。
女皇之冠は旅団級魔獣「女王殻獣(クィーンシェルケース)」、皇之心臓は師団級魔獣「陸皇亀(ベヘモス)」から採取された触媒結晶を核にしている(いずれもエルによって討伐されたもの)。
単純計算でも四百機相当の出力を誇り、戦争当時、これに匹敵するのは飛竜戦艦(ヴィーヴィル)搭載の竜血炉(ブラッドグレイル)の試作型のみである。
機密上の理由から、表向きには「様々な功労による褒賞でエルに与えられた」ことになっており、エル自身が作ったことは伏せられている。
(web版には女皇之冠は存在せず、片方は通常炉である)
- 魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)
本機のメイン動力。
上記の炉によって、初期回路でありながら自由な航空軌道が可能。
銃装剣(ソーデッドカノン)
エルの携行武装である銃杖(ガンライクロッド)をスケールアップしたかのような剣。
剣技使用のほか、持ち手の部分に備わったレバーによって、魔導兵装として遠距離戦にも対応可能。
肉厚な大剣の内部に紋章術式を刻んだ銀板を内蔵する事で二つの異なる武器の性質を両立させているが、構造的に脆い魔導兵装を近接戦用の武器と強力な強化魔法の併用で使用している為、並の幻晶騎士では振るっただけで多くの魔力を消費してしまう。
後に、銃装剣をモデルとし、通常機でも使えるように用途を限定した魔導剣(エンチャンテッドソード)が、グゥエラリンデ、アルディラッドカンバーの新装備として開発されている。
執月之手(ラーフフィスト)
四本あるイカルガの補助腕。
ワイヤーによって接続・射出する事が可能で、魔導噴流推進器によって自在に旋回して敵を貫く。
大型炉を搭載した恩恵で補助腕自体にも相応の出力(重量機であるティラントーの攻撃も押し返す程の膂力を発揮出来る)が回されており、銃装剣や斧槍などを装備するだけの余裕を持つ。
???
余談の項参照。
活躍
森都での一件の後、遂に夢に向かって動き出したエルと銀鳳騎士団の手によって誕生。
ジャロウデク王国の占領した砦において一個中隊のティラントーを撃破し、そのまま大西域戦争(ウエスタン・グランドストーム)に商人の名義を隠れ蓑に参戦。
数多くの飛空船(レビテートシップ)と幻晶騎士を蹂躙したことにより、上記の仇名で呼ばれるようになる。
飛竜戦艦(ヴィーヴィル)とは痛み分けに終わることもあったが、総じて危なげなく戦争から帰還する。
その後はボキューズ大森海探索の旗機としても参戦したが、遭遇した穢れの獣(クレトヴァスティア)の群れとの戦闘で大破。
皇之心臓や女皇之冠等の心臓部等の無事な部分は、下記のカササギの建造に使用される。
カササギ
ボキューズ大森海への遠征の際にイカルガが破損し、その後イカルガの残骸から新たにエルが組みなおした機体。
戦闘能力をはじめとする各種機能については、イカルガに大きく劣るものの、最大の特徴として、自身に触れている物も浮遊させることができるという特殊な機能が存在しており、後にこの機能を抽出した機体が幾つか作り出された。
またこの浮遊機能は、後のシルエットナイトをはじめとするナイツマ世界の技術に大きく影響を与えることが作中で示唆されている。
イカルガ(アデルトルート搭乗)
銀鳳騎士団がエル捜索の際に持ち込んだ予備パーツを使って組んだ機体。実質的には二代目となる。
当初は専用炉を移植して完全に再建するはずだったが、エルがカササギを失うのを嫌がったため、シルフィアーネの魔力転換炉で代用し、アデルトルート・オルター(アディ)が搭乗した。
通常炉を使用しているために魔力供給量が大幅に低下したことで、魔導噴流推進器単体での飛行ができなくなっており、背部に降下用追加装甲(ヘイローコート)を装備し、装甲内の源素浮揚器(エーテリックレビテータ)を補助器とすることでなんとか飛行を可能としている。
巨人戦争時において、(十分ではないにしても)ある程度は直接制御ができるアディによってそれなりに戦えていたが、穢れの獣に降下用の追加装甲を破壊される。
そのまま墜落しそうになったため、エルの機転により、その場凌ぎの対策でカササギとの合体(下記)が行われた。
戦争後、魔力炉は専用の物へと戻り、完全なイカルガへと復活を果たした。
マガツイカルガ
ボキューズ大森海での超巨大魔獣「魔王」との戦闘中、墜落寸前のイカルガにエルがカササギを接続し、強化魔法で互いの転換炉と魔導演算機(マギウスエンジン)を統合させた合体機体。
「禍+斑鳩」の名の通り、相手に禍(わざわ)いをもたらす者とエルは語っている。
専用炉を含む四基の炉の出力によって、開放型源素浮揚器による浮遊能力を維持したままイカルガの戦闘能力を発揮、かつカササギの問題点を全て解決している。
メイン操縦はエルが担当し、アディは術式制御などのサブパイロットに相当する役割を務める。
またエルとアディの持つ高い術式制御能力を用いての、即席での対抗術式の発動・維持なども可能。
カササギの可動式追加装甲に施された紋章術式によって全身に嵐を纏う「嵐の衣(ストームコート)」が最大の特徴で、穢れの獣が放つ「酸の雲」の脅威から機体を保護することができる。
また執月之手を展開する事で飛竜戦艦の「雷霆防幕(サンダリングカタラクト)」による高範囲攻撃の単機使用すら可能となった。
世界初の合体型幻晶騎士でありイカルガ以上の戦闘力を持つ、ディートリヒ曰く「化け物」。事実、(エルとアディの技量もあったとはいえ)「魔王」をほぼ単騎で倒している。
しかし、見方を変えれば戦闘中に即興で動力部を繋いだだけのエル曰く「急場しのぎの産物」でもある。
その不安定さと、一団長が持つ戦力としては過剰すぎることも相まって、巨人戦争後に元のイカルガに戻された。
だがここで得られた経験は、(特にアディが気に入ったようで)後に銀鳳騎士団の新たな課題となった。
漫画版ではそこまで話が行く前に完結したため直接登場はしていないが、コミカライズ担当の加藤拓弐氏がpixivに上記イラストを投稿しているのに加えて、最終17巻の巻末書き下ろしにてその姿を披露している。
カササギが分解されたため、現在はこの姿になることはできない。しかし……。
マガツイカルガニシキ
漢字表記は「禍斑鳩錦」(「二式」ではないので注意)。
カササギの後継機であるシルフィアーネ・カササギ三世(サード)・エンゲージとの合体形態。
急造品であったカササギとは異なり、イカルガとの連携や合体を想定して作られたシルフィアーネ三世と合体した、いわば「完全なマガツイカルガ」。
気まぐれに追加されてきた各種機能を整理し、正式な形で実装。
旧カササギの名を冠する有線式の機動法撃端末“カササギ”などの合体によって使用できる新装備も有しており、旧マガツイカルガ以上の性能を持つが、その分操縦の難易度も高まっており、エルだけではなくアディの搭乗も前提となっている(アーキッド・オルター(キッド)でもできなくはないだろうが、ブランクがあるので非推奨)。
つまり、フレメヴィーラ王国において最強の騎操士を二人乗せないと制御できないという幻晶騎士としてはまったくの欠陥品でもある(今に始まったことではないが)。
シルフィアーネ三世の開発と共に存在自体は示唆されていたが、浮遊大陸編の終盤で遂にその姿を現した。
地の文でも「本章のラスボスのうち一機」と称されている化け物幻晶騎士であるが、真のラスボスであるエーテル生命体“魔法生物(マギカクレアトゥラ)”相手にはさすがにニシキ単騎では対処しきれず、エルは浮遊大陸に集結していたオラシオや小王(オベロン)達かつての敵とも手を組むことになる。
なお、機体名に付けられた『錦』は、エルが妻であるアディに贈った号であり、彼女本人とシルフィアーネ三世を表している。
WEB版イカルガ
通称「なろうイカルガ」、「原作版イカルガ」とも。
当世具足風のボディ、頭形兜(ずなりかぶと)型の頭部、面頰風の鬼面、多腕の仏像を思わせる待機姿勢等と、まさに異世界に紛れ込んだ異物といった趣が強い、インパクト溢れる姿。
メディアミックス時に現在の姿に改められたが、この主役機ながらも禍々しい姿にはファンも多い。
余談
・劇中でのその余りに世代をぶっちぎった性能に、(特に当時のアニメ視聴者からは)「一年戦争時にF91が暴れてる様なものだろこれ」「いやいやクアンタだろ」「ゴッドガンダムじゃね?」等の様々な例えが飛び交うハメに。
…なんでガンダムで例えるんだい君達、歳g(ry
まぁ、未だに地上での戦闘が主な中一機だけ空を自在に飛んでればそんな意見も出るわけで。
実際、あれはユニc(ry
そんな話をしていたら、ついにスパロボへの参戦が確定。なので、そういったガンダムパイロット達とも共に戦える日が来るのかもしれない…(実際の所、上記の機体は今回のスパロボでは参戦されていないわけで…)
・魔力切れとは無縁に思える程に空を闊歩しているイカルガだが、web版ではエルが常に魔力量を気にかけている。
片方が通常の炉ではやはり自在な飛行は難しいようだ。
・特殊炉を二つ装備している書籍版以降のイカルガも実は意外と飛行時の魔力量がネックになっている。
アニメ版では明言こそされていないが、銃装剣をフルパワーで撃つときは地上に降りている、もしくは魔導噴流推進器の故障で飛べなくなった時に限られており、漫画版でも飛竜戦艦との決戦で銃装剣2挺を装備した際も、空中で一時的に推進器を切って慣性飛行中に魔力を充填して砲撃を行っている。
・グッドスマイルカンパニーより「MODEROID イカルガ」としてプラモ化した。2024年5月の静岡ホビーショーにおいてサイズアップ及びディテール追加を行ったDX版を予定していることも判明した。ディテールアップ版は「DX-SCALE イカルガ」としてリリースされるのだが、通称はデカルガである。
・実は自爆装置“びっくり箱”(コードジャックインザボックス)
が搭載されている(詳細はトイボックスMk2参照)。
外部出演
2021年発売のスーパーロボット大戦30にて、遂にスパロボに登場。
扱いはリアル系で、自軍への参加に当たって、宇宙戦にも対応できるよう、ツェンドルグ共々改造される(ただしイカルガ以外は「B」止まりである)。
そのずば抜けた強さはスパロボでも健在。
参戦初期から機体スペックが非常に高く、最強武器の追加時にも更に底上げされるため、リアル系ではトップクラス。
運動性の高さとエルの特殊能力により、とにかく避けて当て、さらに特殊回避能力(いわゆる分身)も備えているので、回避率が非常に高い。「集中」を使えば、ボスクラスの攻撃すら容易に避ける。元から移動力も高めな上に飛行も可能で、カスタムボーナスで更に伸びる。
またエルの能力もあって、切りこみ役としても縦横無尽に活躍でき、更にエルの特殊能力で与ダメージが大きく引き上げられるため、火力面でも自軍最高レベル。
おまけに、高火力でそこそこの攻撃範囲を持つ方向指定型MAP兵器まで完備。
残念ながら(スパロボでは)執月之手は使用できない。ただし、会話中に仄めかされているので機能としては存在する模様である。
そして、最大EN+100&ターン開始時に最大ENの20%を回復する「双皇機関」とターン開始時に最大ENの10%を回復(&ENが50%以上あれば射撃の被ダメージを70%にする)「幻晶騎士」と、二つのEN回復系の特殊能力持ち。
往年のスパロボ経験者には「ハイメガキャノンが使えるビルバイン」と例えられることも。
それヤバすぎない?と思ったそこの貴方、全くその通りです。
最大の強みは、これだけの性能を持ちながらも地上ルートなら最短5話目という加入の早さであり、しかも離脱することがないので長期間主力として運用できる。
これに並ぶスピードで強いのは、全ユニットでも最強クラスのアルティメットダンクーガぐらいである。
一方で、原作のピーキーさを再現するためか欠点もかなり多く、(当たらなければどうということはないとは言え)耐久力は流石に低い、移動後に使える武器に乏しい、サイズが小さいので大型の機体にはダメージがガタ落ちする、そしてエルの強さの源である特殊能力が技量依存であり、自分より技量の高い相手には発動しないため、その場合だと全体的な強さがガタ落ちしてしまう。
そして最大の欠点が燃費が非常に悪いこと。
最弱の武器でもENを30も使い(一般の機体なら多くても15程度)、条件を満たすか終盤に追加される最強武器はなんと120も消費する。
この燃費の悪さは本作でも一二を争うほどで、上述のようにEN回復能力はあるのだが、それでも追い付かないほどである。
幸いなことに、本作ではENの消費を軽減する手段が豊富で、スキル「EセーブEX」や強化パーツ「ハイエナジーレジスタ」、そしてフルカスタムボーナスの「武器の消費EN10%軽減」を駆使すれば、消費ENを3割程度まで軽減させることができる。
燃費に関しては(徹底的に補強をしても)ようやく人並みであるが、ここまで来れば、原作通りの無双プレイも狙える。
それ以外の欠点もスキルである程度は補えるため、資金もスキルもない序盤では使い辛さが先行し、思ったような強さが発揮できない場面が多い。それらの要因が解決できるようになってくる中盤あたりからが本機の本領発揮といえ、そこからは爆発的に強くなっていくため、本作における最強ユニットの1つに数えられるようになる。
なお、最強技では銃装剣を6挺も装備しているが、上記の余談の理由から本来はこの状態での飛行しながらの全力攻撃は不可能のはずである。それが可能になった理由は習得時のシナリオを参照してもらいたい。また、習得時のエルのセリフをよく見ると、後にカササギに装備されるはずの「開放型源素浮揚器(エーテルリングジェネレータ)」という単語が出てくる。
もしや、本作のイカルガは、アニメ版よりも改修されているという事なのだろうか……?
また、マジェプリのブルーワンとは、カラーリングや造形がよく似ているためか見間違えるプレイヤーが続出した。
関連タグ
ブレイズ・レイヴン 景清…同じく和装モチーフ+推進器装備の機体。
アーバレスト:同じくライトノベル原作出身の主役ロボット
エグゼクスバイン:第2次スパロボOGで登場したリアルロボット。「2種類の高出力エンジンを搭載し単独飛行が可能」「搭乗・制御できるのは銀髪の少年」という共通点がある。そして、ナイツ&マジックが初参戦するスパロボ30ではこの機体の改修前に酷似した主人公機が登場する。
フレメヴィーラの蒼き鬼神…イカルガのイラストに付けられるタグ。
以下、web版のネタバレ注意
浮遊大陸編終了後の「白銀の鬼神編」では病弱なフレメヴィーラ王国第一王子・ウーゼルが、エルの好意によりイカルガを目の当たりにする機会があるのだが、その時、誰も乗っていないはずのイカルガの首が一瞬ウーゼルの方を向いたように動いた。これに気付いたのはウーゼル本人のみであり、本人は幻覚か何かかと思ったのだが……。
それから少しして、今度はマガツイカルガニシキの操縦席に乗せてもらえたのだが、操縦桿に触れた途端、操縦席が発光し、そこかしこから虹色に光る紐のようなものが現れウーゼルに突き刺さり、彼の肉体を回復させると同時に、精神を侵食していった。
エルですら知らないイカルガに起こり出していた「何か」。原因は、浮遊大陸で戦い、封印したはずの“魔法生物(マギカクレアトゥラ)”だった。かつての戦いの最中、僅かな破片がイカルガに潜り込み、体内の高濃度の魔力で力を取り戻しつつあったそれは、器としてウーゼルと同化していたのだ。
(魔法生物の破片自体はエルも気付かない程に小さなもので、本来の搭乗者であるエルやアディでは力が強すぎて侵食出来ないのは勿論、周囲の鍛冶師にすら寄生出来ないほど微弱なものであったが、そんな時に操縦席に乗り込んだ病弱な体質の上に余命幾ばくもない状態のウーゼルは魔法生物にとって格好の器だった)
更には、魔法生物との同化によって精神を侵食された影響でウーゼルは長年溜め込んでいた鬱積が爆発。
狂気に蝕まれたウーゼルと共にマガツイカルガニシキは暴走を開始。
ウーゼルにとって自身の病弱さの象徴だった療養院を破壊するという暴挙に出る。それだけではウーゼルは収まらず、その矛先はフレメヴィーラ王都カンカネンに向けられようとしていた。
どんな強敵をも倒してきた「鬼神」は正真正銘の「破壊神」として主たちに牙をむいたのだった……。
もっとも、エル曰く奪われたのではなくイカルガが“自分で”動いたという事らしく、
「“魔法生物を利用して自らの意思に目覚める”! そんな手段があるなんて、僕の想像を超えています! あなたは……あなたはなんて製作者(おや)孝行な機体なのでしょう!!」
と、内心では喜んでいた……。
ともあれ、マガツイカルガニシキ相手に手を抜けるわけもなく、銀鳳騎士団の総力をもって機体の破壊を決意。
エドガー率いる白鷺騎士団とディートリヒ率いる紅隼騎士団がこれを迎え討つ事となる。
加えて実兄の暴走に困惑していたエムリスも豹変したウーゼルの言動を目の当たりにした事で、
「ようく……わかった。兄は死んだ。魔法生物と遭遇したあの時!人としての死を迎えた!ここに在るのは抜け殻に過ぎん!!」
と断じ、エドガー達と共に迎撃に向かう。
しかし、最強の幻晶騎士の名はやはり伊達ではなく、フレメヴィーラ内でもトップクラスの二騎士団の総がかり、更には王族専用機の切り札さえも寄せ付けず、これを圧倒する。
だが、そこにトイボックスマーク2カスタム(書籍化されたら「マーク3カスタム」になる予定)に搭乗したエルが到着。
多数の新武装(試作品)を引っ提げてマガツイカルガニシキと対峙したエルは、圧倒的なスペック差を操縦技量で覆し、一方的にやられたマガツイカルガニシキは頭部や炉を片方失い大破。大勢は決したかに見えた。
しかし、負けを認めないウーゼルの感情の爆発に合わせて魔法生物がイカルガを完全に取り込み、体そのものを変化。
全身の装甲は装甲材質を白銀色の精霊銀(ミスリル)へと置換され、銀鳳騎士団の攻撃すら受け付けなくなる。さらには尾や翼などが生え、失った頭部の代わりに龍のような首が生え、その首からは自ら言葉を発するようにまでなった。
「ならば新たな名が必要でしょう。“イカルガ・シロガネ”! かつての生みの親として、僕からあなたへの最後の贈り物です」
それは幻晶騎士と騎操士と魔法生物が一体となり、新種の魔獣「イカルガ・シロガネ」が誕生した瞬間だった。
何処かへと飛び去ったイカルガ・シロガネと、やっぱりどこか楽しそうなエル。
一方で、魔法生物を知らずの内に持ち込み、ウーゼルの暴走を招いた事には流石に責任を感じており、エドガーとディー共々何らかの処罰を覚悟していたが、ウーゼルの父である国王リオタムスはエルを責めることはせず(むしろ、父親として息子の心の闇に気付けなかった自身を責めていた)、「息子だったもの」とイカルガ・シロガネの討伐をエルに命じる。
また、処罰が無かったのは単なる感情論にとどまらず、「人を乗っ取る魔法生物」は魔獣の脅威が身近なフレメヴィーラでは劇毒に等しい衝撃的な存在であり、銀鷹騎士団団長のエルを処罰をしてその存在が明るみに出れば、国内に悪影響が出る恐れが高いという事情もあった。
この、後に“銀旗の乱”と呼ばれるようになる戦いの後、西方諸国の各地においてイカルガらしき姿が目撃され始める。
白銀の鬼神、否、「龍」との戦いはまだ始まったばかりであった。
そして、物語は「西方龍追祭編」に続くことになる……。
関連タグ(ネタバレ含む)
闇落ち……ただし、厳密言えば闇落ちしたのは搭乗したウーゼルの方である。
ラスボス……以前から何度も(公式から)ラスボス扱いされていたが、遂に本当のラスボスとなってしまった。
以下、さらなるネタバレ注意
イカルガ・カギリ(斑鳩限)
正式名称は「玩具箱之汎式(ヴァーサタイルトイボックス)試作一号機イカルガ・カギリ」
トイボックスシリーズとイカルガの技術を合わせた新型機。
最高の特別を倒すべく作られた完成された普通。
文字通り、マガツイカルガニシキ以上の化け物となったイカルガ・シロガネに対抗するためには、最低でもイカルガクラスの機体が必要ではあるが、まず一品物である専用炉の再生産が不可能であり、イカルガをそのまま作り直すことは不可能だったために断念せざるを得ず、その代替として開発された。
外見はイカルガとトイボックスの中間的なものとなっている。
開発からそれなりに年数が経っているイカルガの特性を最新の技術で再構成した機体。
素体のヴァーサタイルトイボックスは普及型の炉を二基積んだ大出力機であり、それでいてカルディトーレ由来の汎用性に富んだ性能を持つ。
かなりの高性能機でありながら、イカルガとは違い特殊な部品を用いておらず量産が可能。いわば量産型イカルガ。
また選択装備(オプション・ワークス)の機能をさらに拡張し、きわめて柔軟な装備構成が可能となっており、戦場での換装すら可能である。
一方で、選択装備に比重を置いている分なのか、素体には補助腕を装備していない。
イカルガの難点でもあった複雑すぎる操縦系も改められているが、エルの駆る試作一号機はイカルガと(敢えて)同じ操縦席に改装されている。
それに加えて、一号機にはイカルガの補助腕を再現した専用選択装備「鬼神之粧(アスラズガーメン)」、通常炉でも使用できるように改良された「銃装剣型之弐(ソーデッドカノンモデル2)」、トイボックスマーク2カスタムが使用していた飛行ユニット「エスクワイア“ロビン”」などを装備し、可能な限りイカルガの戦闘能力を再現している。
エルにしては珍しく普通な機体。まあ、あくまでエル基準の普通だが。
とはいえ炉を二基必要とする以上、性能こそカルディトーレを全面的に上回るものの、製造コストが高く、数を揃える大量生産には向かない。
それでも、性能はカルディトーレの二機分に匹敵するため、リオタムスはカギリを少数生産し、白鷺騎士団及び紅隼騎士団に配備することを検討している。
なお、リオタムスから相談を受けた国立機操開発研究工房(シルエットナイトラボラトリ)の職員曰く、「これまでの炉を二基必要とする機体は何かしらの理由から魔力消費が莫大であるものがほとんど。この機体は設計上は一基の炉でもおかしくはない(※)」「構造も無駄を省かれ、魔力の一滴も余さず使うという、強い意思に満ちている。例えるならば、あまりにも鋭利に研がれた剣」とのことであり、対イカルガ・シロガネ戦に特化した存在であることがここでも窺える。
※逆を言えば、炉を一基にするよう再設計するなら、十分に大量生産が可能と推測され、カルディトーレに継ぐ次期主力機とすることも夢ではなくなる。もちろん、イカルガ・カギリのように「対イカルガ・シロガネ」仕様にするのはまず不可能と思われる。
そして案の定、読者達は他作品のロボットに例えた談義で盛り上がった。