エレボス(ダンまち)
えれぼす
「我が名はエレボス。原初の幽冥にして、地下世界の神なり!」
「貴様等が『巨正』をもって混沌を退けようというのなら!我等もまた『巨悪』をもって秩序を壊す!」
「告げてやろう。今の貴様等に相応しき言葉を」
脆き者よ、汝の名は『正義』なり。
CV:松岡禎丞
『ダンまち』のアプリ『メモリア・フレーゼ』の「アストレア・レコード」に登場。
原初の幽冥を司る地下世界の邪神にして、『絶対悪』。
オラリオの【暗黒期】に『闇派閥(イヴィルス)』の首魁として暗躍し、オラリオの滅亡を目論む。
天界にいた時は某ロリ神と同じく自身の神殿に引きこもっており悪と呼ばれる程ではなかったが、邪神の中でも無類の邪悪さとカリスマ性で凶暴な闇派閥を統率していた。悪に対しては独自の価値観を持っており、曰く悪の本質は恨まれること、そして彼にとっての『絶対悪』とは生命も社会も文明も全て無に還す=あらゆる存在を終わらせる物、断絶と根絶あるいは存亡の天秤を嗤いながら傾ける邪悪という物である。また神としての格も相当高いらしく大神に勝らずとも劣らないという。
「憎まれることこそ悪の本質。俺は最後まで嗤い、邪悪を貫き続ける」
また神の例に漏れず非常に面の皮が厚い。決戦に敗北しガレスに「言い残す事はあるか?」と問われると天界に送還するのは正義の女神であるアストレア、場所は高いところ、澄んだ空に囲まれ不躾な観衆がいない静かで孤独で美しい景色の真ん中、挙句眷族のヴィトーは見逃せと言う要望を出し、その場にいた者達を大いに苛立たせた。
【アストレア・ファミリア】が最後まで自分達の正義を信じ貫き通したのに対し、エレボスは間違いなく絶対悪を貫いたと言えるだろう。
本編より7年前の【暗黒期】に隻眼の黒竜に敗れた【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の最後の生き残りであるLv.7のザルドとアルフィアを見つけ出し、ある条件で仲間に迎え入れる。
『大抗争』が勃発する以前から『エレン』と偽名を使って潜入、暴漢に財布(中身は444ヴァリス、ちなみに全財産)をすられたりすぐに泣いたりする情けない醜態を晒しつつ、どこか得体の知れなさを感じる神を演じていた。その時に【アストレア・ファミリア】と出会い、特に潔癖で確固たる正義がまだ定まっていないリュー・リオンに目を付ける。
『大抗争』が勃発すると、ザルドとアルフィアにオッタルら第一級冒険者を戦闘不能にさせ、さらに事前に探って居場所を把握していた神達を殺して強制送還し、主神を失い『神の恩恵(ファルナ)』を封印された眷族の冒険者達を狙い一方的に蹂躙してオラリオ及び冒険者達に甚大な被害をもたらした。その後もオラリオを包囲し、断続的に冒険者や市民達を無差別に襲撃し続けることで、冒険者達を疲弊させ市民達を恐慌状態にしオラリオを絶望のどん底に陥れた。
その間、エレボスはヴィトーを連れてリューを探していたが、ゴジョウノ・輝夜とライラと遭遇し、リューを探さない代わりに彼女達に「『正義』とは?」と問い、満足のいく答えが返ってこなかったため再びリューを探そうとしたことで二人とヴィトーが交戦、そこにアルフィアが駆けつけて優勢になるが、魔道具の『炸裂弾』で逃げられる。だが、爆音を聞いてリューが駆けつけ、廃墟の教会で再会する。リューと正悪の問答を繰り広げた後に「『正義』とは?」と問い、巨悪が猛威を振るって止められず、守ってきた市民達からの心無い仕打ちを受けて正義を信じられなくなっているリューが答えられないのを見て、「脆き者よ、汝の名は『正義』なり」、「愚かなる者の名もまた、『正義』」と告げた。
オリヴァスが勝手に暴れ始めたことでアルフィアが離れた後、リューに『貨車(トロッコ)の問題』を挙げ、オリヴァスに殺されそうになっているアスフィを助ければ他の民衆を殺し、アスフィを見捨てれば民衆を助けると告げ、アスフィと民衆の命を天秤に掛けてどちらを救うかの選択を突き付けた。選べないと答えるリューに、「救える手段がありながら、誰をも見捨てるという選択肢は紛れもない『悪』」と告げ、彼女を絶望に追い詰める。しかし、アスフィがリューを信じていることを知ると、リューが飛び出していき、そこで自身の答えを見つけたリューを見届けると、自分の前にアストレアが現れる。
アストレアにも「『正義』とは?」と問い、さらに「『絶対の正義』とは何だ?」と彼女の『正義』を問い質して彼女から「『絶対の正義』は無い」と聞き、自身が望む物ではなかったが満足し、暴れていたオリヴァス達が劣勢になったことでヴィトーを連れてその場を後にする。
決戦では、迷宮(ダンジョン)のいる切り札『大最悪(モンスター)』を討伐しようとする【アストレア・ファミリア】、リヴェリア、ガレス、アイズを阻止すべくアルフィア、ヴィトーらとともに『人造迷宮クノッソス』を通って先回りし、決戦の地である18階層で対峙。さらに『神の力(アルカナム)』によって37階層から生まれた『大最悪』である『神獣の触手(デルピュネ)』を繰り出して最後の戦いに挑むが、最終的にヴィトーがやられアルフィアも限界を迎えて自死し、『神獣の触手』も倒されてしまう。地上でもザルドがオッタルに敗れ死亡し、闇派閥が壊滅状態となったことで敗北を悟り、最後に眷族であるヴィトーを見逃すことを要望(厳密に言うと、負傷している彼に一切の手助けもせず、そのまま放置しろという意味)してアストレア達に投降した。
以下、『アストレア・レコード』に関する重要なネタバレ
死闘を経て地上に帰還し、『バベル』の頂上にてエレボスの天界への強制送還が執り行われた。
エレボスの要望で頂上にはエレボスの他に執行人のアストレア、その立会人である神友・ヘルメスの三人だけがそこにおり、他の者達は地上で見守っていた。
潔く執行されようとするが、アストレアがエレボスに一つ確認したいことがあると告げる。
「『正義』とは?」
それは、エレボスがリュー達に問いかけていた言葉で、エレボスははぐらかそうとしていたが、あれほど『正義』について訴え続けていたのも関わらず、今は満足していることを指摘されたことで観念して答えた。
「『正義』とは――――『理想』だ」
エレボスは、アストレアが言った「『絶対の正義』はない」を否定し、リューに尋ねた『貨車の問題』でそこに示された選択肢には真の正義は無いと断言しつつ、さらに答えた。
「『正義』とは、選ぶことではなく、掴み取ることだ」
どちらかしか救えない選択肢を選ぶのではなく、どちらも救うことが出来るかもしれない第三の選択肢を自ら生み出し、定められたルールや課せられた前提という天秤をぶち壊して『理想』を掴み取ろうする行為こそが、人々はそれを『正義』と信じ、神々は『英雄』と讃えると口にした。
アストレアはエレボスの神意に気付いていた(ヘルメスも「交流こそ少なかったが、『地下世界』を司っているものの、決して死を歓迎していたわけではない」とエレボスの本質を見抜いていた)ようで、あくまでも『悪』と主張するエレボスに対し、アストレアが正義の女神として断じる。
「貴方の悪とは、『絶対悪』ではなく――『必要悪』。
理想に至れない下界を、理想に至らせるための『踏み台』。
とても独り善がりで醜い、高潔な悪」
エレボスは『理想』を追い求め続ける眷族達をいかなる苦難を乗り越えて世界が欲する『次代の英雄』へと成長させるべく、あえて邪神を名乗って『非道』を選び、今回の『大抗争』を引き起こしたのである。
ザルドもアルフィアもすでに長く生きられない身体となっており、残り少ない命を隠居して尽きることよりも、オラリオ延いては世界の『未来』のために悪として立ちはだかり『踏み台』になることを了承したのである。
また、ヘルメスの独自の調査で実は強制送還された神々の中には闇派閥の邪神も含まれていたことが判明し、オラリオを滅ぼそうとしつつ、闇派閥の弱体化も図っていた。
結果、多くの眷族達が天へ還ることとなったが、オッタルなど新たな英雄が誕生し間違いなくオラリオを次の段階に引き上げることとなった。
下界の子供達から恨まれ他の神々達から嗤われることとなるエレボスの神意をアストレアとヘルメス(と途中から追いついてきた眷族のヴィトー)だけが知ることとなる。
そして、アストレアは最後にエレボスに尋ねる。
「貴方は下界を愛していた?」
「――当り前じゃないか、アストレア
俺は子供達が、大好きさ」
エレボスからの最後の返答を聞いたアストレアはついに裁きを執行し、エレボスは天界へと強制送還され、別名『死の七日間』と呼ばれる『大抗争』の終焉を迎えたのであった。
――そして、7年後。
『大抗争』が起きた日は哀悼の意でオラリオ中がしめやかとなり、普段とは違う雰囲気になっていた。
ベル・クラネルは花束を抱えるヘルメスと遭遇し、ヘルメスはベルに一緒に墓参りをお願いし、かつての『大抗争』について語りながら向かっていった。
ヘルメスとベルは『大抗争』の戦死者達が眠る墓地での墓参りを終えると、ヘルメスはベルを墓地から少し離れたところにあるみすぼらしい三つの墓(明言されていないが、おそらく『必要悪』として立ちふさがり、悪名と共に散って逝ったエレボス、ザルド、アルフィアの物)の元へ連れて行く。
ヘルメスはベルに誰の墓かは明かさずに二つの墓に花を手向けてほしいとお願いし、もう一つの墓は自分の神友の墓だと明かして自ら花を手向ける。
そして、ヘルメスはある女神に手紙を届けるために向かうのであった。
中の人あれこれ
中の人が本編の主人公であるベル・クラネルと同じである。作中でヘルメスも「ベルと声が似ていた」と明かしている。しかし劇中では松岡の見事な演じ分けにより、ベルの面影を微塵も感じさせない声色を貫き通している。一歩間違えばリューはベルの声でエレボスのトラウマを思い出す危険さえあったわけで、収録の際に相当な無茶振りをされたであろうことは想像に難くない。
松岡はダンメモ2周年記念でもアルゴノゥトを演じていた。こちらは道化を演じて踏み台となることで英雄時代の幕開けのきっかけを作っており、エレボスたち同様ダンまちの歴史を大きく動かしている。もはやダンまちシリーズは松岡禎丞の存在なしに語ることはできないと言っても過言ではない。
次代の英雄
奇しくもベル・クラネルは、異端児(ゼノス)騒動で神の神意という『天秤』を打ち壊し、第三の選択肢を掴み取り『愚者』を貫いて『英雄』へと返り咲くという、エレボスが抱いた『理想』の通りに『次代の英雄』へと成長している(それも神の神意の元に作られる『神工の英雄』ではなく、神の神意さえも打ち破る『異端の英雄』として)。
そしてエレボスと運命を共にしたザルド、アルフィアの両名は、【暗黒期】の果てに生まれた英雄たちがベルの壁となり、その壁をベルが乗り越えてくれることを願っていた。
道化として英雄たちの踏み台となったアルゴノゥト、絶対悪として新たなる英雄たちの踏み台となったエレボスたち、彼らが願った末に生み出されたのがベルという存在なのだ。
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