カタログスペック
全高 | 31.8m(陸上戦闘形態) |
---|---|
全長 | 77.8m(水中巡航形態) |
本体重量 | 196.8t |
全備重量 | 283.9t |
ジェネレーター出力 | 21,460kW |
装甲材質 | ガンダリウム合金 |
スラスター総推力 | 226,480kg(ホバー) |
概要
型式番号AMA-X7。
ジオン残党軍に所属している水陸両用の大型試作モビルアーマー。第一次ネオ・ジオン抗争のネオ・ジオンの設計案を元にジオン残党軍が6年をかけて建造し、最終的に「袖付き」の技術提供他を受けて完成させた。
この経緯の通り、あくまで「袖付き」とは協力関係にあるだけで、建造を指揮したマハディ・ガーベイ一味の保有機体である。
フル・フロンタルは本機を「ハマーンの遺産」と言及している。また、連邦海軍内では「海の亡霊(シーゴースト)」と呼ばれていた。
地上形態は長大なクローアームとホバーユニットを備えた独特のシルエットだが、水中形態は同じ水中MAであるグラブロ、クローやメガ粒子砲の配置はビグロやヴァル・ヴァロと、様々なジオン系の怪物的MAを連想させるデザインとなっている。
肩の装甲内には電磁流体誘導推進ユニット(MHD)を内蔵しており、スリットから海水を吸い込み超伝導コイルで推進機関に誘導した後、引き入れた海水を加速して後方へ噴射することによって推進する。この無音推進システムは一年戦争時から採用されているもので、静音性は高いがパワー不足による水中潜航速度の遅さを理由に使われなくなって久しかった。しかし本機は更にミノフスキー・クラフト・エンジンを併用することにより、粒子を常時散布してIフィールドのT・フォース(ここで言うIフィールドは、対ビームバリアではなく、立方格子状の力場を指す)を形成、イオン化した海水を機体の保護膜とすることで潜航時の抵抗を大幅に低減することで、超静粛にして驚異的な機動力を獲得した。このミノフスキー・エフェクトによる流体抵抗軽減システムは、後年のΞガンダムに通ずるものがある。
カタログスペックの通り推力が自重を下回っているため飛行やジャンプはできないが、極端な起伏の不整地でもなければホバー機構で並みのMSを上回る機動力を発揮する。
稼働に対する情報処理が過大なため、建造当初は4人以上が搭乗し、砲手や索敵を分担して制御する仕様であったが、「袖付き」からサイコフレームが提供されたことにより、ニュータイプ・強化人間であれば一名で全てを賄う事が可能になったため、ロニ・ガーベイ専用機として完成した。
頭部(口腔部)には大型メガ粒子砲、機体肩部には複数の拡散ビーム砲を装備。拡散ビーム砲は装備位置的に機体上面にしか照射できないが、リフレクタービットで偏向することにより、地表面への広範囲攻撃兵器として機能させる。
本機の攻撃能力は絶大であり、宇宙世紀0096年において、強襲テロ行為により地球連邦軍のダカール連邦中央議事堂を壊滅に追いやるという多大な戦果を挙げた。
しかし、サイコフレームなどの最新技術の導入による生産コストの高騰は著しく、一説ではシャンブロ1機の製造コストは当時の太陽光発電所3基分の建設費に匹敵するとも言われている。
武装
大口径メガ粒子砲
頭部口腔内に内蔵された大型のメガ粒子砲。ダカール議事堂前に設置されていた防護壁を貫通して、なお余りある威力を有している。
肩部拡散メガ粒子砲
両肩に1基ずつ、計2基を搭載。リフレクタービットで射角を任意に変更できる。
大型アイアン・ネイル
両腕のフレキシブル・アーム先端に装備された、超硬度合金の大型爪。 水中戦闘ではビームサーベルが様々な弊害をもたらすことから、多くの水中用・水陸両用機の接近戦用武装として採用されている。
アクア・ジムに対しては、そのトルクをもってして握り潰す威力を見せたが、対ユニコーンガンダム戦では、作戦上手加減が不可欠であったとは言え、サイコフレーム未活性状態であるユニコーンモード、しかもバナージが全力で抵抗しても、装甲を傷つけるどころか、シールドマウントを歪ませる事すら出来なかったため、最新の装甲材を相手取るには既に型落ち武装であると解る。
リフレクタービット
背部VLSに10機収納されている無線式のオールレンジ攻撃端末。
ビーム砲ではなく小型のIフィールド発生器による反射デバイスを搭載しており、拡散メガ粒子砲と組み合わせることで広範囲の攻撃が可能になる。
ファンネル系オールレンジ兵器では珍しく、大気圏内用になっており、ローター駆動とバルーンの浮力を組み合わせて重力下での安定した滞空が可能になっている。
サイコフレームを介した完全なサイコミュ制御兵装だが、ユニコーンガンダムは何らかの理由によりサイコミュ・ジャックできなかったため、本機を素早く無力化することができず、都市の被害と悲劇が拡大することになった。
サイコ・フィールド
武装ではないが、本項に記載する。サイコフレーム採用機が展開する可能性を有する、特殊な干渉力場。詳細はリンク先を参照。パイロットが高いニュータイプ能力を有する場合は言うまでもなく、アナハイム・エレクトロニクスの研究によりサイコフレームが外界に接触している面積が広いほど、励起させ易いと判明している。
ユニコーンガンダムはこの力場の励起準位を下げるため(任意展開のため)、フル・サイコフレーム構造、及びサイコフレームを外界に積極的に開放する特殊機構『デストロイモード』を搭載しているが、シャンブロはこれらの専用機構を持たないにもかかわらず、ユニコーンガンダム(デストロイモード)と互角のサイコ・フィールドを展開して見せた。
専属パイロットであるロニ・ガーベイのニュータイプ能力がもともと高いのに加えて、サイコフレームが彼女の負の感情を増幅し、さらにニュータイプ能力を発揮させる悪循環とも言える相乗効果を生み出していた。
劇中での活躍
地球ジオン残党の戦力として連邦海軍に対するテロ攻撃に使用され、潜水艦や母艦、アクアジムなどに一方的な損害を与えていた。
ユニコーンガンダムを伴ったガランシェール隊が地球へ降下する際には陽動役としてダカールを襲撃。
続くトリントン基地と周辺都市部へのテロ攻撃にも参加したが、サイコミュの影響を受けたパイロットのロニが暴走。民間人避難施設への攻撃を含む大量虐殺を始めてしまう。
その状況を看過できず、事前の作戦を無視してユニコーンガンダムで降下したバナージの説得により一度は無差別攻撃を停止したものの、ヨンム・カークスの死を感知したロニの絶望と怒りに反応して再び暴走を開始する。
サイコミュに呑まれるロニの激情を前になす術無く立ちすくむバナージを圧倒し、更なる虐殺へと動き出そうとするシャンブロだったが、最後は戦闘に介入したリディのデルタプラスがユニコーンから奪い取ったビームマグナムによってコクピットを撃ち抜かれ、行き場のないロニの哀しみを抱えたまま沈黙した。
バナージとの最後の交錯の直前、ロニはカークスの亡霊の声を聴いて戦意を喪失していたが、シャンブロ本体は迫るユニコーンとデルタに向けて頭部大型メガ粒子砲を発射している。
その一方で、数機のリフレクタービットがサイコミュ・ジャックの兆候もなく防壁を作り出すように動いて二機を守るという矛盾した行動を取った。全面サイコミュ制御機体らしい、激情と哀しみの渦に呑まれたロニの思考を表すような動きを見せていたのかもしれない。
このお陰で直撃コースのビームから辛くも逃れたユニコーンとデルタだったが、静かに嘆くロニの声が聴こえたバナージは攻撃を拒否し、上述の通り、ロニの声が聴こえていないリディが武器を奪いとどめを刺す形となった。この一件は二人の溝を深める大きな転機となってしまう。
巨体の残骸はそのまま擱座していたが、戦闘の直後に強襲してきたバンシィのアームドアーマーBSに両断され崩れ落ちている。
原作小説版
小説版ではガーベイ・エンタープライズ社が開発し、コクピットも複座式で、マハディ・ガーベイやロニ・ガーベイ、彼女の兄達ら4人での運用がなされた。
ユニコーンのラプラス・プログラムの封印を解くためにダカールを攻撃するが、私怨に取り憑かれているマハディは地球連邦政府を壊滅させようと無関係な民間人まで巻き込んだ殺戮を始め、止めに入ったバナージやリディの駆るデルタプラスと交戦状態になる。
この戦闘の中、ロニは無差別殺戮の虚しさから投降を訴えるが、自身への反発を許さないマハディは逆上し射殺してしまう。しかし、サイコミュ兵器の運用を担うロニを死なせてしまったこと等で、リフレクタービットに対するサイコミュ・ジャックが通じるようになったため、対ビーム防御能力を失い、バナージとリディの連携による一点突破でユニコーンに撃破されて沈黙した。
なお、この小説版では、バナージはシャンブロにロニが搭乗している事を知らなかった。
また、漫画版ではおおむね小説版の展開となっているが、最期はバナージはコクピットを避け機関部を狙い機能停止させ、念押しとしてリディがビームマグナムを奪いコクピットに追撃をする展開となっている。バナージはアニメ同様にロニが乗っていることに気付くが、結果的に、彼女が実の父親に殺されたことまでも察知しマハディへ激昂する等、アニメの逆輸入の独自脚色も多く、バナージとリディの心情に与えた影響がより強調されている。
外部出演
宇宙世紀シリーズは映像作品がオフィシャルとなるという原則に従い、ゲーム作品に登場するのはアニメーション版(OVAおよびRe:0096)のみである(詳細は、バンシィの最上項を参照)。
Gジェネレーションシリーズ
『オーバーワールド』から参戦。変形機構は再現されず、陸上戦闘形態のみ登場する。
VS.シリーズ
『EXVSFB』から参戦。出現ステージはD-7。
機体の特性上動きが鈍く、ブーストダッシュ、ステップ、ジャンプは出来ない。劇中同様リフレクタービットによるオールレンジ攻撃や、頭部からの大型メガ粒子砲、クローによる格闘攻撃を仕掛けてくる。
一見、ここまで聞けば倒しやすい敵と思えるが、実は機体の前面にリフレクタービットでシールドを展開しており、シャンブロの前面に対する全ての射撃武器を無効にする。シャンブロがビットやメガ粒子砲を使用する時にのみそのシールドが解除されるので、その際に攻撃を仕掛けるか、格闘を仕掛けるか、格闘属性のアシストを呼び出すか、無防備な後に回り込んで攻撃を当てなければならない。
また、ボス機体では珍しいアシスト持ちで、命中率の高いライフルを発射するザクⅠ・スナイパータイプ、細いメガ粒子砲を放つジュアッグ、試作2号機のものより性能が上のドム・トローペンの3機を呼び出す。特にザクⅠは誘導が強く弾速も早いため避けにくく、それを4発撃ってくるのでステップで避けた方が良い。
続編のEXVSMBではA-5EXに出現。こちらはルーチンが大人しめになっている他、時折シールドを解除する事も(この技はFBの頃から存在しているが、強めのルーチンだったため披露しなかった)。
ガンダムバーサスではストライカー実装に伴いアシストが削除されており、クローやメガ粒子砲を破壊出来るようになった為、より戦いやすくなった。
ガンダムブレイカー
ミッションNo.10「赤い亡霊」にてボスとして登場。空母の甲板上で戦闘が展開され、耐久値をある程度減らすと行動パターンが変化する。
エンディング後には青い装甲の強化版が登場。こちらは性能が大幅に強化されており、取り巻きを連れてくるため、苦戦は必至となる。
余談
『シャンブロ』は"Shamblo"と表記する。英語で"shamble"とは『よろよろ歩く』『足を引きずり進む』などの意味。"shambles"は『屠畜場』転じて『流血沙汰』『修羅場』『大混乱』。"shambolic"は『無秩序』『乱雑』。
とはいえSF愛好家なら、C.L.ムーアの小説作品のタイトル(邦題『大宇宙の魔女』)、および作中に登場する怪物女『シャンブロウ』(Shambleau)を連想するところだろう。
小説版にて登場する異名「海の亡霊」は、原作者福井晴敏の作品である終戦のローレライに登場する主役潜水艦「伊507」の異名にちなんだセルフパロディ。
ただし、あちらはドイツ軍所属の「UF-4」時代からの異名であり、発音も「ゼーガイスト」となっている。
連載当時のインタビューによれば、この機体は本来のプロットや発注には一切存在していない、カトキハジメが勝手にデザインしてきた機体であるらしい。
しかし、その水陸両用巨大MAの威容をボツにするのは惜しいと考え、地上編に急遽エピソードを追加して本機を中心としたストーリーを挟む形となった。
このため、シャンブロ及びガーベイ一族を取り巻く原作のエピソードは、地上に残っていた人々に根強く残る人種や宗教の問題を題材とした、独立性が高い外伝的なエピソードとなっている。
アニメ版ではガーベイ家にまつわるエピソードがまるっとカットされ、前後の地上編の戦闘シーンに本機を組み込む形へ大幅に再編された。一方で、漫画版では原作に近い本章の後、本機の鎮圧後の跡地へ訪れたカイ・シデン視点での補完エピソードが追加されている。