概要
ガンダムエースの2007年9月号から2008年2月号にて連載されていたコミック作品。
タイトルの通りこれまで「外伝作品が全くなかった」と断言してもよかった『機動戦士ガンダムΖΖ』の時代を舞台としており、「メッチャー率いるエゥーゴ艦隊によるアクシズ攻略作戦」のようなテレビシリーズ放映当時から存在しつつも、知名度の低い裏設定を発掘して盛り込み、これまで深く掘り下げられる機会が少なかった『ΖΖ』時代をネオ・ジオンの側の視点から描いている。
本編で登場したMSやキャラのみならず、MSVやゲーム作品等で登場したマイナーなMSやキャラクターも登場している。
その上、外伝作品によく見られる『主役専用のオリジナルMS』もなく、基本的に既存MSの配色等のマイナーチェンジに留まっているのも特徴。
尚、単行本ではガンダムエース連載時には無かったストーリーが収録されている。
ストーリー
これは戦乱の世の中で太陽を掴もうとしたある男の物語である。
グリプス戦役終結直後の宇宙世紀0088年、アクシズことネオ・ジオンが地球圏制覇に乗り出した。後の『第1次ネオ・ジオン抗争』の開戦であった。
サイド1のコロニー「ブリガドーン」のエゥーゴ駐留軍隊長バーン・フィクゼス大尉はコロニーにやってきたアクシズのインドラ艦長フェアトン・ラーフ・アルギスからコロニーの買取りを求められる。その交渉中に連邦軍艦隊が『ティターンズ残党狩り』と称してブリガドーン制圧を開始する。何かの間違いだと焦るバーンは連邦軍部隊を説得しようとするも聞き入れてもらえなかったが、フェアトンは連邦軍の指揮官と交渉して、連邦軍を戦わずして追い払った。市民達は彼を称賛しネオ・ジオンの傘下となる。
だがバーンは連邦軍の目的が『連邦軍将校の愛人救出』が目的だとを知り、フェアトンは交渉の中で彼女を無事に帰還させると暗に匂わせて撤退させたのだ。
そのインチキぶりに怒るバーンにフェアトンは『「太陽を掴む」計画に協力してくれ』と申し出る。
登場人物
アクシズ
- フェアトン・ラーフ・アルギス
銀色の軍服を纏っている銀髪の男性将校。通称「十億(ビリオン)のフェアトン」(「ホラ吹きのフェアトン」とも呼ばれる)。
出自は旧ジオン公国名家・アルギス家の跡取りであり、自身の艦船のクルーは28人の兄弟である。父のアルギス伯はデギン・ソド・ザビの古くからの側近であった。
階級は劇中では語られていない為に不明だが、銀色のエンドラ級巡洋艦インドラの艦長を務めるだけの実績を持つ。
愛機は銀色のカプール……だが、MSパイロットとしての技量は低いようで、後述のニューヤーク戦ではカプールでハデに転げ回った挙げ句、バーンから「お前、MSヘタなんだから(中略)」と酷評される始末。
但し、ペテン師と呼ばれる程のかなりの策略家で、ソーラシステムの残骸を利用して敵をかく乱させる戦略を実行したり、苦手なMS戦闘もカプールの得意な水中戦に持ち込んで圧勝する等をした。
超巨大太陽発電システム『ラーフ・システム』の開発を目標としており、その為にハマーン・カーンの世界支配を利用しようとする。途中からはザビ家の血を引くとされるグレミー・トトからの親書をもらっており、彼と結託しようともした。
両親は一年戦争終結時に、アクシズへの逃亡中に事故で亡くなっており、自ら九死に一生を得ている為「奇跡の子」とも称されている。
安堵した時等に「ほ」と漏らす奇癖を持つ。
だが、彼は本当はアルギス伯が奴隷として買い集めた孤児の1人であり、逃亡の際に彼とその実の子供を殺害し、彼に成りすましただけであった。
また、その経緯からか『「兄弟」と認めた者』には惜しみ無い厚遇を約束する、どれだけ冷たくあしらわれようが兄弟を信じ抜く情味を持つが、そうでない者達には冷淡に接する二面性を持っている。
だが、前述の「兄弟」への信頼感が悪く働くと、報連相の欠如となって表出してしまい、それが自身の破滅の遠因へと繋がった……。
- バーン・フィクゼス
元はエゥーゴのブリガドーン駐留軍MS隊長で階級は大尉。フェアトンからラーフ・システムの野望への協力を求められた為、彼に協力を決意した。
エゥーゴ時代は “黒熊のバーン” と渾名されていたらしい。一年戦争の時に惨い光景を目の当たりにしており、エゥーゴに入ったのはその惨劇を繰り返したくなかったからである。
上記の経歴から分かる通り(良くも悪くも)直情径行な人間であり、それ故にフェアトンの謀略に理解を示しつつも、時に不信感を抱いてしまう場面もあり『MSパイロット』としては有能だが、『一介の軍人』としては(正義感の強さから)幾分か難を抱えている。
アクシズへ移籍してからは、インドラのMS隊長を務める。移籍に伴い乗機もリック・ディアスから黒く塗装されたドライセンに乗り換える。
- カイゼル
アクシズ内部の旧ジオン派ザビ家恩顧の重臣。グレミーの後ろ盾である。
アクシズでミネバ・ラオ・ザビを擁立してやりたい放題するハマーンに不満を抱いている。フェアトンを利用しようとするが、大気圏突入時の戦いの際に彼に逆に利用され乗ったシャトルが爆破、仲間の重臣共々謀殺された。
- ヴィール大尉
カイゼルの側近のアクシズ士官。
ダカールの迎賓館でバーン達の会話を聞いてしまい、カイゼル達の死の真相を知り、敵討ちとばかりにR・ジャジャで襲撃するがフェアトンの騙し討ちを食らう。彼を「ハマーンの犬」と罵るが、フェアトン本人から「ハマーンに加担するつもりは無く本当はグレミーに取り入ろうとしていた」と答えられ、驚愕するままに爆死した。
地球連邦軍・エゥーゴ・カラバ
- リア・ウィンディ
地球連邦軍広報情報局の少佐。ホワイト将軍の愛人である。
色香を武器にした狡猾な女性。
ブリガドーンでの一件でフェアトンに煮え湯を飲まされて以来、彼を付け狙うようになり、遂にフェアトンの秘密を知る。
フェアトンの策略の前兆に気付く、スニーキングでフェアトンに肉薄する等、将兵として(それなりの)才覚があるが、上記の得物を用いて有能な男性将校に取り入り、落ち目になると切り捨てるを繰り返す浅ましさを本性とする。
- ヨハン・ウィステリア
艦隊司令官を務める大佐。座乗艦はマゼラン改。
「ティターンズ残党狩り」と称してリア少佐の救出を遂行し事情を知らないエゥーゴに攻撃を行ったが、協定違反であるアクシズとの交戦をしてしまった為にホワイト将軍に怒られてしまう。
そして今度はリア少佐に唆されてインドラを襲撃するが失敗、結果的に軍規違反として独房へ放り込まれてしまう。
- ホワイト将軍
地球連邦軍の提督。コンペイトウからリアの救出をヨハン大佐に命じた。
ZZ本編にも登場している腐敗した高官。
- スパルナ・キャリバン
カラバのニューヤーク支部第12MS中隊隊長。
フェアトンが率いるネオ・ジオン部隊のニューヤーク侵攻の際に、リアと共に陸戦用百式改に乗り込み応戦しつつ脱出しようとしたが、フェアトンの駆るカプールに敗北し捕虜となる。
- ケイ・キリシマ
エゥーゴのキリシマ突撃中隊隊長で、階級は大尉。
乗機はZⅡ。
メッチャーから期待されている。バーンを『裏切り者』として付け狙っている模様。
後の漫画『機動戦士ガンダムUC 星月の欠片』では戦後、ロンド・ベルに配属された。
- メッチャー・ムチャ
本編にも登場しているエゥーゴの首脳。
0088年10月にハマーン不在を見計らったアクシズを攻略すべくアイリッシュ級戦艦マスタッシュに乗り込み艦隊を率いたがラーフ・システムによって失敗する。
ティターンズ
- エンケラドゥス・ガイスト
元ティターンズのグリプス守備隊の隊長で階級は少佐。通称 “猟犬” 。
グリプス戦役でバーンと何度か交戦した過去がある。一年戦争時代からジオンと戦ってきた模様。
フェアトンは彼を味方に引き入れたかった。エゥーゴに苦戦している中で加勢したフェアトンから「新型MSズサと宇宙船の提供」及び「コロニー内に立てこもっていた軍・官民の地球への脱出」を見返りにアクシズへの参入を申し込まれるが、アクシズの様な『ジオン残党の打倒』を目的とするティターンズの思想からそれを拒否した。しかし、部下全員は彼の心情を察しており、全員「玉砕」するつもりであるのを知ると、一転して「部下を自分の意地に巻き込むのは愚の骨頂」として協力を受託した。しかしエゥーゴとの交戦中に、部下達の乗る宇宙船を守らんと戦死した。生き残った部下達も「エンケラドゥスの仇討ち」としてエゥーゴとの抗戦を望み、フェアトン主導でティターンズ残党はネオ・ジオンに迎合する。
- パミル・マクダミル
ゲーム作品「機動戦士ガンダムクライマックスU.C.」のキャラクターだが、こちらは同作のコミカライズ『機動戦士ガンダム クライマックスU.C. 紡がれし血統 』の設定に準じている。
エンケラドゥスの部下でグリプス守備隊隊員であった。
彼の死に報いる為、他の同僚と共にネオ・ジオンに身を投じた。
第1次抗争の後にシャアが率いるようになってもネオ・ジオンに居続けた模様。
登場メカ
アクシズ
地球連邦軍・エゥーゴ・カラバ
ティターンズ
用語
- ラーフ・システム
本作オリジナルのメカ。
「限られた富の奪い合いが戦争の原因である」と睨んでいたフェアトンが作ろうとしている、超巨大太陽光発電システム。
これは太陽近くに直径10万キロメートルもある巨大な日傘で、地球圏全域のエネルギーを一手に賄う事もできる。またパネルの角度を変える事で、地球に降り注ぐ太陽光線の量も自在にコントロールも可能。このラーフ・システムにより地球はエネルギーや環境問題から恒久的に解放されるだけでなく、太陽系の星々をテラフォーミングする事も可能となる。
こんな大掛かりなものを建設するには、『人類の力と英知の結集』と『大いなる独裁』が必要である為に、フェアトンはハマーンの覇業を利用しようとした。
- ブリガドーン
バーンが当初駐在していたサイド1のコロニー。市長はコーナー・オコーナー。
大戦以前はナノテクノロジー産業で名をはせたコロニーだったらしいが、グリプス戦役の影響か不況にあえいでいた。
フェアトンはここをラーフ・システムの建設に利用する為に無血併合した。
北米にある都市。一年戦争の時はジオン公国軍の占領下にあったが、88年にはすっかり復興している。
フェアトンはここの占領をハマーンから命じられる。彼はかつてガルマ・ザビが治めた場所であるこの街を占領して、グレミーへの手土産にしようとし戦闘の果てに制圧した。