「意気が良いだけじゃ勝てねぇよ、坊や」(予告編)
「洒落で敵に背中は預けない」(本編)
登場話数:第四十章「哀しみの魔人」
概要
宇宙海賊バルバンの4軍団のうち、バットバス魔人部隊に属する魔人の一人。
両肩のスパイクアーマーや、同様に多数のスパイクがあしらわれた兜が特徴で、それらを含めた全身の甲冑は後述する経歴を表すかのように、至るところに赤錆が浮き上がったかのような色味となっている。
武器として、やはりスパイクが生えた鎖付きの鉄球を装備しており、これを地面に叩きつけることで強烈な衝撃波を発することもできる他、もう一つの得物である剣の腕前もギンガマンに引けを取らない。相手の振るった剣を掴んで防いでみせるなど、タフさも相当なものがある。
とはいえそれでも魔人部隊、ひいてはバルバン全体において、デギウスの置かれた立場というのは必ずしも良いものとは言い難い。確かにバルバンの中でも古株に入る強者ではあるものの、一方では長きに亘る戦いでの負傷で、視力の低下を引き起こしてもいたりと、その身体にも隠しきれない衰えが表れているのもまた事実である。
こうした衰えは、単に歳を重ねたことだけが原因という訳でもない。そもそもデギウスは生粋のバルバンの一員ではなく、とある理由からバルバンに転がり込む格好となった魔人であり、それ以前そして以後の度重なる戦いの中での、精神的な疲弊も衰えの一因といって差し支えない。
このように心身ともに「くたびれた」老兵であるがゆえに、軍団長であるバットバスからも「死ぬくらいしか役に立たない奴」と、(本人のいないところでの発言ではあるものの)あからさまに軽んじられており、このことがデギウスに残されていた残り少ない人生を大きく狂わせる格好となったのである・・・。
作中での動向
魔獣ダイタニクス復活に向けた作戦が遅々として進まぬ中、ビズネラは次なる作戦として「地球に接近する彗星の巨大なエネルギーをその心臓に転送する」ことを提案する。
しかしこの作戦は、彗星からの途方もない量のエネルギーを地上で身をもって受け止め、その上でダイタニクスへと中継するための人員を必要とする。当然、それだけのエネルギーともなれば実行役の魔人も巨大化しなければ受け切れるものではなく、受けきれたとしてもその魔人はバルバエキスの副作用によって、そうでなくとも膨大なエネルギーに身体が耐えきれず、十中八九命を落とすことは誰の目から見ても明らかであった。
そのような危険極まる作戦に、「なぁに、普通の奴なら死んでしまうかもしれねぇが、おめぇなら大丈夫だ!」と、軍団長自ら太鼓判を押す形で送り出されたのが、他ならぬデギウスその人である。が、老いたとはいえ作戦の実態を見抜けぬほどに耄碌した訳でもなく、それでも自らが捨て駒扱いであることを承知の上で作戦に臨み、左腕に埋め込まれた誘導装置によって接近しつつある彗星を黒岩岬にて待ち受けていたのだが・・・
「命ぐらいくれてやるが、その前に最後の戦いと行くか」
と、待ち受ける死の運命を前にしてせめて悔いの残らぬよう、鉄球によって地面を揺さぶることでギンガマンを誘き出し、彼等と一戦交えることを選択。案の定駆け付けてきたギンガマンを圧倒するも、なおも果敢に挑みかかってくるギンガイエローと揉み合っているうちに、共に海へと転落するというアクシデントに見舞われてしまう。
転落の後、海底洞窟に漂着したデギウスはそこからの脱出を図るべく、共に流れ着いたイエローことヒカルに一時休戦を持ちかけ、何とか脱出に成功することとなるが、そこには痺れを切らしたバットバスが自ら待ち受けており、彼の言葉からやはり自らが捨て駒扱いされていたと再認識するや、ヒカルを連れて逃亡するという予想外の行動に及ぶこととなる。
「いい目だな坊や。俺も昔、そんな目をして星を守っていたんだ」
デギウスのこの行動の裏には、彼の哀しい過去が関係していた。
前述した台詞の通り、彼もまたかつてはギンガマンと同様に「星を守る戦士」であったが、親兄弟そして故郷と、戦いを重ねるたびに大事なものを失い続け、心身ともに疲弊していった末にバルバンに身を投じたという経緯があった。
敵であるはずのヒカルを助けたのも、星を守る戦士として自らの手でデギウスを倒すという、その強い使命感に過去の自分を思い出し懐かしさを覚えたと同時に、自身にとっての「最後の相手」に相応しいと確信を持ち、彼と一戦交えたいと望んだからであった。
過去の経緯を知り、それでもかつての自分を捨てることに納得できず、星を守る戦士に戻るよう促すヒカルに対しても、デギウスは「戻るには人を殺し過ぎた」と嘯き、あくまでバルバンの一員として散ることを所望。その頑なな姿勢を前にヒカルも「最後の勝負」に応じ、両者の間でしばし死闘が展開されることとなるのだが・・・渾身の雷一掃でこれに勝利しながらも、イエローはデギウスに止めを刺そうとはしなかった。
切り結ぶ中でデギウスが昔を思い出し嬉しそうな様子を見せたこと、そして何よりその剣技のまっすぐさが星を守るためのものであると感じたイエローは、やはりデギウスの中にもまだ戦士の心が残っていると確信し、もう一度星を守る戦士としてやり直すよう手を差し伸べたのである。
が、差し伸べられたその手をデギウスが取ることは遂に叶わなかった。非情にも、業を煮やしたビズネラの狙撃によってバルバエキスを撃ち込まれ、自らの意志とは無関係に巨大化させられたデギウスは、のみならず誘導装置に仕込まれていたコントロール装置によって暴走状態に陥ってしまう。
作戦を阻止しデギウスを救うべく、イエローは後から駆け付けた4人と共にギンガイオーでこれに相対するも、鉄球による攻撃で近付くことさえままならず、援護に入ったギガライノスが鋼の腕力で抑え込んだ隙に誘導装置を破壊しようと試みるが、彗星の接近によりこの場にいる全員が直撃に巻き込まれると察してか、デギウスはギガライノスの拘束を振りほどく形で単身彗星に直撃することを選択。
「すまねえ。結局俺は、星を裏切り続けちまったな…」
その一言を残し、哀しき老兵は独り爆炎の中へと消えていったのであった。
遺された愛用の剣は、ヒカルの手により墓標として岬に突き立てられ、「デギウスみたいな奴は一人で十分だ!バルバンは絶対に倒す!!」と、彼や仲間達に決意を新たにさせることとなるのだが…一方でそのデギウスの犠牲と引き換えに、彗星からのエネルギーを得たダイタニクスが今正に、完全復活の時を迎えようとしていたのであった。
備考
以上の説明からも分かる通り、「星を守る戦士」でありながらも守るものを失い、悪の軍団に身を投じた末にその走狗としていいように扱われ、そして悲惨な最期を迎えたデギウスは、ある意味では本作における戦隊側の様々なキャラクターのIFとも言える存在であり、彼等が辿り得たかも知れない末路をも端的に示したとも言える。
デザインは野崎明が担当。当初はモチーフである鉄球の意匠がより目立つ形で頭部に配されていたものの、キャラクターの性質上頭が丸みを帯びるとどうしても威厳がなくなるため、クラウン型のデザインに変更し髭を思わせる装飾を口元に施し、鉄球の要素はトゲを短くする形で肩アーマーに名残を残す形としている。
同様に、「一昔前の孤高の老兵」という設定を踏まえる形で準備稿にあったマントが排されている他、歩くとギシギシきしむ音がするというイメージから、全身も錆が浮いたような色味で統一されている。
CV担当の小林は、スーパー戦隊シリーズへは『激走戦隊カーレンジャー』(VRVマスター役)以来、かつ最後の出演となった。以降も東映特撮の別シリーズにおいて、散発的ながらナレーションとしての出演経験を持つ一方、(他社制作作品ではあるが)本作と同様に髙寺成紀がプロデュースを手掛けた『大魔神カノン』にも、フクマツ役で出演している。
関連タグ
宇宙海賊バルバン 魔人(宇宙海賊バルバン) バットバス魔人部隊
デモス:『電撃戦隊チェンジマン』に登場する敵怪人の一体こちらも星を守る戦士でありながら、母星を失った末に悪の道に堕ちたという共通項を有する。彼に限らず、属する組織である大星団ゴズマ自体、ある意味では戦隊側のIFともいうべき存在の寄り集まりとも言える
冥府神ティターン:『魔法戦隊マジレンジャー』の登場キャラクターの一人。悪役でありながらも戦隊メンバーと心を通わせて改心し、それでも生き延びることが出来ずにラスボスの人身御供にされるなど、やはり複数の共通項が見られる
ヨシー・ウラザー:『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』に登場する敵怪人の一体。敵組織の思惑に翻弄され、捨て駒同然の扱いを受けた怪人という点で共通している一方、こちらは洗脳同然で善人に仕立て上げられた上、巨大化すらさせてもらえずに倒される等、より悲惨な扱いが目立ってもいる
バイオレンス・ドーパント:『仮面ライダーW』に登場する敵怪人の一体。加害者であると同時に被害者でもある、という点でデギウスと共通している
ソルダートJ:『勇者王ガオガイガー』の登場人物の一人。星を守る戦士でありながら、母星を失った末に悪の道に堕ちた点こそ共通しているものの、一方で改心の後主人公達の仲間へ転じたという、明らかな相違点も有している