概要
ブドウ科ヤブガラシ属の多年生[[[つる>蔓]]植物。藪枯らし。
やたらタフで繁殖力旺盛で、蔓性ということもあって薮に覆いかぶさって枯らしてしまうことからこの名がある。手入れの行き届かない庭先に茂りがちなことから、ビンボウカズラ(貧乏葛)の別名もある。
学名は「Causonis japonica」。ヤブガラシ属が単系統ではないと判明する前はCayratia japonicaとされていた。
刈り取っても地下茎が残り、また除草剤が効きにくく駆除が困難なこととから、農業では非常に厄介な雑草の一つ。
分布
東アジアから東南アジアに分布する。日本では北海道南西部から沖縄県まで一般的に見られ、生垣や金網のフェンス、放置された空き家や自転車などに絡みつく姿が日常的に見られる。
アメリカ合衆国の暖帯・亜熱帯気候の地域にも定着してしまい、(同じく日本からの外来種であるクズやイシミカワほどではないものの)北米の在来種を脅かす侵略的外来種とされている。
特徴
蔓は地下茎(根茎)が地中15~20センチメートル辺りを這う。
茎には筋がある。地上部の長さはときに3メートルを超える。葉柄の反対側から二又の巻きひげが伸びて他の物に巻き付き、蔓を安定させて上に登っていく。巻きひげはシュウ酸カルシウムを認識することができ、ヤブガラシか他種か識別できると考えられている。
葉は基本的に5つの小葉からなる複葉が互生する。複葉の付き方は葉柄の先端が3つに分かれ、直進側は少し進んで小葉、左右に分かれた側がまた二つに分岐し、すぐ小葉に繋がっている(鳥足状複葉-とりあしじょうふくよう)。変形として、左右の2つに分かれる小葉が一体化していたり、5小葉のうち基部を向いている小葉がくびれて分離し6・7枚になっていることもある。葉の表裏には艶があり、若い芽はとくに目立つ。
若い芽、および葉の裏、花柄に真珠体という直径1ミリメートルほどの無色透明な小さい栄養体を分泌する。真珠体は短毛の生えた球形で、そのため一見すると昆虫の卵が無数に付着しているように見える。
(イラストは雄花)
葉と反対側に生じる花は小さなものが集団で咲く集散花序で、初夏から秋にかけて盛んに開花する。花の直径は5ミリメートル前後。橙色の雄花で咲き、半日で花弁と雄しべを落として花盤のみの桃色の雌花と変化する。花弁と雄しべは普通4つだが、変形して3つや5つになったり、稀に雄しべが6つになることもある。虫媒花であり、他の花の花粉を昆虫に運んでもらい、それで受粉することで果実を作ることができる。実は薄緑で、成熟するとつやのある黒色(染色体によって結実しない個体もある)。
余談
- 赤紫色の強く柔らかい若芽は食用になる。熱湯で水の色が変わるまで長めに茹で、次に水に半日以上晒し(水はこまめに交換する)て毒素を流してから、おひたしや天ぷらにして食べる。
- 2015年頃から、「ヤブガラシを蔓を切らないように解き、丸く巻いて地面に置いたまま放置すると枯死(自滅)する」という情報がブログサイト(一例)から広がったが、これを裏付ける科学的な根拠は2023年4月時点では存在せず、再考の余地がある。
- 沖縄県では、ヤブガラシに加え、「ヒイラギヤブガラシ」も自生している。両者の目立つ相違点は、ヤブガラシの雄花が橙色で雌花が桃色なのに対し、ヒイラギヤブガラシは雌雄ともに黄色なことである。
- アマチャヅルに外見が似ているが、ヤブガラシは茎の節々や蔓の先端が赤紫色なこと、巻きひげが葉柄の反対側から出ること、表面に毛がないことで区別できる。
- 昆虫なおかつ害虫のスズメバチ・オオスズメバチやセスジスズメが寄ってくる要因の一つであるため、ヤブガラシ関連では彼らが話題に上がりやすい。
- リクガメにとって栄養面で都合の良い餌であり、手軽に採取できることから、飼育する者の間では繁殖力の強さを逆手に取って給餌に利活用されている。
別名
貧乏葛 - 上述。
藪枯らし - 漢字での表記
ヤブカラシ - 標準和名。yabukarasiと、3文字目が濁音ではない。
蝋燭花(ロウソクバナ) - 雌花の形状が燭台に似ていることから
烏歛苺(ウレンボ) - 中国での名称
関連タグ
蔦:ブドウ科でグングン育つ蔓性多年草。建物の壁に害を与える。
外部リンク
Causonis japonica-Wikipedia;英語