ここではTAGROの漫画に関して記載する。
作中でも使用される「女性武芸者」と言う意味の別式に関しては別式女を参照。
概要
講談社『モーニング・ツー』に2016年から2019年まで連載されていた、TAGROによる時代劇漫画。全5巻。
徳川家光統治の江戸時代初期を舞台に、女武芸者たちの生(と性)をポップに、それでいて儚く描く時代劇浪漫。
本作の主人公を始めとする古河藩の人々は、あえて史実とは異なる名義で登場しており、本筋に絡まない家光公などはそのままの名前で登場する。主人公以外の別式女たちは日本史上有名な女性戦士や烈女から名付けられている。
4巻以降は史実から乖離したIF展開となっている。
作品の特徴として、時代劇ギャグマンガでよくある「パトロン」「ポニーテール」「ゲーム」「巨大不明生物」だのといった横文字・スラングの使用や、TAGRO作品にありがちな下ネタなどはもう「そういうもの」という認識でいいが、本作では第1話冒頭がいきなりクライマックスという展開を取っている。それ故に、本作では主人公が経験する別れが開始1ページ目の冒頭部分で語られているため、逆予定調和とでも取るべき一抹の「哀しさ」「儚さ」が物語の奥底にある。
くだらないギャグや婚活あるあるなどが連発する一方で、ハードな展開やスプラッタな描写なども挟まれることもあり、頭身低めのキャラデザからは想像もつかないような重苦しいストーリーも魅力的。
人間のいろいろがそれはもうごちゃごちゃに絡み合って非常にヘビーな部分もあり、読者を選ぶ漫画という言い方も出来そうな気がするが、ここはあえて読者を信じている漫画と言いたい。
あらすじ
古河藩(現茨城県古河市)剣術指南役・佐々木撫太夫がこの世を去って早1年。後を継いだ佐々木類は女だてらに道場を切り盛りしていたが、ものっそい面食いかつ「自分より弱い男とは結婚しない」という父親との誓い故に一向に夫を娶らず、佐々木家は断絶の危機を迎えていた。
幼馴染の魁や同僚の九十九も交えたそれなりに楽しい日々を送る類であったが、新しくできた友人・切鵺との邂逅が、類の人生の歯車を大きく揺るがしていく。
これはまだ、己の未来を知ることの無かった頃の類を描いた物語。
主要な登場人物
佐々木類
主人公。史実での名前は佐々木累。時代小説などでもおなじみの、実在した女剣豪である。
非常に美人で彼女を慕う門弟も多い。
ただ本作では極度の面食いかつテンパリ屋というキャラ付けをされており、若干ファザコン気味な所もある。不細工は顔を1秒で忘れる。大の春画マニア(当時、武士は戦いに春画を持っていくという習わしがあったらしい)。
かつて女を攫おうとした悪党を斬り殺して以来、斬った人間の数は十指でも足りぬとのこと。なんの躊躇いも無く人を斬り、また斬られて絶命した相手を見ても動揺しないのは、類が生来の色覚異常を持ち、赤色をうまく識別出来ないことに由来している。
源内に右目を刺され失明、療養後は眼帯を付け隻眼となる。
切鵺
流れの剣客。讃岐出身。前髪を紐で縛っている。一見別式女に見えるが、実は美少年(陰間ではない)。仕込み杖による抜刀術の使い手。
親の仇である狐目の男への復讐のために江戸に来た。
名前の元ネタは烈女尼崎里也。
成田魁
類の幼馴染。銀髪をリボンらしきもので結っている。江戸武家屋敷の別式女筆頭。
あと酒乱。
名前の元ネタは戦国武将の甲斐姫。
中瀬古早和
島原藩(現長崎県島原市)出身の別式女。類、切鵺とは新人研修からの付き合い。非常に幼い外見をしており人懐っこい性格。
名前の元ネタは幕末は北辰一刀流千葉周作の姪で坂本龍馬の姉弟子である千葉さな子。
大杉九十九
類の同僚で土井老中の部下。史実での名前は小杉九十九。
実在の人物であるが、ほとんど資料が残っていないため独自解釈が多い。
一見チャラく見えるが、実は幕府の密偵。
土井勝利
古河藩の当代藩主(殿様)・幕府の老中の役職にある。史実では土井利勝。
類(及び父・撫太夫)や九十九にとっては上司である。
撫太夫に目を掛けていたため、類が一向に夫を娶らないことを焦っている。
刀萌
下町で話題の大道芸人の女性。おっぱいが本作で一番でかい。
類が佐々木家だからかはたまた関係ないのか二刀流(双剣ではない)の使い手で、芸を覚えたモモンガを連れている。母性が強く心優しい性格。
夜は占い師を行う傍ら、始末屋として働いている。そのため九十九からは金目当てで殺しを請け負う悪人だと思われていたが、その実態は…。
元ネタは木曽義仲の愛妾の巴御前。ちなみに、宮本武蔵の家紋も七つ巴である。
佐目慎太郎
類に剣術を教わっている少年。作中の一件以降、類のもとに住み込む。
菘十郎
撫太夫の弟子。その名の通り十男であることから出世の見込みが0に等しく、更に類稀なるブ男であったことから激しい劣等感を抱いている。しかし剣技だけは優れており、作中で唯一、類と互角に渡り合えた男性剣士だが…。
岩渕源内
切鵺の父を殺し母を手籠めにした「狐目の男」その人。それ以外にも数多くの殺人に関与している凄腕の剣士。九十九からも反幕府勢力に肩入れしているとの疑念によりマークされていた。