太平洋奇跡の作戦 キスカとは、北太平洋において行われたキスカ島撤退作戦を描いた戦争映画である。1965年6月・丸山誠治監督。
あらすじ
米国本土の一部であるアリューシャン列島を占領し、ミッドウェー作戦を北方から牽制する目的で敢行されたアリューシャン列島攻略作戦。
日本軍はアッツ島やキスカ島等の一部の島々を手に入れたものの、やがて米軍の反攻作戦によってアッツ島守備隊は玉砕し、北太平洋上にはただ1箇所キスカ島守備隊を残すのみとなった。
やがてキスカ島には米軍の爆撃機はおろか戦闘機までが飛来するようになり、アッツ島守備隊と運命を共にするかに思われた。
万事休すといった状態で、第五艦隊司令長官川島中将はある男を呼び出すために南方へ電報を打つ。
海軍兵学校を「ドンケツ」で出た、気の置けない級友ではあるがいかにも一筋縄に行きそうにない男、大村少将にキスカ島撤退作戦の指揮を執ってもらうために…
作品解説
軍事作戦の中でももっとも困難と言われる撤退作戦を如何に成し遂げるかという戦争映画としては珍しいテーマの映画である。
音楽監督に團伊玖磨氏、特撮監督に円谷英二氏を起用し、出演する俳優陣も三船敏郎や山村聡といった当時の東宝のトップスターが揃うという非常に豪華な作品である。
特に特撮と音楽の評価が高い。
メインテーマの「キスカ・マーチ」には歌詞がつけられ、ジャニーズが「栄光のマーチ」としてリリースしている。
史実との相違
- 登場人物の氏名や参加艦艇が一部異なる。大村少将は「兵学校をドンケツで出た」と説明されているが、史実の木村昌福は確かに下位ではあるがドンケツ(最下位)ではなかった。
- ちなみに黒潮と早潮は史実ではすでに戦没している。
- 史実では参加していたが本作では外されてしまった風雲は『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』に登場している。
- 那智と摩耶が南方に廻されて艦隊司令部が…という事は無く、むしろ付いていこうとしたらしい。多摩は?
- 北方なのにイギリス軍の記章である蛇の目の飛行機が現れるが、『潜水艦イ‐57降伏せず』の特撮映像の使いまわしなので雰囲気を楽しむこと。
- キスカ島内のトラックとして戦後に作られたトヨタBX型トラック(1951年製造開始)が登場するがこれもご愛敬である。
スタッフ
製作:田中友幸、田実泰良
監督:丸山誠治
脚本:須崎勝彌
原作:千早正隆「太平洋海戦最大の奇蹟」
特技監督:円谷英二
音楽:團伊玖磨
キャスト
大村少将:三船敏郎
川島中将:山村聡(特別出演)
国友大佐:中丸忠雄
玉井中佐:稲葉義男
福本少尉:児玉清
工藤軍医長:平田昭彦
加藤一水:黒部進
俵少尉:久保明
軍令部赤司参謀:西村晃
三上少尉:船戸順
小島主計兵長:堺左千夫
分遣隊長:山本廉
中村上水:二瓶正也
佐野一曹:佐田豊
茂木中尉:大塚国夫
松原二曹:石田茂樹
山下平八郎水兵長:広瀬正一
イ号七潜水艦先任将校:桐野洋雄
阿部上水:阿知波信介
(以下ノンクレジット)
余談
当初監督は『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』を務めた松林宗恵が内定していたが、松林はこれを断り、代わりに丸山が起用されることとなった。丸山は本作が初の戦争映画だったが、以後東宝の戦争映画を数多く手がけた。
松林の手掛けた戦争映画は1981年の『連合艦隊』を待つことになる。
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大日本帝国海軍 阿武隈(軽巡洋艦) 木曾(軽巡洋艦) 島風(駆逐艦)
帰ろう、帰ればまた来られるから:本作では「帰れば、また来ることができる」となっている。