ファンフィクションのみの世界
かつてそれは「ムウの弟子だった貴鬼が、成長した後牡羊座を継いで次世代の黄金聖闘士になっていたら…」というファンによる想像・妄想と言う名の産物であった。原作は彼の子供時代で終了してしまい、ネクストディメンションではまだ彼の出番自体がない。よってファンは長い間、その妄想を様々に楽しんでいた。2012年7月中旬頃までに同人誌やpixivなどの二次創作で描かれたものは完全にファンアートの範疇なのでその姿やキャラ設定等はまさに絵師の好みにより千差万別に描かれていた。
実現まで
2012年春、とうとう四半世紀に渡って幾度もなされてきた、その妄想が実現されるやもしれぬ時が来た。
23年ぶりのTVシリーズ『聖闘士星矢Ω』
新章開幕の知らせと共に、pixivにも牡羊座の貴鬼を期待するイラストが続々と投稿された。
時代設定は原作の十数年後。8歳だった貴鬼も20代くらい?ぴったり!
馬越作画だからきっとこんな感じじゃないか?↓
だがこの世界では黄金聖闘士は2人しかいないという。
枠が少ないのはそれだけワケありなのであろう。星矢シリーズの人気の生命線と言っても過言ではない黄金聖闘士である。2人しかいない少数精鋭、旧作ファンのことも考えるとやはり貴鬼は有力線に違いあるまいと視聴者は考え――――
行方不明扱いだったサジタリアス星矢も出て来たけど生きてるか死んでるか分からない半透明体だった。
既に定員オーバーである……。
黄金聖闘士になっていないとしても、貴鬼に出番がある可能性はまだまだある。それでも牡羊座を継ぐ期待の声は大きかったゆえ、慟哭する声が随所から起こった。
そして遂に17話でわずか1分間ではあったが成人後の彼が登場し、聖衣の修復師を継いでいることが確定。さらにその後の各種ネタバレや19話での玄武の登場で上記の「黄金2人」もほぼブラフであったことが判明し、さらに貴鬼の成人後の中の人も再登場を明言した為に一気に希望を滾らせるファンが増加していた。
公式での実現
CV:中原茂
2012年9月下旬にテレビマガジンでいち早くネタバレが行われ、2012年10月7日の27話の放送終了直後に公式でついに貴鬼が黄金聖闘士であることが発表され設定画も公表された。派生作品とはいえ、ついに公式のものとなった瞬間である。
聖衣のインナーはかつての師ムウのアニメ版と同じグリーンカラー。
黄金聖衣のデザインは上半身部分の丈が原作よりやや短めになっており、腰部分に赤い宝石状パーツがついている。そして結構ガタイがよく、二期では星矢より頭一つ分以上高い背丈であることが判明(もっともこれは、星矢が聖闘士としては比較的小柄な体格に設定されていることもある)。
一人称が子供時代は「おいら」だったのが「私」になっている。
髪色は茶色系で、頭部上半分は子ども時代のままの逆立つくせ毛だが、後頭部のみ長く伸ばして背中で(なぜかかわいいリボンで)まとめており、癖のない直毛をなびかせて戦っていた師のムウと、うねるように逆立つスタイルであった師の師シオンとの折衷のような髪型になっている。(ふたりの先達への貴鬼なりのオマージュなのか、単にジャミール一族の遺伝子によるものかは判然としない。)
推定年齢25~6歳くらいと見られるが、年齢のわりに顔立ちは童顔。すみれ色の瞳が大きく、まぶたのあたりに色気のある顔に描かれており、師のムウの生前と同じく中性的な美しい容姿となっている。
ただ、マルス支配下の難しい時代を長く逃亡者として生き抜いてきたためか、主人公とその盟友たちに手厳しいアドバイスや試練を与えたり、困難な戦局の中でアテナ軍の戦士たちに「奮闘せよ」と檄を飛ばすなど、容貌の柔らかさに反してその言動は厳格な戦時指導者のもので、ムウよりも、むしろ教皇であったかつてのシオンに似てきているようだ。そのため、ジャミール一族に代々伝わる秘技・うろたえるな小僧ども!!が炸裂するかと一部で期待されたが、それはなく、代わりに(?)敵の雑兵を一部隊まとめて高々とぶっ飛ばす描写がよくあった(もっともΩ後半の対パラス戦では、黄金聖闘士がアテナ親征の露払いとして雑兵の掃討を買って出ることが多く、特別貴鬼だけがこれを披露しているわけではない)。
師のムウとは死別してから十数年が経過し、今や貴鬼のほうが師の死亡時年齢(享年20)よりも年上になっているが、尊崇と畏敬の念はいまだに篤く、折に触れその教えを思い出し、修復師としての仕事に臨む際には、魂に加護を願ったりしている(そして実際、ムウの魂は今も愛弟子を間近で見守っているらしく、貴鬼の背後に立つムウの幻を、羅喜が目撃している)。
が、聖衣の修復に際して聖闘士の血を使わず、自分の小宇宙だけで何とかしたり、さらには応急処置とはいえ聖闘士に聖衣を着せたままで修復を完了させたりと、正直言ってもうムウより腕前がいいのでは? と思われる描写が多い(修復技術自体を貴鬼独自に研究し、進歩させたのかもしれない)。また黄金聖闘士としても、そこそこ上位クラスの敵の防具を指一本で破砕し、瞬殺してのけたりと、すでに師の実力を追い越している(ムウが聖闘士として絶頂期に達する前に亡くなったこともあるだろうが)様子が窺える。
長らく火星士サイドから身を隠しつつ弟子の羅喜を連れて隠遁生活を送っていたが29話ではマルスについたフリをして彼の作った十二宮の白羊宮で待機しており、最初敵だと思って襲いかかってきた光牙を地面にたたき落として腹パンずっしりかましてニヤリとしたり彼ら青銅聖闘士5人の聖衣を着用したままで「手荒くいく」と双方の負担も構わず修復作業を行ったりと口調は丁寧なのにやることが妙に荒っぽいムウやシオン譲りな部分を発揮していた。
ペガサス流星拳を食らっても涼しい顔をしていたのでかなり実力もつけているようである。
29話では自身の裏切りに気づいて派遣された大量の雑魚火星士を食い止め蒼摩らを先に行かせたが、無理な聖衣の修復作業でかなり疲れている後にもかかわらず33話では涼しい顔で再登場し龍峰がセブンセンシズに覚醒したことを感じ取ってまたニヤリとしていた。
37話ではハービンジャーと親しげに会話している事から彼とはそれなりの交流があったようで、隠遁している間は「マルスの聖闘士になる気はない」と言っていたものの光牙らへの支援のためにいったんマルス側についたふりをしたようである。
公式HPで行われた第一回人気投票では第3位を獲得。
二期では一期で死亡した黄金聖闘士達の聖衣石が回収された場所に羅喜とともにいたが、その最中ディオネに襲撃を受けるも一蹴する。
その後彼の元を訪れた、ユナと蒼摩の聖衣を修復した。この時は一刻を争う状況だった前回と異なり、旧来通り、道具を使った手作業による修復を行っている。
58話で他の生存している黄金聖闘士らとともに聖域に集合する。
師ムウの小さな弟子であった当時から、青銅一軍メンバーが繰り広げてきた数々の戦いに立ち会っており、Ω二期では、黄金聖闘士の同僚として共に戦うことになった射手座の星矢への、少年時代からの強い憧れを語っている(そして聖闘士としては新参者の牡牛座のハービンジャーに、嫉妬なのか疎外感なのか、かなり面白くなさそうな顔をさせている)。戦士としては冷静沈着な態度に終始しているが、心の中には亡き師のムウや、先輩にあたる青銅一軍メンバーを想う熱い気持ちを秘めているようだ。
『Ω覚醒編』
新シリーズである“Ω覚醒編”のOPでは、紫龍やフドウと共に、あの禁断の技を使用している。
本編ではハイペリオン相手に使用、一端は消えたと思われていたが瓦礫の下から復活。
戦いの終結後は、荒れ果てた聖域の復興事業に取りかかるため、黄金仲間の牡牛座のハービンジャーに「教皇になれ」と言い、他の黄金聖闘士ともどもこれを説得。どうにか彼から承諾をもぎ取ることに成功した。
師弟三代続いた牡羊座の黄金聖闘士にして、前教皇シオンの孫弟子、さらには歴代何人もの教皇を輩出してきたジャミール一族の末裔である貴鬼は、おそらく衆目の一致するところ、新教皇候補の最右翼だったと思われるが、「修復師としての仕事が忙しい」という理由であっさりとこれを辞退、同僚のハービンジャーに譲っている(というより、むしろ貴鬼が積極的にハービンジャーをアテナに推薦したようである)。
その際に「権力欲しさに教皇の座を求める者より、真っ直ぐなお前がふさわしい」と言っており、これは「仲間たちのために憤慨し、パラサイト相手に激闘を繰り広げた」ハービンジャーの心根の清さを買ったことに加え、教皇位継承をめぐって過去に起きたトラブルを踏まえた発言であると思われる。(貴鬼の師であるムウと、師の師であるシオンは、いずれもこの教皇位継承にからんだ事件に巻き込まれており、ふたりの先達の人生を狂わせた悲劇を繰り返したくないという思いは強かったはずである)。
今後は、おそらく新教皇ハービンジャー体制のもと、アテナ軍幹部のひとりとして聖域の復興と運営に参画していくものと思われる。新時代の若き指導者たちに幸あれ。
登場した意義
なお貴鬼の登場に関しては、ファンの間でも「成長した貴鬼の活躍を見れただけでも、Ωを見る価値はある」という意見が定着しており、同作の人気を二期続くまでに押し上げた功労キャラとも言える。(参照:下記関連動画)
技
歴代の牡羊座の黄金聖闘士と同様、彼も光系の技を使用する。
- スターダストレボリューション
- 弧を描いて飛ぶ光弾を、流星群の如く連射する。
- クリスタルウォール
- 透明なバリアを張り、敵の攻撃を跳ね返す。
- スターライトエクスティンクション
- 牡羊座の黄金聖闘士の最強奥義。両手から光のエネルギーが脈動を放ち、無数の光の粒子が相手に襲い掛かる。それに飲み込まれた者は大いなる光の彼方へと永遠に追放されることになる。
- ???
- 紫龍、フドウと共に放つあの禁じ手。
エピソードG アサシンでの登場
岡田芽武氏が手掛ける外伝漫画エピソードGの続編エピソードG アサシンにおいても成長しムウの後を継ぎ牡羊座の黄金聖闘士となった貴鬼が登場。
本編以後多くの聖闘士を失い半ば機能不全に陥っている聖域を纏める立場となっており教皇の補佐的立場も担っている。その為か以前の明るさは隠れ厳しめの表情や口調が多い。
一人称も「オイラ」から「オレ」に変わっている。
関連イラスト
関連タグ
サジタリアス星矢 ライブラ紫龍 → 同じく黄金に昇格したかつての戦友(黄金一軍)
デルタ星メグレスのアルベリッヒ…中の人がかつて演じていたアスガルド編のキャラクター。
────── | 1.白羊宮 | 2.金牛宮 |
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────── | 貴鬼 | ハービンジャー |