概要
最古の化石種は4億年以上の古生代まで遡り、「生きた化石」として代表的な生物である。
現存するカブトガニは、カブトガニ(無印)、ミナミカブトガニ、マルオカブトガニ、アメリカカブトガニの4種である。
種としてのカブトガニは日本沿岸にも生息しており、4種類でも最大級の大きさに成長し80cm前後までになる。
高度経済成長期による干潟の開発などで個体数が減り、現在絶滅危惧種となっている。
名前
漢字では、『鱟(學-子+魚)』、もしくは『甲蟹』、あるいは『兜蟹』と表記する。
英語名は「horseshoe crab」(ホースシュークラブ)で、直訳すると「蹄鉄蟹」である。
分類
節足動物ではあるが、その名前と外見とは異なりカニどころか甲殻類ですらない。
本種は甲殻類とは別の鋏角類に属しており、どちらかというとクモやサソリなどと近縁である。
触角と顎は無く、頭胸部に6対の肢があり、そのうち第1対は鋏角であるという鋏角類としての証が見られる。
鋏角類においては太古に絶滅したウミサソリと同じく節口綱に分類される。
また大きさと生態は大きく異なるものの、名前が似ているかつ同じく生きた化石として知られるカブトエビという甲殻類と混同される事もある。
形態
化石種は数cmしかない小型のものが殆どであるが、現存のカブトガニ類はいずれも数十cmに及ぶ大型種である。
体はドームのような頭胸部、平らなの腹部、剣のような尾部からなる。
頭胸部の上面は1対の複眼と数個の単眼があり、脚などの肢は全てが体の下で覆われる。
1対の鋏角と5対の脚をもち、ほとんどは爪先がハサミ状になっている。
腹部は一連の蓋のような鰓脚があり、呼吸用の書鰓を備わっている。
顎はないが脚の付け根にギザギザな構造体があり、それを顎のように嚙み合わせて食物を握りつぶしてから中央部の口へ運ぶ事ができる。
透明の血液は酸素結合物質が銅のため、空気に接触すると青色に変わる。
生態
干潟などの遠浅の穏やかな海に生息している。
人間を攻撃するような生物ではなく、脚の爪や体のトゲなどの取り扱いに気を付ければ全く安全無害である。
雄の前脚はフックのようになっており、繫殖の頃にそれを使って雌の腹部にくっつける。
普段は水中で活動しているが、繫殖期が訪れると干潟や海岸に登って産卵する。
生息地
日本国内での現在の主な生息地は、瀬戸内海の本州沿岸の一部と九州の一部で生息が確認されている。
海外では北アメリカにアメリカカブトガニ、東南アジアにマルオカブトガニとミナミカブトガニが生息する。
いずれも外見はよく似ており、細部の違いしかいない。
日本での扱い
日本では開発によってその個体数を激変させており、環境省の保護動物の中でレッドリストの絶滅危惧種に指定されている。
またその生態が生物の進化の謎の一端を解明する事に繋がるとして、一部の地方に棲むものは天然記念物にも指定されている。
ちなみに保護下される前までは、個体数が多かった事と可食部分が少なく美味でなかった事から肥料の原料として畑に撒かれていたり、釣りや家畜の餌としてぞんざいな扱いをされていたようである。
現在は絶滅危惧種として指定されているため、無許可で捕獲するだけでも当然処罰の対象になる。
可愛いらしい見た目でもあるが、本種を見かけても温かく見守って頂きたい。
また水族館でも飼育されているが、日本にもいる本種よりも寧ろ、大抵は上記の北アメリカに生息するアメリカカブトガニの方が数多く飼育されている。
現代での利用
近年その血液に細菌試験の突出した効能を示す酵素が発見され、医療機器の細菌汚染を確認する「LAL試験」で重宝されており、現代医療にとってカブトガニの血中の酵素は不可欠な存在になりつつある。
主にアメリカ東海岸で生産され、当局の許可の下で年間25万匹以上のカブトガニが捕獲される。
捕獲されたカブトガニから30%の血液を採取し、ある程度の療養をさせたのち海に還される。
しかしそれでも一定数が放流直後に死亡しているとされており、現在カブトガニへの負荷を減らすために人工的な高性能LAL試験薬の研究開発が進められている。
また福建省の一部などの中国南部から東南アジアにかけての地域では、カブトガニ類の卵と身の一部を食用として食べる習慣があり、屋台の飲食店で丸ごと網焼きなどにされている光景に出くわす事もある。
しかし、東南アジアのマルオカブトガニは季節によって毒を持つ事から要注意とされるている。
ちなみに日本で国産のカブトガニを食べると文化財産保護法違反となり、5年以下の懲役又は20万円以下の罰金が科せられる。
カブトガニの種類
現存種
- カブトガニ(メイン画像)
- アメリカカブトガニ
- マルオカブトガニ
- ミナミカブトガニ
絶滅種
デボン紀
- ウェインベルギナ
石炭紀
- イクニオピラミス
- ユープルプス
三畳紀
- オーストロリムルス
ジュラ紀
- メソリムルス
その他
引っ繰り返ると起き上がれなくなる……
……というようなことはないが、多少は苦労する。
ゲームソフトあつまれどうぶつの森でもネタにしており、捕獲した本種に触ると動画のような動きを見せてくれる。
関連項目
さかなクン:中学生時代、地元の漁協から網にかかった個体が何匹か学校の理科室に寄贈され、その世話をしている最中に偶然にも人工孵化を成功させる。
創作・フィクション関連
アンシェントドーザー(ダライアス外伝)
クロノフォス・ザ・トリデンロイド(ロックマンゼクスアドベント)