海軍大将
かいぐんたいしょう
概要
世界政府直属の会場治安維持組織・海軍の最高戦力。
構成については、物語前半にあたる第1部『超新星編』と、その2年後(現在)を舞台にした第2部『新世界編』で異なるが、いずれの世代においても海軍の脅威を示す存在として海賊たちにも広く知られ、畏怖されている。
主人公モンキー・D・ルフィや彼率いる麦わらの一味も、この大将たちそれぞれとの初接触の度、その圧倒的な戦力差で何度も窮地に追いやられており、いずれも大将側の心変わりや第三者の介入などで撤退を余儀なくされている。一味の視点で作品を追っている読者にとってもトラウマ級の絶望感を与える存在だった。
しかし一方で、(元含む)大将同士の意見…特に各々の持つ「正義」の在り方についてのすれ違いなど、彼らも決して一枚岩と呼べる体制とは言えず、物語が第2部に移り変わる中間期間で起こった内紛以降はそれぞれの思想が衝突し合う場面もみられるようになった。
また、世界貴族の要請で出動する義務があり、主に彼らが危害を加えられた時に軍艦を率いて加害者に報復を行なうシステムとなっているが、悪く言えば「世界貴族の番犬」になる事を意味しており、本来ならば大将に抜擢されるはずのモンキー・D・ガープは民衆を虐げる世界貴族のために働く事を避けるために敢えて中将止まりとなっている。
一覧
過去の大将
「青雉」の異名をとる、ダラけきった正義を掲げた自然系ヒエヒエの実の能力者。
2年前に起こったマリンフォード頂上戦争後、サカズキとの元帥の座を懸けた決闘に敗れ辞任。それに伴い海軍も脱退した。
「赤犬」の異名をとる、徹底的な正義を掲げた自然系マグマグの実の能力者。
2年前に起こったマリンフォード頂上戦争後、クザンとの決闘に勝利し元帥へ昇進。
「仏のセンゴク」の異名をとる、君臨する正義を掲げた動物系幻獣種ヒトヒトの実モデル大仏の能力者。
大将として海賊王ロジャーをはじめとした伝説級の海賊と対峙した。
22年前、元帥へ昇進。
「黒腕のゼファー」の異名をとる、正しき海軍の体現者。
非能力者ながら大将の座につき、全盛期のロジャーや「白ひげ」エドワード・ニューゲートらと鎬を削った。
32年前、海賊の報復として妻子を喪いその失意のまま辞任。以降は教官としてのちの大将を含む新米海兵らを指導した。
登場と変遷までの経緯
第1部では、ロングリングロングランドにて“青雉”クザンが初登場し麦わらの一味と接触。因縁を持つロビンの口から三大将の存在と、彼以外の二人の通り名が明かされた。当初は「非番」を理由に戦意がないとしていたが、しばしの交流でルフィに対し懸念を抱き、一転して粛清を宣告。一味総出でもまるで攻撃を受け付けない程の実力を見せつけ圧倒するが、ルフィが一味を守るために売ったタイマン勝負を勝ったことで「これ以上は野暮」と引き下がり見逃した。
(TVアニメ版では空島編後に挿入されたオリジナルエピソードにて、先行して“赤犬”の存在が触れられていた。またその後のエニエス・ロビーでのロビンの幼少期の回想でも当時中将の“赤犬”が登場しているが、この頃はフードで素顔が隠され直接の戦闘描写もなかった。)
青雉の登場からだいぶ後、シャボンディ諸島にてルフィの起こしたとある重大事件を受け本部から“黄猿”ボルサリーノが召喚され、あわや一味全滅の危機まで追い込まれるが、冥王シルバーズ・レイリーの手助けや王下七武海バーソロミュー・くまの介入により逃げ延びる。
更にその後、当時の本部所在地であるマリンフォードにて、四皇白ひげ率いる連合軍を相手取った一大戦争が勃発。それに伴い三大将も揃い立って参陣し、既に登場している青雉と黄猿に加え、“赤犬”サカズキの全貌がようやく公開される。戦争の発端でもあるルフィの兄エースを処刑し、ルフィに心身共に甚大な負傷を与えて絶命の危機まで追い詰めたが、ジンベエはじめ協力者たちによる決死の救出劇と、突如現れた赤髪海賊団の執り成しにより戦争は終結。
終戦後、センゴク元帥(当時)が退任を表明。前任者でもある現・世界政府全軍総帥コングの勧めもあり「大目付」という立場で籍を残す形に留まったものの、これにより海軍内部は元帥の後任人事に大きく揺れることになる。最終的に、軍内はセンゴク自身が推薦した“青雉”派と、五老星側の推す“赤犬”派に二分され、両者は激しく対立することに。最終的に両名によるパンクハザードでの10日間に渡る決闘を経て、“赤犬”が元帥に就任。敗れた“青雉”も海軍を除隊したことで一時的ながら三大将の構図は事実上瓦解することになる。
その後に行われた「世界徴兵」という大掛かりな人事改革により、新たに“藤虎”と“緑牛”の2名の人材が大将に抜擢される。
“藤虎”イッショウはドレスローザにて初登場。政府公認の王下七武海であるドフラミンゴの隠蔽してきた数々の非道や、邂逅したルフィに対する世間の評価とは異なる印象もあり、現実から目を逸らし都合の良い体制の維持をとり続ける政府や海軍に不信感を募らせる。ドフラミンゴの逮捕後、公衆の前での土下座により、藤虎はサカズキから海軍施設への立ち入りを禁止されるものの、現在も三大将の一人として立場を維持。聖地マリージョアにも完璧な理論武装?で出入りするなど、ほぼ実害がない模様。また“緑牛”は、“藤虎”がマリージョアに入った頃におこなわれていた世界会議にてシルエットで登場。食事を摂らない奇妙な体質や、政府が開発した「新兵器」についての談話を展開した。
そして、ワノ国で勃発した光月家と四皇カイドウによる大合戦の終結後、政府非加盟国である筈の本国に“緑牛”アラマキが単身で入国。通話からサカズキも予期せぬ行動であるようだが、その目的は………?
備考
肩書の由来
構成される大将たちはいずれも「色 + 動物」という二つ名を有しており、第1部の三人は色の三原色と日本のおとぎ話『桃太郎』の犬猿雉がモデルとなっている。
対して、第2部にて新たに加わった2名の二つ名は、色については上述の三原色で「赤+青」の藤色(紫)と「青+黄」の緑から、動物については方位を干支(十二支)で表す際、「鬼門」と呼ばれる北東を表す「艮(うしとら / 丑と寅)」がそれぞれ由来と推測されている。『桃太郎』の犬猿雉も、元々はこの鬼門と逆方位に位置することから鬼退治のお供に抜擢されている(犬=戌、猿=申、雉は鳥=酉に由来)。
このことを単行本の質問投稿コーナーである『SBS』で読者から指摘された際、作者の尾田栄一郎は答えをはぐらかしているため真相は不明。
また、同じくSBSにおいて(同コーナーではお馴染みの読者からの無茶振りで)「大将候補」とされる人物として“桃兎(ももウサギ)”や“茶豚(ちゃトン)”、本編でも海軍犯罪捜査局局長“黒馬(くろウマ)”が登場しており、奇しくも、いずれも上述の大将らと同じく干支が由来となっている(兎=卯、豚≒猪=亥、馬=午)。SBSの無茶振りはともかくとして、作者自らが黒馬を登場させたことを考えると、今後海軍関係者として同様の法則で肩書をとるキャラクターが登場する…かもしれない。
それぞれの性格のバランス
基本的には三大将は過激派、中立派、穏健派の3人で構成されており、青雉と藤虎が穏健派、赤犬と緑牛が過激派となっている。第1部の二人はオハラでのバスターコールや頂上戦争後の元帥後任を賭けた対決など明確な対立描写があるが、第2部の新大将二人には今のところ、表面的な対立姿勢は見られない。
中立派は1・2部ともに黄猿だが、特に両者を取りなすといった立ち回りは今のところ描かれておらず、現在も新大将二人に溝が生じることもないせいか、元帥となったサカズキに連れ添っている描写が多い。
モデルについて
上述の大将およびその候補たちと犯罪捜査局長はそれぞれ実在の日本映画界の往年の名優たちがモデルとなっており、その人柄についても、各人物の代表作のイメージが大きく反映されている。そのためか、Pixivではモデルとなった俳優に本作キャラクターの衣装を着用させたファンアートが投稿される例も少なからず存在する。以下一覧。
二つ名 | 本名 | 俳優(敬称略) | モデルの作品 |
---|---|---|---|
青雉 | クザン | 松田優作 | 工藤俊作@『探偵物語』 |
黄猿 | ボルサリーノ | 田中邦衛 | ボルサリーノ2@『トラック野郎』 |
赤犬 | サカズキ | 菅原文太 | 広能昌三@『仁義なき戦い』 |
藤虎 | イッショウ | 勝新太郎 | 座頭市@『座頭市』 |
緑牛 | アラマキ | ??? | ???@『???』 |
桃兎 | ギオン | 木暮実千代 | 美代春@『祇園囃子』 |
茶豚 | トキカケ | 渥美清 | 車寅次郎@『男はつらいよ』 |
黒馬 | テンセイ | ??? | ???@『???』 |
※緑牛と黒馬のみ、現時点では推測。
余談
第2部当初の構想
作者によると、当初は第2部の三大将は黄猿のみが続投することから中国の伝奇小説『西遊記』の孫悟空(猿)と猪八戒(豚)と沙悟浄(河童)をモチーフにするという構想もあったらしい。なお悟浄が「河童」というのは日本における創作であり、原作では「藍色肌の僧姿の妖怪」とされ、現地ではヨウスコウカワイルカやヨウスコウアリゲーターという説が有力。また、河童は中国妖怪の「水虎」(虎)と混同されることが多く長江のそれも有名。
なので、現在の構成に緑牛の代わりに茶豚を加えると、一応は西遊記の構図が描けなくもない。
大将の思想
2年前の三大将は、市民の犠牲も厭わないタカ派の赤犬、情に厚いハト派の青雉、職務に忠実な黄猿というように大将の性格がバランスが取れていた。
しかし、青雉が辞め赤犬が昇進した結果入ってきたのが、体面を気にせず土下座する藤虎と、非加盟国国民には人権がないとすら言い切る差別主義者の緑牛と、かつての赤犬以上のタカ派と青雉以上のハト派が登用されたことにより、天秤の腕が長くなる形でバランスが取れてしまう皮肉な事態となった。元帥となった赤犬の胃と頭が痛くなりそうだが。
関連イラスト
今現在のところ緑牛が登場して間もないためか、概ね第1部(2年前)の3人(ボルサリーノ、サカズキ、クザン)を題材にしたものが大半を占める。もしくは本項メインイラストのようにイッショウを加えた4人で描かれる例も存在する。