概要
馬名 | エフフォーリア |
---|---|
欧字表記 | Efforia |
生年月日 | 2018年3月10日 |
性別 | 牡 |
毛色 | 鹿毛 |
父 | エピファネイア |
母 | ケイティーズハート |
母の父 | ハーツクライ |
管理調教師 | 鹿戸雄一(美浦) |
馬主 | (有)キャロットファーム |
生産 | ノーザンファーム |
2018年3月10日、ノーザンファーム生まれの日本の競走馬。戦績は2021年終了時点で7戦6勝。
馬名はギリシャ語で「強い幸福感」(Efforia)を意味する。
父エピファネイアはシンボリクリスエス産駒で、母父にスペシャルウィークを持つ2013年の菊花賞馬。現役時代は菊花賞の他に2014年のジャパンカップを制した。種牡馬としては初年度産駒から史上初となる無敗の三冠牝馬・デアリングタクトを輩出するなど順調で、エフフォーリアはその2世代目の産駒となる。
母ケイティーズハートは現役時代は15戦3勝。その父は現役時代に無敗の三冠馬ディープインパクト相手に国内で唯一勝利し、種牡馬としても活躍したハーツクライで、その他にはヒシアマゾンなどを近親に持つ。
経歴
デビュー前
2018年3月10日、ノーザンファームにて誕生。
デビュー前は馬主となったキャロットファームの秋田博章社長曰く「印象がない」とされており、1歳夏まで過ごした育成牧場「ノーザンファームイヤリング」では「血統は良い。でも緩い」と評価されるなど、当時のエフフォーリアは至って平凡な馬だったという。
その後はノーザンファーム空港牧場へ移動し、C-1厩舎で後期育成を受ける。この頃は「馬体の良さは目を引いたが、動かして見るとトモの緩さが目立った」と評価された。なお、同じC-1厩舎の育成馬には同じくハーツクライの血を引く後の2歳王者ダノンザキッドがおり、育成時は共に坂路を駆け上がっていたという。
2020年(2歳)
当初は体質が弱く、調教後に腹痛を起こしてしまうこともあったが、8月23日の新馬戦(札幌競馬場)で横山武史を背にデビュー。1番人気に支持され、後続のエスコバルを3/4馬身差で振り切り初勝利を挙げた。
11月8日の百日草特別(東京競馬場)も快勝し、2戦2勝で2歳シーズンを終える。
2021年(3歳)
そして迎えたクラシックシーズンとなる3歳シーズン。エフフォーリアは初戦を共同通信杯(GⅢ)で迎える。
ここも2着に2馬身差を付ける快勝で重賞初勝利を遂げた。
皐月賞
「横山武史!クラシック制覇ー!エフフォーリアァァァァ!!!」byアオシマバクシンオー
そして皐月賞では前年の最優秀2歳牡馬ダノンザキッドに次ぐ2番人気に推された。
好位から抜け出すと2着タイトルホルダーに3馬身差を付けて勝利。3着はステラヴェローチェ。
鞍上の横山武史はこれがGⅠ初勝利となり、父の横山典弘(武史が生まれた1998年にセイウンスカイで優勝)と合わせて皐月賞父子制覇を達成。
調教師の鹿戸雄一はスクリーンヒーローで優勝した2008年のジャパンカップ以来13年ぶりのGⅠ勝利。
また、無敗の皐月賞馬は2019年のサートゥルナーリア、2020年のコントレイルに続いて3年連続史上19頭目となった。
日本ダービー
コントレイルに続く無敗の二冠・そして29年ぶりの無敗の二冠馬2年連続誕生が懸かった第88回日本ダービーは、単勝1.7倍の圧倒的1番人気に推された。
1枠1番の出走となったエフフォーリアは最後の直線に向くと脚を伸ばして先頭に立った。が、後ろからすごい勢いと瞬発力で伸びてきた小柄な黒鹿毛の馬がいた。それは、かつて共同通信杯で負かしていたシャフリヤールだった。この2頭の激しい叩き合いとなり、並んでゴールイン。
写真判定の結果ハナ差で2着に敗れ、エフフォーリアは初黒星。その差わずか10センチで2年連続の無敗2冠馬の夢が絶たれた。奇しくも去年成し遂げたコントレイルと、本年エフフォーリアを凌いだシャフリヤールの鞍上はいずれも福永祐一騎手であり、史上3人目のダービー連覇の夢のほうが叶う結果となった。
ちなみに、父のエピファネイア(2013年)、母父のハーツクライ(2004年)、父父のシンボリクリスエス(2002年)はいずれも2着に敗れていたため、エフフォーリアは親子3代でダービー2着に敗れるという結果になった。父エピファネイアは奇しくも当時ダービー未勝利の福永祐一騎手がダービーに騎乗しており、シャフリヤールと同じディープ産駒のキズナ(鞍上武豊)にゴール前に差され2着。また、横山武史は22歳で勝てば戦後最年少のダービージョッキー※となっていたが、父の横山典弘も22歳の時にメジロライアン(1990年)で2着に敗れている。なお、この敗戦は横山武史にとってものすごいトラウマとなっているらしく、今でも彼の中で悪夢となっているとのこと。
※史上最年少は前田長吉の20歳(1943年にクリフジで優勝)。
レース後は放牧に出され、秋に帰厩。
陣営はクラシック2冠がかかる菊花賞にはあえて向かわず、古馬相手の天皇賞(秋)と有馬記念に出走するプランを発表した。この菊花賞へ向かわないという陣営の決断には賛否あったが、最終的にこの決断は英断となった。
天皇賞(秋)
「若き人馬が頂点に立ちました!3歳馬エフフォーリア!22歳、横山武史!」
そして、迎えた第164回天皇賞、3番人気に支持される。このレースはの1番人気は無敗の三冠馬ながら、勝利から遠ざかっているコントレイル、2番人気は短距離、マイル、中距離の3階級制覇を狙うグランアレグリア。4番人気以下は離れており、3強を形成した。この3強は共通して前走敗れており、これ以上負けられないレースとなっていた。
レースは中団で脚を溜め、直線に向くと脚を伸ばし、グランアレグリアを交わして先頭に立つ。そしてコントレイルの猛追を振り切り、1着でゴールイン。相手がディープインパクト産駒の三冠馬だけに、母父ハーツクライの血が騒いだのだろうか。余談だがジャスタウェイやリスグラシューといったハーツクライの産駒たちが三冠馬相手に勝っているため、ハーツクライの血には「三冠馬キラー」という異名まである。なお、ハーツクライ自身も三冠馬キラー。詳細は当該記事参照。
これによって自身のGⅠ2勝目を挙げた上、3歳馬による秋天制覇は祖父(父方)であるシンボリクリスエス以来19年ぶり、史上3頭目の快挙となった(名称が『帝室御賞典』だった時代を含めれば4頭目)。東京競馬場開催の秋の天皇賞では、バブルガムフェロー以来25年ぶりの制覇ともなった。
また、鞍上の横山武史はこれでGⅠ4勝目となり、祖父・横山富雄(1969年にメジロタイヨウで制覇)、父・横山典弘(2009年にカンパニーで制覇)に続く史上初となる親子3代による天皇賞(秋)制覇を成し遂げた。
しかしレース後、厩舎から放牧先の天栄に向かう際に馬運車内で落鉄して蹄を負傷。
治療にそれなりの時間を要した上、次走の本番はエクイロックスによる接着装蹄での出走を余儀なくされるという割とシャレにならないアクシデントを挟んだ。
それでもなんとか予定通り有馬記念に出走することとなった。
有馬記念
年末の有馬記念では史上最多得票となる260742票を集め、堂々のファン投票1位に選ばれる。
しかし前日、エフフォーリアの周囲で幸先の悪い出来事が立て続けに起きてしまった。
鞍上の横山武史は、その日デビュー戦を迎えたエフフォーリアの半弟ヴァンガーズハートに騎乗したが、ゴール前で手綱を緩めたところを差し切られ、ハナ差で勝ちを逃してしまう。これが『油断騎乗』と見做され、有馬記念への騎乗こそ可能なものの年明けに開催2日間の騎乗停止という制裁を受けることになった。そのせいか、横山は周囲が心配するほど落ち込んでいたという。
さらに同厩舎のベストアクターが予後不良になるなど、鹿戸厩舎にとっては悲しい1日となってしまった。
しかし有馬記念当日、パドックでは鹿戸調教師から「武史が一番上手いから、信じて乗ってこい」と声をかけられた横山は、気を引き締めて騎乗した。
「エフフォーリア!エフフォーリア!エフフォーリアァァ!!有馬も勝ったエフフォーリア!」byアオシマバクシンオー
レースでは最終コーナーで抜け出し、ディープボンドとこれが引退レースとなるクロノジェネシスの猛追を凌ぎ、GⅠ3勝目を挙げた。
3歳馬の天皇賞(秋)と有馬記念の連勝は父父であるシンボリクリスエス以来19年ぶり。3歳シーズンを終えた時点でその見事なまでの隔世遺伝ぶりから、「シンボリクリスエスの再来」という二つ名を確定的なものとした。
クロノジェネシスのグランプリ4連覇を阻み、また4着にステラヴェローチェ、5着にタイトルホルダーと皐月賞の上位3頭が全て掲示板に入ったことで、世代交代を印象付けた。
これで誰も疑わない現役最強馬となったエフフォーリア。通算7戦6勝、負けたのは同タイムでハナ差の日本ダービーのみ。連対率100%で3歳を終えた。
これらの戦績から、2021年のJRA賞では満票で最優秀3歳牡馬に選出され、更にこの年、日本馬初のBC勝利を含む海外GⅠ3勝のラヴズオンリーユーに大差をつけて2021年の年度代表馬にも選出された。
ちなみに3歳牡馬での年度代表馬選出は2011年のオルフェーヴル以来である。余談だが、年度代表馬に選出された際の票数277票は、シンボリクリスエスが3歳で2002年の年度代表馬に選出された際の票数と同じであり、ここでもシンボリクリスエスの再来となった。
2022年(4歳)
4歳となる2022年は大阪杯(GⅠ)を始動戦とし、春は国内路線であることが陣営から発表された。また、大阪杯の結果と状態次第では宝塚記念(GⅠ)も視野に入れるとも語られた。
大阪杯
4月3日の大阪杯は1番人気で出走。
シャフリヤールらは不在だが、金鯱賞をレコード勝ちした同期の逃げ馬ジャックドールとの対決が期待された。
……が、前年のコントレイルの敗北と同じく、やはり大阪杯には魔物が潜んでいたのだろうか、初めて掲示板を外す9着と惨敗した。
ちなみに2番人気のジャックドールも5着で、勝ったのは8番人気のポタジェという波乱のレースとなった。
横山武史騎手は「この馬らしさがなかった」「早めに踏んでいきたかったけど、余力がなかった」とコメントしている。
またレース後に鹿戸調教師は「ゲート内で顔をぶつけたような痕があった」とも明かした。
初めての長距離輸送、初めての阪神、初めてのハイペース展開など、様々な要因が複合的に絡んだ結果だと推測されている。
同期のダービー馬シャフリヤールはドバイシーマクラシックを制し、菊花賞馬タイトルホルダーは日経賞を勝って春天へ向かう中、エフフォーリアは出鼻を挫かれる形となってしまった。
それでも陣営は当初の予定通り宝塚記念を目指し、立て直しに励んだ。
宝塚記念
グランプリレースたる宝塚記念では、春天を制したタイトルホルダーの他、ドバイターフでGI馬となった逃げ馬パンサラッサ、大阪杯での勝ち馬ポタジェ、怪我からの復活を図る三冠牝馬デアリングタクトなどが集った。
ファン投票ではタイトルホルダーが1位となり、エフフォーリアは約3000票差の第2位となる。
それでもあのオグリキャップの最多得票数記録を超えていた(逆にネット投票もなかった時代なのに32年間記録を保持していたオグリも凄いが)。
事前の調教ではなかなか動きが良くならなかったが、ブリンカー(気が散らないように馬の視界を狭める器具)を装着することで本来の切れ味が戻ったと発表された。
それもあってか、もしくはタイトルホルダー側の不安要素(他にも逃げ馬がいる、距離が足りないのではないかなど)も影響してか、当日のオッズでは1番人気に支持される。
レースは有馬記念と同じく、パンサラッサが先頭をかっ飛ばすが、最序盤にタイトルホルダーと競り合ったため1000m通過が57.6秒という凄まじいハイペースとなる。エフフォーリアはデアリングタクト(同父、牝)が彼のすぐ横についたため、馬群から抜け出せない苦しい状況に。
さらに先のパンサラッサとタイトルホルダーの2頭は一切ペースを緩めなかったため、エフフォーリアは武史騎手曰く「着いて行くのがやっと」の状態で脚が溜まらず、直線では末脚も見せたものの6着に終わった。
対するタイトルホルダーは苦手と思われていた番手からの競馬でレコードを叩き出し、非の打ち所のない勝利を遂げた。
宝塚後
次走は連覇のかかる天皇賞(秋)を予定してい……た。
8月20日になって膝やトモ、球節、蹄などの脚部各所の不調が改善したいため、秋のプランを白紙にすることを発表した。
このことで前述のアクシデントが元で故障し、有馬記念で勝ったのはいいが、大阪杯と宝塚記念は故障を押して出走していたのではという疑惑も出ている。
ちなみにエフフォーリアの放牧先であったノーザンファーム天栄はここ1年ほどで有力馬の故障が相次ぎ、2022年度はまともに走っているのがソングラインくらいという有様なこともあり、この一件でその管理体制に疑問符がつくこととなった。
復調した彼が再びターフを賑わかせることを期待したい。
余談
マシーン…?
エフフォーリアは大人しい性格とそれゆえの抜群の操縦性、見ようによっては怖い白目がちな右目、生のそのままのにんじんを「バリッボリッ」と食べる姿(カットしたり磨りおろしたりしないと食べない馬もいる)、そしてダービーでの惜敗を経て以降の無慈悲な強さが「悲劇をきっかけに豹変して勝ちに執着するようになった、漫画などでよく見かける感じのキャラクター」っぽいことなどから一部では「悲しき競馬マシーン」、「サイボーグ」などと呼ばれている。
ただしレース以外では撫でられて甘える様子も見せており、同じくサイボーグと呼ばれたミホノブルボンが実は負けず嫌いだったのと同様、普段は見せない一面があるらしい(ちなみにミホノブルボンも菊花賞で無敗の三冠達成をシャフリヤールと同じく小柄な黒鹿毛の馬、ライスシャワーに阻まれている)。
また2021年有馬記念勝利後、口取り式の際に横山武史を軽くどつく場面があり、「勝ったんだから笑えよ」と言っているように見えたファンもいた(武史騎手は前日の油断騎乗の件から素直に勝利を喜べない心境だったようで、勝利者インタビューでも改めて謝罪している)。
なお、強面に関しては単に母ケイティーズハートからの遺伝の可能性がある。
撃墜王
他には愛称の「F4」からF-4「ファントムⅡ」戦闘機を連想すること、古馬のエースたち(特に『飛行機雲』という意味のコントレイル)に勝ったことから「撃墜王」と呼ばれたりもしている。
余談だが航空自衛隊のファントムⅡは2021年皐月賞の1ヶ月ほど前に完全退役しており、話題になったこともこの異名がついた理由と思われる。
関連イラスト
2021年、天皇賞(秋)制覇時の記念イラスト。鞍上はセイウンスカイ(ウマ娘)、馬主役はスペシャルウィーク(ウマ娘)。現実ではエフフォーリアの主戦騎手である横山武史は先述したようにセイウンスカイの主戦騎手だった横山典弘の息子であり、またエフフォーリアはスペシャルウィークのひ孫(エフフォーリアの父・エピファネイアの母父がスペシャルウィーク)にあたる。