概要
ガメラ以外に昭和と平成にまたがってシリーズに登場している唯一の怪獣で、ガメラシリーズを代表する人気怪獣でもある。
昭和シリーズに登場したものを昭和ギャオス、平成シリーズのものを平成ギャオスと俗に呼称する。
昭和版、平成版に共通する設定として
等が存在する。
巨大な翼を有することから俗に怪鳥と呼ばれるが、平成ガメラで言及される通り「羽毛が無く、牙がある」という特徴を持っており、厳密にじゃ鳥とは言えない生物である。どちらかといえばコウモリなどに近いが、哺乳類でもないので普通に翼竜か飛竜といった方が正確かもしれない。
外宇宙の惑星での繁殖や成層圏への超短時間での到達など、異常ともいえる空戦能力を持ち、宇宙空間での生存能力も示唆される。
昭和版のギャオス
第3作『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』に登場。
日本列島を貫くフォッサマグナと呼ばれる場所で眠っていたが富士山の火山活動によって覚醒した
身長65m、翼開長175mと巨大だが、体重はたったの25t。参考までに書いておくと、全幅45mのB-29が32.9tである。どういうこっちゃ?
名前はこの怪獣と接触し、ガメラに助けられて生存した少年の「ギャオーって鳴き声だからギャオスだよ」という言葉に由来する。
特徴は首の骨が二本あり、これが音叉の役割を担っている事である。
この二本の首の骨で、ギャオスはその代表的な武器である「超音波メス」を発生させる。
ただしその首の構造上、頭を横に向けることは難しく、急激な左右運動に対応できず目を回すことがある。
このような、既存の生物には無い特徴を有するため、劇中では登場した科学者は「(生物として分類するなら)あえて言うなら『怪獣類』」と述べている。
よく自動車の運転初心者マークにも例えられがちな独特な形状の頭部には、発光器官が備わっている。空腹時には側頭部が緑に、危機的状態に陥ると頭頂部が紫に発光する。
弱点は太陽光(というより紫外線)で、長時間紫外線を浴びると体細胞が破壊されてしまう。そのため、基本的に夜行性。
その他に炎も苦手であるが、胸から黄色い消火液を噴射する事で火炎の類は消火してしまう。
消化液は、ガメラの火炎噴射はもちろん、回転ジェットの炎も消して無効化してしまうほどの効果がある(これは後のイリスにも受け継がれる予定があった)。
一方で再生能力に優れており、たとえ身体の一部分が欠損しても短期間で生え変わる。
活動開始後は富士山麓のフォッサマグナ内に出来た不気味に光る洞窟に潜み、夜な夜な付近の人間や家畜に被害を及ぼし、中盤には名古屋を襲撃して名古屋城を破壊、甚大な被害を出すものの、ガメラとの激闘の末に撃退される。
この「海上のガメラに脚を食いつかれたギャオス」の構図は怪獣映画史でも名場面の1つとして数えられ、後にフィギュアも発売されている。この時ギャオスは自らの脚を超音波メスで切断したが、自己再生能力ですぐに治癒している。
また、人間を食うため、(前作「~対バルゴン」でもあった)「人間を捕食する」シーンも描かれている。その際には翼にある手で人間を掴み、口に運んで咀嚼している。肉を食らう以外にも、生物の血液も好んでいるようで、人工血液を用いて誘き出されている。
人類サイドによる「拘束して弱点の太陽光で殺害する」「山ごと燃やす」などの、対ギャオスのための大規模な作戦は尽く失敗。しかし、最後にはガメラとの戦いの末、富士山火口に引きずり込まれ死亡する。
イメージモチーフは吸血鬼であり、人間を餌にする、光を嫌うなどの設定はそれらから来ている。
ちなみに新作の時に明かされたことだが、実は昭和ギャオスも後の平成ギャオスの様なスタイリッシュな体型でデザインされたのだが、着ぐるみと表現の限界によって実際の作品のような姿になったとのこと。
なお、着ぐるみは翼を広げたものと、畳んで陸上活動するものの二種が作られ、撮影に用いられた。
それらの他、多数ある胸部のV字型の筋が二つしか無く、黄色くなっているNG版の着ぐるみも存在する。
一部設定では、耳と翼の爪がレーダーになっており、爪からは毒液を、胸からは毒粉を噴出し、足から空気を発射するという、後のギャオスに通じる設定がある。消化液にも敵を痺れさせる効果があるとされる。
次回作「ガメラ対大悪獣ギロン」には、惑星テラに存在する亜種が登場する。
詳細は『宇宙ギャオス』を参照。
平成ギャオス
古代文明のアトランティスの高度な遺伝子工学技術によって作り出された怪獣。
玩具などでは「スーパーギャオス」という名称がされている。
身長85m、翼開長185mと昭和よりさらに大きいが、やっぱり体重は75tしかない。
昭和版ギャオスの設定を受け継ぎつつも、より生物的な外見、特徴が加えられており、昭和版では動かなかった首も普通に可動する。
羽ばたきは少なく、グライダーのように滑空することが多い。その状態で超高速で安定した飛行ができる理由として“尾部の膜を、超高速振動させることで推進力を得ているから”とされている。
翼を折りたたみ、槍のような形態になって高速で疾駆できる他、その状態で大気圏を突破(音速を超えたため、慣性の法則に従って勢いが付きすぎたため?)したりしている。
喉から発する超音波メスは鋼鉄を易々と切断し、ガメラの体にも傷をつける。
鋭い牙や爪も武器になり、飛び掛かって二重の極みの如き連続格闘攻撃を行うこともある。
夜行性だが、これは昭和時代の種のように日光に体組織が耐えられないからというわけでは無く、単純に目が強い光に弱いだけであり、劇中では幼体時には、日光どころかカメラのフラッシュやサーチライトにも怯む様子を見せていた。しかしそれは幼体時のみの話で、成体になると目に無数の水晶体で構成される遮光膜が形成され、光に対する耐性を獲得。昼夜を問わずに活動できるようになる。なお、遮光膜によって光が反射するため、成体の目は赤く見えるようになる。
成長速度が尋常ではなく、出現から数週間で翼長15mから100mへと成長する。成体への変化の際には、蛇のように全身の皮が剥ける、いわゆる脱皮のようなものを行う。
ギャオスは多様な生物の利点のみを集めて作られたことから、その遺伝子情報には多くの生物の優れた特徴を有している。
遺伝子に含まれている染色体の核型はたったの1対(ちなみに人間は23対、鶏は39対、イモリは12対)で、加えて通常の生物は進化の過程の結果故に染色体の情報には必ず無駄な部分が出るとされるが、ギャオスの染色体に組み込まれている情報には一切の無駄がなく、「遺伝子的に完璧すぎるほど完璧」「自然に進化したのではなく、最初からあの姿で生まれた」と称された。
しかも、遺伝子の中にはメスの記号であるXXの性染色体だけでなく、オスの記号に当たるYYの性染色体(なお、実際のオスの性染色体はXYである)も同時に内包されており、ギャオス自体は基本的に全てメスであるものの、環境によってメスがオスに変わることもあれば、たとえ一匹だけでも単為生殖による繁殖が可能であることも判明、以上の事からすなわちギャオスとは「進化の系統樹のどこにも属さない生物」いわば人工生命体であると結論付けられた。
このため古代文明アトランティスは「自らの手で作り出したこのギャオスを制御できずに滅んだ」と劇中で推察されている。が、第3作ではさらに踏み込んで「人類は滅ぶべきであるという考えを持つ一部の人間によって、初めから人類の天敵として作られた」という推測もされた。
また、単為生殖が可能な故か、食うものが何も無くなった場合は共食いをしてまで生存・繁殖を行おうとする習性があり、姫神島の洞窟内に大量にあった耐久卵は孵化と同時に共食いを行い、最終的に3匹が残った。※
※ノベライズでは5匹。長峰はこの時、
「島を飛び立った数が、種を維持するための最適な数とは思えない」
「もしかすると、(共食いする事で)殺戮そのものを楽しんだのではないか?」
という仮説を立てていた。
東京タワーに巣を作っていたので、育てる親がいる場合はこの限りでは無い。
劇中は子育てする前にタワーごとガメラに破壊されてしまったので、幼体への給餌をどのように行うかは不明であったが、PS4ゲーム「巨影都市」にてギャオスの巣の様子が描かれており、その様は生きたまま人間を捕まえて巣に放り込み、動ける幼体の生き餌にするという恐ろしい物である。
おおよそこんなイメージ(ゲームでは3m位の個体が襲ってくる)
知能も高く、自衛隊の地対空ミサイルの接近を音で察知し、逆に東京タワーへと誘導して破壊。営巣に適した環境を作るなどの行動も見せた(本記事のメイン画像は東京タワーに営巣したギャオスの姿を映した劇中の印象的なカットである)。
片足を切断してガメラから逃れるという昭和版へのオマージュも披露しており、この状態での地上戦も可能なほどバランス保持能力も高い。
第1作に出現した3個体は全てガメラによって撃破されたが、マナの消費が進んだ第3作では世界各地で異常発生し、後述するハイパー種への変異も始まっている。
ギャオスハイパー
第3作から登場する、進化・変異型ギャオス。
体色が青がかった黒で、体つきも(見た目を含めて)断捨離してより尖がった感じである。
第1作に登場したものよりも若干だが大型で、飛行速度はマッハ4.5以上にまで上がり、超音波メスの威力と発射時間も向上していること、またラストシーンで窺えるように集団での行動能力も発達している模様。
細型だが耐久性は上がっているらしく、一撃で撃墜されたが死亡してはいない個体もいれば、未成熟の時点ですら威力の上昇した火球の「樋口撃ち」がクリーンヒットしなければ爆散しないのレベルになっている。
活躍
ガメラ大怪獣空中決戦
アトランティスの滅亡後、世界各地に耐久卵(苛酷な環境に耐え、長期保存に適した卵)を生んで覚醒の時を待った。
その後、現在の人類文明が発達し環境破壊がマナの消費が進んだことで生存に適した環境が作られ、1995年、最初の数体が五島列島姫神島で孵化する。この時はもっと多くのギャオスが生まれていたらしいが、共食いによって既に3体にまで減少していた。
やがて翼長15mにまで成長。その後、島の住民に発見され、島に生物学者団を派遣しての調査が行われたが、調査団だけでなく島の6世帯17人の住人を全滅させた。
その存在を確認した日本政府に朱鷺のような希少生物と見做されて捕獲作戦が展開されるが、それに呼応して覚醒したガメラがギャオス殲滅に動き始め、1体目は福岡港で石油コンビナートに叩き落されて爆死する形で、2体目は木曾山中でプラズマ火球によって粉砕される形で、それぞれガメラに殺害される。
残る1体は政府側の「ギャオス保護・ガメラ排除」という方針にも救われて生き延び、翼長100mの大怪鳥と化して東京を襲撃、中央線の列車一両を攫い、中の乗客を全て捕食するという凶行に及ぶ。これを受けてようやく政府もギャオス駆逐を決定、自衛隊がミサイル攻撃を行ったものの、逆にそれを利用して破壊した東京タワーに陣取り、そのまま営巣する。
次の日東京に現れたガメラによって巣はプラズマ火球の直撃を受け爆発、その結果卵は粉砕され繁殖に失敗。その後もガメラと陸空に渡って激闘を繰り広げるが、最終的にはコンビナートの戦いでガメラ渾身のハイ・プラズマと超音波メスの撃ち合いを行い、ハイ・プラズマで頭部を粉砕されて死亡。残った体も倒れこんで爆発四散した。
なお、初期稿と小説版では姫神島を飛び立ったのは5体である。このうち3体は映画版と同じ流れだが、残る2体のうち1体は捕獲作戦時に自衛隊によって射殺され、もう1体は木曽山中の戦いで負傷した後、仲間によって食い殺されている。
また、当初の展開では最後の個体は東京飛来後、スクランブルしてきたF-15Jと空中戦を展開し、超音波メスでF-15Jを撃墜して有楽町マリオンに墜落させるという展開になるはずだった。しかし、この内容に航空自衛隊側が難色を示したため、最終的には「市街地上空のため交戦は許可できない」という展開に収まっている。
ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒
その後、「ギャオスの卵は世界中どこにあってもおかしくない」という危惧の通り、世界中で異常発生が起こる。
特に第2作終盤でガメラが地球上のマナを大量消費してウルティメイト・プラズマを使用したことが原因でギャオスの覚醒に適した環境の形成が急激に進んだとされ、この頃からギャオスハイパーが出現するようになる。
世界中で異常発生を起こしているが、その内の2体はガメラの追撃を受けて渋谷上空にまで到達し、ガメラの圧倒的な戦闘力の前に2体とも死亡する。
イリスをガメラが撃破した終盤、ガメラ排除のために世界中のギャオスが日本へと飛来する。
ガメラは右腕を失い深傷を負いながらも、自衛隊の総力を結集した人類と共にギャオスの大群との戦いへと向かうことになる。
しかし、その結末が語られることなく本作は終了する。
小さき勇者たち~ガメラ~
体高(身長ではない)30m、翼開長90m、体重500t
ガメラ族同様にデザインに歴代と異なる特徴性が(若干だが)あり、翼には皮膜がなく、腕の爪が2本、舌は二又になっている。
歴代でも最も小さいが、最も翼の比率が大きくて飛行にはより理想に近いプロポーションで、体重もぶっちぎりの最重量級。
本編から数年前にとある港町を4匹の群れで襲い、そこでガメラと交戦。最終的にその代のガメラの自爆によって全滅したものの、その時に拡散した細胞によって凶悪な人喰い怪獣ジーダスが生まれた原因にもなっている。
書籍等ではジーダスと比較されてか、オリジナル・ギャオスと呼称されている。
コミックス版で明かされた設定では、当時の自衛隊の全勢力の17%がギャオスによって失われており、この大惨事の規模を考えると、ギャオスたちによる攻撃が広範囲かつ一日・二日どころの話ではなかった可能性がある。
小説版では死してなおガメラ族への深い恨みを細胞レベルで遺しており、それがこのギャオスの因子を取り込んだジーダスを焚きつける原因ともなっていた(別の小説では他の昭和の同期の皆さんもこのギャオスの細胞が原因で誕生している)。
GAMERA(50周年記念映像版)
2015年にシリーズ50周年記念として公開された新作映像でもガメラと共に9年ぶりのカムバックを果たした。
外見、挙動共にギャオス・ハイパーや角川版のオリジナル・ギャオスに近いが、嘴の先が歴代程尖っておらず、猛禽類か何かのように湾曲していることや、背びれが生えたり翼の付け根に妙な突起物が生えたり胴体が長くなったりするなど、鳥やコウモリというより西洋のドラゴンのような顔つきとボディになっている。
丸い吻先や長めの舌をはじめ、顔全体の印象は「ヘビ」を意識しており、「とにかく嫌な奴」っぽくデザインされた模様。
特に見た「目」の狂いっぷりは史上最狂で、その眼はバルゴンのものをさらに虚ろかつ貪欲さと狂気に塗れたものにしたかのようなのが特徴。
嘴が曲がっているのは、実は平成ガメラ第一作の初期デザインの一部でも用いられていた。
こちらも1995年版と同じく、自分より小型の同族に襲いかって共食いをするなど貪欲で凶暴な性質。超音波メスを発射するシーンはないが、背景ではそれらしき光線が映っているので、能力自体は持っていると思われる。
大量の群れで東京を襲撃し、人々を喰らい続けてこれを壊滅状態に追い込んでいたが、突如出現したガメラの火炎放射で一掃させられた。
巨影都市
大型の個体は登場していない。95年版を思わせる見た目だが、幼体も二足で立っている様子が確認され、口周りが白っぽく、2015年の記念映像に登場したギャオスのように背中にはドラゴンを思わせるトゲが生えている。
その他
メインの敵役以外にも、その他のガメラ作品にもたびたび登場。
事実上ガメラのライバル的存在として認識されている節もあり、人気の高さを窺わせる。
公認の自主制作映画『駕瞑羅4 真実』には白い体をしたアルビノギャオスが登場。
超振動と重音波によってプラズマ火球を無効化するなど、通常の個体とは比較にならない強さを持つ。
ゲーム「ガメラ2000」では、地球侵略をたくらむエイリアンがオリジナルの遺伝子にさらに手を加えて生み出した生体兵器として、多数の亜種が登場している
二首の「ネオ・ギャオス」や「バイオニックギャオス(イリスも真っ青の魔改造版)」、ワイバーン型、アルマジロ型、クトゥルフ型などなど、漫画ではジグラに近い水中適応型(「シーギャオス」)や他の昭和怪獣とのキメラ型もいる。
昭和時代の子供向け雑誌によると巣の内部には「幼虫」もいたり「ギャオスの墓場」も存在する(参照)という平成版に負けず劣らずの変態ぶりである。
2020年に行われた『戦姫絶唱シンフォギアXD』とのコラボイベント「ガメラ大怪獣絶唱」では『ガメラ3』の続編ということになっており、その平成版の種が登場している。
しかし、あの京都の戦いの後にガメラが休眠状態に入ってしまったらしく、それからの約20年間人類はギャオスの大群の襲撃に晒され続け、遂には絶滅の一歩手前にまで追い詰められてしまったことが語られている。
関連イラスト
関連タグ
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バードン・・・・こちらも怪鳥の異名を持ち、人間を捕食する。
MM9・・・小説版には爬虫類や鳥類ではない「怪獣類」としか分類出来ない生物アギャーラという怪獣が名前だけ登場する、ちなみに実写ドラマ版にはスカイウォーカーというギャオスに似た怪獣が登場する。
ギャオス内藤・・・元プロ野球選手「内藤尚行」。登録名の元ネタ。