概要
鉄道の写真を撮る者たちの総称。問題行動や異常行動が多く見受けられたことから、いつしか単なる写真愛好家とは区別するためこう呼ばれる向きもある。
カメラの発明と鉄道の開始時期が近かったこともあり、鉄道ファンの形態のみならず世のオタク趣味の中でもかなり歴史の長いものであり、下は小学生から上はご老人までと嗜む人は幅広い。
またその撮影対象も様々であり、SLから新幹線、地方の鉄道にいたるまでそのこだわりポイントも人それぞれで幅広い。
鉄道写真の投稿雑誌も存在し、中にはプロのカメラマンになった者もいる。
近年は安価で性能のいいコンパクトデジカメやリーズナブルな一眼レフデジカメが普及してきたことや、スマートフォンカメラの高性能化もあり、新規参入者も少なくない。
マナーと諸注意
一方で撮り鉄は昔からトラブルが絶えない趣味であり、既に半世紀前の「SLブーム」の頃から大なり小なり問題視されてきた(代表的な例として1976年に写真撮影の為に線路へ侵入して轢死した京阪100年号事故が挙げられる)。
主に撮影場所や方法を巡り、撮り鉄同士はもちろん鉄道会社や沿線の住民、一般乗客と度々トラブルを起こしており、近年ではテレビやネットのニュースに取り上げられることも珍しくない。その中には法律に照らせば犯罪となるものも多く、列車や無関係の通行人等にも危害が及んでいる事例も多数あり『撮り鉄』の潜在的な犯罪性向、危険性の主張の根拠の一つとなっている。
ここまで深刻化した背景には、地元の中高生(主に鉄研等のサークル)やネット仲間などを中心として、撮り鉄が一種の無法者のグループを結成し、「赤信号みんなで渡れば怖くない」との集団心理で遵法意識が低くなり、暴走しやすくなる状態がずっと続いたことが関係している。悪質なオタクはATS非搭載なのである。
こうした『撮り鉄』増加の要因には21世紀に入り手軽なデジタルカメラの普及で趣味の裾野が一気に拡大したこと、さらにスマホカメラの性能向上に加え、2010年代頃からはSNSへの写真投稿が流行となったこともあってか母数が大幅に増加したことや、発信が用意になったことによる『言動に問題のある撮り鉄≒問題児』たちの可視化、顕在化があると考えられている。
類似の存在である引退直前の車両を狙う葬式鉄というのも問題となっている。これは厳密には撮り鉄とは違うのだが(カメラを持って無くても葬式鉄)、葬式鉄もたいていカメラを持って撮り鉄している事が多く世間一般では同一視されている。
主なトラブルは下記の通り。
- 撮影に適した場所に大勢の撮り鉄が押し掛け、騒音や私有地への不法侵入で近隣住民に迷惑をかける。2021年には自治体を介入させる大問題に発展した(後述)→軽犯罪法1条32号・立入禁止場所等侵入の罪、不退去罪・刑法130条前段に該当する可能性。
- フラッシュを焚くことで運転を妨害する。→電汽車往来危険罪・刑法第125条第1項に該当する可能性。
- 線路・敷地内への無断侵入により列車の運行を妨害する。実際に複数の死亡人身事故の実例もある他、2020年1月には線路内への立ち入りによる非常停止が原因で山手線E231系の引退を繰り上げるという前代未聞の事件を起こした。参考記事。→電汽車往来危険罪・刑法第125条第1項に該当する可能性。
- 器物損壊や窃盗。→器物損壊罪・刑法260条、窃盗罪・刑法235条に該当する可能性。
- 沿線への迷惑駐車や、物を置いた場所取り。→往来を妨害する罪・刑法第124条から第129条に該当する可能性。
- キセル乗車や自動改札機の強行突破。JR東日本は度々取り締まりを行っている。参考記事。→詐欺利得罪・刑法246条2項、建造物侵入罪・刑法130条に該当する可能性。
- 車で猛スピードで列車を追いかけることによる危険運転。列車速度が遅いローカル線で発生しやすい。
- 駅で撮影に陣取るために一般客の乗降車を妨害する。悪質な者は撮影の邪魔とみなした通行人や駅員を恫喝する。→威力業務妨害罪・刑法233条234条、脅迫、強要罪・刑法222条、223条に該当する可能性。
- 駅に三脚を立てて一般客の往来を妨害する。このため、駅での三脚の使用を禁止している鉄道会社も多い。→威力業務妨害罪・刑法233条234条に該当する可能性。
- 自分の理想の写真を撮るために構図上邪魔だと思った立ち木を伐採したり、フェンスを破壊したりする。→器物損壊罪・刑法261条に該当する可能性。
- 職務中の乗務員や駅員を事実上盗撮して、SNSや動画投稿サイト等にアップする。言うまでもなく肖像権の侵害である。職務に関してクレーマー紛いの「重箱の隅つつき」をする輩(当然シロウト)も存在するため、これで撮り鉄(特に動画)を嫌う現場の人間も非常に多い。→迷惑防止条例・(各都道府県ごとに差異)
- 撮り鉄同士で揉めたり、邪魔だと思った相手を盗撮して晒し目的でSNS等にアップする。→迷惑防止条例・(各都道府県ごとに差異)に該当する可能性。
- 撮り鉄同士でのイライラが爆発した結果、集団で暴言を吐き合う「罵声大会」と呼ばれる騒ぎに発展することもある。自浄作用はまず働かないため、対象の列車が通過するまで止める術はない。→軽犯罪法第1条に該当する可能性。
- 鉄道会社が注意しても「撮影のためには仕方ない」「俺たちはお客様だ」などと開き直って逆ギレ。→軽犯罪法5号に該当する可能性。
- 上記の理由で「撮影禁止」にされたスポットでも、警告を無視して撮影。→軽犯罪法1条32号・立入禁止場所等侵入の罪、不退去罪・刑法130条前段に該当する可能性。
- 地方自治体に対し悪質なネガキャン。→偽計業務妨害罪・刑法233条に該当する可能性。
- 線路に置き石→往来危険罪・刑法125条に該当する可能性。
- 暴力団との関係を名言し脅迫→暴力行為等処罰ニ関スル法律(通称・暴力行為等処罰法)により処罰される可能性。
特に臨時・試運転・廃車回送・引退間際の列車は彼らの興味の対象となるため、トラブルが発生しやすい。
試運転や廃車回送に関しては、非公開であるはずの運行ダイヤがSNSで盛んに情報交換されており、社内情報の漏洩が日常的に起きているという根本的な問題も存在する。(こうした情報の漏洩は、本来社内規定に抵触する=懲戒処分に相当する筈なのだが・・・)
それに乗じてガセネタを流す輩も存在するため、これもまた撮り鉄同士での内紛の種となっている。
各鉄道会社もこの現状を憂いており、最近では撮り鉄を締め出す目的でわざと隣に回送列車を置いて撮影できなくする例や駅の撮影ポイントを封鎖する例、さらにイベントそのものを行わない、その種の列車の運転をしないなどの自衛策に乗り出すケースもある。
どんな趣味でも、マナーを守らない者達の行動により規制が厳しくなる(ミャンマー国鉄等)など自分達の首を絞める結果になることを心しておくべきだろう。撮り鉄、ひいては鉄道ファン全体の足を引っ張らないためにも。
自浄作用…?
「マナーに問題があるのは一部だけで、真の鉄道ファンはこんな事はしない」という声もあるが、実態としてはむしろ『一部にまともな撮り鉄がわずかに存在』しているというのが世間の歪んだ共通認識である上、苦情には激昂、指摘には罵倒が返ってくるという撮り鉄コミュニティの自浄作用はお話にならないレベルで低く、世間一般からは同一視されている現状では無力な意見であろう。実際、「撮り鉄」でググると検索結果は物騒なニュースばかりであり、良いニュースはほぼ出てこない。
これらは、撮り鉄ひいては鉄道が精神年齢の低い人の趣味と誤認される所以となっている。世間の風当たりが強くなったことを理由にちゃんとマナーを守っていた撮り鉄が迷惑しているのが実情である(実際に撮り鉄から離れた者と、他の鉄に流れていった者もいるようである)。
歪んだお客様意識
撮り鉄の中には「自分たちは客」「自分たちは運行会社の利益に貢献している」「(批判に対して)もう利用しない」といった意識を持つ者がいることがしばしば観測されているが、鉄道は公共交通機関であり、乗客を安全に運ぶ対価として運賃を得ることで成り立つ事業である。
いくら綺麗な写真が撮影されても、撮り鉄がいくら高価なカメラやレンズを買おうとも鉄道会社の儲けにはならず、トラブルなどを起こされればその対応で職員の人件費がかさみ、業務も圧迫されるのである。故に運賃を支払わない撮り鉄は「お客様」などでは断じてない。
航空法に反したドローン撮影
2017年8月19日、千葉県松戸市の北総線の江戸川橋梁にて、浦安市の会社員男性が車両撮影を目的にドローンを橋に近付けたが操作不能に陥り線路脇に墜落した。
男は同年12月6日に航空法違反の容疑で書類送検された。
ちなみに、高圧で送電を行っている架線付近では、架線から発する電磁波によりドローンが制御不能になる可能性がある。
自治体の介入
2021年1月1日~3日まで、山口線で「DL津和野稲荷号」の運転が決定。
終着駅のある島根県津和野町では、前年末から私有地含め各所で撮り鉄が場所取りを開始した。
かねてから撮り鉄の暴挙に頭を痛めていた住民からの苦情により、津和野町は行政権限で撮り鉄の規制を実行。JR西日本と連携し、警告を発した上で警備員を配置するなどの対策を講じた。
すると、逆上した撮り鉄がTwitterで津和野町に対する大規模なネガティブキャンペーンを開始。
「津和野町には死をもって償ってもらう」「町ごと全部燃やしちゃえばいいんじゃないですかね」「津和野に原爆落とせ」など、過激な罵詈雑言が飛び交った。
更に津和野町のWikipediaページも荒らしの被害に遭った。
これらの悪行はTwitterやまとめサイトを通じて世間に知られる事になり、やはり反応は冷ややかであった。
尚、このネガキャンは津和野町に実害を与えることなく、不発に終わった。
ちなみに、ネット上で暴言を吐いたりすることは「侮辱罪」(刑法221条)にあたるため、仮に実害を与えていなかったとしても「1年以下の懲役若しくは禁固若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」に処される可能性がある。
彼らにそういった何かが無かったとしてもそれはたまたま訴えられなかっただけとして重く受け止めるべきであろう。
本件は、撮り鉄の問題行動に自治体が介入した初の事例となった。
これは鉄道会社や住民だけでは撮り鉄の暴走に対処しきれない事を示しており、文字通り「社会問題」としての撮り鉄の存在を明るみにした。
重傷者の発生
2021年4月25日、埼玉県川口市の京浜東北線西川口駅で、撮り鉄の男子中学生が同じく撮り鉄の若者に突き飛ばされ、頭の骨を骨折する重傷を負う事件が発生した。
これは若者が別の撮り鉄に言いがかりをつけ喧嘩していたところを男子中学生がスマートフォンで盗撮し、それに気づいた若者が激昂して襲い掛かったというもの。
彼らの目当ては、この日運転された臨時列車「あしかが大藤まつり号」であった。
今までも撮り鉄同士の小競り合いによる暴力事件は散発していたが、本件は(少なくとも報道される限りでは)骨折を伴う重傷者を出した初の事例となった。
ただし被害者の中学生も、喧嘩の様子を仲裁するわけでもなく盗撮していたことから、SNSなどで晒す意図があった可能性があり、行為自体は褒められたものではない(先述の通り、盗撮は肖像権の侵害である)。とはいえ、この暴行自体の違法性を阻却する事由とはなり得ない。
尚、当時19歳だった加害者の若者は電車に乗って逃走したが、2日後に同じ西川口駅で警察官に発見され逮捕された。この際本名も特定されている。
その後
翌日にこのニュースが報道されると、Twitterで撮り鉄たちがとった行動は、被害者を心配するわけでも、加害者を糾弾するわけでもなく、「#もう無理駅撮りできない」なるハッシュタグに乗せて撮影した写真を投稿しあう自慢大会に発展した。
事件を出汁に自己顕示欲を満たそうとする光景に一般ユーザーからの非難が集中したのは言うまでもない。
江ノ電自転車ニキ
2021年8月5日深夜、江ノ島電鉄で300形305編成の試運転が行われ、これを写真に収めようと藤沢市の交差点には40人程度の撮り鉄が集合していた。
しかし、いざ列車が来ると、その横を自転車に乗った外国人が並走し始めるという事態になった。
事情を知らない外国人は、カメラを向ける撮り鉄に手を振って返すが、逆上した撮り鉄たちにより大声で罵倒・恫喝されてしまった。
この動画がSNSで拡散されると、実はこれ以前にも、彼らが通行するバイクや車を排除しようとする行為を行っていたことが判明。
現場は普通の交差点であり、車・バイク・自転車・歩行者が通行するには何ら問題が無く、むしろそのための道路であり、そもそも電車の撮影なんて私利私欲を満たすために公道を通る人物等を排除しようとすることは当然許される筈のない、法的に問題のある行為でさえある。
このような実態が明るみに出ると、外国人を非難していた撮り鉄たちは逆に叩かれる側になってしまい、何名かはアカウント閉鎖や火消し対応に回らざるを得なくなった。
本件に関し取材に応じた江ノ電によると、「なぜか305編成が試運転すると、鉄道ファンの方が集まってきます。情報を伏せているのにもかかわらずそうなので、対応に苦慮しています」と、先述の通り試運転ダイヤが漏洩していることを不思議がっており、これが問題の根幹であることが窺える。
尚、知人らしき人物のツイートにより、この外国人は江ノ島でメキシコ料理店を営む人物と判明。
ネットで作られた自らのコラ画像をInstagramで拡散したり、本件を自虐ネタとして扱ったりと、この騒動に対しノリノリであることからネットユーザーをニコニコさせ、本人が投稿していたお店のメニューの写真も「おいしそう」「食べに行きたい」などの好意的意見がGoogleの口コミで多数寄せられ店の高評価が急増することとなった(実際に食べに行った者も多い)。
ネットでは「江ノ電自転車ニキ」の通称で親しまれている。
未成年が駅員を恫喝
2021年8月23日、廃車回送の撮影のために東海道線岸辺駅に集まった撮り鉄のうち一人(中学生とされる)がベンチに上った。
当然ながら公共物であるベンチを汚すばかりか危険を伴う行為であるため、駅員が注意すると、この撮り鉄は逆ギレし、なんと駅員の胸ぐらを掴み「調子乗んなよ、おい!」と恫喝した。
このあまりに分際をわきまえない姿を収めた動画がTwitterに拡散されると、上記の江ノ電での騒動の直後ということもあり、再び撮り鉄への批判が過熱した。
被害者であるJR西日本が「注意した理由を説明して理解を得られたので、被害届は出さない」と温情的な態度をとったため、表向きには事件とはならなかった。
しかし、この撮り鉄のTwitterアカウントが判明すると、彼がとった行動は開き直った挑発とレスバトルであった。
「電車とってる時点でみんな障害者だろ」などの過激な発言からは反省の色は全く窺えず、JR西日本のはからいは残念ながら無下になったと言える(後にアカウントは凍結された)。
こういう発言を問題を起こした本人が言うものだから世間からそういう認識を持たれやすくなるという一種のブーメランにもなってしまっているため、本当に他者に迷惑をかけないようにと配慮している善良な撮り鉄の人への迷惑行為にもなってしまっている。
なお、被害者が被害届を出さなくても、SNSやマスコミによって行状が拡散した場合、刑事事件に発展する可能性は十分にある。
「撮り鉄なんてもうやめた」
以上のように「過激な反社会的趣味」(と世間に誤認されて)に落ちぶれてしまった状況から撮影意欲を喪失して、実際に撮り鉄を辞めた者も少なくないようである。
一般人でも対岸の火事ではない
撮り鉄のことを蔑んでいる一般人といえども、これは対岸の火事ではない。
阪急電鉄がミッフィーやちいかわのラッピング列車を運行した際に、列車を撮影しようとホームから乗り出したり、色の点字ブロックより出て撮影したり、発車のベル鳴ってるのに車体にもたれて撮影したりする人がいた。
撮り鉄はあえて危険を冒しているのに対し、彼らは何が危険なのかがわかっていないという違いがあるが、いずれにせよマナーが悪いことに変わりはない。
シュポポポポw
著名人やマスメディア等、あるいはSNSなどで電車の話題が登る度に『撮り鉄』が誘引され、電車に関する話題で粘着し、同類が寄り集まるなど(通称:連結)するのは広く知られた撮り鉄の習性である。このような撮り鉄の醜態に対しては5ちゃんねる(嫌儲・なんG・なんJ等々)では様々な『煽り』が飛び交うことがままある。また「シュポる」と言う動詞も生まれている。
怒りの制御が困難で沸点が低い撮り鉄は下記の文言をブラウザ等のNGワードに設定し、目に入れない等の対策が求められる。
- シュポポポポw
- でんちゃ!でんちゃ!でんちゃっちゃ!
- シュポーーーww
- シュポシュポ石炭真っ赤っかで草
- 踏切カンカンで草
- 電車とか好き?
- 電車とか好きそう(『電車とか好き?』の発展形式)
- シュポポーーーーーwwww
罵声大会
撮り鉄の撮影時の行動で問題視されているのが罵声大会である。
鉄道ファン、特に撮り鉄の興味の対象となりやすいのが、団体列車・お召し列車・蒸気機関車・廃車回送・工臨などの所謂「臨時列車」や、廃止・引退間際の「ラストラン」である。
非常に珍しい、又は二度と拝めないその雄姿を写真に収めようと、駅や撮影ポイントには撮り鉄が集合する。そこでただ写真を撮って帰るだけなら平和に終わるのだが、現実はそうもいかない。
撮り鉄たちは一度きりのチャンスを最高の形で撮るために、ピリピリしていることが多い。
そんな人たちが集合し、互いの緊張感やストレスが爆発した結果、大声で暴言を吐く輩が現れる。
すると他者もつられて暴言の応酬が始まる。
これが罵声大会である。
罵声大会が起こる理由
発端となるのは、他の撮り鉄・一般客・駅員などがファインダーに映り込んで邪魔になる、他者がフラッシュを焚く、単純に狭苦しさから来るイライラなど。
要するに、彼らにとっては死活問題だが一般客から見ればどうでもいいような些細なことである。
補足すると、列車に向かってフラッシュを焚くのは運転士の視界をくらまして信号や標識確認に支障をきたす恐れがあるため御法度である。
しかし、彼らが怒る理由はフラッシュがバルブ(長時間露光させる夜間撮影の手法)の障害になるからであり、運転士への配慮ではない。
一度罵声大会が始まると自浄作用はまず働かず、対象の列車が通過するまで収める術はない。
駅員が注意しようが効果はなく、逆に駅員が罵声の対象になることも多い。
その様子は動物園にも喩えられ、傍から見れば素人カメラマンの群れが大声で騒いでいるだけの異様な光景である。
昼間だろうが真夜中だろうが、都市部だろうが住宅地だろうが彼らにはお構いなしなので、騒音が問題なのはもちろん、鉄道会社の解釈次第では威力業務妨害にあたる可能性がある。
鉄道会社の対応
各鉄道会社もこの実情に頭を抱えており、JR東日本では罵声大会防止のため撮り鉄ごと排除する試みが行われた。
それは2017年に運行開始したクルーズトレイン「トランスイート四季島」の一番列車である。
起点である上野駅の乗車ホームは乗客とメディア以外の立ち入りを禁止、更に反対ホームには長編成の回送列車を置き、四季島の姿が見えないようにした。
Twitterでは撮り鉄から不満が噴出したが、世論は概ねこの対応に賛同しており、撮り鉄に対する視線の冷たさが垣間見える例となった。
2018年、東京総合車両センターの一般公開イベントでは事前の告知なしにEF58 61号機がサプライズ展示された。
同機はお召し列車を長年牽引した人気の高い機体であり、展示も10年ぶりということで、来場者は大いに沸いた。
しかし、ここでもやはり罵声大会に発展。ファン同士の揉み合いだけでなく、安全誘導のために配置されたJR職員にまで食って掛かる暴徒もいた。
その結果、JR東日本は翌年の同イベントでの車両展示自体を中止。
理由は「車両の都合がつかないため」と説明しているが、この決定に前年の騒動が影響している事は想像に難くない。
このように、罵声大会や撮り鉄の暴走は結果的に自身の首を絞めることになると複数の実例で示されている。
これ以上同じ悲劇を繰り返さないためにも、鉄道ファン各位はマナーを自戒されたい。
代用手段の提案
他のジャンルの鉄道ファンになる
撮り鉄を辞めた者の中には他のジャンルの鉄道ファンになった者がいる。
例としては、鉄道に乗って移動することや電車の窓から見える景色を楽しむ乗り鉄、鉄道模型のジオラマを撮影する模型鉄、鉄道のイラストを描く描き鉄、そのほかCGグラフィックのスナップ(MMD鉄道など)をする者もいる。
この方法では撮り鉄の要望全てを満たすことは難しい可能性があるが(撮影のみを目的とするいわゆる「撮り専」は意外と少ない)、作品を生み出す過程で周囲に迷惑をかけないし、周囲に邪魔される事もないそれらに転向するのは案の1つとして一考の余地はあると思われる。
従業員から許可をもらう
駅で電車を撮影するのではなく、従業員に許可をもらい駅ではない場所で撮影するという方法を使う。
(具体的な事業者名を述べることはできないが)地方の比較的小規模な車庫等施設であれば、スナップ・記録程度を短時間だけするという条件を付けた交渉次第で現場の従業員さんから口頭で撮影許可をもらえる場合もある。許可を得て記録を終えたら、場を辞する旨のあいさつとお礼を忘れずにする。ついでに販売品なり、敷地内の自販機から飲み物の1本でも購入して帰れば、なお良いだろう。
鉄道撮影イベントでのみ電車を撮る
「10月14日」は「鉄道の日」と制定されており、この日前後や小中高生の夏休み期間中に、各事業者が事業所の一般開放を行うことも、決して少なくないようだ。合法的に各事業者の鉄道車両を落ち着いて撮影したければ、こういった各種イベントの開催をwebサイト等でこまめに確認しよう。ただし、上述したとおり、これら会場においてもモラルと思いやりを忘れてはいけない。「もう来年からやりません」といった事態にしないように事業者や従業員さんの心証を害さずに行動する必要があるだろう。
鉄道事業者の対策と撮影会
撮影専用地の整備
鉄道事業者側が歩み寄る形で駅敷地内に撮影用スペース(TRAIN SPOTTER'S)を設けた例も存在する。
コロナ禍の撮影会
2019年末から始まったコロナウイルス蔓延により、各鉄道事業者は車両基地公開などのイベントを軒並み中止。
騒動が落ち着いてきた2021年頃になると、コロナ対策を大義名分とし、少人数による有料撮影会という形でイベントを再開するようになった。
これは、3密回避と鉄道事業者の利益確保、そして治安の向上という効果を生んだ。
値段は事業者やイベント内容によって様々で、数万円単位になることは珍しくない。
2021年11月に高崎車両センターで開催された、EF64-37とEF65-501の撮影会は、お値段なんと10万円という高額ぶりだったものの、すぐに完売し大盛況だった。
他の事業者でも、引退車両やレアな車両の有料撮影会を続々と開催し、軒並み盛況を記録するなどコロナ禍以降の新しいイベントの形として広まっている。
ちなみに、イベント自体は無料としている鉄道事業者でも、予約制として人数制限をかけたり、参加者を親子限定(=単身での参加不可)とすることで、3密回避と治安の向上を図ることが多くなっている。
関連タグ
前原誠司:SLを対象とした撮り鉄としても知られる。
撮りバス:「撮り鉄」のバスバージョン。