JR北海道
じぇいあーるほっかいどう
正式名称は「北海道旅客鉄道株式会社」。コーポレートカラーは萌黄色。
JRグループの一社で、北海道の路線網を一手に引き受けた。ただし、会社境界の設定上、青森県内にもJR北海道管轄の駅(津軽海峡線・津軽今別駅⇒北海道新幹線・奥津軽いまべつ駅)が存在している。
寒冷対策のため、保有する車両には素人目にも分かるレベルで独特な構造が多く見られる。
それを実現する苗穂工場はこの業界ではよく知られた存在となっているほか、デンマーク国鉄と連携するなど、国外の寒冷地に範を求める傾向がある事も他のJRには無い特徴である。
駅名標は大きく2種類のデザインとなっており、JR東日本に近いものとJR西日本に近いタイプがある。北海道新幹線については新しい独自の駅名標が登場。
管轄する路線
※国鉄分割民営化以降の管轄路線を掲載。
相次ぐ事故と経営問題
残念ながら、現在のJR北海道は当初とはかなり異なる意味で特異な会社と認識されてしまっている。
発足当初は飛行機に対抗すべく電車並の性能を持つ高性能気動車を惜しげもなく投入した。しかし、待っていたのはバブル崩壊。スキー・リゾートブームの衰退、人口減(なのに路線延長が長すぎる)といった試練に襲われた。
1998年、北海道拓殖銀行が破綻。JR北海道自身は安定化基金で運営できていたためすぐには経営危機に襲われなかったが、道内の経済が冷え込むことで輸送量が激減し、末端線区の廃止が相次ぐこととなった。
それでも2000年代はまだ顕在化せず、鉄オタ界隈においても気動車のパイオニアというイメージが強く、JR西日本山岳区間やJR四国ほど深刻なイメージは持たれていなかった。しかし2011年に石勝線のトンネルで特急列車が脱線火災事故を起こしたのを皮切りに、車両トラブルや不祥事などが相次ぎ、ついには国土交通省が事業改善命令を出すに至った。しかも、事態はむしろ悪化の一途を辿った。度重なる緊急点検と改修で慢性的な車両不足が生じ、団体用の臨時列車を定期便の補充に充てるなど日常的なダイヤの遵守にも事欠くようになってしまう。
線路側の保安にも綻びが続出し、2013年にはついに函館本線でJR貨物の貨物列車を脱線させてしまった。この原因究明の中でレール検査のデータ改ざんや黙殺が常態化している事が明らかとなり、再度国土交通省の特別保安監査を受けている。さらには社員の覚醒剤使用や意図的なATS破壊、失踪・自殺・不審死等も相次ぎ、定期的に全国紙を騒がせることとなってしまったのである。
こうなってしまった背景には、人件費削減のために新規採用を控えた事による技術継承の断絶、それを補うために繰り返した外部委託や臨時雇用による複雑な労使関係、そしてそれらによる従業員のモラルの低下などが挙げられている。
厳しい気象条件とそれに対応するための特殊設備も保守コストを高止まりさせており、更新サイクルが追い付いていない。JR貨物については、分割・民営化時に線路の保有会社に支払う通行料を一般的な水準よりかなり低く抑える取り決めがなされており、これが疲労の蓄積を加速させているという指摘もなされている。
しかし、それらを更に遡ると、大半が経営が芳しくないという一点に辿り着いてくる事が分かる。
JR北海道は発足以来度々窮状を訴えてきたが、2014年にはついに札幌圏を含めた全路線が赤字という衝撃的な収支報告を発表している。まともな仕事をしたくても無い袖は振れないのである。
今後JR北海道が生き残るには
元々北海道は輸送密度が低く、単独で鉄道事業を成り立たせるには無理のある環境だった。
経営の基盤たる札幌圏でさえも札幌市民はもっぱら札幌市営地下鉄を利用する傾向にあり、主たる利用客は新千歳空港の利用者と札幌近郊の住民の通勤に限られているという状況である。このため輸送量は都市圏の人口の割にさほど多いというわけでもなく(人口が半分の仙台や広島とほぼ同等である)全線の収支が赤字となる原因にもなっている。
そのため国鉄時代は都市圏からの内部補助が行われていたのだが、分割民営化でこれも不可能になってしまった。 国もこれを予測していなかったわけではなく、経営安定基金の交付を始めとした各種支援を講じてきたのだが、バブル崩壊後の不況と地方の過疎化が予想以上に進行してしまい、十分に支えきることができなかった。
一連の問題は、こうした積み重ねがついに限界に達した表れと捉えた方が良いだろう。JR北海道は最初から破綻していたのだ。
では、どうしてこんな鉄道会社を発足させてしまったのかと言うと、国鉄の分割・民営化には東海道新幹線を始めとする「高収益路線の保護」と、国と対立し続けた「労働組合潰し」という2つの目的が込められていたからである。 国鉄は、解体を前にして素行不良の職員や中核派や革マル派といった組織との関係が疑われる職員を相次いで移動させる弱体化を図っており、北海道は房総半島と並んで流刑地的な役割が期待されていたと言われている。
そういう輩が不採算路線と一緒に消えてくれるならば、それはそれで構わないという腹積もりが無かったと言えば嘘であろう。明言はされていないものの、各種の状況証拠を繋ぎ合わせてゆくと、それらの粛清無くして公的資本注入はありえないという回答が見えてくる。
ちなみに同じく元炭鉱輸送用でほぼ役目を終えてしまった路線を多く抱え込んでしまっていた上、やはり一大都市である福岡市内の運輸を福岡市交通局と西日本鉄道に牛耳られてしまっていたJR九州とどうして差がついたかもここに集約されている。JR九州は国鉄内に複数存在した労組の中でも比較的労使協調路線の労組の勢力が強かったため、発足当初から鉄道本業だけにこだわることなく事業展開し、更にそのための人員再配置もスムースに進んだためである。この為JR九州は後述するように鉄道事業は赤字だが、企業体としては連結黒字に持ち込むことができた。
こうした状況では、道以下地方自治体が中心となってJR北海道の存続に乗り出すべきであるが、こちらも期待できそうにはない。 北海道では、いわゆる「道路族」の存在によって地方自治体自身が道路への投資を優先する傾向が強いのである。その充実ぶりは、とある政治家の「人間よりも熊の通行量の方が多い道があるくらいだ」という発言が全てを物語っている。 お隣青森県は県下赤字3社(青い森鉄道、津軽鉄道、弘南鉄道)に対して自ら身銭を切る形で支援を行っているが、北海道ではそこに至るまでの議論すらままならない。
この構図が続く限り、
赤字→減便→利便性の低下→自動車利用への移行→赤字
という負のスパイラルを続けながら、需要が尽きた路線より順次廃線としていく以外にJR北海道が生き残る術は無いのである。
2016年11月に、当社単独では維持することが困難な線区についての具体的な発表がされ、輸送密度が200人/日を切る5路線5線区は廃止の方向へ、200人/日以上2000人/未満で北海道高速鉄道が絡んでいない線区については存続を念頭に置いた上で経費削減や財政支援、利用促進策の推進や上下分離方式の導入など、あらゆる手段を模索する方向へ動き始めている。
そもそもの話、現在JRグループで安定した収入源を持つのは首都圏を持つJR東日本と東海道新幹線を持つJR東海のみである。
JR西日本は7割・JR九州は篠栗線以外(九州新幹線含む)・JR四国は全線がそれぞれ赤字であり、JR九州も上場から2年が経った2018年、在来線と新幹線の大幅減便を断行している。
(ただし、JR東日本は首都圏の黒字を地方の赤字でほぼ相殺していて、JR東海も在来線は名古屋通勤圏を除いてほぼ赤字で、東海道新幹線がなければ今頃酷い有様になっていたのは想像に難くない)