概要
2023年前期放送の連続テレビ小説。植物学者である牧野富太郎の生涯を描く。
主演は神木隆之介で、その妻役を浜辺美波が演じる。男女のW主演は、エールの窪田正孝と二階堂ふみ以来3年ぶりとなる。
語り部は、宮﨑あおいが担当。主題歌は、あいみょんが担当する「愛の花」。
作風
牧野富太郎をモデルにしているとはいえ、あくまで万太郎と富太郎は「別人」であるため、史実とは異なる箇所(特に人間性の面が顕著。やらかしエピソードはほぼ描かれていない。)が多々ある。その点を指摘されることはあるものの、この問題点は朝ドラにとっての長年の課題であるため仕方ないと言える。
登場人物
主要人物
槙野万太郎 演:神木隆之介、森優理斗(幼少期)、小林優仁(少年期)
本作の主人公。後に植物学の研究者となる。高知の裕福な酒造業「峰屋」の一人息子だが、下戸の体質。小学校を中退し、家業そっちのけで野山に植物採集に行き、その度に綾と竹雄に叱られている。東京大学で植物学を学ぶために竹雄と共に上京し、「十徳長屋」に住む。
結婚後は、東京帝国大学の植物学教室教授として働いているが、自身の信念と大学の理念の板挟みとなり苦悩する。しかし、家族の後押しにより「合祀令の影響で伐採される植物を守るため」に図鑑の刊行を決意し、大学を去った。
その後、波多野と徳永の推薦により理学博士号を授与された。
演じる神木氏は、2007年前期の『どんど晴れ』以来16年ぶりのシリーズ出演となる。
西村寿恵子→槙野寿恵子 演:浜辺美波
本作のヒロイン。東京の小さな菓子屋「白梅堂」の娘で後に万太郎の妻となる女性。牧野富太郎の妻の牧野寿衛子がモデルとなっている。亡き父が残した『南総里見八犬伝』に夢中になっている。
結婚後は待合茶室「山桃」の女将として働いていたが、関東大震災によって夫が集めていた標本の殆どが失われたことで、「夫にとっての"財産"である標本を二度と失わせないように」という大願のために「山桃」を売却。東京郊外の村落にある土地を購入し、別荘を建設した。
その一方で急須を落とすなど病魔に蝕まれ始め、徐々に身体が衰弱している。
演じる浜辺女史は2015年前期の『まれ』以来8年ぶりのシリーズ出演となる。
槙野園子 演:斎藤羽結
万太郎と寿恵子の長女。2歳になる前に麻疹で夭折した。
万太郎と寿恵子の次女。母親ゆずりのしっかり者。虎鉄とは幼少期の頃から「虎鉄にぃ」と呼ぶほど慕う兄妹のような仲だったが、その中で恋愛感情が芽生えていき、虎鉄の妻となる決意を固め、晴れて彼と結婚することとなった。
りんの引退を機に十徳長屋の差配人を継ぐことになったものの、関東大震災により長屋が倒壊したため志半ばで潰えることになった。
槙野百喜 演:松岡広大
万太郎と寿恵子の長男。父親譲りの聡明な青年に成長し、役所に勤務する。
槙野大喜 演:木村風太
万太郎と寿恵子の二男。成長してからは新聞記者を目指す。
槙野千鶴 演:本田望結、松坂慶子(老年期)
万太郎と寿恵子の末娘。千歳の妹。
1958年(昭和33年)では槙野家の人間の中で唯一存命しており、アルバイト募集を見て訪れた藤平紀子に万太郎の生涯を伝えていた。
ちなみに、千鶴の老年期を演じた松坂氏は万太郎の祖母・タキを演じていた。
高知の遍路宿「角屋」の息子。
植物採集に訪れた万太郎と出会い、数年後に上京、万太郎の助手となる。その後、万太郎の娘・千歳と結婚した。
山元虎太郎 演:森優理斗
虎鉄と千歳の息子。万太郎・寿恵子の孫。
ちなみに、演者の森は万太郎の幼少期を演じていた。
峰屋
槙野タキ 演:松坂慶子
万太郎の祖母。夫と息子に先立たれてからは酒蔵「峰屋」を切り盛りしている。正義感の強い性格で、厳しくも愛情深く万太郎を育てる。藩校に行かないと駄々をこねる万太郎を「飯抜きじゃ」と叱ったり、綾が当主しか読むことを許されない帳簿を読んでいると「女は穢れているから酒蔵に入ってはいけない」とお説教したりしているが、同時に「家業について興味を持つことはいいことだ。将来嫁いでも姉として万太郎を支えてやってほしい」と綾に万太郎の行く末を託したり、自由民権運動に身を投じていた万太郎が一時捕獲され、釈放されて帰ってきたときに「無能が」と吐き捨てた警官に「うちの孫は無能じゃない」と食ってかるなど、孫への愛情は誰よりも深かった。万太郎と寿恵子の祝言を見届け、「峰屋」を綾と竹雄に託してこの世を去る。
「峰屋」の番頭の息子。万太郎、綾とは幼なじみ同然の関係で、その仲の良さ故か度々逃げ出す万太郎のお目付け役に任命される。自分の意志で万太郎と共に上京、同居し、レストランで働いている。
後に綾と結婚し、槙野姓を名乗る。
槙野綾 演:佐久間由衣
万太郎の姉。気が強く、家業そっちのけで植物採集に勤しむ弟の万太郎を毎度叱りつけている。「女性が酒蔵に入ってはいけない」という決まりに疑問を感じており、幸吉を通じて酒蔵の仕事に関与したいという夢を抱いている。
史実では富太郎には姉はおらず、綾のモデルは従姉であるとされる。本作でも幼少期に両親(タキの娘夫婦)を亡くして本家に引き取られた従姉妹だと後々判明した。
幸吉 演:笠松将
峰屋で働く蔵人。家業に興味を持つ綾に酒造りを教える。綾から一方的に好意を持たれるが、実は既婚者。
槙野ヒサ 演:広末涼子
万太郎の母。病弱ながらも授かった万太郎を心から愛する。バイカオウレンの花が好き。
病に臥せりながらも息子の成長を温かく見守るが、万太郎が7歳のときにこの世を去る。
高知
天狗 演:ディーン・フジオカ
土佐の脱藩浪士。着物の紋付の部分を隠すようにして黒いマントを羽織っている風体から「天狗」と呼ばれる。宴の席に万太郎がいないことを知った分家の者たちに蔑まれ、母の慰めも届かず家を飛び出した万太郎と出会い、「生まれてこなければよかった」と嘆く万太郎に「いらん命らあ、ひとつもない」と慰めの言葉をかける。
その言葉は万太郎の心に残り続け、それからしばらくして万太郎は、山に入って「天狗」を探すのだが、「天狗」が彼の前に姿を見せることは二度となかった。
早川逸馬 演:宮野真守
高知で自由民権運動を行う政治結社「声明社」のリーダー。自らの進む道に迷っている万太郎と出会い、彼に「自由」とは何かを求めるが、万太郎の演説中に万太郎と共に逮捕されるが、取り調べを受けた際、わざと万太郎に対して「お前とは何の関係もない」と突き放すような態度をとって万太郎をかばい、自身は投獄される。
その後しばらく登場していなかったが、終盤で上京し投資家の永守の代理人を務めており、苦悩していた万太郎と再会し、彼を励ました。
別名ジョン万次郎。今は年老い隠居暮らしをしている。早川の紹介で万太郎と出会う。
万太郎の名教館時代の友人。
北海道で土木学を学び、その後は鉄道関連の仕事に就く。
東京
田邊彰久 演:要潤
東京大学の植物学教授。過去に万次郎から英語を学び、海外留学経験もあることから、英語が非常に堪能。万太郎の植物学教室の出入りを許可する。万太郎が寿恵子と結婚した時期の9月頃にトガクシソウを新種とするには標本が足りないとマキシモヴィッチ博士に指摘を受け、標本を全国から集めようと躍起になっていた。これがもとで、伊藤孝光に「泥棒教授」呼ばわりされることとなる。結婚祝いを名目に万太郎を家に招いた際に、万太郎が持ってきた標本を見て何者でもない万太郎は自分で発表できないことを不憫だと言い放った。東京大学に入学して留学するか、「私のものになる」、つまり自身専属のプラントハンターにならないかと2つの方法を提案した。しかし、「自分は名付け親になれず、自分が見つけた可愛い植物を自分で発表できません。」とはっきり断られ、「小学校も出とらん虫けらが」と万太郎を罵った。
万太郎と大窪のヤマトグサについての共同研究を徳永に報告された際、新種ならトガクシソウがあると怒るが、徳永に「花は咲かなかった!」と強く返され、「今すべきことは槙野に礼を言うことだ」と諭された。
万太郎がムジナモを発見し、論文を発表した際には自身の名前が掲載されなかったことで激怒し、万太郎を東大に出入り禁止にしたうえ、土佐植物目録と標本500点を大学に寄贈するように命じた。万太郎が夜分に自宅を訪ね「雑誌は修正したから許してほしい」と懇願するもこれを拒否し、万太郎の「図鑑を作る」という目的を聞き、「図鑑の刊行をあきらめて自分に従うなら許してもいいが」と圧力をかける。
やがて、妻の聡子と自身を題材にしたと思われる官能小説が新聞に掲載されたことで、いわれのない誹謗中傷を受ける。そうした中で、聡子と友達になっていた寿恵子が聡子を心配して自宅を訪ねてきたが、寿恵子に「万太郎のために聡子に取り入ろうとしているのでしょう」と痛烈な嫌味を言う。その後、トガクシソウの命名を伊藤孝光に先を越され、森有礼の暗殺により女子高等学校校長職を罷免されるなどの不運に見舞われる。そんな中、アジサイ科のキレンゲショウマを発見し、これを命名する。聡子の誕生日に、子供たちや聡子と海に行くことが決まった日に、突然大学から辞職を命ぜられ、田邊の後釜には徳永が据えられた。そうして、家族で鎌倉の海に行った際に溺死してしまう。その死の知らせは、質屋に行き、田邊の死を報じた新聞記事を見つけた寿恵子により万太郎に知らされた。
万太郎と寿恵子が聡子を慰めるために田邊邸を訪ねた際、万太郎は聡子から蔵書一式を渡される。それは生前、田邊が聡子に「私の蔵書の一切をミスター・槙野に譲る」と遺言していたためであった。田邊は万太郎に対して嫉妬や憎しみの感情をぶつけていたものの、心中では万太郎の技量を高く評価していたのだった。
最終話では、「槙野日本植物図鑑」の前書きに、これまで万太郎とかかわってきた人々への謝辞を述べるページが写されていたが、そこには田邊の名前があった。
矢田部良吉がモデルと思われる。
堀井丈之助 演:山脇辰哉
万太郎と竹雄と同じ長屋に住む東京大学の苦学生。
西村まつ 演:牧瀬里穂
寿恵子の母親。白梅堂を切り盛りする。かつては芸者だった。
阿部文太 演:池内万作
白梅堂で働く菓子職人。
江口りん 演:安藤玉恵
万太郎が住む長屋の差配人。物事をはっきり言う性格だが面倒見はよく、万太郎の研究にも必要とあらば設備面で協力している。
倉木隼人 演:大東駿介
万太郎と同じ長屋の住人。元彰義隊隊士。
倉木えい 演:成海璃子
隼人の妻。
及川福治 演:池田鉄洋
万太郎と同じ長屋の住人。魚の干物を売る棒手振りをしている。
宇佐美ゆう 演:山谷花純
万太郎と同じ長屋の住人。小料理屋の女中。
牛久亭九兵衛 演:住田隆
万太郎と同じ長屋の住人。落語家。
野田基善 演:田辺誠一
植物学者。博物館で働いており、万太郎のために東京大学への紹介状を書いた。
里中芳生 演:いとうせいこう
博物学者。博物館で働いている。旧幕臣で、博物学者の田中芳男がモデルとされている。
徳永政市 演:田中哲司
東京大学植物学教室の助教授。初めは万太郎を邪険にしていたが、源氏物語の「夕顔」の一件以来、次第に理解を示すようになり、時には優しく、時には厳しく彼を導きアドバイスするようになる。
大窪昭三郎 演:今野浩喜
東京大学植物学教室の講師。徳永助教授同様、万太郎を邪険にしていたが、後に万太郎と共同研究をするようになった。
野宮朔太郎 演:亀田佳明
元中学図画教師の田邊教授専属画工。
万太郎と植物画の面で切磋琢磨し合い、後に波多野と道を共にし世紀の大発見をすることとなる。
波多野泰久 演:前原滉
東京大学植物学科の学生。卒業後は助手。
藤丸と共に万太郎と仲良くなる。
藤丸次郎 演:前原瑞樹
東京大学植物学科の学生。
波多野と共に万太郎と仲良くなる。
大畑義平 演:奥田瑛二
大畑印刷所の工場主。植物学雑誌の作成のため、万太郎に石版印刷の技術を学ぶことを許した。
後に万太郎・寿恵子結婚の際の仲人となった。
高藤雅修 演:伊礼彼方
実業家。元薩摩藩士で、薩摩弁訛りでしゃべる。
寿恵子を妾として迎えようとしたが、寿恵子にきっぱり拒絶された。
銀行員。寿恵子が開いた待合茶室に客として訪れる。
実在の人物であり、後に鉄道事業などを手がける大物実業家となる。
永守徹 演:中川大志
投資家。永守家に養子として引き取られており、引き取ってくれた叔父の意思を引き継ごうと万太郎の植物図鑑を教科書として刊行したいと提案し、その支援を買って出た。
また、兵役により陸軍へ行くことになっておりお金さえ払えばある程度免除されるはずではあったものの、本人曰く「こんなことに金を使ったら叔父は喜ばない」としてお金を払わない意思を表明した。
逸馬は彼の代理人である。
その他
藤平紀子 演:宮﨑あおい
1958年(昭和33年)において、アルバイト募集の広告を見て槙野家を訪れた女性。千鶴から仕事内容を伝えられたものの、その仕事があまりにも重責だったため諦めかけるが、槙野家が必死に守ってきた植物標本の重要性に気づき、仕事を引き受ける。
ちなみに、宮﨑氏は本作のナレーションを担当している。
余談
本作の好評価の影響からか、2023年の新語・流行語大賞候補にて「スエコザサ」がノミネートされた。
また、本作の撮影期間中にデビュー当時から共に歩んできた浜辺のマネージャーの一人が亡くなっており、そのショックから食事が喉を通らず徐々に痩せていたため、心配した神木が食事に誘い、「もっとご飯食べな。」とアドバイスし慰めている。
その後も神木が積極的に浜辺に色んな食べ物をあげていたため、徐々に元の食生活に戻れた。
関連タグ
ゴジラ-1.0:同年公開の映画。主人公・ヒロインが本作と同じく神木と浜辺という共通点あり。なお、オファー及び撮影時期は『ゴジラ-1.0』が先。