ニコルや君や、多くの若者が戦場でその身を犠牲にしてまで戦っているというのに、何故それを裏切るような真似をする者が居るんだ!私はそれが悔しくてならんよ!
犠牲はもう沢山だ!だからこそ、Nジャマーキャンセラーの搭載にも踏み切ったというのに…
CV:千葉一伸
概要
工学エンジニアであり、MSの設計局や工場が集中するマイウス市の代表。核分裂を抑制するニュートロンジャマーの機能をさらに相殺(つまりは核関連兵器が再度使用可能)するニュートロンジャマーキャンセラーの開発者でもある。勘違いされがちだが、ニュートロンジャマーは開発しておらず、ニュートロンジャマーキャンセラーの開発目的もあくまで将来的な宇宙開発のための装置であった。
基本的に息子のニコルに似て、温厚で真面目かつ家族思いな人物なのだが、責任感の強い息子とは対照的にやや利己的で自分の迂闊な行いに対し責任感の欠如している面も内包している。
ニコルの身に起きた出来事を機に、次第にその性格の負の部分が出始めることになった。
劇中の様相
プラント最高評議会ではシーゲル・クラインを中心とする穏健派であった一方、パトリック・ザラや過激派の主張にも共感を示す様子も見せていた。そして、ニコルの戦死をもって本格的に過激派へ転向する。
一方、ニュートロンジャマーキャンセラー搭載型核エンジンと、それを搭載する次世代MSの開発に協力したのは、これ以上ニコルのような犠牲を出させないという願いが込められており、プラント市民として核を憎みつつ核を再び使用可能にするニュートロンジャマーキャンセラーの開発者として苦渋の決断であった。なお、ニコルが戦死したのは4月15日なのに対して、初の核エンジン機ドレッドノートがロールアウトされたのが2月中旬、ジャスティスとフリーダムがロールアウトされたのが4月1日であるため、ニコルが戦死する以前から携わっていた可能性が高い(特にフリーダムについては機体設計にまで関わっている)。しかしながら、ドレッドノートは試運転を通した基礎データ収集後に解体処分、ジャスティスとフリーダムはロールアウトされてから1か月以上格納庫で動態保存と、ニコルが戦死するまでは最悪の事態を想定して開発はすれど実戦投入する気はなかったことがうかがえる。
その後、ニュートロンジャマーキャンセラーを搭載したフリーダムがクライン派(本当はキラ・ヤマト)に強奪された後は、その手引きを行ったラクス・クラインに対して憤りる様子をアスラン・ザラに見せていた。
そして、偶然とはいえラウ・ル・クルーゼの手によりジャスティスとフリーダムの設計データ(つまりニュートロンジャマーキャンセラーの設計データ)がブルーコスモスの盟主であるムルタ・アズラエルの手に渡ってしまうことになる。また、地球連合軍とザフトの決戦が終盤に差し掛かった際は、真っ先に逃げ出す等、完全に自己保身に走る様子が確認されている。
戦後の動向は一切不明である。少なくともC.E.73年10月以降にプラント最高評議会議員をしている描写や設定は存在しない辺り、戦後処理においてエザリア・ジュール共々失脚した可能性が高い。
『SEED FREEDOM』では、ハリ・ジャガンナートのクーデターに際して、一足先にイザーク・ジュールらによって保護・避難させられたワルター・ド・ラメントに同行し、非武装にもかかわらず殿を担当していた。この時、変わらず紫服を着ていたことから、4年前(『SEED』)から引き続き国防委員会所属かつ何らかの議員のようである。その後はアイリーン・カナーバやエザリアと共にエターナルのブリッジに集合していた(総じて台詞は無し)。
また、小説版及びガンプラの説明書ではカナーバやエザリアと共にかつて廃棄されたデュエルとバスターを試験用に改修していた。
評価
息子が戦死した哀しみは父親として理解出来無くも無い物であるが、その哀しみはあくまでも個人的な「私情」でしか無く、それを切っ掛けに政治や戦争を左右するニュートロンジャマーキャンセラーの投入を決定したのは、彼の政治家及び技術者としての「最大の愚行」と言わざるを得ない。
パトリックとザラ派の思想の危険性を理解していながらも、核関連兵器を容易に使用可能となるニュートロンジャマーキャンセラーの技術提供をしたことにより、結果的に完成したモビルスーツの2機とも持ち逃げされてしまう事態へと繋がり、その後にロールアウトされた2機も、快楽殺人鬼同然のパイロットの『玩具』に成り下がったり、ニュートロンジャマーキャンセラーの存在を知った敵対勢力に強奪されるといった不祥事を次々と誘発させている。
挙句の果てには、地球とプラントの双方を滅ぼす事を望んだ男の陰謀によってデータそのものが最もプラントに牙を剥く者に渡ってしまい、最後にロールアウトされた搭載機や決戦兵器も利用される等、散々なことになっており、第三勢力の介入が無ければ本当に最悪の事態となってしまう所だった。
「戦争を終わらせる」ためにニュートロンジャマーキャンセラーを投入したとして、その結果は「最悪」で終わらせかねない事態である。
これらの点は、同じく息子が戦死したと思ったのを機に、過激派から距離を置いて中立派となった評議会議員のタッド・エルスマンとは対照的で、亡き息子も草葉の陰で泣いてるのは想像に難くない。
全ての責任がニュートロンジャマーキャンセラーを開発・導入したユーリにあるとまでは言わないが、おそらく第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦の後は、穏健派から過激派に転じた裏切りとして、穏健派のアイリーン・カナーバを中心とした臨時最高評議会からの責任追及は免れないことになったと言える。
劇場版では前述の通り主人公側勢力の裏方として「正しく戦争を終わらせる」一助を果たしている。かつて息子の死をきっかけに意図せずとも世界を終わらせようとしてしまった彼だが、ラメント議長の保護に一役買った他、息子が乗った機体及び自身の技術を息子の戦友達に託す事で、今度こそ道を間違えずに亡き息子の遺志に応える事が出来たと言えよう。
余談
息子のニコル・アマルフィをはじめ大事な同胞をこれ以上失わないためにニュートロンジャマーキャンセラーの実戦投入を承諾しながらも、その産物の一つであるフリーダムを息子や同胞の仇であるキラ・ヤマトに強奪されたのはあまりに皮肉が効いている。さらに言えば、前述の通りフリーダムについては機械工学の権威として機体設計(ウィングバインダーとバラエーナ周り)にも携わっているため尚更である。
関連タグ
ニコル・アマルフィ...息子
ニュートロンジャマーキャンセラー...開発者
フリーダム...開発に携わっている
クライン派...古巣
ザラ派...転向先