概要
2023年放送のNHK大河ドラマ『どうする家康』の主要な登場人物の一人・武田信玄(演:阿部寛)に対する視聴者からの反応(ツッコミ)の一つ。
本作に信玄役として阿部が出演することは、放送以前の早い段階から発表されており、その時点でも既に同様の反応は散見されていたのだが、いざ番組が始まってみると・・・
第1回「どうする桶狭間」の最終盤では、駿河の太守・今川義元が織田信長に討たれたことを知った信玄が、富士の向こうに湧き立つ虹に不吉な予兆を感じ取るとともに、以下の台詞とともにそれが武田の躍進に繋がるものと確信を深める、というくだりが描かれている。
「ほう、そうか。駿河(義元)殿が尾張のうつけ(信長)にのう」
「道理で南の空に不吉なものが生ずるわけよ。されど我が甲斐にとっては、吉兆となろう」
このくだりにおいて、信玄が姿を見せたのはわずか15秒ほどに過ぎない。しかし阿部の演じる信玄の圧倒的な存在感、そして甲斐であるはずなのにどこか日本離れした情景に身を置くところから、
- 「武田信玄があまりにも古代ローマ人w」
- 「風呂好きローマ人みたいな武田信玄、最高w」
- 「ローマ人の武田信玄が中国の山脈で座禅を組んで(見た人にしか分からない文言)」
- 「自分を武田信玄だと思いこんでいる古代ローマ人」
などと、かつて阿部が主人公のルシウス・モデストゥスを演じた映画『テルマエ・ロマエ』を連想する声が、Twitterを始めとするSNS上に続出したのである。
実はローマではなかった・・・?
そして物語も進み、第2部に入って間もない第16回「信玄を怒らせるな」にて、思わぬ「可能性」が見出されることとなる。
この回では、駿河侵攻の折に武田・徳川間で結ばれた約定の人質として、武田に送られていた久松源三郎勝俊(家康の異父弟、後の松平康俊)の目を通して、当時の武田の内情が語られているのだが、甲斐に送られてからの源三郎は寒風の吹き込む洞窟を住処に充てがわれ、来る日も来る日も家中の若者たちからの凄惨なしごきを受ける日々を過ごし、ろくな食事も与えられず心身共々衰弱していくばかりという有様であった。
やがて、源三郎からの書状に不審を抱いた於大の方からの依頼をきっかけに、源三郎は服部半蔵らの手引きで甲斐からの脱出にこそ成功するも、折しも冬場に差し掛かった頃の決死行であったことも重なり、一命こそ取り留めながらも凍傷により足の指を失う結果となったのである。
そんな源三郎の様子に「人質になんてことを!武田は野蛮だ!」と憤る家康であったのだが・・・ようやく容体が安定した源三郎は、家康に対し俄には信じがたい事実を明かす。
自分が受けていた仕打ちは、武田家中の若者誰もが経験する集団訓練の一環だった
そして自分は、これでも他家からの人質ゆえ手心加えられていた
この源三郎の明かした武田の内情、そして彼の言葉を裏付ける回想シーンに、家康のみならず視聴者も絶句し、
とかいう反応も出る始末だった。
ローマなのか、スパルタなのか、どっちなんですかね・・・
備考
- 「阿部寛=ローマ人」という図式を定着させる要因の一つとなった『テルマエ・ロマエ』であるが、本作以前にもこれに関連して「ローマ人」という反応が観測された大河ドラマが存在する。それが2009年放送の『天地人』であり、同作では上杉謙信役として阿部が出演している他、謙信の後継者である上杉景勝(ちなみに、景勝の正室は武田信玄の娘である)役として北村一輝も出演。北村も『テルマエ・ロマエ』の出演者の一人であり、この両者の顔の濃さ故に「越後はローマ」と言われていたこともあった。
- 実際の信玄も温泉をこよなく愛し、傷病兵の療養のためという実利も兼ねて、領内に点在する「信玄の隠し湯」と呼ばれる多数の温泉を整備・利用していたことで知られ、中井貴一が主役の信玄を演じた1988年放送の『武田信玄』でも描かれている。こうした信玄の温泉愛好家な面もまた、前出の『テルマエ・ロマエ』と合わせて「ローマ人」という反応に結びついた要因の一つとも推察される。
- 武田家では阿部演ずる信玄の他にも、山県昌景・穴山梅雪(信君)・武田勝頼を演じる橋本さとし・田辺誠一・眞栄田郷敦が揃いも揃って濃い顔な面々であることから、こちらに対しても「全員ローマ人みたいな武田家」「見た目からして強そう」との声が散見されていた。
- 阿部が大河ドラマで謙信に次いで信玄も演じたことから、SNS上では「一人川中島の戦い」といった反応も、初回の放送直後を中心に観測されている。NHKもこの反応については把握していたのか、謙信を特集した『歴史探偵』の2023年10月4日放映分において、所長の佐藤二朗にネタにされるという一幕も見られた。
- 物語中盤で武田が滅んだことにより、作中においても視聴者的にもすっかり過去のものとなったかに見えたこの「ローマ人」ネタであるが、物語も最終盤に入った第44回では、家康の懸念材料の一つとして牢人の処遇についても触れられた際、九度山へと配流された真田信繁らが家康を仮想敵として、過酷な鍛錬に励んでいる様も描かれた。信繁にまつわる逸話の一つとして、当地の猟師を訓練させた上で大坂の陣に馳せ参じたというものがあり、前述のくだりも恐らくはそれを踏まえてのものであると見られるが、いずれにせよこの光景を前にした視聴者の中からは「武田遺臣の手にかかれば九度山もローマよ」「九度山をローマに変える武田因子」と、やはりかつてのローマ(甲斐)を思い起こされた向きも散見されている。
- 終盤、これまでナレーションで語っていた寺島しのぶが春日局として登場し、最終話「神の君へ」にてこれまでのナレーションは徳川家康のこれまでの偉業を編纂する作業の際に彼女が語っていた内容であることが判明する。また、これ以前から中盤以降から現実的な描写が増えてきたことが指摘されており、序盤あれだけ描写されたローマのような甲斐、クソバカ城塞都市と化した本願寺、といったスーパー大河っぷりは実際のところ「春日局は当時を経験してないため、誇張して描写されたのでは」という考察が産まれることとなった
関連タグ
VIVANT…同年に放送された阿部が出演するドラマ。ここでの阿部が演じた野崎守がバルカの警察官にアラブ系と見間違えるシーンがある。