概要
キネ旬ムック『塚本晋也読本』の副題は「普通サイズの巨人」。
初期作においては人間の中の暴力性を、肉体が変形し金属が生えてくるなどの特殊効果を交えた、痛々しいがファンタジーとして見られる作品として発表してきたが、2012年以降の作品では暴力に嫌悪感を持って貰うために、あえてリアルに描写するようになってきている。
下記のように塚本自身が美術的素養があるので、初期作では作品内のガジェットやキャラクターデザインも行っていた。
映画撮影のスタッフについては自身の映画制作会社「海獣シアター」でボランティアを募り、2回目以降はプロとして雇うという方式を取っている。(スタッフ出身の業界人も多い)
なお「映画はお金を出している人のもの」という考えを持ち、ほとんどの作品の制作費は塚本自身が集めていることが知られている。
美大生時代に劇団を主宰して以来、自他作問わず役者として出演することも多い。
自身も監督であることから「聞き分けの良い役者」であると自称しており、独特の存在感がある役を数多く演じている。
また良い声と表現力を持つことからCMなどでのナレーターとしての仕事も多く、声優としてゲーム『メタルギアソリッド4』ではヴァンプ役も担当している。(メイン画像)
経歴
1960年1月1日生まれ。東京都下北沢出身、原宿育ち。
幼少期は絵を描くことが大好きで、小学校低学年までは妄想癖が過ぎるレベルであり、ノートを埋め尽くす勢いで入れ込んでいたことから母が心配していたという。(小学4年くらいに一応おさまった)
そのころに見た『ウルトラQ』がとても印象に残っており、中学生時代に円谷英二の著書『特撮のタネ本』をバイブルに自己流で映画制作を始める。
中学2年のときに父の持っていた8ミリカメラを使って、水木しげるの短編『原始さん』を原案にした短編を撮影し、3年の時にイベントを企画して上映し好評を得たのが幸福な記憶であった語る。
商業デザイナーであった父親の影響もあって美術学科がある高校に入学し、そこで友人に黒澤明の映画を薦められたことから、黒澤作品における映画に対する考え方と脚本についてを学びながら在学中に4本の映画を制作。
結果として、日本テレビ主催のシネマフェスティバルにも入賞した。
日本大学藝術学部に進学後、唐十郎などの演劇に触れたことで感銘を受け、自身も劇団を主宰したが、映画は自身が面白いと思うものが撮れないスランプ状態に陥った。
大学卒業後はCM制作会社に入社して4年働き、ここで初めて独学ではない正式な編集技術を身につけたという。
CM制作会社退社後に劇団「海獣シアター」を立ち上げ、1988年に劇団の仲間と制作した短編『電柱小僧の冒険』がPFFアワードのグランプリを受賞、続く1989年制作の『鉄男』がローマ国際ファンタスティック映画祭のグランプリを受賞し、いきなり国際的な場において映画監督として評価されるようになった。(1997年と2005年にヴェネツィア国際映画祭で審査員を務めている)
1990年には、諸星大二郎の伝奇漫画を沢田研二主演で映画化した『ヒルコ/妖怪ハンター』でメジャーデビューし、その後、自身の撮影したい題材についてを何年も調べ上げるなど下準備を行って映画制作を続けている。
監督作品
- 原始さん
- 巨大ゴキブリ物語
- 翼
- 曇天
- 地獄町小便下宿にて飛んだよ
- 新・翼
- 蓮の花飛べ(1979年)
- 普通サイズの怪人(1986年) ※この作品のリメイクといわれる『鉄男』を含めて普通サイズの怪人シリーズと呼ばれる
- 電柱小僧の冒険(1988年)
- 鉄男(1989年)
- ヒルコ/妖怪ハンター(1991年) ※沢田研二主演のメジャーデビュー作
- 鉄男Ⅱ BODY HAMMER(1993年)
- 東京フィスト(1995年)主演 ※役作りでボクシングジムに通い、実弟の元プロボクサー塚本耕司氏がライバル役を担当
- バレット・バレエ(1999年)※準備中にリアルにオヤジ狩りに遭ったことも作品に反映
- 双生児-GEMINI-(1999年) ※主演の本木雅弘の発案作品で、自身の敬愛する江戸川乱歩作品を監督することになった
- 六月の蛇(2003年)
- ヴィタール(2004年)※撮影のため何年もかけて医学専門書を読み込み、医大生への取材および解剖実習も見学した
- 玉虫(2005年)オムニバス映画「female」の一編
- HAZE(2006年)主演
- 悪夢探偵(2007年) 0(ゼロ)役
- 悪夢探偵2(2008年)
- 鉄男 THE BULLET MAN(2010年) ヤツ役 ※全編英語で撮影され、元造形スタッフの漫画家・深谷陽氏によってコミカライズもされた
- 妖しき文豪怪談 太宰治「葉桜と魔笛」(2010年)
- KOTOKO(2012年)
- 野火(2015年)主演 田村一等兵役 ※リアリティを出すため53㎏まで減量した
- 斬、(2018年)澤村次郎左衛門役
- カナリア(2018年)「ウタモノガタリ-CINEMA FIGHTERS project」の一遍 髙橋巖役
- ほかげ(2023年)
主な出演作
映画
- 119(1994年)竹中直人監督
- 我が人生最悪の時(1994年)林海象監督
- 遥かな時代の階段を(1995年)〃
- 東京日和(1997年)竹中直人監督
- あ、春(1998年)相米慎二監督
- 完全なる飼育(1999年)和田勉監督
- サンデイドライブ(2000年)斎藤久志監督
- 溺れる人(2000年)一尾直樹監督
- さくや妖怪伝(2000年)原口智生監督
- Dead or Alive2 逃亡者(2000年)三池崇史監督
- 殺し屋1(2001年)三池崇史監督 ジジイ役 ※CG合成でマッチョ体型に
- 盲獣vs一寸法師(2001年)石井輝男監督 明智小五郎役
- クロエ(2001年)利重剛監督
- 連弾(2001年)竹中直人監督
- とらばいゆ(2002年)大谷健太郎監督
- 稀人(2004年)清水崇監督
- 恋の門(2004年)松尾スズキ監督 野呂役
- クワイエットルームにようこそ(2007年)松尾スズキ監督 元旦那役
- 「また、必ず会おう」と誰もが言った。(2013年)古厩智之監督 秋山荘介役
- シン・ゴジラ(2016年)庵野秀明監督 間邦夫役
- SCOOP!(2016年)大根仁監督 多賀役
- オーバー・フェンス(2016年)山下敦弘監督 洋子の父役(声)
- 沈黙 -サイレンス- Silence (2016年)マーティン・スコセッシ監督 モキチ役 ※オーディションで選ばれ40㎏台まで減量
- 騙し絵の牙(2021年)吉田大八監督 高野民役
- DIVOC-12「ユメミの半生」(2021年)藤井道人監督 ミニシアターの支配人役
- シン・仮面ライダー(2023年)庵野秀明監督 緑川弘役
ドラマ
- 恋のためらい(1997年)小池新一役
- 日曜日は終わらない(1999年)
- 私立探偵濱マイク(2002年)
- 演技者。「マシーン日記」(2003年)アキトシ役
- 蝉しぐれ(2003年)三宅藤右衛門役
- 劇団演技者。「雨が来る」(2004年)登役
- 秘太刀 馬の骨(2005年)
- シナリオ登龍門2005「きたな(い)ヒーロー」(2006年) 柿本茂男役
- 生物彗星WoO(2006年)永倉泰三役
- 慶次郎縁側日記第3シリーズ(2006年)
- セクシーボイスアンドロボ(2007年)林竹男役
- フルスイング(2008年)太田三郎役
- ゲゲゲの女房(2010年)塚本(水木の義兄)役
- カーネーション(2012年)原口猛役
- 坂の上の雲(2010年)明石元二郎役
- 東京裁判(2016年)竹山道雄役
- 4号警備(2017年)渋谷謙一役
- 小野田さんと、雪男を探した男~鈴木紀夫の冒険と~(2018年)小野田元少尉役
- dele(2018年)笹本清一役
- 半分、青い。(2018年)宇佐川乙郎役
- このマンガがすごい! (2018年) 本人役 ※ドキュメンタリー
- いだてん〜東京オリムピック噺〜(2019年)副島道正役
- MIU404(2020年)倉田靖典役
- 半径5メートル(2021年)いずみようじ役
- おかえりモネ(2021年)田中和久役
- 昭和歌謡ミュージカル また逢う日まで(2022年)旅人役
- 17才の帝国(2022年)鈴原役
- 拾われた男 Lost Man Found(2022年)TATSUYA渋谷店の客役
- 杉咲花の撮休(2023年)店主役