※以下、鬼滅の刃のネタバレを含みます。※
※これから原作漫画・アニメ版を楽しみにしている人達は閲覧注意。※
概要
吾峠呼世晴による漫画『鬼滅の刃』へ登場する炎柱・煉獄杏寿郎が自身の日輪刀へつけていた鍔。
杏寿郎が無限列車の任務先で殉職、立派な生き様で去って逝った彼の身体や備品は生家へ帰り、後に「また御守りください」と願いを込め竈門家の炭治郎へ煉獄家・長男の鍔が渡る。
鍔とは、刀剣を扱う者にとって重要な代物の1つ。刀身と柄を分ける金属製の小さな部品。大きな役割に、誤って柄から刀身へ手が滑らない予防、相手の刃から手を守る防護から、手へ収まる外観と裏腹に意外と頑丈な刀の部位。また日本刀の鍔は凝った装飾・形状の物が多く、21世紀現代においては骨董芸術としても価値が高い。
鬼殺隊の煉獄杏寿郎が使っていた鍔は、代代に亘り鬼退治の非政府部隊で最高峰の実力者・柱(はしら)を輩出しており、得意とする剣技「炎の呼吸」の家系へ由縁するように、数段階の色分けがされた炎(ほむら)を模った形象。
名称の留意
閲覧機器の仕様で、煉獄の「煉」が正しく表示されない場合がある。正しい表記は【火 + 東】であり、公式の字面や字幕、本稿を閲覧する対応機種では【火 + 東】の字形で表示される。
鍔へ繋がれていく軌跡
元所有者である炎柱・煉獄杏寿郎は炎の如く篤い志を抱いていた。偉大な剣士として周囲の人々へ多大な信頼が置かれ、後輩剣士には目標・憧憬とされる人格者だった。
そんな杏寿郎の炎みたいに強い意志「人々を守る」は、陽のように清い心魂を抱く少年剣士、生前の彼が信頼を置いた竈門炭治郎へ炎柱の鍔と共に継承されていく。
煉獄家から竈門家へ
炎柱・煉獄杏寿郎の最期を看取った事、最後の言葉を彼の家族へ伝えるため、杏寿郎の鎹鴉・要(かなめ)の案内で煉獄家へ赴く鬼殺隊士の少年・竈門炭治郎。
到着すると、杏寿郎の弟・千寿郎と初対面し言葉を掛けるが、直後に現れた杏寿郎と千寿郎の父親・槇寿郎へ身に覚えのない因縁を吹っ掛けられ、ちょっとした騒動になってしまう炭治郎。始まりは最悪の出会いになってしまった炭治郎だったが、何とか千寿郎とだけの対談へ辿り着けた。片や突発的な反撃(頭突き)をしてしまった謝罪、片や親の不躾な行いだったから当然と和解、そうして本題「炎柱・煉獄杏寿郎の最期と言葉」を伝える。その真摯な対応から、千寿郎は心からの感謝を家族の一員として述べる(後に、息子・千寿郎を通して父・槇寿郎へも杏寿郎の言葉が伝えられる。最期まで不甲斐ない自身を気遣う姿勢だった事へ猛省と畏敬、様々な感情が溢れる涙を流した)。
別れ時、弟・千寿郎は「きっと貴方を守ってくれる」と、最愛の兄が使っていた刀の鍔を、少年剣士・竈門炭治郎へ託す。大切な品と重々承知していた炭治郎は畏まりながら受け取り、より一層に鬼退治へ志を高く持った。
鍔が繋いだ奇跡
鍛錬に励み、数々の任務へ勤め、辛くも生還を果たす竈門炭治郎(この時には、文通にて煉獄槇寿郎とも和解を経ている)。だが過酷な戦闘で主武器・日輪刀は破損し、新調のため「刀鍛冶の里」へ来訪。この土地でも鍛錬に臨む最中で、新しい刀へ「煉獄杏寿郎の鍔」をつけようと決意する。その成り行きで巡り会った子ども・小鉄を信用し、修練で無くしてはいけないとしてか彼に大事な鍔を預けた。
しかし里へ滞在中、鬼たちの襲撃に遭ってしまう炭治郎。仲間達と共に難敵の鬼たちへ交戦、別所では里の子ども・小鉄にも危機が迫っていた。幹部鬼が生み出した手下鬼に鳩尾(人体の急所)を刺され大出血し、あわや亡くなり・・・はせず生還。
なんと腹を刺された所には、炭治郎から預かっていた鍔を仕舞っていた。この小さくも頑強な代物が盾となり腕の傷だけで済む奇跡が起きた。
この光景を目の当たりにした霞柱・時透無一郎は、幹部鬼を退治した負傷で倒れながら、嘗て炎のように暖かく言葉を掛けてくれた炎柱・煉獄杏寿郎との思い出が浮かび、あの人は居なくなってもまだ人を守った軌跡に涙した。
再び戦場へ
刀鍛冶の里を襲った厄災が終結、生き残った炭治郎と仲間達は重症から本部で療養していた。ある日、同じく大怪我を負っていた刀鍛冶・鋼鐵塚蛍が療養中の炭治郎を訪れる。彼は万全の状態でないにもかかわらず、一刻も早く新しい刀を研磨し、仕事を終えた一刀を届けに来たという(なお療養場へ到着した今、研磨仕事で悪化した怪我に涙して息が荒い絶不調で、いつにも増して面倒な機嫌となっている鋼鐵塚さん。お疲れ様です)。
懸命な職人技で用意された黒刀には、待望の品「煉獄杏寿郎の鍔」がつけれていた。まだ治療に専念しなければならない炭治郎だが、心は炎へ燈されるように明るくなった。
さらに幾日後、特別訓練を乗り越えた炭治郎は、遂に来た鬼との総力戦へ臨む。炎柱・煉獄杏寿郎の鍔を付けた黒刀を携えて。
壮絶で数々の死闘・死線を仲間に助けられながら立ち向かいー。
備考・余談
アニメ版・無限列車編の追加描写にて。炎柱・煉獄杏寿郎が主役となる回で、先代炎柱である父・煉獄槇寿郎も同様の鍔を使っていた事が画かれる。
アニメ版・遊郭編で制作されたOP映像の始まりは、本編で炎柱・煉獄杏寿郎の鍔とも関わりある一幕から始まる流れもあって、この鍔が前面に映し出される⇒主人公・竈門炭治郎が受け継ぐの構成となっている。
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かけがえのない人々の犠牲・手助けから、遂に鬼殺隊は鬼の始祖・鬼舞辻無惨を退治が果たされた。多大な負傷・後遺症を負い療養をしている竈門炭治郎の元へは、御縁が結ばれた大勢が見舞いに来ており、煉獄家の槇寿郎と千寿郎も訪れた。
「息子の・・・杏寿郎の鍔をつけて戦ってくれたそうだな」
「ありがとう」
「あの子も きっと喜んでいると思う」
杏寿郎の父・槇寿郎が述べた謝意に畏まる炭治郎。少年もまた、尊敬する剣士の鍔(ことば)から勇気・活力が湧き励まされたと感謝を伝えた。
斯くして、より煉獄家と竈門家とを繋ぐ絆は深く強く固く結ばれた。
原作漫画23巻。最終回で大正時代本編から21世紀現在へ物語は移り変わる。最後の画(コマ)となる竈門家の一室で、現代まで受け継がれる先祖の品々「竈門家の耳飾り」「当時の写真」に高祖父が使っていた日本刀と思しき代物も飾られている。竈門家の人物と重なったり、構図の都合から判然としないが、きっと「煉獄杏寿郎の鍔」がつけれた刀が、幾星霜と大切に愛蔵されているのだろう。