概要
連結器の代わりに台車(連接台車)を介して、複数の車両を連結する構造の鉄道車両。
連結器方式の鉄道車両に比べ、台車の数を減らせるなどの利点がある。
日本においては、小田急電鉄の「ロマンスカー」、江ノ電(江ノ島電鉄)などが代表的存在。
意外と知られていないが、西日本鉄道500形(大牟田線にて活躍していた)は日本初の高速鉄道用連接車である。
なお、富山ライトレールや広島電鉄の超低床電車に見られるように、各車体の下に1基の台車を装備してそれを連結させたタイプや、台車のついた車体で台車のない車体(フローティング車体)を挟み込んだタイプの車輌もあるが、これらは永久連結が基本であり、構造上別個の車輌として運用ができないため連接車に区分されることも多い。
新幹線においては、JR東日本が開発した試験車両「STAR21」(952・953形)が今のところ最初で最後の採用例である。STAR21は9両編成であるが、このうち盛岡側の半分を構成する953形5両が連接車となっており(相方の952形4両はボギー車)、編成全体で台車が14個という構成となっている。同車の最高速度記録は425km/hで、連接車としては日本最速であり、日本の連接車としては初めて300km/hでの走行を果たした車両でもあった。
海外においては固定編成に多用され、たとえばフランス国鉄のTGVは両端の動力車を除く全ての車両が連接車であり(動力車は通常のボギー車)、世界最速の連接車となっている。
また、ドイツ鉄道のSバーン(都市近郊形電車)で使用される423系、425系、426系、422系、430系やイタリアの高速新線を使って営業を開始するNTV社の「イタロ」(車両はアルストム製AGV)も連接方式の電車である。
イタリア国鉄のETR300形(セッテベロ、セッテベッロ)も2~3両単位のユニットで連接車になっており、スペインのタルゴは一軸台車(しかも、左右の車輪が独立)による連接車である。
利点
- 台車の数が減らせるため、編成重量を軽減できる。
- 中間車体にはオーバーハングがないため、急曲線でもスムーズに通過できる。
- 上記に関連して、カーブ外側へのハミ出し(外偏奇)がなく、車体幅を広げることができる(例:JR東日本のE331系)。
- 発進、加速、停止時の前後揺動が少ないため乗り心地がよい。
- 特急形車両では、揺れ枕を高い位置に置くことで乗り心地を向上できる(例:小田急ロマンスカーの50000形VSE)。
欠点
- 切り離しての検査ができないため、保守が面倒である。もっとも、最近は編成単位での保守が主流になりつつあるためこの問題は減ってきている。またE331系では、7車体+7車体に分割できる構造としている。
- ボギー車と違って切り離しができず、編成の自由度は低く、固定編成でない限り採用されない。ただし解決策として、複数の短編成を分割・併合することはできる。
代表的な連接車
京阪本線から京津線に直通するための電車で、とくに京津線はカーブが急であることから連接車が採用された。びわこ号の名を知らない鉄道ファンはほとんどいないといっていいだろう。
現在は京阪自身の手で1編成が保存されている。
江ノ電もまた、京津線同様に急なカーブが多く、(現在に至るまで)連接車を長きに渡って採用し続けている。もっとも、80年代まではボギー車を2両つないだ「連結車」も存在したが、カーブ半径の制約から車両間の通り抜けができたのは連接車のみであった。
小田急では1957年の3000形SE車を皮切りに連接車を採用してきた。長大編成列車における連接車はわが国においては小田急が初である。
1987年の10000形HiSE車以来、しばらくは連接車が製造されていなかったが、イラストの50000形VSE車で18年ぶりの採用となった。
近畿日本鉄道10100系「ビスタカーⅡ世」、10000系「ビスタカーⅠ世」
近鉄ではこの電車と、先に登場していた10000系「ビスタカーⅠ世」で連接構造を採用していた。10100系では3両編成で4台車すべてが動力台車という構成で、列車重量の全てを動軸重にできた。その前に試作した10000系では7両編成中真ん中の3両がダブルデッカー・連接車による付随車でそれをボギー式の電動車ユニット2組で挟むという構造だった。なお、ビスタカーⅢ世(→のちのビスタEX)こと30000系では連接構造をやめてしまっている。
また、三重交通のモ4400形は軽便鉄道(→ナローゲージ)における連接車であったが、近鉄移管後の近鉄湯の山線改軌後に近鉄北勢線に移りモ200形・サ100形(200系)になり、その後は電装解除されてトレーラー化された。この車両は北勢線が三岐鉄道へ移管されたことにより三岐鉄道籍となり、以降の近鉄には連接車は存在しない。
三重交通自身はこの車両を、編成両数の増加に対応できるよう付随台車にも電装可能な設計にしていたが、その局面はついに訪れなかった。また、トレーラー化されたのは垂直カルダン駆動機構が複雑で(しかもナローゲージの小型台車に押し込んでいる)事による整備性の悪さが原因で、連接構造のせいではない。