マタンゴ
またんご
- 英国の作家W・H・ホジスン の短編『夜の声』を原作に製作された日本のホラー映画(東宝特撮)。また劇中に登場する「放射能汚染されたキノコを食べてしまったキノコ人間」の事(メイン画像もこれ)。本記事で解説。
- 上記のキノコ人間を髣髴とさせるような、キノコのクリーチャーのイラストに付随するタグ。
- ドラゴンクエストシリーズに登場するキノコの怪物。おばけキノコの上位モンスター。こちらも名前の元ネタは恐らく1だと思われる。
- 電波人間のRPGシリーズに登場するキノコのモンスターの総称。こちらも名前の元ネタは恐らく1だと思われる。
- ライブアライブの近未来編に登場する薬物。大量摂取すれば超能力的なパワーも出せるらしいが…。
- 筋肉少女帯の曲。1.の映画が元になった歌詞で、そのまま「キノコ人間」というフレーズがある。なお「呪いの館」という言葉や「タマミ」という少女が出てくるが、これは楳図かずおの『赤んぼう少女』(初版の際のタイトルが『呪いの館』である)が由来と見られる。
- 遊戯王のカード。マタンゴ(遊戯王)を参照。
1963年に東宝が製作した怪奇ホラー映画。1958年から製作されていた特撮サスペンス「変身人間シリーズ」の番外編のような扱いをされている。
前述のように原作はウィリアム・H・ホシスンの『夜の声』。これをもとにSF作家の星新一と福島正実が翻案した原案をもとに脚本が執筆された。
物語の作りはホラー作品ではあるが、ヨットで遭難した果てに謎の無人島にたどり着いた人々が極限状態の中で飢えと情欲に苛まれ、次第に理性を崩壊させてゆく様を生々しく描き出した点も特筆点である。
また、ヒロインを演じた水野久美の妖艶な美しさも語り草となってカルト的な人気を獲得、今日でも語り継がれる作品となった(水野はこれ以降ゴジラシリーズをはじめとする東宝特撮に数多く出演し、東宝の看板女優として活躍していくことになる)。
監督の本多猪四郎も自身の代表作に挙げていた。
ただ興行面ではあまりヒットしたとはいえず、東宝特撮映画はほぼゴジラシリーズに一本化されることとなった。
田中友幸は「売り出し方が怪獣映画と紛らわしかった」と述懐している。
ちなみに同時上映は加山雄三主演の青春コメディ映画『若大将』シリーズ第四弾『ハワイの若大将』。しかもこの映画の題材はヨットレース。何かの嫌がらせであろうか・・・?
大学教授・推理作家・歌手……各々社会である程度成功を収めた男女7人を乗せたヨットが嵐に遭って遭難した。無線機は壊れマストはへし折れ、ただ潮の流れに乗って海原を進んでゆくヨットの中で、飢えと渇きと絶望感から次第に人々の心は荒んでいった。
ある日、霧に覆われた謎の島を発見した彼らは喜んで上陸するが、島に人の気配はない。
やがて彼ら以前に漂着したであろう難破船を発見した彼らだったが、不思議なことに人々の姿はなく死体すら見つからない有様だった。
結局また飢えることとなった彼らだが、そこへ人のような姿をしたキノコの怪物が現れ…。
主要登場人物のほとんどが当時の著名人がモデルになっており、本多は「尺に余裕があれば船に乗る前の彼らの裕福な暮らしも描きたかった」と語っている。
城東大学心理学研究室の助教授。本作の主人公であり、どんなことにもめげない強靭なメンタルの持ち主。
モデルは「ワイドショーで人生相談に乗っていた学者」。
妖艶なムード漂うシャンソン歌手。笠井の愛人であり、近々ヨーロッパに連れて行ってもらう予定。
モデルは「当時の芸能界のどこにでもいた女性」。演じた水野はモデルとなった人物がいるとは知らなかったらしい。
また本作のスチルとして水着スナップが掲載されることがあるが、これは撮影の合間に水野が私物の水着で遊んでいた際に撮影したもので本作とは直接は関係ないらしい。
笠井産業の社員。今回の旅では船長の役割もしており、的確に現状分析を行うことができる。
モデルはヨットで太平洋を横断した堀江謙一。
臨時雇いの漁師。かなりのお調子者であり、ヒロイン達を狙っている。
特にモデルはない一般庶民。
新進の推理作家。
モデルは大藪春彦。
青年実業家。笠井産業の社長であり作田の上司。社長としての地位と美女を恋人に持つことを鼻にかけており、かなり身勝手で無責任。
村井の教え子で婚約者。気弱な性格だが心優しく、村井の行くところならどこまでも付いていく献身的な女性。
モデルは「村井のモデルになった学者の恋人」。
島に群生する変異キノコを食べた人間の成れの果て。
この島の近くで核実験が行われたために島に降り注いだ放射性物質によりそこに生息していたキノコが突然変異を起こしたものと推測され、キノコ自体は美味らしいが、麻薬のような中毒性と幻覚性があり一度これを口にしてしまうとそれを食べる事を止められなくなってしまう。
やがてこのキノコを食べ続けた人間は全身に菌糸が回って身体のあちこちからコブのようなものが出来、次第に顔の輪郭も崩れて元の顔も判らない怪人へと変貌し、最終的には手足の生えた完全なキノコそのものという怪物と化した姿がこのマタンゴである。
島の密林に潜み、島からの脱出を図る者達に一斉に襲いかかるが、それが彼らのどういう性質に基づいての行動なのかは不明のままである(わずかに残された人間の理性に従い上陸者に助けを求めようとした、キノコを食べさせて上記の性質に基づき仲間を増やそうとした等諸説ある)。
オチからは「仮に口にしていなくても、胞子を吸い込んだらマタンゴとなってしまう」可能性が示唆されているが、続編などもないため詳細は不明(ただし、東宝公認の続編小説は存在する)。また、その文明批判的な設定は主演を務めた久保から「東宝的でない」と言及されている。
ちなみに、後年トレーディングカードゲームであるバトルスピリッツ『怪獣王ノ咆哮』にも東宝怪獣の1体として参戦、カード化されている。
デザインは小松崎茂、スーツ造形は利光貞三が担当した。スーツアクターは中島春雄ほか。難破船に現れた変身途上のキノコ怪人は天本英世が演じた。
1体だけ小松崎のデザインに忠実なエノキタケ(資料によってはシメジと呼ばれることもあるがブナシメジが広く出回るようになったのは本作公開後)に似た形態の個体も確認できる。
- 1963年7月に公開されたクレージー映画『日本一の色男』の予告編には本作の特報が収録されている。特報といっても総尺20秒、赤色の背景に描き文字と効果音のみのシンプルなものだった。
- 頭部の傘に当たる部分の造形は原爆のキノコ雲がモチーフだと言われており、これは奇しくもゴジラと同じである。
- マタンゴの鳴き声は後に『ウルトラQ』のリリーとケムール人、および『ウルトラマン』のバルタン星人の笑い声に流用された。ちなみにジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』日本語吹き替え版の予告でもこっそり使われている。
- 名前の由来はツチグリというキノコの別名「ママダンゴ」から。ちなみにこのツチグリは(特定の時期のみ)食用になるとされる。
- 役者達が劇中で口にしていたキノコは蒸し菓子で、米粉を練った素材で作られていたとのことであり、さらにキノコらしく見せる為に食紅などで色がつけられていた。
- 因みにこのキノコ風和菓子はそのままでは味気なかったとの事であった。そこで俳優の土屋嘉男が「砂糖を加えてみたら?」という提案をしたところ、「食べやすくなった」と役者は無論、スタッフ一同にまで高評を得る事となる。ところが食べやすくなった結果としてスタッフや役者が撮影以外の時間にこぞってつまみ食いしていたと言う。映画の内容を考えるとスゴイ皮肉である。
- 久保明によれば、幼少期に本作を見たせいでキノコが食べられなくなった、という感想をよく聞かされたとのこと。
- 実際に『オーシャンズ』シリーズなどで知られる映画監督のスティーヴン・ソダーバーグは、幼少期に本作を見てから30代になるまでキノコが食べられなかったことを告白している。ソダーバーグによるリメイクも企画されていたが、東宝との合意に至らず白紙となった。
- 他にも斎藤洋介や元東宝所属女優の高橋厚子らが、本作の影響でキノコが食べられなくなったことを明かしている。
- 1997年のドラマ『ゴジラアイランド』にて、ゴジラアイランドの隣島として「マタンゴ島」が登場する。島には食べると怪獣でも酔ってしまう「ほろ酔いキノコ」が生えている。
- 映画公開当時、石ノ森章太郎によるコミカライズが読み切りで雑誌掲載されたことがある。
- 2008年に角川ホラー文庫で東宝に許諾を得た『マタンゴ 最後の逆襲』という続編が吉村達也によって書かれ発売されている。
- 強烈な内容のため、「曖昧さ回避」の項目で書かれたように多くの漫画やアニメでパロディにされている。
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