概要
『鬼滅の刃』に登場する政府非公認組織「鬼殺隊」に所属する隊士達。
基本的には、“育手(そだて)”に見込まれた若者達が、その育手の下で数年単位の過酷な修練を経た上で、藤襲山で行われる最終選別を生き残る事で正式に隊士となる(ただし、中には育手を一切介さずに、飛び入りで勝手に最終選別に挑んで合格した猛者もいる)。
隊士の卵達は大抵がまだ十代前半の少年少女達で、それでいて育手による修練は下手をすれば命を落としかねない程の過酷さであり、最終選別では数十匹の鬼が囚われた藤の花の結界内で七日七晩生き残らなければならず、命懸けの修練を乗り越えても通過率(生存率)は三割以下と非常に厳しい。修練・選別共に死者が後を絶たない凄絶なまでの苛烈さだが、この選別を抜けられないようでは、どの道任務遂行における生存確率は皆無に等しい事を意味する(ただし、最終選別そのものはあくまで生き残る事が目的なので、共に選別を受けた同期に高い実力者がいた場合は、運よく生き残れる者達もいる)。
また、辛うじて生き残って隊士になった者は、10~15日で自分の日輪刀が完成すると、すぐさま鬼狩りの最前線にそのまま投入される。しかも、人材不足と時代的に移動手段が限られる事から、鬼狩りで多少の傷を負っても治療の時間もろくになく、次の任務に向かわされる事も珍しくない。
このような過酷な環境から、所属する隊士の殉職率は非常に高い。そもそも鍛え抜かれて選び抜かれた鬼殺の剣士であっても、不死と超再生の身体を有し、物理法則すら無視する異能“血鬼術”を行使する鬼に対しては絶対的に不利なのである。他にも人間の身体能力の最盛期の関係や当時の日本の平均寿命の低さも相まってか、育手などを除けば鬼殺隊の構成員達の年齢層はかなり若く、殆どの構成員が10代~20代であり、特に20代の若者達が古参として隊を引っ張っている。
なお、彼等・彼女等が剣士を志し、危険な鬼狩りの任務を続ける理由は、金銭的な物を含め様々であるが、縁者を鬼に喰い殺された事で鬼に対して並みならぬ憎悪を抱いている者も多く、それ以外にも孤児であった者や、特殊な生い立ち・生まれ持った資質によって、一般社会に馴染めず居場所が無かった者なども少なくない事から、そうした特殊な境の者達の受け皿になっている面もある。
また、剣士に限らず鬼殺隊の構成員は“悪鬼滅殺”という目的達成の為に、完全実力主義を採っており、能力(剣術に限らず、刀工や特殊技能)にさえ秀でていれば、性格面に多少の難があったとしても重用される傾向にある。ただし、性格に多少の難があったとしても、鬼狩りという非常に過酷な仕事をしている手前、基本的には協調性などがある人間が多い(というよりそういった人間でもなければ、まず鬼との戦いで生き残って上に行く事などできない)。
その一方で、複雑な過去を持つ者の存在や実力主義の傾向が強い面は奇しくも敵対者である鬼にも通ずるところがあり、この事から鬼殺隊と鬼は紙一重な面もあるとも言える。実際に鬼の中にはかつては鬼殺隊であった者も存在し、一方の鬼殺隊も鬼でありながら鬼殺隊に協力する者がいる事がそれを物語っている。
ただし、鬼殺隊の構成員達は同じような境遇を持った者同士が多く、鬼を滅ぼすという強い目的意識がある事に加えて、前述通り経験豊富な隊士程に仲間との連携を重視する為に、仲間意識が非常に強い者が多く組織としての結束力や士気はかなり高い。他にもあくまで実力主義が通っているので、この時代としては珍しく男女の待遇の違いはほぼ見られない。また、当主である産屋敷耀哉も自らの事もあくまで鬼殺隊を動かす要員の1人として定義しており、特に柱を初めとした実力が認められている者には異論・反論含めて自由に意見を述べて議論する事を許すという、良い意味での実力主義をとっている為に、現場を知る柱達の声が通りやすく反映されやすい体制が整っている。
総じて同じ完全実力主義でも、首領である無惨の完全なワンマンで無理矢理従わされたり、メンバー同士が餌や階級を巡って争うライバルでしかない為に、関係が極めて険悪な鬼とは対照的だと言える(そもそも鬼側は基本的にはバラバラなので、一つの組織や集団としては全く成立していない)。
連絡手段には後述の鴉(カラス)を使う。そして戦闘後の事後処理や事態の隠蔽は、後述の事後処理部隊「隠」が行い、負傷者の応急処置や蝶屋敷等の専用の医療施設への搬送も行う。
他にも、現地での隊士達の治療や宿泊や必要な物資の調達等を始めとした後方支援は、かつて鬼殺隊士に命を救われた一族達が運営する「藤の花の家紋の家」が無償で行っている。
主な鬼殺隊士達
鬼殺の剣士(鬼狩り)
任務地にて鬼と戦い、この頸を落とす剣士達。
鬼殺隊最高位に立つ九人の剣士達。各人が極めた流派に従い「〇柱」という肩書を持つ。
一般隊士とは隔絶した強さを持っており、文字通り鬼殺隊を支えている存在である。
詳細は該当記事を参照。
一般隊士
甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の十段階に階級が分かれており、選別を潜り抜けた者は最下級の癸から始まる。
戦勲にあわせて階級が上がり、給金や現場での裁量も見合ったものに上昇するようであるが、上述の通り生物として圧倒的に超越している鬼との戦いで凄まじい速度で殺されていく為に、実質的には柱の露払いや斥候という立場も担っているという現実がある。
竈門炭治郎(かまど たんじろう) | 我妻善逸(あがつま ぜんいつ) |
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嘴平伊之助(はしびら いのすけ) | 栗花落カナヲ(つゆり かなを) |
不死川玄弥(しなずがわ げんや) | 神崎アオイ(かんざき あおい) |
村田(むらた) | |
作中で登場した主な鬼殺の剣士の部隊
- 那田蜘蛛山討伐隊…上記の村田や尾崎、他の隊員ら計10名で構成され、那田蜘蛛山に巣食う鬼の討伐を命じられる。階級は不明だが少なくとも『癸』以上。しかし母蜘蛛の糸による強襲を受けて、操られて同士討ちなどを起こした結果、隊は散々になり最終的には村田以外の隊士達は全員が死亡して壊滅した。また、それとは別の一団もほぼ同時期に入山しているが、こちらは兄蜘蛛の毒にやられて、人面蜘蛛にされそうになっていたところを、蟲柱・胡蝶しのぶ率いる「隠」の救助隊によって助けられ、人面蜘蛛にされた者達も蝶屋敷での治療によって後に元に戻れた模様。
- 姉蜘蛛討伐隊…アニメで描かれた姉蜘蛛の過去回想で登場した、累と出会う前の姉蜘蛛を討伐せんと追跡していた部隊。羽織を着たリーダー格の男性隊士を中心に数名の隊士で構成されており、姉蜘蛛を追い詰めたが、姉蜘蛛がそこに現れた累に彼の“家族”になる事と引き換えに助命を嘆願した事で、全員が累によって一瞬で切り刻まれて全滅した。この時点の姉蜘蛛一人にこれだけの人数が必要だったとは思えないので、彼等は他の鬼達もその前に倒してきたのだと思われる。後に累に切り刻まれた隊士とは違って、隊士としての鬼狩りへの責任感もしっかりと持ち合わせており、特にリーダー格の羽織の隊士は累についても「子供の姿をしていようが鬼には油断するな」と他の隊士に声をかけたりと、それなりに実戦経験も豊富な隊士達だった模様。
- 刀鍛冶の里防衛部隊…刀鍛冶の里に常駐して、特に里長を守っていた隊士達の部隊。そのお役目上かなり実力のある隊士達だったと思われるが、上弦の伍の玉壺が召喚した使い魔の魚の化け物達の急襲によって全滅した。ただし、恋柱・甘露寺蜜璃が到着するまでの時間稼ぎはできた模様。
- 帝都防衛部隊…煉獄杏寿郎外伝に登場した階級「甲」時代の煉獄杏寿郎が率いる部隊。この時点では入隊したばかりで階級「癸」だった弟子の甘露寺蜜璃もこの部隊に参加していた。煉獄が率いる部隊は煉獄と甘露寺を含めて計10名の隊士で構成されていたが、これ以外にも複数の部隊が帝都の各地で待機していた模様。この時点の下弦の弐だった佩狼による爆弾での強襲で死傷者を出しながらも、爆弾の解除と佩狼が放った影の狼に対処する。普通に斬り込めば逆に刀を取り込んでしまう影の狼を、負傷しながらも斬り捨てて倒していた事から、この隊士達はいずれもかなりの実力者達だったと思われる。最終的には全ての爆弾の解除に成功し、佩狼を倒した重傷の煉獄に感極まって抱きついた甘露寺を、一刻も早く煉獄を治療する為に引きはがそうとするが、どうやっても離れない甘露寺の力に驚愕していた。
- 伊之助の山に入った討伐部隊…鬼の討伐の為に山に入った2名の隊士。先輩と後輩の2人組であり、鬼の襲撃で負傷した先輩隊士を手当てするべく入った横穴が、不幸にも伊之助のねぐらだった。そこで伊之助に力比べを挑まれて後輩隊士は頭突きを食らわされ(先輩隊士の方は、負傷してる奴と力比べをしても意味がないという理由から、手は出されなかった)、その直後に現れた鬼との戦闘の為に日輪刀を伊之助にぶんどられ、鬼は伊之助が倒したものの、そのまま藤襲山での最終選別の事を白状させられた上で、刀を目の前で作中の形状に改造されて持ち逃げされてしまった。つまり、本編で伊之助が最初に使っていた2本の日輪刀の元の持ち主達である。
- 無限列車部隊…テレビアニメ無限列車編第一話に登場した部隊。無限列車に巣食うとされていた切り裂き魔を抹殺すべく行動していた。煉獄杏寿郎の指示のもと、彼によって傷つけられた被害者の手当てを行い、列車倉庫に切り裂き魔が現れた際にも駆けつけた。青い羽織りの隊士の他女性隊士も含めて数名で構成されていた。
剣士以外の鬼殺隊士
負傷した剣士の救護や鬼との戦闘後の隠蔽を行う事後処理部隊。現場への一般人の立ち入りの規制や誘導等を行う事もある。現場以外でも隊服の縫製等の内向きの雑事も担っている。
詳細は該当記事を参照。
竈門禰豆子(かまど ねずこ)
詳細は該当記事を参照。
炭治郎の妹。彼女は鬼であり、他の隊士達と異なり正規の隊士ではなく階級も持たないが、兄・炭治郎による保護・監視の下、お館様の意向もあって鬼殺隊の一員として認められている。
詳細は該当記事を参照。
蝶屋敷にて看護・訓練を担当する。神崎アオイとは異なり最終選別を受けていないので隊士ではないが、蟲柱・胡蝶しのぶの下で隊士達の治療に奔走する鬼殺隊の一員である。
継子(つぐこ)
最高位の剣士たる「柱」が直々に育てる隊士であり、事実上の柱候補生である。それぞれの柱が決定権を持つが、現役を退いた元柱が育手である者はこれには該当しない。
隊士の能力・装備
能力・技術
鬼殺の剣士を始めとした隊士達が習得する各種技術。
著しく増強させた心肺により一度に大量の酸素を血中に取り込む事で、瞬間的に身体能力を大幅に上昇させる身体強化の呼吸法。鬼殺隊士の実力は主にこの呼吸法の技量で決まる。
詳細は該当記事を参照。
反復動作
岩柱・悲鳴嶼行冥が習得した技術。予め決めていた動作をする事で全ての感覚を開いて一気に心拍と体温を上昇させる技であり、全集中の呼吸ともまた違う技術なので、呼吸を使えない弟子の不死川玄弥でもこの技術を体得して身体能力を増強している。ただし、一瞬で集中力を極限まで高めるという技術なので、習得には呼吸とはまた違った素質がいる他、あくまで呼吸による身体強化の補助的な技術に過ぎない為、これ一つで鬼と戦う事はできない。また、あくまで悲鳴嶼が使っている補助的な技術という事もあって、体得している人間は鬼殺隊士であっても意外に少ない。
反復動作をする為に予め決める動作は、人によってそれぞれで異なり、悲鳴嶼や弟子の玄弥は念仏、炭治郎は家族の記憶の回想と「心を燃やせ」という言葉、伊之助は天ぷらの回想と「猪突猛進」という言葉である。
鬼殺隊でのみ運用される特殊な指文字。隊士同士が鬼に悟られぬように情報を共有したり残したりする為に用いられる。鬼殺隊では情報共有を円滑に進める為に、積極的に識字を進めており、入隊して間もない隊士達も使えていた事から、育手からも教えられていると思われる。他にも鎹鴉達にすばやく情報を伝えて伝令させる為の速記(簡略暗号文のようなもの)などもある。
支給装備
最終選別を終えた剣士は、下記の装備を隊から支給されて任務へ送られる。
刀、隊服共に個々人に誂えられた物となる。
日光を吸収した猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石という特殊な鉄で打たれた刀。日光を浴びる事以外は基本的に不死身である鬼に対して、その頸を斬る事で“殺す”事ができる唯一の武器。
詳細は該当記事を参照。
隊服
背に“滅”の字が描かれた黒い詰襟。
特別な繊維でできており、通気性はよいが濡れ難くて燃え難い。雑魚鬼の爪や牙ではこの隊服を裂く事すらできない程に頑丈である。ボタンには藤の花の意匠が入っている。
その特殊性から、縫製にも相応の技術(技能)が必要とされるようである。
大正時代という時代背景から、この隊服が導入・実用化されたのは比較的近年であるらしく(現実の日本で詰襟の導入が本格的に始まったのは明治初期からである)、TVアニメ版無限列車編の第一話の回想で登場した20年前の煉獄槇寿郎は、まだ詰襟の隊服を着ておらず着物姿だった。
最初のデザインは着物だったが「大正感が欲しい」という担当の言葉により、今の詰襟+羽織スタイルに変更されたとの事。上記の着物姿の過去の柱達の姿は、この設定の名残かもしれない。
鎹鴉(かすがいがらす)
人語を解して話す鴉。上記の通り人語だけでなく文字も理解でき、鬼殺隊で使われている特殊な速記による筆談で、すばやく情報を理解して共有する。各鬼殺隊士にあてがわれており、どこからともなく現れては隊士に任務地やその地で起きている怪異の詳細、または上からの指令や伝令を伝える。他にも動物故に人間以上に鬼には感知され難いという特性を活かして偵察なども行う。
ただし約一名、鴉ではなく人語を話さない雀をあてがわれている隊士もいる。
詳細は該当記事を参照。