ハイスクール・フリート
はいすくーるふりーと
※後述事情(劇場版の制作会社変更)により、親記事はA-1Picturesへ変更しております。
概要
プロダクションアイムズ制作のオリジナルアニメ作品。原案は鈴木貴昭、脚本は吉田玲子、監督は信田ユウ、キャラクター原案はあっとが担当している。
2015年8月末に『はいふり』というタイトルでプロジェクトが発表された。
2016年4月から6月まで、TOKYOMX、とちぎテレビ、群馬テレビ、KBS京都、サンテレビ、AT-Xほかにて全12話が放送された。
なおおそらくサプライズ演出として、アニメ1話のEDにて『ハイスクール・フリート』にタイトルが変更された。
原案の鈴木貴昭曰く、蒼海の世紀と世界観を共有しているとのこと。
ただし両作品を比べるとわかるが、全く同一の世界観ではなく「パラレルワールドの未来」もしくは「設定を流用」と言ったほうが近い。一例を挙げると、蒼海の初期構想では架空の第二次世界大戦が起きる予定だったが、本作ではその大戦自体が起きていない。
劇場版ハイスクール・フリート
OVAからさらに3ヶ月後を描く、劇場公開作品。2020年1月18日に公開。
前述の通り、アニメーション制作はA-1Picturesとテレビアニメ版から変更されているが、主要スタッフおよびキャストには変更なし。
該当項目も参照。
メディアミックス
コミカライズ版
『はいふり』
アニメに先行する形でコミカライズが月刊コミックアライブにて2015年12月号から連載されている。
作画は阿部かなり。
詳細は該当項目を参照。
ヴィルヘルミーナを主人公としたスピンオフ作品。月刊コミックアライブにて2016年7月号から2017年10月号にかけて連載された。作画は槌居。
ヴィルヘルミーナとテアらアドミラルシュペークラスの出会いから、本編で起こった出来事までを描く。全3巻。
該当項目も参照。
ノベライズ
『ハイスクール・フリート いんたーばるっ!』
MF文庫Jより刊行されている、アニメのストーリーを補完するスピンオフノベル。著者は姫ノ木あく、イラストは桝石きのと。既刊2巻。
『ハイスクール・フリート あらいばるっ!』
同じくMF文庫Jより刊行されているスピンオフノベル。TV本編から劇場版までの出来事を描く。著者およびイラストは「いんたーばるっ」同様、姫ノ木あくと桝石きのとのコンビ。既刊1巻。
その他書籍
コミカライズ以外では、MFCレーベルからアンソロジーコミックもリリースされている。
その他ファンブックとアニメイラスト画集がリリースされている。
アプリ
はいふりアプリ
各種情報の配信や、オリジナルフレームでカメラ撮影が楽しめるアプリが放送開始前から配信されている。
かつて配信されていたスマートフォンゲーム。
詳細は該当項目も参照。
ストーリー
『海に生き、海を守り、海を往く―――それがブルーマーメイド!』
今からおよそ100年前、プレートのずれにより多くの国土を水没によって失った違う世界にある日本。
国土保全のため次々と築かれた水上都市はいつしか海上都市となり、それらを結ぶ航路の増大に伴い海の安全を守る多くの人員が必要となっていった。女性の海上労働進出も進み、海の公安を司る「海上安全整備局(現実の海自と海保を合わせたような国家行政機関)」の女性部隊、通称「ブルーマーメイド」が多くの少女たちの憧れとなっていった。
そんな世界で岬明乃は、幼馴染の知名もえかと共に「ブルーマーメイドになる」という目標を持ち、養成機関である横須賀の海洋高校に入学する。
主役艦&乗員(メイン人物)
全長 118.5m / 全幅 10.8m / 基準排水量 2,033t / 速力 37ノット
横須賀女子海洋学校所属の航洋直接教育艦。艦番号は「Y467」。
試験用機材を搭載し、同型艦よりも高速だが不安定である。
艦詳細、及び艦橋要員以外の乗員は晴風の記事参照。
艦内編成表&艦橋要員
世界観
幕末の頃から分岐した歴史の世界で、坂本龍馬が暗殺を免れている。
その後、日露戦争が実質引き分け(海戦で史実同様勝つも陸戦で大敗)で終わった結果、大陸開発を諦めておりその代わりで海上開発およびメタンハイドレートの採掘が活発化、海洋大国の道を選んでいる。
しかし、それらの採掘作業の結果急激な地盤沈下を起こし海面が上昇、国土の大部分が水没したため否応なく海洋国家化が民間レベルで進められている(中学で船舶関係の授業及び資格試験がある等)。
技術力
人々は船舶で移動や生活、交流し、個人所有の水上バイクも普及している。商業施設のための大型船やメガフロートも多く登場する。
情報技術は現実世界と遜色ないようでタブレットやスマホが使われ、艦艇をつなぐネットワークがちゃんと存在している。
しかし航空技術は現実よりも非常に遅れており、飛行機という概念さえ存在しない。
「空を飛ぶ機械」といえば後述の飛行船やそれを応用したドローン程度で、飛行機、ヘリコプター、水上機、飛行艇等の航空機は全て夢物語扱いである。気球やグライダーなどの滑空機も作中ではほとんど触れられていない。(飛行船があるのでグライダーは兎も角、流石に気球はあると思われる)
水上機や艦載機が存在しないため、水上機母艦や航空母艦、潜水空母も存在せず、史実では空母に変えられた戦艦信濃が戦艦として運用されている。
同様の形で対空装備も精々対飛行船用レベルのお粗末な品で、劇中の大和型も史実の様に対空砲が増設されておらず、副砲が両舷に装備されたままとなっている。
飛行機の無い世界
設定によるとリリエンタールの師匠が墜落死し、自転車屋のライト兄弟は飛行機の発明が出来ず、これを受けて動力飛行機の研究は放棄された世界である。
日米関係が悪化した時期に条約違反覚悟で大和型戦艦が建造されるものの、その後は開戦に至らず米国と和解。第二次世界大戦も発生していない為、フォン・ブラウン博士がアメリカに来ていないし、宇宙ロケットの研究も進んでいない。
ミサイルの類(噴進弾)は存在するものの不安定な実験兵器のように扱われていた。人工衛星も存在しないが、GPSによく似た設備自体は一応あるらしい。
これによってマレー沖海戦が発生していないので、作中では戦艦を航空機で沈めるという発想が存在しない。船乗り気質を描写する為に船そのものを活躍させる事と、大和型戦艦という世界最大級の巨艦に陽炎型駆逐艦で立ち向かう活劇を成立させる為の舞台設定であろう。
用語
女子海洋学校
ブルマー候補生達の訓練校。
ホワイトドルフィン
海上安全整備局の男性部隊の通称。
2020年5月現在は、専ら養成機関である東舞鶴男子海洋校の出番の方が多い。
この世界では性別による健康上の問題などで潜水艦は男性のみで運用されている。
使用するのは主にあきづき型、はつゆき型、むらさめ型などの比較的小型で運用に柔軟性のある高速艦艇である。この事から水上艦艇は海上自衛隊の汎用護衛艦(DD)の系譜を進んでいると推測される。
なお現実世界では最強の海軍戦力となっている現代の潜水艦は全く登場していない。
ハイブリッド飛行船
通常の飛行船より扁平な形状をしており、空気抵抗を減らしつつ揚力の恩恵を受けることで、速度、航続距離、搭載量などで通常飛行船を上回る。哨戒機や通信プラットフォームとして活用されている。
ちなみに現実でも試作段階で開発が進められているようである。
スキッパー
波の高い外洋において、リミッター有りでも120km/hを超える高速で長距離を疾走するものすごい水上バイク。
主に登場する大型のものは「中型スキッパー MYS-C180XR」と称され、ジェットポンプで推進しており少しの座礁でも動くくらい頑丈。明乃が通学で乗った小型のものは「小型スキッパー JYS-C50J」で、こちらも60km/hを出せるらしい。
小型スキッパーは原付感覚で普及しており、一応中学から免許の取得が可能となっている。
なお作中では、搭乗者は普段は上着の下に隠されていて緊急時に救命イカダサイズまで膨らむライフジャケットを着用する。
RATt
TV版の鍵を握る鼠のような外見をした小動物。とある実験によって生み出されたもので、その体内に人間を精神混乱に陥れたり電子機器を麻痺させるという特殊なウイルスを保持していた。
ただし猫には効かないので、五十六が居候していた晴風は一時的に1名が混乱して電子機器が不調になった程度で済んでいる。
また人がウイルスに感染しても短時間であれば海水をかけられると正気には戻る(晴風の「被害者」も、そうやって立ち直った)が、長引いた場合は対処のしようが無いどころか集団になってしまうとそれこそ収拾が付かなくなってしまう。
晴風に乗り込んでいた鏑木美波の手によって血清が開発され、事態は収束に向かった。
人間が突然凶暴化するが、適切な解毒方法に従えば副作用も無く全部解決しちゃうウイルスともなれば、この組織がよく使ってたようなものだろう。
主題歌
TVシリーズ・OVA
- オープニングテーマ「High Free Spirits」
作詞・作曲 - 山崎佳祐、編曲 - 溝口雅大、歌 - TrySail
- エンディングテーマ「Ripple Effect」
- キャラクターソング「わたしたち記念日」
作詞 - 稲葉エミ、 作曲 - eba、 歌 - 岬明乃(夏川椎菜)、知名もえか(雨宮天)
※放送前のイメージソング。OVA後編において挿入歌として使用。
劇場版
劇場版ハイスクール・フリートの項目参照。
タイトル詐欺
本作は第1話終了まではタイトルがはいふりとして発表され、視聴者には日常系アニメだと思わせる宣伝がなされており、1話放送終了直後は学校で新日常するアニメや四国で新日常するアニメに騙された難民たちを三度震え上がらせた。
実際にはシリアス要素をユルさで中和したごく安心して視聴できる内容だったが、前者が段階的に、後者が安心できるのか出来ないのか焦らしつつ8話まで引っ張るという手法を用いた前科があったため、視聴者はしばらく戦々恐々としていた。
しかもその隠蔽工作はそれらよりも徹底しており、
- 番組のタイトル自体を変える
- CMではOPテーマに見せかけたキャラクターソングを流す
- 放送開始前から横須賀市内のコラボ店舗に貼られていたポスターが「はいふり」表記になっていた
- JR秋葉原駅前のラジオ会館に展示されていた大型ポスターが、タイトル変更後に『ハイスクール・フリート』としてのポスターに差し替えられた。
という念の入れようであり、
タイトル変更では2話の録画に失敗した視聴者も少なからず発生した。
ポスター張り替えもかなりの手間であったと思われる(ポスターは実は2枚重ねて貼られていて、差替時間になると上のポスターを外し落として下のポスターを露出させると云う方法を採っていたので、少なくとも馬鹿正直に張り替えるよりは楽だったと思われる)。
とは言え本作もまたスタッフの一覧や試写会の場所などちゃんと情報を収集していればその怪しさに気づけるようになっており、上記2作品同様に放送前から本作に注目していた層にはほぼ看破されていた。
そのためこの入念な日常アニメ偽装を看破していた視聴者はなおさら警戒していたが、終わってみるとその手のアニメのような深刻なトラウマを植え付けることもなく、全体としては円満に物語は幕を閉じた。
感染生物による災害という設定こそなかなかにハードではあるが、物語は晴風生徒たちの活動を主軸に展開しており、パニックやホラーを思わせる描写はごく控えめ(ほぼ無いと言ってよい)だった。
必要以上に警戒していた視聴者たちは盛大なる肩透かしを喰らった形になる。
この肩透かしこそが公式の狙い・・・だったのかは定かではないが、あまりにも手の込んだ偽装工作の割にはその意図が不明確だったため、放送後は視聴者の間ではいふりとは何だったのかと言われる事態になった。
一方、DVD&Blu-rayのオーディオコメンタリーで語られた制作案では何人かキャラクターが死亡する予定だったらしく、一歩間違えれば深刻なトラウマになっていたかもしれない。「かわいそうだから」という理由でお蔵入りしたが、そういった背景からのタイトル変更だった可能性もある。
もしかしたら機雷掃海中に木端微塵、武蔵主砲の直撃を受けた射撃指揮所から返事が返ってこない、なんて世界線があったのかもしれない。
公式コラボレーション
東京ゲームショウ2016のステージイベントにてコラボが行われる事が発表、翌2017年4月から5月にかけて実施。
艦艇に「晴風」や「アドミラルシュペー」等を登場させた他、キャラクター専用ボイスや登場人物を艦長として実装。
放送開始してしばらくしてから、横須賀市の飲食店において、各キャラのパネル展示をはじめとしたタイアップとキャンペーンを実施している。
このうち(下記のさかくら総本家を含む)幾つかの店舗はOVAに登場している。
- さかくら総本家 横須賀中央店
横須賀市内のタイアップ店舗の中でとりわけコラボに力が入っている和菓子屋。
劇中に登場したプリンとラムネを皮切りに、各種商品を取り扱っている他、ここでしか買えないキーホルダーなどのグッズを取り扱っている。また、店があるビルの5階は土日限定でフリースペースとして開放しており、ファンの交流場となっている。このため、ファンからは文字通り「聖地」のような扱いを受けている。
(なお、5階についてはCOVID-19の感染対策のため、2020年11月現在は休場中。再開時期は未定)
余談
- 日本郵便からオリジナルフレーム切手が発売された。プレス発表された当時はタイトル変更前の『はいふり』でテスト品を含めて告知されていた。発売は2016年4月25日、神奈川県内の一部郵便局及びアニメイトネットショップ、さらには神奈川県内のアニメイト2店舗で数量限定で販売される。
- 横須賀市の三笠公園で行われる『よこすかカレーフェスティバル2016』に『ハイスクール・フリート』として模擬店を出店した。オフィシャルグッズ及びお土産を販売。
- スキッパー搭乗時にライフジャケットを着ていない件について、放映前に海上保安庁からおしかりを受けたことがある…が、本気のクレームではなくあくまでアニメスタッフと海保が示し合わせて行ったエイプリルフールネタである。登場人物が救命具を着用していない(ように見える)理由は上記の通り。当然、現実の水上バイクにおいてライフジャケットの未着用は命にかかわるため決して怠ってはならないし、このアニメがそのような行為を推奨しているわけでもないのは肝に銘じておくべし。
- JR東日本横浜支社が2016年6月に当作品とのタイアップでスタンプラリーを実施したが、景品のクリアファイルの図柄にJR東日本の駅長制服を着た岬明乃というデザインも採用した(しかも名札には「横須賀駅 駅長 岬」と記載。ちなみに、絵柄で彼女がかぶっている制帽は官帽型という男性用で、実際に女性駅長がかぶる制帽はチロリアン型になる)。なお、スタンプラリーは2017年6月にも実施したが、第2期(2017年6月12日~)の景品のクリアファイルの図柄はJR東日本の駅員用盛夏服を着用した納沙幸子と知床鈴であった。また、2016年に実施したツアー企画で伊豆急行のリゾート21黒船編成に『ハイスクール・フリート』のヘッドマークを装着、主要キャラ声優による車内放送、公式コスプレイヤー乗車という列車を運行させ、横須賀駅で展示も行った。
- 作中に登場する「晴風」の機関は蒸気タービンであるが、その作動音は海上自衛隊協力のもと、海自最後の蒸気タービン搭載艦であったヘリコプター護衛艦「くらま」の物が使用されている。作中で行われた海難救助や機雷掃海は海上自衛隊の業務でもあるし、お仕事紹介アニメという意義もあったのだろう。
- 一連の帝国陸海軍を題材にした作品で、「萌えパチ」台に『ガールズ・アンド・パンツァー』と『ストライクウィッチーズ』が進出したので、「海軍担当は『艦隊これくしょん』か?」と思われたが、「はいふり」が出撃している。
関連タグ
その他(関連作)
原案:鈴木貴昭、漫画:野上武志による第一次世界大戦を舞台にした女子海援隊の物語。坂本龍馬が生存するなど共通点も多く、鈴木氏が6巻カバーした漫画で「自身の中では(「はいふり」と)設定がつながっている」と語っている上、武蔵の乗員には同作の水兵をモデルとしていることが明かされているため、同作品をたたき台にはいふりが作られた可能性が非常に高い。
「はいふり」とは脚本家と時代考証が同じ。コチラも個性豊かな女子高生キャラが多く登場し、「はいふり」の先駆けとなった作品とも呼べる。
本作後に「次は空ものをやりましょう」という事で誕生した経緯を持つ。詳細はリンク先にて。
女の子と船を合体させたネタの同志
なるタグも存在する。
旧海軍の艦艇と現代の艦艇が一緒に登場する同志
本作やジパングには砲弾(ミサイル)で大和型の砲弾を迎撃するシーンが存在する。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm28874394
話は少しずれるが同じ作者の沈黙の艦隊ネタが納沙幸子の一人芝居に登場している。