概要
現在の正式名称は「優駿牝馬」であるが、副称である「オークス」が通称としても広く一般的である。イギリスのオークスとして日本オークスとも呼ばれることもある。
こちらでは、日本におけるオークスについて詳細に基準する。
1938年にイギリスのオークスステークスを範として、4歳(現3歳)牝馬限定の「阪神優駿牝馬(はんしんゆうしゅんひんば)」を阪神競馬場(旧鳴尾競馬場)に創設。横浜農林省賞典四歳呼馬(現: 皐月賞)・東京優駿(日本ダービー)・京都農林省賞典四歳呼馬(現: 菊花賞)・中山四歳牝馬特別(現: 桜花賞)とともに日本のクラシック競走のひとつとされる。桜花賞は最もスピードのある繁殖牝馬の検定競走とされたのに対し、本競走はスピードとスタミナを兼ね備えた繁殖牝馬を選定するためのレースとされている。
距離は創設当初芝2700mだったが、1940年から1942年まで芝2450mで施行した後、1943年から芝2400mに変更[7]。施行場も1946年から東京競馬場に変更され、この際に名称を「優駿牝馬」に改称。1965年から(オークス)の副称が付けられ、現在に至る。施行時期は1952年まで秋季だったが、1953年から春季に変更された。
1984年よりグレード制が施行され、GIに格付け。1995年から地方競馬所属馬が、2003年からは外国産馬がそれぞれ出走可能になり、2010年からは外国馬も出走可能な国際競走となった。
2018年から2020年まで、本競走の1―3着馬には当該年に行われるヴェルメイユ賞への優先出走権が与えられていた。同年よりヴィクトリアマイル・安田記念とともにデスティナシオンフランスの名称で提携していたが、2021年より対象競走から外された。
「オーク(Oak)」は、樫を意味する英語。「ダービーステークス」創設者の第12代ダービー卿エドワード・スミス・スタンレーは樫の森が茂る「オークス」と呼ばれる土地を所有しており、1779年にエリザベス・ハミルトンと結婚した際、記念に競馬を開催することを発案。その中に夫人の希望を入れて3歳牝馬のレースを行い、これが「オークスステークス」と名づけられたのが由来とされている。その事から、日本では本競走の優勝馬を「樫の女王」という通称で呼ぶこともある。
主な前哨戦・トライアルレース
牝馬クラシック三冠レースの一冠目。
オークスの出走馬の多くはこのレースに出ており、条件・傾向の違いなどもあって桜花賞で敗れた馬の巻き返しも多い。
フローラルステークス(東京競馬場・芝2,000m)
オークスと全く同じ競馬場で開催されるGⅡ競走。
2010年以降は2着までの馬にオークスの優先出走権が与えられており、現時点でこの出走枠では2着が最高である。
スイートピーステークス(東京競馬場・芝1,800m)
トライアル競走の一つ(リステッド競走)で、1着馬のみ優先出走権が与えられている。
オークスのトライアル競走ではないが関西地域の馬が賞金の上乗せのために出走するともされており、
チョウカイキャロル(1994年)、エリモエクセル(1998年)、エリンコート(2011年)、
ミッキークイーン(2015年)、ラヴズオンリーユー(2019年)がここを勝ってオークスを制している。
NHKマイルカップ(東京競馬場・芝1,600m)
桜花賞を回避または出走できなかった馬がNHKマイルカップから向かうこともある。
競走条件
出走資格: サラ系3歳牝馬(出走可能頭数 :最大18頭)
JRA所属馬
地方競馬所属馬(後述)
外国調教馬(優先出走)
負担重量: 定量(55kg)
第3回 - 第6回は57kg。
未勝利馬・未出走馬(収得賞金が0の馬)には出走権がないものの、未勝利馬・未出走馬でも出走できるフローラステークス・スイートピーステークスで収得賞金を加算し、優先出走権を得れば出走できる。2017年までは、フローラステークス3着・スイートピーステークス2着でも優先出走権を得られたものの、これらの着順では収得賞金を得られないため、未勝利馬・未出走馬がこれらの着順となった場合は出走資格を得られなかった。
出馬投票を行った馬のうち優先出走権を持つ馬から優先して割り当て、その他の馬は通算収得賞金の総計が多い順に出走できる。なお、出馬投票の結果同順位の馬が多数おり出走可能頭数を超過した場合は、抽選で出走馬を決める。
地方競馬所属馬は上記のほか、NHKマイルカップの2着以内馬、およびJRAで施行する芝の3歳重賞競走優勝馬にも出走資格が与えられる。
歴代優勝馬
☆:牝馬三冠達成
★:二冠達成(「桜」は桜花賞、「エ」はエリザベス女王杯(1976年-1995年)(前身の「ビ」はビクトリアカップ(1970年-1975年))、「秋」は秋華賞(1996年-)との二冠を表す。
回 | 年 | 馬名 | 冠 | 騎手 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
昭和時代 | |||||
第1回 | 1938年 | アステリモア | 保田隆芳 | 記念すべき初代女王 | |
第2回 | 1939年 | ホシホマレ | 佐々木猛 | ||
第3回 | 1940年 | ルーネラ | 近藤貞男 | ||
第4回 | 1941年 | テツバンザイ | 稲葉幸夫 | ||
第5回 | 1942年 | ロツクステーツ | 玉谷敬治 | ||
第6回 | 1943年 | クリフジ | 前田長吉 | ||
第7回 | 1946年 | ミツマサ | 新屋幸吉 | ||
第8回 | 1947年 | トキツカゼ | 佐藤嘉秋 | ||
第9回 | 1948年 | ヤシマヒメ | 佐藤嘉秋 | 騎手による初のオークス連覇 | |
第10回 | 1949年 | キングナイト | 高橋英夫 | ||
第11回 | 1950年 | コマミノル | 渡辺正人 | ||
第12回 | 1951年 | キヨフジ | 阿部正太郎 | ||
第13回 | 1952年 | スウヰイスー | ★(樫) | 八木沢勝美 | |
第14回 | 1953年 | ジツホマレ | 杉村一馬 | ||
第15回 | 1954年 | ヤマイチ | 八木沢勝美 | ||
第16回 | 1955年 | ヒロイチ | 岩下密政 | ||
第17回 | 1956年 | フエアマンナ | 佐藤嘉秋 | ||
第18回 | 1957年 | ミスオンワード | ★(樫) | 栗田勝 | |
第19回 | 1958年 | ミスマルサ | 八木沢勝美 | ||
第20回 | 1959年 | オーカン | 清田十一 | ||
第21回 | 1960年 | スターロツチ | 高松三太 | ||
第22回 | 1961年 | チトセホープ | 伊藤修司 | ||
第23回 | 1962年 | オーハヤブサ | 藤本勝彦 | ||
第24回 | 1963年 | アイテイオー | 伊藤竹男 | ||
第25回 | 1964年 | カネケヤキ | 野平祐二 | ||
第26回 | 1965年 | ベロナ | 加賀武見 | ||
第27回 | 1966年 | ヒロヨシ | 古山良司 | ||
第28回 | 1967年 | ヤマピツト | 保田隆芳 | ||
第29回 | 1968年 | ルピナス | 中野渡清一 | ||
第30回 | 1969年 | シャダイターキン | 森安重勝 | ||
ビクトリアカップ設立 | |||||
第31回 | 1970年 | ジュピック | 森安重勝 | ||
第32回 | 1971年 | カネヒムロ | 岡部幸雄 | ||
第33回 | 1972年 | タケフブキ | 嶋田功 | ||
第34回 | 1973年 | ナスノチグサ | 嶋田功 | ||
第35回 | 1974年 | トウコウエルザ | ★(ビ) | 嶋田功 | 嶋田功騎手オークス三連覇 |
第36回 | 1975年 | テスコガビー | ★(桜) | 菅原泰夫 | |
牝馬三冠確立 | |||||
第37回 | 1976年 | テイタニヤ | ★(桜) | 嶋田功 | |
第38回 | 1977年 | リニアクイン | 松田幸春 | ||
第39回 | 1978年 | ファイブホープ | 横山富雄 | ||
第40回 | 1979年 | アグネスレディー | 河内洋 | ||
第41回 | 1980年 | ケイキロク | 岡部幸雄 | ||
第42回 | 1981年 | テンモン | 嶋田功 | ||
第43回 | 1982年 | シャダイアイバー | 加藤和宏 | ||
第44回 | 1983年 | ダイナカール | 岡部幸雄 | ||
グレード制導入 | |||||
第45回 | 1984年 | トウカイローマン | 岡冨俊一 | ||
第46回 | 1985年 | ノアノハコブネ | 音無秀孝 | ||
第47回 | 1986年 | メジロラモーヌ | ☆ | 河内洋 | 初の牝馬三冠達成 |
第48回 | 1987年 | マックスビューティ | ★(桜) | 田原成貴 | |
第49回 | 1988年 | コスモドリーム | 熊沢重文 | ||
平成時代 | |||||
第50回 | 1989年 | ライトカラー | 田島良保 | ||
第51回 | 1990年 | エイシンサニー | 岸滋彦 | ||
第52回 | 1991年 | イソノルーブル | 松永幹夫 | ||
第53回 | 1992年 | アドラーブル | 村本善之 | ||
第54回 | 1993年 | ベガ | ★(桜) | [[武豊] | 武豊騎手オークス初勝利 |
第55回 | 1994年 | チョウカイキャロル | 小島貞博 | ||
第56回 | 1995年 | ダンスパートナー | 武豊 | 1996年に古馬としてエリザベス女王杯を勝利 | |
秋華賞設立 | |||||
第57回 | 1996年 | エアグルーヴ | 武豊 | ||
第58回 | 1997年 | メジロドーベル | ★(秋) | 吉田豊 | |
第59回 | 1998年 | エリモエクセル | [[的場均 | ]] | |
第60回 | 1999年 | ウメノファイバー | 蛯名正義 | ||
第61回 | 2000年 | シルクプリマドンナ | 藤田伸二 | ||
第62回 | 2001年 | レディパステル | K.デザーモ | 初の外国人騎手の優勝 | |
第63回 | 2002年 | スマイルトゥモロー | 吉田豊 | ||
第64回 | 2003年 | スティルインラブ | ☆ | 幸英明 | 秋華賞導入後初の三冠牝馬 |
第65回 | 2004年 | ダイワエルシエーロ | 福永祐一 | ||
第66回 | 2005年 | シーザリオ | 福永祐一 | ||
第67回 | 2006年 | カワカミプリンセス | ★(秋) | 本田優 | |
第68回 | 2007年 | ローブデコルテ | 福永祐一 | ||
第69回 | 2008年 | トールポピー | 池添謙一 | ||
第70回 | 2009年 | ブエナビスタ | ★(桜) | 安藤勝己 | |
第71回 | 2010年 | アパパネ | ☆ | 蛯名正義 | 同着 |
サンテミリオン | 横山典弘 | ||||
第72回 | 2011年 | エリンコート | 後藤浩輝 | ||
第73回 | 2012年 | ジェンティルドンナ | ☆ | 川田将雅 | 3頭目の三冠牝馬 |
第74回 | 2013年 | メイショウマンボ | ★(秋) | 武幸四郎 | |
第75回 | 2014年 | ヌーヴォレコルト | 岩田康誠 | ||
第76回 | 2015年 | ミッキークイーン | ★(秋) | 浜中俊 | |
第77回 | 2016年 | シンハライト | 池添謙一 | ||
第78回 | 2017年 | ソウルスターリング | C.ルメール | ||
第79回 | 2018年 | アーモンドアイ | ☆ | C.ルメール | 平成最後の三冠牝馬 |
令和時代 | |||||
第80回 | 2019年 | ラヴズオンリーユー | M.デムーロ | ||
第81回 | 2020年 | デアリングタクト | ☆ | 松山弘平 | 新型コロナウイルス感染拡大及び緊急事態宣言発令の為、無観客開催。史上初の無敗の三冠牝馬となる。 |
第82回 | 2021年 | ユーバーレーベン | M.デムーロ | 圧倒的一番人気のソダシを降す。 | |
第83回 | 2022年 | スターズオンアース | ★(桜) | C.ルメール | 三冠達成をスタニングローズに阻まれる。 |
関連項目
3歳牝馬三冠レース
3歳クラシック三冠レース