※本記事には、現在公開中の作品のネタバレを含みます。
「ひとつだけ教えて。あなたは外星人なの?それとも人間なの?」
「両方だ。敢えて狭間にいるからこそ見えることもある。そう信じてここにいる」
データ
概要
地球に降着して以降「ウルトラマン」と呼ばれるが、終盤のあるシーンで一度だけこの本名で呼ばれる。
(ウルトラマンシリーズ本編の初代ウルトラマンの本名ではないので注意)。
禍威獣第7号ネロンガが出現した際に突如大気圏外から飛来し、降着した衝撃から子供を庇い命を落とした禍特対の作戦立案担当官・神永新二と融合。
その姿を借り、人間と外星人の狭間の存在として地球で活動する。
降着直後は体表と同じ銀色のライン、そして口元に皺がある顔立ちをしていた。
その後神永と一体化してからはラインが赤く変わり、顔立ちも鉄仮面のようでどこか微笑を浮かべたような表情に変化した。
前述した地球降着時の姿がリピアー本来の姿であり、体色の変化の理由については「地球人との融合に伴うスペシウムエネルギーの損耗によるもの」とされている。終盤、神永と分離した際に体色が赤から銀に戻っているのが確認できる。
なお、顔立ちが変わった理由は不明であり、作中でも体色の変化は指摘されているが表情の変化についてはスルーされている。
神永から元の姿に戻る際には、ベーターシステムの起動点火装置たるベーターカプセルを点火することで、別次元のプランクブレーンに隔離された外星人としての本体を召喚する。その際、プランクブレーンから出現した右手が神永を掴む様に一体化し、そのまま腕を突き上げた状態で実体化する(この変身シーンが見られるのはザラブ戦の1回のみで、それ以外はベーターカプセルを点火した瞬間別カットに切り替わる)。
ぐんぐんカットは最終決戦直前で登場した。
活動エネルギーは超重元素のスペシウム133という物質で、これの応用により光波熱線の使用や、重力を歪めた飛行等が可能になる。
飛行速度の公式設定はないが、地表に降着した際には12000km/h≒マッハ9.6と言及されており(※)、ネロンガ撃破後の飛行では本人周囲にベイパーコーンが発生しているため、地表からの飛行でも超音速に到達していることは間違いない。
しかし、プランクブレーンからの非コンパクト化の負荷に加え、融合した神永の生命情報維持に多くのスペシウムエネルギーのリソースを割いていることから消耗が激しく、エネルギーが低下すると体表のラインが赤から彩度を抑えた緑に変色し、活動限界に達すると消滅してしまう。
(※)……浅見弘子役の長澤まさみ氏は撮影中、「ウルトラマンがマッハ8で飛んでいきます」と説明されて困惑したらしい。
必殺技
腕を十字に組んで放つスペシウム133の光波熱線。威力は凄まじく、ネロンガ撃破時は光線の軌道上にあった山の斜面を抉り取り、発射直後に大気がプラズマ化する程だったが、神永との融合後はスペシウムエネルギーの消耗が影響したのか、もしくは周りの環境に配慮して意図的に弱化させているのか、威力が弱まり、決定打というより相手の牽制のために使用している。この状態での威力はメフィラスのグリップビームと同程度だが、エネルギー消費の都合上、撃ち合いでは不利に立たされていた。
なお、地球に降着し初めて光波熱線を放った際は、右手を垂直に立て、左手をゆっくり真横に伸ばしながらエネルギーを充填していたが、ザラブ戦以降はこの予備動作無く発射している。
(おそらくスペシウムエネルギーで生成した)丸い鋸状エネルギーを投げつける。光輪は自分の身長と同程度まで巨大化させたり、複数に分裂させることも可能。スペシウム光線を相殺したザラブの防御を無効化して両断する威力の高さを見せている。だが、メフィラスには片手で弾かれ、ゼットンにはバリアーで塞がれた上破片を撃ち返されてしまった。
- リバウンド光線
防御のために展開される長方形状のバリア。ゼットンの対空防御に対抗するために展開したが、破られてしまった。
人物像
自分の行動が原因で神永が死亡したことに対する責任を取ると共に、『自分よりも弱い者の為に命をかける』地球人の行動に興味を持った為、神永を理解しようと光の星の掟に背いて神永と一体化する。
以降は感情を表に出さず、生前の神永以上に独断行動を取るようになる。その一方で辞書や専門書といった様々な分野の書物に目を通すなど機械的なようで好奇心旺盛にも見える。
神永の記憶と思いは受け継いでおり、地球における人類の言葉の意味を理解しているが、実感はしていない。人間よりも優れた存在故か「個」の概念は確立しているが、「仲間」や「助け合い」等の概念が希薄、もしくは感性が異なる(作中では地球人の在り方を『群れ』と呼称する等)。そのため、バディであるはずの浅見弘子との序盤での関係性は良いとは言えず、浅見の神永/リピアーに対する第一印象は「アホなのこの男?」であった。
しかし、短い間とはいえ禍特対の面々と触れ合う内に人間の素晴らしさや可能性を信じるようになる。その一方、あえて多くは語らず行動で示す場面もある(助けを信じてベーターカプセルを浅見に託したり、事態解決のヒントとなるベーターシステムの原理式を記したメモリを滝明久のデスクの上に置いておいたりする、など)。
加えて人類の黒い一面も学んだようで、政府機関の男が禍特対メンバーに危害を加えることを仄かした際には「もしそれを実行すれば、人類をためらうことなく滅ぼす」と言い放つ一面を見せた(本人曰く「対等な立場での交渉」)。
地球飛来直後のネロンガ戦は一言で表すなら「処理」に近く、格闘戦を一切行わず周囲の被害にも配慮していないような戦闘スタイルだった。神永と一体化以降は内面の変化が影響したのか、ガボラ戦では放射能が広がらない為に熱光線を体で受け止めながらスペシウム光線を使わずに駆除、後処理で遺体を持ち去ったり、ザラブ戦では落下する浅見を優しく救助し、彼女が使用した電動カッターをヒントにスペシウムエネルギーの光輪を放つ等、戦闘での動きに大きな変化が見られるようになる。
しかし、彼の「地球人と融合する」という行動は黒幕の人類生物兵器化計画を助長することになった他、(大半は黒幕のせいだが) マルチバース全ての知的生命体に地球人類が強力な生物兵器に転用できる事を証明してしまい、皮肉にも地球規模の危機を招くことになってしまう。
以下、作中終盤のネタバレ
???「君がこの男の生命を奪ったのか、リピアー。いや、この星に合わせ"ウルトラマン"と呼ぼう」
リピアー「そうだ。彼は幼い命を私の衝撃波から守ろうとして命を絶った。彼は他者のために自らの生命を使う興味深い生命体だ。私は彼を理解したい」
???「だから禁じられた人類との融合を試みたのか?」
リピアーが光の星の掟に背いたことは故郷の同胞にも伝わり、新たにゾーフィが現生人類の監視者兼地球の裁定者として派遣される。
そのゾーフィから、ベーターシステムに適応することが明らかになった人類が光の星と同じ進化を辿る畏れがあり、現時点で廃棄処分となったことを告げられる。
光の星の裁定を過ちであると言うリピアーに対し、ゾーフィはリピアーが人類との融合を果たした事こそが過ちであり、人類を数十億単位の生物兵器に転用可能であることが証明され、それに目をつけた他の知的生命体によって地球が荒らされるのを未然に防ぐため全て刈り取ることが最適な判断であると告げる。
光の星の掟に忠実な裁定者の下した結論は、全宇宙の平和を守るために現生人類を太陽系ごと粛清するという、冷徹なものだった。
ゾーフィ「私は執行者として、"天体制圧用最終兵器"を伴ってきた」
リピアー「……"ゼットン"なのか?」
ゾーフィ「そうだ。今より自律プログラムに切り替える。システムが整い次第、人類は恒星系ごと滅却される。
ゾーフィによって起動された天体制圧用最終兵器ゼットンは宇宙空間に打ち上げられ、攻撃システムを生成し始めた。攻撃準備が整い次第、無警告で1テラケルビン=一兆度の超高熱球が発射され、地球のみならず太陽系が丸ごと焼き払われることになる。
ゾーフィ「光の星が確認している知的生命体は130億近く存在する。その一つが消えたところで、宇宙は何も変わらない」
リピアー「この星の人類にとって、自分達は唯一無二だ」
ゾーフィ「この星の現住生命体は、命を賭すほどの価値があるとするか?ウルトラマン」
リピアーは同胞と敵対する事になっても『人間』と『外星人』の間に立つ事を選択する。勝てない相手と分かっていながら、愛する人類と地球のために「やってみるだけだ」とゼットンに挑む。
電磁バリアで無力化されながらもスペシウム光線と八つ裂き光輪を放ち続けるが、ゼットンの猛攻の前に敗北。大気圏に落下し、重傷を負ってしまう。
ゾーフィ「無駄な抵抗は止め、静かに人類の粛清の時を待て。ウルトラマン」
リピアー「いや、人間を信じて最後まで抗う。それが私の意思だ」
だが、傷つき倒れている間に先述のメモリからゼットンを倒す方法を滝が導き出す。しかしそれは、成功したとしてもリピアー自身もゼットンと共に別次元の宇宙に飛ばされてしまうというものだった。
田村班長の反対を振り切り、必ず戻ることを浅見と約束し、人類と地球の未来のために最後の戦いに挑む。
作戦は成功し、ゼットンを倒せたものの、発生したワームホールの重力に抵抗できず、別次元に飲み込まれてしまう。しかし、リピアーの生きたいと願う気持ちを察知したゾーフィによって救出される。
ゾーフィ「ウルトラマン。目を開け。生き延びたいという君の信号が無ければ、君を見つけることはできなかった」
リピアー「死を受け入れる心は、生への願望があるからだ。ありがとう。ゾーフィ」
ゾーフィ「死への覚悟と生への渇望が同時に存在する人間の心か……確かに人間は面白い。ゼットンを倒した君たちの勇気と知恵と生命力に敬意を表する。滅ぼすには惜しい生命体だ。人類は残置し、傷ついた君を送還するだけにしよう。さあ、光の星に帰ろう。ウルトラマン」
ゼットンを破壊する方法を編み出した人類と、命懸けでそれを実行し、成功させたリピアーを見たゾーフィは人類の裁定を撤回し、リピアーを光の星へ連れ帰ろうとする。
リピアー「ゾーフィ。私は一人の人間と共存している。彼の命を維持するために私はこのまま地球へ残る」
ゾーフィ「ウルトラマン。自分を犠牲にする行為に至るまで、君は彼の心を理解した。彼も君の事を理解している。きっと許してくれるだろう」
リピアー「私はこの星の生命体と一体となり、彼や彼らを理解しようと試みた。だが、何もわからないのが人間だと思うようになった。だからこそ、私は人間となり人間をもっと知りたいと願う。それに人類にはもう猶予がない。ゼットンを倒した戦闘能力に危機感を持ち、あらゆる知的生命体が地球に現れ続けるだろう。だが、人類はまだ幼い。私は人間が生き延びる可能性をわずかでも高めるために地球に残る」
ゾーフィ「ウルトラマン。それはできない。私は君を光の星に送還しなければならない。掟を破った責任を君は果たさなければならない」
だが、神永と共存しているリピアーは、光の星に帰ることで神永の命が失われると帰還を拒否、地球に留まることを望むが、ゾーフィは掟を破った責任を果たすべきだと説得をする。
リピアー「ゾーフィ。それならば、私の命は彼に渡して、この体はこの星の未来の人間に任せたい」
ゾーフィ「君は死んでもいいのか?」
リピアー「かまわない。人間になることは、死を受け入れることだ。我々に比べて人間の命は非常に短い。彼には生き続けてほしい。それを願う相棒や仲間もいる。私はそれに応えたい」
自らの命より神永の命を優先し、更にまだ見ぬ脅威に晒される地球を憂う等、地球への愛はゾーフィを認めさせる程にまで高まっていた。
ゾーフィ「ウルトラマン、そんなに人間が好きになったのか……わかった。君の願いをかなえよう」
リピアー「ありがとう。ゾーフィ」
ゾーフィ「では、神永と君の体を分離するぞ」
その願いを叶えたゾーフィによってリピアーは神永と分離し、その命を与えられた神永は無事地球へ生還した。
そんなリピアーの在り方を示す言葉はただ一つ。
余談
- 名前は語源にルーツを持たない言葉を意図して付けられており、由来はない。脚本段階では別の名前が設定されていた。
- CVを担当した高橋一生氏は『シン・ゴジラ』にて安田龍彦役を演じただけでなく、ウルトラシリーズでは『ウルトラマンコスモス』にて春野ムサシの親友・ミツヤ役でゲスト出演したことがある他、『ウルトラQ dark fantasy』、『ウルトラゾーン』にも出演した経験がある。また、子役時代に『恐竜戦隊ジュウレンジャー』に出演した経験もある。さらに、現在本編の方でウルトラマンの声優を務めている櫻井孝宏氏とは岸辺露伴を演じた繋がりがある。
- また、高橋氏はウルトラマンシリーズの大ファンであり、小さい頃は両親や祖父母にVHSをせがんでいたこともあったという。公式Twitterに投稿されたインタビュー動画では、ウルトラマンパワードについて熱く語る場面もあった。
- 戦闘中に「ヘアッ!」や「シュワッチ!」といった掛け声を一切発しない。掛け声が付けられないのは過去作のウルトラマンが客演した際にはしばしば見られた演出であるが、主役ウルトラマンにこういった措置が取られるのはかなり珍しく、他の例はせいぜい原語版のウルトラマンパワードくらいである。ただし、『シン・ウルトラファイト』では初代ウルトラマンと同じ掛け声を発している(『ウルトラファイト』のウルトラセブンは初代ウルトラマンの掛け声だったので、それを意識したものと思われる)。
- 初期の段階では体表のラインは青であり、エネルギーを消耗すると人類と一体化していない状態では紫、一体化した状態では赤く変色するという、カラータイマーの機能を全身で表現したものになる予定だった。しかし樋口監督から「青のウルトラマンはタイプチェンジ等ですでにやっている」という指摘を受け、緑になったという経緯がある。そこから更に「ウルトラマンはやはり赤のイメージが強い」ということで、赤から緑に変化することに落ち着いた。
- ちなみに、初代ウルトラマンも企画段階では宇宙をイメージした青いカラーリングだったが、背景の青空と被ってしまうため却下されたという経緯がある。
- スタジオカラーのTwitterによると、体色が神永との同化前が銀色なのは、検討用に作られた銀色の雛形を見た庵野氏が「これはこれでカッコいい!」と感じたため。
- リピアー以前のウルトラマンに緑色が存在しなかった理由はグリーンバックスクリーンと色が重なってしまうため。ウルトラマンサーガは当初は緑色を入れる予定だったが、前述の理由により没となった経緯がある。同様の理由でブルーバックスクリーンを使用していた頃は青いウルトラマンは存在できなかった。その為、リピアーは一時的とはいえウルトラシリーズで初となる本格的な緑色のウルトラマンとも言える(ウルトラマンの仲間である緑色の戦士や、緑色の鎧を纏って戦うウルトラマンはいる)。
- 一部の児童書には原典のウルトラマンの趣味が『読書』とある。スマホやパソコン等の情報機器が多数ある中、あえて本を選んで読み漁っていたのはこの設定を反映したからともとれる。
- 劇中ではこの名はゾーフィが神永(と融合したリピアー)に最初に呼びかけた一回のみ登場する。以降はゾーフィ自身も地球での呼び方に倣って彼のことを「ウルトラマン」と呼び、リピアーとは呼ばない。
- 逆に視聴者からは初代ウルトラマンや区分としてのウルトラマンと区別するため、ネタバレありの場では「リピアー」と呼ばれることも多い。
- 歴代のウルトラヒーローは、地球人と融合することで新たな能力を獲得する、技の威力が増す戦士が多く、さらに活動制限のデメリットを回避できるなど多くの場合でメリットがあるパターンが多いが、リピアーの場合は神永と融合したことで消耗が激しくなるというマイナスの描写が描かれた。
関連タグ
初代ウルトラマン:原典に当たるウルトラ戦士。リピアーと同じように「ウルトラマンは神ではない」という考えの持ち主。
ウルトラセブン:TVシリーズの続編平成ウルトラセブンではリピアーと同じく人間の素晴らしさや可能性を信じ、同胞と敵対する事になっても最後まで『人間』側に着く事を選んだ。
ウルトラマンジャック:地球に来た当初は透明だったが、人間と融合することで鮮明な姿となったウルトラ戦士。
ウルトラマンネオス: 台湾のバンド「Mayday」の楽曲「Life of Planet(少年他的奇幻漂流)」のミュージックビデオにおいて、エネルギーを使い果たしたネオスの体表ラインの色が赤からグレー(黒?)に変色する場面がある。なお、カラータイマー点滅中は従来の赤いラインのまま。
ウルトラマンコスモス:上記の通り、高橋氏がゲスト出演している。初代ウルトラマンそっくりの顔を持ち、同じく花の名前を持つなど、地味に共通点が多い。また、赤の入らないウルトラマンでは唯一の主人公であり、メインカラーは没になった青色である。
ウルトラマン・ザ・ネクスト:人間と融合することで身体的な変化が現れた戦士繋がり。初代ウルトラマンをリビルドした作品繋がりでもある。この戦士も当初は銀色の姿だったが後に赤いラインの姿へと変化している。
ウルトラマンメビウス:正体がバレた後も、仲間たちと絆を育み共に戦った戦士繋がり。
仮面ライダーファイズ:高エネルギーでは銀、低エネルギーでは赤のラインになるヒーロー繋がり。ただしこちらは銀の状態を長く維持することができない。なお前作では関連するネタがあったりする。