わたしには勝ち負けは問題ではない・・・
わたしは『生きのびる』・・・・・
平和に『生きのびて』みせる
概要
『ジョジョの奇妙な冒険』第4部『ダイヤモンドは砕けない』に登場する人物。
杜王町に住む33歳のサラリーマン。周囲からの評判は悪くないが、どことなく影の薄い男。
身長175cm体重65kgで、血液型はA型。吉良の言葉によれば、吉良家の先祖は武士であり(忠臣蔵の敵役が有名だが、もしそうなら清和源氏の流れを汲む、なかなかの名門だったことになる)、それなりに裕福だったらしいが祖父の代には落ちぶれていたようだ。
争いを好まず平穏を愛し、無駄な争いを避けるため、意図して優秀でも愚図でもないごく普通のサラリーマンとして生活を送っているが、同時に人を殺さずにはいられない忌まわしい性癖を抱えており、手の美しい女性ばかりを狙って15年もの間、殺人を繰り返してきた大量殺人犯である。無論、必要とあれば男性も殺害している。
スタンド使いでもあり、自らの犯行の証拠は能力で隠滅してきたが、ふとした経緯からその存在が東方仗助達に知られてしまい、自らの平穏な生活を守るために隠蔽に奔走する羽目に陥る。
興奮すると相手に対して(無自覚に)自分の名前を教える(誇示する?)癖があり、これが後々足を引っ張る事態に……
第4部のラスボスであり、ストーリー後半は彼の逃亡生活が話の主軸となる。
性格
激しい喜びはないが深い絶望もない、平穏で波の無い「植物の心のような生活」を幸福と考えている。そのため「闘争はたとえ勝ったとしても次の闘いのためにストレスが溜まる愚かな行為」と断じ、明らかに勝ち目のある相手だとしてもなるべく争わない、ほかにも勝ち負けにこだわらない、頭を抱えるようなトラブルは起こさない、夜も眠れないような敵を作らない……等々を常に心掛けている。
その為に日常生活においてもあまり目立とうとせず、可もなく不可もない、ごくごく普通のサラリーマンとして暮らしている。
ただし素の能力は高く、際立つ特技は無いものの大体の事柄はそつなくこなせる素養を持ち、実家には学生時代の表彰状の幾つかが飾られている。しかし、その順位はほとんどが3位で、これは1位になって目立つ状況と、「能無し」とバカにされる状態を同時に避けるために、意識的に手抜きして3位ばかりを取ってきたからである。「戦ったとしても誰にも負けない」自信やプライドはかなり高い一方、「目立てば敵が出来てしまい、心の平穏が失われる」と考える彼は、昔からこうやって「平凡な人間」を装い続けてきたのである。上記の気質から『能ある鷹は爪を隠す状態に喜びを感じる、意識高い系ナルシスト』とでも評するような、とても屈折した矛盾を抱える難物とも察せられる。
特異性
変わった趣味として、切った自分の爪を集めている。爪の伸びで体調を占っているらしく、曰く「月30cm以上伸びたら絶好調」。爪の伸びる速さが異様で、彼の父親が爪で息子を見分けられるほど。この速さは、殺人衝動が強くなるとより勢いを増すらしい。
また、かなり神経質でもある。後一歩で殺せる状態である相手の靴下が裏返しになっているのに気付くや、「落ち着かん」とわざわざ脱がせて履き直させていたほど。
後述の異常性ばかり目が行くが頭の回転が速く、他者から見下されたり不興を買わないくらいには外面を良くできる。また犯行に関しては常に慎重であり、15年続けた連続殺人が暴かれなかったのはこの点が大きい。
劇中では特に空条承太郎を酷く警戒しており、第三の爆弾に目覚めたのも彼とは会いたくない一心からである。
その異常なフェティシズム
その一方で、女性の手に異常なまでのフェティシズムを持っている。小さい頃初めてモナリザを画集で見た際、その手の美しさに「勃起した(本人談)」らしく、その際強烈なフェチに目覚めた模様。
このフェティシズムが本来持っていた殺人衝動と重なった結果、吉良は好みの手を持つ女性を次々に殺害する連続殺人犯に豹変し、平穏で幸せな生活とは程遠い行動に縛られてしまう。
これは女性の「手」に対する執着であり「女性そのもの」には興味が無いため、手だけを遺し他の部分はキラー・クイーンを用いて爆破、消滅させている。その手の元の持ち主がどんな人間だったかなどは関係無く、どんな最低な性格であろうが手が気に入ったらターゲットに定める。どんな名前だったかもほとんど気にしていない。
狙いをつけた女性と会話するシーンはあったが、自分勝手に一方的に話し「質問を質問で返すな」等、相手が勝手に発言するのを許さない。この極めて自己中心的な性格は、一方的に自己紹介を語り始めるなど、劇中でも繰り返し発揮されていた。
切り取った手は常に持ち運び、話しかけたり指輪や鞄を買い与えたり、舐めたりしゃぶったりして遊ぶ。曰く「大便した後のお尻を拭いてもらうと幸せな気持ちになる」らしい。
携帯性の問題か持ち歩くのは必ず片手のみ、取得するのも恐らく片手のみ。神経質な性格に反して手の左右に拘りはないようで、劇中でも右手を持ち歩く・左手を持ち歩く両方の場面があった。取得する時に左右どちらが好みか吟味しているのかも知れない。
やがて手の腐敗が進んだら「手を切る」と上手く比喩してあっさり廃棄し、次のターゲットを探す。パン屋の紙袋に入れておくなど、ぞんざいに扱うようになる。そして、次の獲物が見つかった時点で「綺麗にお別れしようね」と鞄の中で焼失させている。
手を切り取った死体は最初の1人を除いて、全てスタンド能力で跡形も無く爆破しているため、証拠が一切残っておらず彼の悪行は表沙汰になっていない。
ただし、彼はひたすら「手」だけを追い求めているわけではない。川尻浩作に成り代わった当初こそ、その衝動を抑えていたが「お楽しみがいっぱい」の季節となり、妻や同僚の女性の首筋を見て殺害衝動に駆られ煩悶するシーンがある。つまり彼は 手へのフェティシズム・殺害衝動・女性への性的欲求 の3つが渾然一体となっているシリアルキラーである。
その邪悪さ
上記の通り罪のない人を殺してしまった事実に対し、後悔の念や良心の呵責はゼロ。それ以前に、ひたすら自分の都合のいいように解釈している節があり、病的に自己中心的な性格をしているのがわかる。
尚、こんな極悪人であるが所謂『サイコパスとは一線を画す人物』だと見られる場合もある。
理由としては猫草に攻撃をされた川尻しのぶの危機に慌てふためき、無事だとわかって胸を撫で下ろしたりといった、愛情の感情を確かに知っているかのような描写が確認できるからである(吉良本人は本来は好みの女性でなかったしのぶが無事だった事態に、心の底から安堵した自身に困惑し「彼女を守ろうとしたのは承太郎たちに自分の居場所をバレないようにする為」だと自らに言い聞かせるようにしていた)。また、凶暴な猫草も手懐けている。
彼の異常さはあくまで殺人衝動の部分に留まっているともされる。
自分の異常な性癖を持て余した果てに「このように生まれてきてしまったのだからしょうがない」と開き直り、その性癖がもたらす犠牲に対して向き合う意思が見られず、自分の行動を正当化するありふれた怠惰さ・邪悪さこそが、吉良吉影ある人物の本質なのかもしれない。DIOと異なり俗物的なところはとことん俗物な人物。
俗悪な本性に反して吉良の名前は、正に皮肉としか言いようがない(下記余談も参照)。
言い替えると「異常な悪(殺意を抑えて暮らしていると欲求不満になってしまうレベルで殺人が本能と結びついている)」と「凡庸な悪(犯罪に手を出した後も悔いるどころか、その罪と向き合うことすら怠けてずるずると犯行を繰り返す)」が1人の人間の中で何の矛盾もなく結合している。全く感情移入できないのが普通のシリアルキラーキャラとしては異例であると言えよう。
母親からは虐待に近い愛情を注がれていたとの裏設定があり(後述)、そのせいでこの歪みきった性癖と性格が出来上がった節がある。父親はそれを知りつつ止められなかった後悔から、死後もスタンドで息子の凶行を手助けする、結局は妻(母)と変わらない過保護な毒親と化していた。
経歴と殺人歴
1966年1月30日杜王町生まれ。D学院文学部卒業後、カメユーデパートに入社。
父親の吉廣は12年前にガンで死亡、母親もその後亡くなって以降は1人暮らししている。
当人はしがないサラリーマンだが郊外の立派な邸宅に1人暮らしで、高級ブランド物を身に着けていた状態もあり、承太郎は裕福な人物だと即断していた。「杜王町は武士の避暑地で、自らも没落した武家の子孫」と語っており、杜王町の人々も旧家の跡取りと証言している。
これが表の経歴。裏の経歴である殺人歴は、1983年8月13日にスタートした。
最初の犯行は杉本鈴美の一家殺害。鈴美とその両親、愛犬のアーノルドに至るまで皆殺しにしており、世間を騒がせ新聞にも大きく取り上げられたが、有力な証拠がなく事件は迷宮入りした。なお、この事件で助かったのはたまたま杉本家に預けられていて、危険を察知した鈴美によって逃がされた1人の幼児だけだった。
この頃はまだ吉良はスタンド使いではなく、凶器はナイフを使ったようで、鈴美の背中には幽霊となった今でも、その時の無残な傷跡が残っている。
その後、時期ときっかけは不明だが、父親である吉廣がエジプトでエンヤ婆から入手した「弓と矢」によってスタンド能力に目覚め、キラークイーンを使って証拠を残さない殺人を重ねてゆく。
最終決戦時、救急隊員の女性に「今まで48人の手のきれいな女性を殺した」と告白しているが、それはあくまで女性だけの数。作中では殺人の手掛かりにつながる重ちーや「靴のムカデ屋」の主人、美那子の彼氏を口封じに殺した他、殺す必要性の薄そうな「梨央ちゃんの隣人の男」などの男性も苛立ち紛れに消している描写もあり、実際の犠牲者の数はもっと多いと思われる。
杜王町の少年少女の行方不明者は全国平均の8倍であり、鈴美によれば「その全てではないにしろ、多くにおいて吉良が関わっている」と見ている。死体が発見されなければ殺人事件は成立せず、関係者は空しく「失踪者」を探し続けるしかない。こうして吉良は15年以上に渡って、自分1人の心の平穏や安眠と引き換えに、杜王町から数多の命と平和な生活を奪い続けていたのだった。
本編での行動
凶行の発覚
物語の中盤より登場。自らの正体を知った矢安宮重清を爆殺し、吉良は自身に繋がる手がかりをそれ以前までと同様に跡形も残さず消したつもりでいたが、重清のハーヴェスト最後の1体が吉良の服から1つのボタンを引きちぎり、それが東方仗助達の手に渡って潮目が変わり、仗助達の捜査の手が迫り始める。
その後、服のボタン付けを依頼した「靴のムカデ屋」にて空条承太郎と広瀬康一の2人が店の主人から、自身の名前を尋ねようとする場面を辛くも扉一枚を隔てて居合わせ、口封じのために第2の爆弾「シアーハートアタック(以後SHA)」ですかさずムカデ屋の主人を爆殺。そのまま承太郎と康一の始末をSHAに任せ、承太郎を戦闘不能にしたものの、追い詰めた康一のスタンドが「エコーズACT3」へと成長して一転しSHAを無力化させられてしまう。同時にダメージが本体である自らの左手にフィードバックして異変を察知し、途中チンピラに絡まれながらも康一の元へたどり着きSHAを回収。康一を嬲った末に一度は戦闘不能に追い込む。康一を爆殺しようとしたところで起き上がった承太郎と交戦するも、歴戦の戦士である承太郎に真っ向勝負ではとても敵わず、オラオララッシュを食らい手痛い反撃を受け自身も戦闘不能に陥る。
直後、康一の要請を受けていた仗助と虹村億泰に遭遇。「仗助のクレイジー・ダイヤモンドなら傷を治せる」と聞いていた吉良は「たまたま爆発に巻き込まれた無関係の一般人」の演技をして2人を欺こうとするも、仗助がかけたカマに引っ掛かり(どう見てもただの不良高校生にしか見えない仗助に「早く治してくれ」と頼んでしまった。「君が治してやると言ったんじゃないか」との反論もできたが口籠もってしまう)正体が露見。観念したかに見えたが咄嗟にキラークイーンの手刀で自らの左手を切断。SHAを繰り出してその場から逃走。逃走した先で偶然、自らと背丈が似ていた一般人を殺害しつつ、エステ「シンデレラ」で辻彩を脅迫して自身と浩作の顔と指紋を変換、顔も名前も住所も異なる別人に成り代わり、一度は仗助達から完全に逃げ切ることに成功する(この際辻彩を爆弾に変えて爆殺しており、浩作の死体も爆発に巻き込まれて消失している)。
川尻家への潜伏と再発覚
以降は川尻浩作として成り代わり、川尻家に潜伏して生活を始める。当初は浩作の妻・川尻しのぶから彼女の知る夫の人物像とのズレを訝しがられるものの、元々夫婦関係が冷え切っていた川尻家では妻から夫への関心が薄かった事態が幸いして、思いがけず好感触を得られた彼女の懐柔に成功する。
しかし、息子である川尻早人については一筋縄では行かず、生活の端々で怪しまれる。生活を続ける内に遭遇した猫草を「利用できる」と判断し屋根裏部屋に飼っていたところ、その存在を早人に探り当てられた上、その現場で咄嗟に吉良から隠れた早人に「もしあの小僧が私のことに気づいたのなら、殺さなくてはならないところだった」と呟いてしまい、遂に「パパの顔をしているけれどパパじゃあない」と今自分と暮らしている男は川尻浩作ではない事実を早人に知られることとなる。
以前と違い1人暮らしではないため、どうにか殺人衝動を抑えつつも生活を続けていたが、ある日乗っていた電車に居合わせたカップルに因縁を付けられたのをきっかけに、抑えていた殺人衝動が爆発。カップルの後を尾行して、彼氏とその彼女である美那子を衝動的に爆殺し、その現場を吉良の後を尾行していた早人によってビデオカメラで撮影されてしまう。その夜に風呂場で早人に探りを入れ、彼が自分の正体を知った状態を確信。彼を始末しようとするが、逆に早人に自身の正体を知られたのを盾に脅迫され、逆上して衝動的に早人を殺害してしまう。吉廣に「杜王町から出る」のを提案されるが、矜持からそれを拒絶。窮地の板挟みとなり深く絶望していたところ、吉廣が持っていた矢がひとりでに自身の腕の中に入り込んで昇り、再び首を射抜かれて第3の爆弾「バイツァ・ダスト」の力に目覚める。
バイツァ・ダストの力で早人を「早人伝いに自分の正体を知ろうとする者を自動的に爆殺する」爆弾に変えると共に、発動条件として時間が巻き戻ることで間接的に早人を生き返らせ、繰り返される時間の中で一度は岸辺露伴を始めとする主人公一行の全員爆殺に成功する。しかし、唯一時間遡行で記憶を失わない早人が3回目の時間遡行後に利かせた機転により、自らの正体を名乗った所を仗助に見られてしまう。逃げようとするも仗助は「人違いならケガはいくらでも治せる」との建前で、躊躇なく吉良と名乗った川尻浩作に攻撃を開始。バイツァ・ダストの発動と引き換えに無防備となっていた吉良は、やむを得ずバイツァ・ダストを解除して仗助・億泰と交戦を開始する(これにより仗助達が自動的に爆死する運命もなくなってしまった)。
ラストバトル
キラークイーンの腹に収納していた猫草の能力と組み合わせて放てる「空気弾」を主力にしつつ億泰を倒し、仗助を追い詰めていくも自身も仗助のトリッキーな戦法に追い詰められていき、更に自身を援護していた吉廣を仗助の奇策で誤って爆殺……もとい強制成仏させてしまった。
互いのスタンド射程距離内に入るや否や、クレイジー・ダイヤモンドと激しい接近戦を繰り広げる。敗北寸前のところでクレイジー・ダイヤモンドの拳を猫草が咄嗟に空気の防御で優勢になり、空気を接触爆破式の空気弾に変えて放ち勝利を確信したが、復活した億泰のザ・ハンドで空気弾を空間ごと削り取られた上に、億泰によって猫草も没収されてしまい完全に無力化。更に騒動を聞きつけた野次馬や仗助と待ち合わせていた承太郎達にも姿を見られてしまい、完全に追い詰められる。
「なぜ接触しないと爆破しない接触爆破式ではなく、自由に起爆できる点火式を使用しなかったのか?」との疑問については、恐らく互いに近距離パワー型のスタンドで接近戦を行っていたために仗助との距離が近く、点火式では自身も爆破に巻き込まれる可能性が非常に高いため、「触れた相手を内部から爆破する」接触爆破式を使用せざるを得なかったのではないかと考えられる。結果、空気弾は億泰のザ・ハンドによって軌道を変えられてしまい「爆弾は一度につき1つ。新たに爆弾化させるためには以前に作った爆弾を起爆させなければならない」ために仗助へとどめを刺せず、また「接触爆破式は何かに触れなければ起爆しない」ため、触れずに消滅させられる億泰に接触爆破式の空気弾は通用しなかった事情も合わさり、キラークイーン最大の弱点を突かれてしまった。
しかし、それでも往生際悪く、自身を怪我人と思い接触してきた女性救急隊員にバイツァ・ダストを発動。その場にいる全員を一気に爆殺させようと企むも、康一のエコーズACT3によってギリギリの所で防がれてしまい、時が止まった状態で承太郎のスタープラチナ・ザ・ワールドのオラオララッシュを食らい完全敗北(アニメ版では尚もバイツァ・ダストを発動させようともがいており、凄まじい執念深さが強調されている)。そして吹っ飛ばされた所でちょうどバックしてきた救急車に轢かれてしまい死亡した。多くの命を奪ってきた殺人鬼の最期は、人命救助が仕事である救急車に止めを刺されると、ある意味では皮肉なものだった(アニメ版では頭部から後輪に轢かれ、一瞬だが首が曲がってはいけない方向にねじれる瞬間が描写されているため、原作以上のグロシーンになっている)。
死亡した後、救急隊員の女性に本名を名乗っていた、歯形までは入れ替えていなかった事などから死体は「川尻浩作」ではなく「吉良吉影」として処理された。このため川尻家にはこの事故についての連絡がされなかった。
その後
最期を目の当たりにした人間の1人である露伴は「あの男は法律では裁くことはできない。この方法が一番いいんだ」と早人に告げる(死体も証拠もないため殺人を立証できない)。
仮に吉良を逮捕できたとしても殺人犯は川尻浩作として扱われてしまい、家族であるしのぶと早人も世間から酷いバッシングを受けていたであろうことは想像に難くない。
露伴の指摘通り「誰の手にもかからず事故死」扱いになったのは、複合的な観点からも良かったと言える。
それでも『川尻浩作』は吉良による最後の失踪者となってしまったわけだが……
その後、吉良吉影の幽霊は振り向いてはいけない小道へと誘導される。しかし自分が死んだ事に気づいておらず「バイツァ・ダストが成功して時間が戻った」と狂喜する。そこへ現れた杉本鈴美から事の顛末を聞かされ、自分がどうやって死んだのかを思い出す。
同時に鈴美のことも思い出し掴みかかろうとするが、鈴美がわざわざ自分の前に現れた状況を不審に思い手を止める。そして父親から聞いていた「振り向いてはいけない小道」の存在を思い出し、ここがそうなのではないかと疑い鈴美を振り向かせようとする。
と同時に「幽霊として生活したほうが意外と自分の求める安心した生活があるかもしれない」と開き直り、彼の姿は「川尻浩作」から「吉良吉影」に……凶悪殺人鬼の姿へと戻ってしまった。
そのまま力尽くで鈴美を振り向かせようとするが、潜んでいた愛犬アーノルドに右手を噛み砕かれる。倒れ込んだ吉良は振り向く結果となってしまい、無数の手に捕らえられる。
慌ててキラークイーンで手を爆破しようとするがスタンドごと体をバラバラに千切られ、正真正銘の絶望を味わう。吉良はどこへ連れて行かれるのかと鈴美に問うが「少なくとも安息なんてないところ」と冷たい返答を受け、そのまま「どこか」へと引きずり込まれていった。
幾多の女性たちの“手”を切り取ってきた連続殺人鬼の末路としては最高に皮肉な結末であった。
余談だが、アニメ版最終回のエピローグでは、吉良が勤めていた会社の新入社員女性たちが「行方不明だった吉良さんは顔無し死体で見つかった」と話している様子から、公には吉良の死は不幸な事故として処理されたようである。
容姿
荒木飛呂彦の作品に登場する「吉良吉影」なる人物の外見は、第4部のものに限定しても3パターンが存在する。後述のデッドマンズQの吉良、ジョジョリオンの吉良も含めると5パターン。
第4部の吉良においては、「本来の」吉良吉影は明るい髪色(主に金髪、白髪)で描かれている。会社の同僚によれば「エリートっぽい気品ただよう顔と物腰をしているため、女子社員にもてる」との弁。
そしてストーリー中盤で、年齢・体格の近かった「川尻浩作」の顔を奪ってなり代わる。黒髪で黒目がちの、やや地味な顔つき。しのぶ曰く美形ではあるらしい。
さらに終盤で「バイツァ・ダスト」の発現により、無敵になった事を自覚した時に気分が高揚したのか、髪形をオールバックに変えている。ファンからはこの状態を例の吸血鬼に例え "ハイ吉良" と呼ばれる。
服装に関してはお洒落で、承太郎曰く「スカした高級ブランド」のジャケットを着ており、好きなファッションはジャンフランコ・フェレ。ネクタイは、キラークイーンの頭蓋骨のようなものをデザインした奇抜な柄のものを愛用している。エステ「シンデレラ」で川尻浩作になり代わった際に捨てているが、後に同じものを再度着用している状況からして、杜王町で普通に販売されているブランドなのかもしれない。
このネクタイは実際に製品化された。
腕時計は原作とアニメ版とでやや形が異なり、アニメ版ではキラークイーンに備わる戦車の形状をした能力「シアーハートアタック」に合わせてか、高級ファッションブランド・カルティエの「タンク」のような腕時計をしている。ただし承太郎が言うには「よく見たら趣味が悪い」。
一人称は基本的に『わたし』だが、彼女(手首)やしのぶと対話する際は『ぼく』、「デッドマンズQ」にて女坊主と対話する際のみ『オレ』と語っていた。
また一人称を『わたし』ではなく、自身のフルネームにする場面もあり、この癖がきっかけで自身の運命が大きくかき乱されるような出来事も起きている。
スタンド「キラークイーン」
詳細は「キラークイーン」の項目を参照。
演者
- 小山力也 (ジョジョの奇妙な冒険オールスターバトル&ジョジョの奇妙な冒険アイズオブヘブン)
- 森川智之 (TVアニメ版)
『デッドマンズQ』
『デッドマンズQ』は第4部本編終了後を描くスピンオフ作品。吉良は主人公を務め、死亡後の亡霊として登場。
自分の名前以外の記憶は、第4部の時のものも含めて全て失っている。
ある尼僧の指示を受け、亡霊として各地を回って“任務”を遂行している。
その行動範囲は非常に広く、駅舎の柱の中に自分しか使えない現金を隠しておき、新幹線で優雅な旅をするなどしている。
亡霊として現世にしがみついているのは、「天国や地獄とやらが本当にあるのかなんてわからない」「仮にあったとして自分は恐らく天国にはいけないという確信がある」から。
任務を与えている尼僧は、吉良がそうして現世に留まっていることに対してはどうも否定的である様子。
小さな家を手に入れて、誰にも邪魔されない部屋で音楽を聞くことを望んでいるが、亡霊ゆえにその願いは叶わないまま、彼はずっと任務だけをこなし続けている。
容姿
第4部とは異なり、碧色の地に赤や黄色の派手な模様が入った奇妙なスーツを着ている。描かれ方によっては、スーツの模様は柄ではなくその形の穴であるようにもとれるため、どちらかは描き手に左右される。
デッドマンズQでの『亡霊』の性質
姿は普通の人間には見えないが、動物や限られた人間には見える場合もある。
無機物に対してはすり抜ける事も触れて動かす事もどちらも可能。
声もその気ならば空気を震わせる本物の音として上げる事が可能で、インターホンや電話なども利用できる。
物体を動かせはできるが、人の目についてしまうためかそれを持ち運ぶのにはだいぶ不自由をしているらしい。「本屋で雑誌からページを破りとって数百メートル持ち歩く」「駅舎に隠しておいた一万円札を取り出し電車の切符を買う」程度はしているが、仕事に要るものであっても常時何か携帯する行為はしていない。
生物に対しては、自分の方から意図して触る分にはいいが、向こうから接触されると少しぶつかった程度ですら簡単に手足が千切れてしまうほどのダメージを負う。千切れても回収さえできれば簡単にくっつけられるようだが、回収し損ねるとそれっきり失ってしまうらしい。
幽霊が見えない人間にたまたまぶつかられたり、幽霊が見える動物に襲われたりするのは彼らにとって非常に危険で、亡霊の中には人間にぶつかられるのを恐れて物陰や木の上などを居場所にしている者もいる。
吉良が家を求める動機の一部に「ああなりたくない」との気持ちがある。
家や部屋など先に誰か他人が占有している空間には、占有者が生きた人間でも幽霊でも侵入できず、入るにはその占有者の魂の許可を得る事が必要。
『ジョジョリオン』
第8部「ジョジョリオン」に同姓同名同スタンドの人物が登場している。
本編内での直接的な関係や言及はないが、東方定助は4部の東方仗助から漢字は変えているのに対し、吉良吉影は完全に同姓同名のキャラクターとなっている。
『EoH』
「異変」の影響により吉良吉影(整形前の姿)と川尻浩作の二人となって復活。基本的に二人でセットとして登場する。
復活後は第8部の杜王町に潜伏していたが、そこへやってきた東方仗助に気づかれ、再び戦うこととなる。この際、居合わせた東方定助に対して「お前が求めている吉良吉影ではない」と述べている。戦いでは仗助&定助のコンビの前に敗退し、姿を消した。
その後、並行世界のDIOから「聖人の遺体」の一部を押しつけられたが、承太郎たちと戦う気はさらさらなく、G.D.st重警備刑務所に潜伏。だがまたしても仗助たちに姿を見られ、再び戦いとなる。今度は仗助&億泰のコンビに敗北し、屈辱の余り「必ずお前たちを爆殺してやる」と捨て台詞を残して逃げていった。
以降はストーリーには登場しないが、決着はミッション(番外編)にてつける事が可能。杜王町を歩いていた時にたまたま仗助&康一と遭遇し、そのまま戦いとなる。最後は再び仗助&億泰のコンビと対決となり、「二人仲良く地獄へ落ちやがれ」と引導を渡される。
仗助との戦いでは「その頭、まだ爆発させていないはずだが?」と笑ってバカにし、仗助をキレさせる掛け合いも存在する。
余談
- 何故彼のスタンド能力「キラークイーン」の能力が爆弾なのかについては、元ネタとなった楽曲Queenの「Killer Queen」の歌詞に爆弾にまつわる単語がちりばめられているため。「がんばれ田淵」の空耳になった部分「gunpowder gelatin」でいうgelatin(ゼラチン)は一般的な意味で使われる食用コラーゲンではなく、ニトロゲルを指している。
- 上述したように母親に虐待を受けていたとの裏設定が作者から語られている。しかしその事情を説明するとシリアルキラーの悪役に同情が生まれてしまうため、少年誌に相応しくないと判断して本編で明かさなかったと答えている。作者曰く「可愛がりすぎる虐待」らしい。
- それもあってか、一部のファンからは「吉良の母こそ第4部の元凶」と見なされている。
- 作者曰く"Killer(殺人鬼)"から吉良、そして名前が名字と同じ漢字で始まったら読者も覚えやすいと考えて吉影と名付けた、と語っている。
- 由来は上の通りだが、地元に由来のある名に見え、奥州・武蔵吉良氏の血筋も想像できる。なお、歴代の奥州・武蔵吉良氏当主の名は吉良上野介の名で知られる「吉良義央」(きらよしひさ、よしなか)など「義(よし)~」が多く、そのモチーフの1つになっているのだろうか(参考:Wikipedia)。
- 第4部の序盤に登場する虹村形兆の目的は「不死身の怪物になってしまった父を殺してくれるスタンド使いを作ること」であるが、吉良吉影のスタンド能力はその目的を満たし得る数少ないスタンド能力である。吉良もまた息子の立場の人物だが、幽霊と化しても過保護な父親にサポートされている点では形兆とは真逆である(また形兆は父親を殺したくても殺せなかったが、吉良は殺すつもりがなかったのに父親を殺してしまった)。
- 第4部の敵はどんな悪人でも主人公たちが直接的に殺害する描写はなく、ラスボスの吉良も例外ではなかった。
- ドラマ版『岸辺露伴は動かない』の「くしゃがら」冒頭で岸辺露伴が読んでいる新聞の記事に「吉良吉影」の名前が隠れている。だが、記事内容を見る限りここで解説した吉良吉影本人ではないようで、ファンサービスとしての意味合いが強い。
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関連タグ
杜王町 吉良吉廣 川尻早人 川尻しのぶ 川尻浩作 東方仗助 虹村億泰 広瀬康一 岸辺露伴 空条承太郎
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