概要
C.E.初のモビルスーツ(MS)であるジンの「MA-M3 重斬刀」が一定の戦果を挙げたことから開発された兵装。「AVS」という略称を持つ(おそらく「Anti Vessel Sword」の略)。
対艦刀シリーズが初めて実装された機体は地球連合軍開発のGAT-X105 ストライクのストライカーパックシステムの1つAQM/E-X02 ソードストライカーとなるが、PMP社のAQM/E-M1 I.W.S.P.に採用された完全な実体剣タイプ「9.1m対艦刀」とモルゲンレーテ社製ソードストライカーの実体・レーザー併用型「15.78mm対艦刀 シュベルトゲベール」が並行して開発されており、I.W.S.P.自体の開発が遅れたことから後者が制式採用を勝ち取ったための扱いとなっている。
重斬刀と同じ実体剣型と、レーザーもしくはビームとのコンビネーション型に大別される。
前者はMSサイズに大型化した古典的な質量剣であり、後者はレーザーないしビームの熱量によって敵装甲の表面を焼き切りつつ剣の質量でさらに押し広げる質量攻撃が可能な特性を有している。そのため、基本的にはコンビネーション型の方が切断力は上であり、実体剣型はエネルギーの節約目的にて採用されることが多い。初期のコンビネーション型は直進する指向性レーザーを用いていたが、後に粒子ビームによって威力を増大させたモデルも作られた。また、その名の通り戦艦やMAに対抗する装備として開発されたが、実用性から対MS用としても運用可能な装備として位置付けられるようになった。
その多くはMSの全高に匹敵するほどの長さを誇り、重量も相まって取り回しに若干難はあるが、その威力はMS用兵装内でとりわけ高く、MS・MA・戦艦はおろか、コンビネーション型であっても対ビームシールド・対ビーム装甲まで一刀両断(あるいは貫通)でき、最高峰の防御兵装である陽電子リフレクターやビームシールドであっても防御が難しい。さらに、質量攻撃なため機体の速度を威力に変換することができ、コンビネーション型の最高威力を正面から防ぐことに成功している防御兵装は対ビームシールド(実体盾)とビームシールドを併用しているインフィニットジャスティスの「MX-2002 ビームキャリーシールド」しか存在しない(ストライクフリーダムが防いだ際は、両腕の「MX2200 ビームシールド」を展開してビーム刃を遮断した上で白刃取りという曲芸染みた手段を取っていた)。そのため、正しく扱えば回避以外に対応手段が存在しない一種の必殺武器とも言える。
実体の刀身に対して対ビームコーティング等を施していないことが多いため、仮にビームサーベルと切り結ぶようなことがあれば一方的に切断されてしまうという欠点が存在する。しかし、C.E.においてはビームサーベル同士の力場が干渉せず斥力が生じないために切り結ぶことが不可能となっており、その代わりにシールドを用いてビームサーベルを防ぐという戦闘スタイルが普及している。そういう環境であるため、実際にビームサーベルと切り結ぶ場面は滅多に起こらず、シールドでは防御困難な対艦刀は強力かつ厄介な武装となっている。
一方、図体の大きい兵装ではあるため兵装自体を狙われた際に容易に破壊されるという欠点は確かに存在し、作中ではデスティニーの対艦刀をインフィニットジャスティスが直接狙って破壊している。また、破壊とまではいかなくとも、前述した白刃取りの際、ストライクフリーダムは白刃取った対艦刀を奪い取っている。
対艦刀一覧
実体剣型
9.1メートル対艦刀
統合兵装ストライカーパック「I.W.S.P.」用に製作された実体剣型の対艦刀。
I.W.S.P.自体のエネルギー消費が大きかったことから、使用中は常にエネルギーを消費するレーザー式ではなく純粋な実体剣になったという経緯を持つ。
ガーベラ・ストレート
独自の刀鍛冶技術を用いて作成されたMSサイズの日本刀。
その切れ味は他の実体剣の追随を許さず、大概のモノを一刀の元に両断する。さらに、切る対象に対して寸分の狂いなく真っ直ぐに振ることさえできれば、例えビームであろうと切り裂いて躱すこともできる。
「ガーベラ・ストレートvol.2(150ガーベラ・ストレート)」という、超巨大バージョンも存在する。
タイガーピアス
ウン・ノウ専用ジンに装備されていたMSサイズの虎徹。ガーベラ・ストレート(打刀)の片割れ(脇差)。
MA-M92 斬機刀
ジンハイマニューバ2型に装備されている細身の日本刀のような実体剣。
素材はレアメタルとされている他、ガーベラ・ストレートと同じ技術が用いられており、片手切りでも易々とMSを切り裂く。
天羽々斬
MBF-P05L ガンダムアストレイ ミラージュフレームが装備しているヴァリアブルフェイズシフト装甲製の実体剣。名前の由来は、日本神話において須佐之男命が高天原から降りる際に宝物殿から持ち出した同名の十拳剣。
設計にはガーベラ・ストレートなどのモビルスーツ用の日本刀のデータが使用されており、敵のデータに合わせてフェイズシフトさせることで絶大な威力を発揮する。
VIG-E3/M 近接対装甲刀 ディス・パテール
NOG-M1A1 ブラックナイトスコード シヴァcジャマダハルのような形状をした大型のヒートソード。
対実体シールドにおいては刀身の赤熱化により容易に両断することができる。
対艦刀フツノミタマ
MDE262S プラウドディフェンダーの右舷ジョイントにマウントされ、同兵器とドッキングした機体が使用する、日本刀の形状をした漆黒の実体剣。名前の由来は古事記に登場する神器(神剣)の一つ布都御魂剣と思われる。
機体の全高(18.88m)とほぼ同程度の長さを持つが、マイティーストライクフリーダムは片腕で使用した。実弾にも耐性を持つブラックナイトスコードのフェムテク装甲に通用するほどの切断力を持つ。
XM404 グランドスラム
「1/60 PG ストライクガンダム」付属のボーナスパーツを元に設定されたオリジナル武装。
この装備は後に発売された「1/100 MG ストライクガンダム+I.W.S.P.」にも付属している。
また、「GUNDAM EVOLVE」において、ストライクガンダムが使用している描写がある。
コンビネーション型
15.78m レーザー対艦刀 シュベルトゲベール
AQM/E-X02 ソードストライカーに装備されているレーザー対艦刀。ストライクの形態としてはソードストライカーを装備したGAT-X105+AQM/E-X02 ソードストライクの他、ソードを含むAQM/E-YM-1 マルチプルアサルトストライカーを装備したGAT-X105+AQM/E-YM-1 パーフェクトストライクも使用する。名前の「シュベルト」・「ゲベール」はドイツ語で「剣」・「銃」を意味する。
光学刃部はレーザー。柄の部分に「銃」としてのビーム砲を備えるが、キラ・ヤマトがソードストライクに搭乗した時点では試作品だったため、外装のみのイミテーションであった。後に量産化されたものではビーム発砲機能が実装されている。
名前に「対艦刀」を冠した初めての装備だが、勢いが乗っていれば通常の対ビームシールドを両断するほどの威力があり(戦艦に採用される装甲材を用いた対ビームシールドについては両断できない)、勢いが乗っていなかったとしても対ビームシールドの表面に顕著なダメージを与えることができる。
15.78m レーザー対艦刀 シュベルトゲベール(ソードカラミティ)
GAT-X133 ソードカラミティが持つレーザー対艦刀。
装備数は2本。機能はソードストライカーと同様だが、レーザー刃はソードストライクのピンク色ではなく、グリーンとなる。
柄の部分にビーム砲が実装されている。
NOL-Y941 レーザー重斬刀
YFX-200 シグーディープアームズが持つレーザー対艦刀。
ソードストライクとの交戦データを元に、ザフトで開発された。
刃渡りは小型で、レーザー対艦刀の機能よりもビームサーベル実用化の過程で作られたテスト品の趣が強い。
MMI-710 エクスカリバー レーザー対艦刀
ZGMF-X56S/β ソードインパルスやZGMF-X56S/Θ デスティニーインパルスが持つレーザー対艦刀。名前の由来はアーサー王の愛剣エクスカリバー。
レーザー刃の反対側の大部分が実体刃になっており、構えの向きを変えるとそのまま実体剣になる。ソードシルエット・デスティニーシルエット問わず2本マウントされており、片腕で扱うことが前提となっているため、他の対艦刀よりも少々小型になっている。連結することも可能で、この形態は「アンビデクストラスフォーム」と呼ばれる。
バックパックに依存した装備ではないためフォースインパルスに換装した状態で使用されたことがあった他、給電コネクタの規格に上位互換のあるレジェンドによって使用されたこともあった。
レーザー刃は最大出力にすることで実体刃の刃先にまで展開することができ、フォースシルエットにより機体の加速を上乗せした威力はフリーダムのラミネートアンチビームシールド(実体盾としては最高峰のビーム耐性を持つ)を容易く貫通するほどに高い。また、刃先にまで展開することでフェイズシフト装甲すら貫くこともできるようになる。
MMI-558 テンペスト ビームソード
ZGMF-2000 グフイグナイテッドが持つ両刃剣。
対艦刀と同型の兵器だが、小型化とともに光学刃が直進式のレーザーから熱量の多い粒子ビームに変更された(依然としてレーザーとする資料もある)。
片手で扱え、対MS戦に特化した仕様になっている。
MMI-714 アロンダイト ビームソード
ZGMF-X42S デスティニーが持つ大型ビームソード。名前の由来は円卓の騎士の一人であるランスロット卿の愛剣アロンダイト。
ビームの特性はテンペストと同様だが、再び大型化している。刀身は折り畳みが可能であり、未使用時の取り回しが向上している。また、ハイパーデュートリオンエンジン搭載故に高出力かつ大型装備の使用を前提とした柔軟なフレームを持つデスティニーであれば片手でも振り回すことができる。
威力の方も、デストロイやアカツキの「試製71式防盾」を両断するほどに高く、ストライクフリーダムでさえ防ぐ際は白刃取りという曲芸に頼っていた。
デスティニーの改修機であるZGMF/A-42S2 デスティニーSpecⅡにもカラーリングこそ変化したものの受け継がれており、ブラックナイトスコード ルドラが持つビーム無効化装甲であるフェムテク装甲への対抗手段として重宝された。
MR-Q10 フラガラッハ3 ビームブレイド
I.W.S.P.を発展させたAQM/E-X09S ノワールストライカーに装備されたビーム対艦刀。
ビームエッジを搭載し、PS装甲の機体に対しても有効なダメージを与えられる事が可能となった。
基本構造や型式番号から、ファントムペインが鹵獲したガイアの「MR-Q17X グリフォン2ビームブレイド」の設計を参考にしたと考えられる。
余談だが、柄の部分は取り外して従来のビームサーベルとして使用可能という設定が有る。
GAT-X105E ストライクEがノワールストライカーを装備した形態GAT-X105E+AQM/E-X09S ストライクノワールが使用し、取り回しの容易さと絶大な切れ味から、敵機への格闘戦やとどめを刺す際等で重宝された。
大型対艦刀
モルゲンレーテ社がI.W.S.P.に独自改良を施したオオトリに搭載されているビーム対艦刀。オオトリを装備するMBF-02 ストライクルージュが使用した。
対艦用だけでなく対MS用も兼任したためか、I.W.S.P.のエネルギー消費問題を解消できているためか、ビーム刃を発振できる仕様となっている。
機体本体の全高に匹敵する長さを持つが、ストライクルージュレベルのマニピュレータでも片手で振り回せるほど軽量化されている。また、シュベルトゲベールと比較すると片手で使う想定となったためか柄部分も短くなっている(両拳がギリギリ並んで入る程度の幅しかない)。
OWC-QZ200 対モビルスーツ重斬刀
NOG-M4F1/2/3/4 ブラックナイトスコード ルドラ近接戦闘用の長剣。
他の対艦刀に負けず劣らずの長さをしているが片手で使うことが想定された設計となっている。それでも機体の基本性能も相まってゲルググメナースの「MMI-MD95/A レフルジェンス ビームシールド」を容易に両断するほどの切断力を持つ。
名称は不明だが、これを一回り小型化したものをNOG-M2D1/E ブラックナイトスコード カルラが装備している。
余談
- C.E.の世界においてレーザーとビームに明確な特性の差はない。ビームを偏向させる技術でレーザー対艦刀も湾曲する。とはいえ、このビーム偏向技術には光学迷彩用の特殊粒子も用いているため、レーザーも偏向されるのはそこまで不自然でもない。
- 本編にて「対艦刀」という呼称が登場したのは『FREEDOM』が初となる。
- レーザーと実体刃を組み合わせた構成はガンダムSEEDにおいてオマージュを公言されているロボットアニメ「機甲戦記ドラグナー」に登場するゲルフに通ずるものがある。
- ただし、あちらが実体刃一体式のレーザーソードを採用するのは試作品であったからで、後続の機体は完全なレーザーソード(所謂ビームサーベル方式)となっている。