『おれは忘れねえッ!ファンが愛してくれるのは強いブッチャー、悪役でも一生懸命なブッチャーだってことを!!』
※『プロレススーパースター列伝』(原作:梶原一騎 作画:原田久仁信)より
概要
本名はローレンス・ロバート・シュラーブ。
得意技はフォーク等を使った凶器攻撃の他、空手の貫手を応用した地獄突き、エルボードロップ(相手に肘を落とし、そのままフォールを奪う)。
「ブッチャー」は屠殺者を意味する言葉(正確には肉の切り分け人)で「アブドーラ・ザ・ブッチャー」とは「屠殺人のアブドーラ」を意味する。
流血戦を得意とする凶悪なヒールであったものの、額に刻まれた無数の傷跡から自らも大流血する「やられ上手」な側面もあった。日本では一時、この額の流血から“血拓”をとる行為が、ファンの間で流行した。
また、どこかユーモラスな風貌と愛嬌が絶大な人気を集め、CMに起用された他、『愛しのボッチャー』(河口仁)など、漫画やアニメにおいて彼をモデルとしたキャラクターが次々と生み出された(後述)。
- ブッチャーの凶器として有名なフォークだが、トレーディングカードで「ブッチャーのフォーク」のカードを作成する際、「どうせなら本人が使っている物を」と言う事で試合会場に突撃して「フォークの写真を撮らせてください」と直談判したところ「今日は使わないから持ってきてないよ」と言われたというエピソードがある。
ジャイアント馬場とはライバル兼戦友で、趣味の葉巻を交換し合う仲であった。試合会場の裏でキャッチボールなどをして遊んでいた。
ブッチャーは馬場について「彼がいてくれたからこそ日本の観客が何を望んでいたかを理解でき、彼らを喜ばせられる技術を向上できた。」語っている。
- 馬場が亡くなる少し前に「馬場が何かを語りかけてくるが、何を言っているか解らなかったので話しかけたら目が覚める」と言う夢を何度も見たと言っており、入院したとは聞いていたので心配からそういう夢を見るのかと思っていたが、死んだと聞いたときには本当に驚いたという。このことについては「俺が死んだら馬場に聞いてみるよ。『あのとき何を言いたかったんだ?』って」とコメントしている。
ルーキー時代の阪神タイガース・岡田彰布に対し「こいつは、絶対に大物になる」と賛辞を送り、食事を共にするなど交流があった。岡田の後援会・岡田会は当時、ブッチャーの後援会もしていた。岡田は現在でも恩を感じており、2005年の阪神リーグ優勝の際には祝勝会にブッチャーを招待するプランもあったが、実現はしなかった。
来歴
1941年1月11日(1936年生まれという説もあり)、カナダ・オンタリオ州ウィンザー市出身(ギミックではスーダン出身となっている)。
ネイティブ・アメリカンの父親とアフリカ系アメリカ人の母親の間に生まれる。
幼少の頃から廃品回収、新聞売り、靴磨き等をして家計を助けたため、金にはシビアである。
ハイスクールに進学した頃、近所の警察署で無料のスクールが開催されており、柔道と空手を習った。
20歳の頃、ジャック・ブリットンにスカウトされプロレスラーとしてデビュー。当初は「プッシーキャット・パイキンス」「ゼーラス・アマーラ」などと名乗り、「アブドーラ・ザ・ブッチャー」に落ち着くまで何回かリングネームを変えている。
1966年頃には、「トーキョー・ジョー」と名乗っていた国際プロレスのサンダー杉山ともしばしばタッグを組んだ。
1970年初来日。
ジャイアント馬場をはじめ、ザ・デストロイヤー、ザ・ファンクス、ハーリー・レイスといったトップレスラーと血みどろの抗争を国内外繰り広げて徐々にトップヒールとしての存在感を高めていった。
日本では機会が少なかったものの、アメリカではブルーザー・ブロディともたびたび抗争を展開しており、『世界のプロレス』(テレビ東京)でもゲージデスマッチの模様が放送されている。
1990年代に入ると、第一線からは退き流血試合は影を潜めて前座で観客を暖める役割を担った。
しかし、90年代中頃、長年主戦場としていた全日本プロレスを離れて、日本国内にある幾多のインディペンデント系プロレス団体に次々と参戦。ここにきて凶器攻撃や流血戦の封印を解き、「黒い呪術師」復活をアピールした。
2000年代以降はWRESTLE-1、ハッスル、ドラゴンゲートなどの団体に参戦。
また、古巣の全日プロや新日本プロレス(引き抜きにより1981から1985年にかけて所属)スポットながら参戦していた。
2012年1月2日、現役引退を表明(それ以前に地元のカナダやプエルトリコでそれぞれ引退表明をしていた)。
来日回数は140を超えており、歴代外国人レスラー最多。
影響を与えたキャラクター
日本では彼をモデルにしたキャラが数多く誕生しており、その影響がいかに絶大なものか窺い知れる。
ボッチャー(愛しのボッチャー)
悪役レスラー・ボッチャーの奮闘を描いたギャグマンガ。元ネタと同じくあくまでも「悪役レスラー」でしかないので、素顔はファンを大事にする「良い人」である。
ネーミングはブッチャーと当時全日プロの常連悪役レスラーだった、キラー・トーア・カマタを合わせており、命名したのは大のプロレスファンで知られるSF作家の高千穂遙。
安彦良和にブッチャーの写真を参考にキャラデザインを進めさせたという。
もはや、説明不要。
メシア教の食料用人造悪魔の屠殺人で、「じごくづき」の体術スキルを持つ。
Buchu(ブチュ)(アーケードゲーム版イーアルカンフー)
名前と白いズボンから見ても明らかに意識しているとしか思えない。
ちなみにファミコン版とMSX版はウーという名前だった。
※ポケットモンスターの「あくタイプ」の技、「じごくづき」は彼の得意技の地獄突きから。
入場テーマ曲
吹けよ風、呼べよ嵐(ピンク・フロイド)
現在はブッチャーの入場曲として、ぼほ固定されているが、嘗て全日本プロレスでは、日本テレビの選曲による「凶悪レスラーの入場曲」という扱いで個人の入場曲と決まってはおらず、ブッチャーと同時期に全日本プロレスで暴れていたザ・シーク、新日本プロレスから引き抜かれて移籍したタイガー・ジェット・シンもこの曲で入場したことがあった。