「悲しいなあ…すっごい悲しいんだろうなあ、こういう時って」
「なぁ、俺そういう顔してるだろ?」
演:石黒英雄
概要
未来から2007年現在にやって来た、敵イマジン達の司令塔にして首魁である謎の青年。
年齢は不明だが、オーナーによるナレーションでは「少年」と語られている為、恐らく十代後半(ちなみに演じた石黒は放映時19歳)。
電王のTV本編における事件の黒幕で、良太郎を抹殺するためにリュウタロスを送り込んだり、イマジン達の頭の中にテレパシーを使って指令を送り込んでいた張本人(尚、この能力で他のイマジン達と情報を共有している)。
服装はその時々で変化するが、常に黒を基調としストールを肩に羽織っている。
基本的に穏やかな笑顔を浮かべているが、表向きの表情と実際の感情がシンクロしておらず、笑顔を浮かべたまま怒りを表現する等、得体のしれない不気味な存在。
その正体は イマジン達が存在する未来からやって来た特異点。その為か他のイマジン達と違い、肉体を保持しているほか襲来した2007年より過去の世界にも彼は存在している模様。
故に彼自身はイマジンではなく、あくまで生身の人間である。
彼の配下のイマジン達もカイの正体は知らず、「自分たちの未来を救ってくれる奴」くらいにしか思っていない。後述する通り記憶や感情に関する感性が欠落している為、イマジンの「未来での肉体」に関しても全く興味を持っていないようだ。
本来は「時の運行から外れた未来」の存在で現代と切り離された所にある世界の住人であったが、何らかの事故で自分が存在している未来が正常に進んでいた現在と曖昧な形で交わり始めた事を切っ掛けに、2007年の過去へと襲来。
このまま放って置くと時の運行から外れ、いずれは消滅する自分達の未来を現代へと繋ぐ事で『過去』という概念そのものを手に入れ、自らの存在を安定させる事を目論み暗躍していた。
その特異な出生の為からか、
- リュウタロス以上の精神支配能力(リュウタロスダンサーズすら逆に操れる)
- 他人の過去の扉を開いて記憶を覗き見る能力
- ありえない日付や無期限有効のライダーチケットの捏造
- 歴史の流れが異なる別の時間軸を結びつける能力
- 時空の裂け目を作り出してエネルギーを集中させ、時間そのものを破壊する力
等を持っており、更には身体能力も並の人間以上に高い(NEWモールイマジン程度なら、パンチ一発で砂と化し滅び去る)。
ちなみにブレイクダンスもR良太郎もといリュウタロス並みであり、リュウタロスとの邂逅時にはクラブらしきところで踊っていたリュウタロスとダンサーズの場に乱入、ダンス対決を仕掛けた(この際やダンサーズを支配下に置いた際は音程などが加工されたClimax_Jump Gun_Formが流れる)。
また、でたらめな日付の入った黒い手帳(メイン画像参照)を常に携帯しており、この手帳の日付を指でなぞり、自身の体を使用してイマジンを任意の過去へと送り込む事も可能。しかし自身の扉を開くのはかなりの負担を強いる(疲れる)他、過去の自身を犠牲にするリスクを伴い、更には本人が面倒臭がりな為、基本この能力は使わず、もっぱら配下のイマジンを他人に憑依・契約を結ばせて、その人物の記憶を利用して過去へと送り込んでいる。
また、根本的に感性が欠落している為に非常に冷酷非情で、配下のイマジン達は目的達成の為の使い捨ての駒程度にしか考えておらず、自身の過去を持っていない事も加わり、かなり忘れっぽい為(未来が定まって確定していくに連れその症状は悪化している)、過去に送り込んだ配下のイマジンの事を忘れてしまい、置き去りにされた者も存在する。
暗躍
劇中、配下のイマジン達を率いて未来の分岐点の鍵を探り、桜井侑斗が鍵だと見なして抹殺に動き出す。
過去に桜井とニアミスしていた人間とイマジンを契約させ、彼が存在する過去へと送り込んでいた(桜井がゼロノスカードの効力で、特異点と同じく時間の干渉を受けない為、直接手を下す必要があった)。
つまり劇中、良太郎の生活圏でイマジン事件が頻発していたのは、良太郎にも近しい存在である桜井を標的にしていた為であり、メタ的にはご都合主義の類いではない事実も判明した。
しかし、一向に上手く行かず、更にゼロノス(侑斗)が桜井ではなく良太郎を庇った事を切っ掛けに疑念を抱き、これまでの経緯を改めて見直す。結果、良太郎の記憶を強引に探り、本当の分岐点の鍵が彼の姉である野上愛理であった事を知り、桜井が囮であった事に気付く(上記の場面から、愛理が分岐点の鍵と判明するまで「分岐点の鍵は良太郎」というミスリードがなされていた。侑斗は『愛理が分岐点の鍵』と桜井から知らされていた為、上記の行動は純粋な仲間意識の現れだったと推察される)。
その事に強い怒りを覚えた彼は、未来確定の期限も差し迫っていた事もあり、配下の精神態で漂っている、全イマジンと契約して肉体を与え総攻撃を開始。
そして、遂に愛理の許に辿り着くが、彼女の記憶を探った結果、愛理もまた分岐点の鍵ではなく、更に歴史改変の影響で肝心の分岐点の鍵についての記憶が、欠落している事を知り自暴自棄に陥る。
真の分岐点の鍵は桜井と愛理の間に生まれる予定の子供だったのだが、自棄になったカイはこれ以上の捜査を投げ打ち、特異点も分岐点の鍵も関係なく、全ての時間の破壊を目論む。
しかし、すんでのところで良太郎に阻止され、同時にその場に居たハナ=コハナこそが、桜井と愛理の娘にして真の分岐点だと知らされる。最後の最後まで出し抜かれ続け、遂に怒りが頂点に達したカイは、デスイマジン以下大多数のイマジン軍団を率いて最後の決戦に突入。
そして、デスイマジンが電王に敗北した事で、時の流れの変更の失敗が決定的なものとなり、カイの存在そのものが無かった事になってしまった。
「終わった…。クソッ、けどお前らも消える。イマジンはみんな……消える」
デスイマジン消滅から間もなくして、悲観に暮れた顔を浮かべ、総てのイマジンと共に砂と化して滅び去った…。
……自分の時間を確立していた、イマジンズの面々や一部の者たちを除いて。
余談
基本冷酷な一面が強調されがちであるが、一時的に歴史改変で過去を手に入れた時は狂喜する一面を覗かせたり、時が来れば自身がいずれは消滅してしまうという、生存を懸けた切羽詰まった状況だった事を考えると、一概に完全な悪とも言えない人物ではある(ただし、遊び感覚でとある家族を歴史から抹消したりと、間違っても悪人ではないとは言えないが)。
最強にして最後の悪役が『生身の人間』と言う本作の展開は、昭和・平成のどちらにおいても珍しい。
特に平成二期以降はサジタリウス・ゾディアーツ、仮面ライダークロノスのように生身の人間であっても変身するケースが殆どの為、今後カイのように終始生身でラスボスを貫く展開は登場しにくいと思われる。
というか放送当時も、多くの視聴者はカイにも当然怪人態があるか、あるいは何らかのライダーに変身するものだと予想されていたので、最後までそれらが無かった事の方が驚かれた。
このせいで、一応本作のラスボスでありながらカイ自身が直接ライダー達と戦う描写は殆どなく、その役割はデスイマジンの方が一手に担っている。これについては視聴者の間でもデスイマジンが最終回前に唐突に現れた存在である事も含めて、かなり賛否は割れた点である(普通にデスイマジンがカイの怪人態といった設定で良かったのではという意見も多かった)。
正体に関して
作中では『失われた時間からやってきた未来の特異点』と言う事以外は、一切の経歴が明かされていない。
しかし、視聴者の間では『桜井侑斗と野上愛理の間に、娘(=ハナ)ではなく息子が生まれた世界線』から来た息子本人と言う説が浮上している(公式媒体ではてれびくんデラックス「仮面ライダーEXVol.1」で、この事が実際に言及されている)。
本作は端的に言えば『人間とイマジンの未来を賭けた生存競争』であり、『人間の未来』の特異点・ハナと『イマジンの未来』の特異点・カイ、どちらが最終的に存在できるかが物語の中核であった為、即ちカイは『イマジンの未来』におけるハナに相当する存在と考えられる事が根拠とされる。
『電王』は物語の関係者が野上家と桜井家に集中していた為、カイが野上家と桜井家のいずれか、或いは双方に関係していてもおかしい話ではない。良太郎、ハナ、後の幸太郎と野上家は特異点が多く生まれる傾向にある事から、彼が野上の血統とした場合は特異点である事も納得が行く。
名前に関連性を見出だす見方もあり、対の存在であるハナが「花時計」(第39・40話にて、ミルクディッパーが歴史改変でこの店名になっていた)、カイが「懐(カイ)中時計」またははくちょう座の「χ星」(桜井は懐中時計を所持しており、星好きで天文学者。同じく白鳥座の星に由来したデネブは、カイを裏切って侑斗についている)と、それぞれ「『時計』かつ『親の趣味』に由来しているのでは?」と言う説もある。
いずれも憶測の域を出ないが、これが本当ならば『仮面ライダー電王』は、自分達の生存を懸けて異なる世界の家族同士が戦い合う物語だったと言う事になる。
『過去が希望をくれる』という言葉は彼にとって最高の皮肉であり、最大の絶望だったのかもしれない。
配下
カイ直属
この内スネールイマジンは後述する兵団にも紛れ込んでいる。
カイの思い描くイメージで出現したイマジン
ちなみにこの二体も後述する兵団に紛れている。
終盤でカイが無理矢理実体化させたイマジン兵団
関連タグ
パラド:こちらは演者の苗字が甲斐。彼が変身するライダーの名前も、時間関連の作品でよく登場するワードである。
クレナイ・ガイ(ウルトラマンオーブ):まさかの役者繋がり。最終回直前にニコ生で配信された特番では、石黒本人がさりげなくカイの台詞を口にする一幕があった。