概要
ハズブロ側の「人間からロボットに変形させたい」という要望がもとで1988年度の商品展開より登場したトランスフォーマーの玩具シリーズであり、商品としては小型のトランスフォーマーに、人型もしくは怪物などの外皮(アウターシェル)を被せるというものである。
被せるのだが、玩具の都合上初期のラインナップではモナカの様にアウターシェルが割れて中に小型トランスフォーマーが収納されているという少々ビックリなギミックである。
本シリーズが世に出た80年代当時はアメリカ国内でアクションフィギュアが流行り出した時期であり、アメリカでは後述の様々なラインナップが発売される程の売り上げを見せ*人気を博したが、日本では1988年の『超神マスターフォース』放送時に初期のラインナップが数点発売されたのみに留まり、その後もアウターシェルを変更して発売したり、シェルそのものを削除して発売する散発的な商品展開となった為、その大味な造りも相まってか日本のファンの間では迷走期の商品という印象が強い。
ミリオン出版刊『トランスフォーマージェネレーション2012』内のインタビューでは、ハスブロからの要望から制作にあたっては従来よりも更に少ない製造コストとパーツ点数がハズブロ側より要求され、更に折しもの円高の影響で製造拠点を実績のない海外へと移さざるを得なくなった事もあり、結果としてプリテンダーの商品としてのクオリティには不満が残るものとなった事を、当時開発に携わっていたタカラ(現:タカラトミー)の大野光仁・石澤隆之の両氏が述べている。
ちなみにプリテンダーの設定については国内と海外で大幅に解釈が異なっており、日本では所謂変身ヒーローの体裁をとっていたが、アメリカではアウターシェルとロボットが独立しており、コミック等では各々が分離した状態で行動するシーンが見受けられる。
玩具について
前後(左右)分割式のアウターシェルの内部に変形可能な小型フィギュアを収納する形態の玩具で、アウターシェルの外観はサイバトロン側が宇宙服を着た人間、デストロン側が怪物を意匠としたものとなっているが、後年になる連れブラジオンやダブルヘッダーのような異形のデザインが増えていった。
ちなみに本体のトランスフォーマーとアウターシェルが共に戦う姿のイメージソースは新造人間キャシャーンのキャシャーンと相棒のフレンダーだったとのこと。
ラインナップ
プリテンダービースト
熊や狼といった獣型のアウターシェル(可動箇所はなし)を持つ。左右分割式のシェル内部にロボットを収納するだけでなく、ロボットの武器をシェルの背部に取り付ける事が可能。
プリテンダービークル
乗り物をモチーフとしたアウターシェルを持つプリテンダー。クリア成型されたシェルのフロントガラスからは収納したロボットが見えるようになっている。ロボットは単体では変形せず、シェルの武器パーツと合体させる事でビークルモードとなる。
メガプリテンダー
アウターシェルがビークルへと変形し、更にビークルへと変形したロボットが合体可能。日本ではサンダーウイングとクロスブレイズがそれぞれブラックシャドーとブルーバッカスとして一部パーツの形状やカラーリングの変更を行い、カテゴリ名も「クロスフォーマー」と改められて『トランスフォーマーV』放映時に発売された。
ウルトラプリテンダー
メガプリテンダーと同じく変形可能なアウターシェルに加え、更にアウターシェルを収納できる非変形の大型ビークルを組み合わせたもの。
プリテンダークラシックス
『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』に登場したバンブル・マイスター・グリムロック・スタースクリームの4体をプリテンダー化したもの。日本では『ヒーローセット』として発売されたが、アウターシェルを削除した単体のTFとして発売されている。
プリテンダーモンスター
異形の怪物を象ったアウターシェルを持つプリテンダー。サイズはマイクロトランスフォーマーとほぼ同等で、プリテンダーとしては最も小さい。6体のロボットが合体してモンストラクターとなり、シェルの背部には6体合体時に使用する拳やつま先などのパーツを装着可能。日本では個別のアウターシェルを撤廃し、国内オリジナルの恐竜型アウターシェルを付属した恐竜戦隊がリリースされた。
超神マスターフォース
400万年前の大戦を逃れて地球に潜伏したトランスフォーマーの種族。
環境に応じて自らの身体を現地の生物に擬態させることが可能であり、サイバトロン側は人間に、デストロン側は怪物へと姿を変え密かに戦いを続けていた。サイバトロン側のリーダーはメタルホーク(日本オリジナル玩具:イラスト左)、デストロン側のリーダーはブラッド(イラスト右)。
サイバトロンプリテンダー
普段は通常の人間をしており、世界各国で人間社会に溶け込んで生活を送っていたが突如として蘇ったデストロンプリテンダー達に対処する為に集結した。
またサイバトロンプリテンダー達は非戦闘時では通常の服装をしているが、変身の際には腕を「人」の形になるようにクロスさせて「スーツオン」の掛け声でアウターシェルを装着する。ただし『超神マスターフォース』でのアウターシェルはヒーローチックな鎧に変更がなされている。
そしてその状態から「プリテンダー」の掛け声でロボット状態に変身する。その時眩い光を放ちブロック状の物体が現れて合体し巨大なトランスフォーマーへと形作るような演出がなされている。
デストロンプリテンダー
普段の姿は、神話に登場する様な獣の姿をしている。こちらは海外の玩具展開と同じであり変わっていない様子である。
「スーツオン」の影声は無く直接「プリテンダー」の掛け声(この掛け声も省略されている時がある)でトランスフォーマーに変身する。
TVアニメでの演出
アニメでの表現は人間(玩具ではアウターシェル状態)が巨大ロボット(玩具ではアウターシェル内部のロボット)へと変身する『ウルトラマン』や『ジャンボーグA』のような特撮巨大変身ヒーローもしくは怪獣のような扱いであった(ちなみにオマージュを意識してか、第一話の冒頭でデストロンプリテンダーに襲撃される客船の船長が歌っているのが、『ジャンボーグA』最終回で主人公が月面で歌っていた「月の沙漠」であり、夜間に月が出ている海上である)。
しかしながら、番組後半に発生したパワーのインフレにより、プリテンダーは相対的に弱体な印象となり、そのままフェードアウトしてしまった印象が強いが、後に自我に目覚め人間達と分離したゴッドジンライ達が外宇宙に旅立った後は、地球にそのまま定住した模様である。
『トランスフォーマージェネレーション2012』の巻末にはその前日談となるコミック『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー 超神マスターフォース プリテンダー外伝』(原作:金田益実・まがみばん 漫画:津島直人)が掲載。過去の時代の日本で繰り広げられるサイバトロン・デストロン両軍のプリテンダー達の戦い、そして故郷へ還る手段を絶たれ、不本意ながらも地球で暮らす事になったメタルホークの心境の変化を描いた内容となっている。
超神マスターフォースのプリテンダー達の一部シーン
日本版CM
※玩具としての初登場は、『ヘッドマスターズ』での「ターゲットマスター」のキャンペーン商品としてから。
マーベルコミック
マーベルからG1がコミック化されていた際にも、劇中に登場。
海外版玩具同様に「ロボット生命体に、シェルを装着して有機体を装う」という設定を持ち、
:TFのようなロボット生命体が立ち入り禁止となっている宇宙の宙域に、シェルを装着して入る。
:同サイズの巨人が住む惑星の社会に、同族を装い潜入。
:シェルを装着し、人間のプロレスラーを装い参加。
といった、その設定を活用したシチュエーションが描かれた。
劇中では、TFの巨体の上にシェルを装着する為にプリテンダーシェルを装着した状態では巨人、または巨大生物として描かれている。
中には、アウターシェルの姿の方が有名になるという状況も発生した。
ディセプティコンのプリテンダー、スカルグリン(日本版でダウロスとなったTF)は、アウターシェルはミノタウロスを思わせるモンスターのような姿だが、逆にそれが普段からモンスターの格好をしている筋金入りの怪物役専門俳優と勘違いされて人気を呼び、映画スターになってしまうというエピソードもあったりする。
なお、プリテンダー・ブラジオンのアウターシェルは「ドクロの鎧武者姿」だが、この姿が人気を得たため、後々にも影響を与えている。
海外CM
IDW
G1シリーズの世界を再構築したIDWパブリッシングのコミックでは、プリテンダーの設定について再定義がなされ、ディセプティコンの科学者サンダーウイングが開発した、トランスフォーマーの能力を飛躍的に向上させる生体装甲技術となった。
しかしながら、自らの身体に施術したサンダーウイングはその副作用で発狂し、暴走の末にサイバトロン星を居住不可能にした為、禁断の技術として封印されたという経緯がある(一部のファンからは、玩具のプリテンダー~アクションマスター~G2期までの商品展開の極度な迷走をメタ的に揶揄した描写と目されている)。
始祖であるサンダーウイングは信徒達によって狂信的に崇められ、ブラジオンやモンストラクターらはその教義に従って殺戮を続ける集団とされている。なお、モンストラクターの合体戦士化にはかのジアクサスが関わっている模様。
オートボットでもその技術は確立されているが、そのリスクから表向きは封印された技術として扱われているものの、死者の世界デッド・ユニバース活動用のパワードスーツ(国内マスターフォース展開期のサイバトロンアウターシェルに酷似)に転用しているほか、 プロールは惑星チーシの探査途中に一度は廃人となったカップを英雄として必要としたために技術を応用して再生するなど、先端レベルではリスクすれすれで活用している模様。
実写映画
第2作目『トランスフォーマーリベンジ』にてディセプティコン所属のプリテンダーとして、アリス(演:イザベル・ルーカス/吹:牛田裕子)が登場する。「人間に擬態するトランスフォーマー」として、セクシーな女子大生に擬態してサム・ウィトウィッキーに近づき、彼からオールスパークの情報を吐き出させようとするも、正体を露わにしたところをミカエラ・ベインズに轢き殺された。 それまでのプリテンダーとは違い、サイズ・質量共に人間と等しいトランスフォーマーであり、その変形プロセスはかなりグロテスクである。
ノベライズでは人の姿の元が明かされており日本製の車のCMに出ていた少女型ロボットをスキャンしていたことが判明した。
美少女への追求を惜しまない日本だけに妙に納得である。
パワーオブザプライム
プリテンダーの発売から30年余りの歳月が流れた2017年、ハズブロは『タイタンズリターン』の後継となる新シリーズ『パワーオブザプライム』を発売した。
デコイアーマーと呼ばれるアウターシェルに小型ロボットのプライムマスターを収納するギミックは旧来のプリテンダーと同じだが、ビークルモードに変形したレジェンドクラスのトランスフォーマーにプライムマスターを搭乗させたり、更に武器モードに変形したデコイアーマーやデラックスクラスの製品に付属しているプライムアーマーにスパークコアに変形させたプライムマスターを合体させることができるようになっている。
プライムマスターの大きさは『タイタンズリターン』のタイタンマスター(ヘッドマスター)と同じで、それを格納するデコイアーマーも相応の大きさではあるのものの、そのキャラクターのチョイスおよび機構などはプリテンダーシリーズのリメイクと言えるものであり、日本国内販売のみであったメタルホークも含むなど、再評価がなされていると言える。
日本では2018年5月より発売されたが、前年の『トランスフォーマーレジェンズ』とは異なり、商品自体だけでなくパッケージから説明書に至るまで海外版とほぼ同等の仕様となっている。
その他
公式ではなく、同人誌だが。TFの玩具デザインなども担当している漫画家・市川裕文氏の同人誌「TRANSFORMERS CHRONICLE」に、ディセプティコンの陸軍司令官として、ウルトラプリテンダー「ロードブロック」が、アウターシェル姿で登場していた。
関連タグ
トランスフォーマー 超神マスターフォース トランスフォーマーV
擬人化:ある意味後年のMS少女やロボットガールズZといったロボットの擬人化ブームの先取りともとれる…。