概要
ザフト製の試験用モビルスーツである火器運用試験型ゲイツ改に搭載されていた火器管制システム「NWQ403-E」をさらに改良したプログラムにより、複数の火器を連携して扱いつつ10機の標的を同時かつ正確に捕捉することを可能とする機能。
バッテリー稼働によるエネルギー問題とモビルスーツの操縦難度の観点から大量の火器を搭載することが殆ど無い単体のモビルスーツにとっては過剰とも言える機能とされ、核動力故に大量の火器を搭載・連射可能なZGMF-Xシリーズ(ファーストステージシリーズ)にて初搭載された(機体単位ではドレッドノートに搭載されたものが初となる)。以降も、サードステージシリーズや、ZGMF-Xシリーズを参考にして開発された一部機体に搭載された。
仕様
この機能の搭載に伴い、ZGMF-Xシリーズにはその頭部に敵機の位置を正確に捉え戦況把握を的確に行うための高精度なデュアルアイ式メインカメラや角状アンテナをはじめとしたセンサー類(所謂ガンダムタイプ)を採用、コクピット正面のメインコンソール中央に大型球状による立体型表示を行うメインパネル「マルチレーダーセンサー」が設置されることとなった。このマルチレーダーセンサーが表示する機影と地形の情報から戦況をより正確に見極めて機体の戦闘能力を最大限に発揮できるようになっている。しかし、あくまで高性能なセンサーとプログラムによって同時にロックオンし続けることが可能な数を増やしているに過ぎず、ロックオン自体はマルチレーダーセンサーに表示された点状の機影をもとにパイロットが1機ごと順番に行っていく必要があるため、その真価を引き出すにはパイロットの技量が大きく影響し、コーディネイターの中でも特に優れた空間認識能力と反応速度が求められる。そのため、搭載機はエース専用機に限られている。
制約
システム起動時にメインコンソールがせり上がり、それに合わせて計器の種類や位置、マルチレーダーセンサーの表示が変化することに加え、パイロットはロックオンに注力することになるため、システム使用時は若干の隙が生じる。搭載機の一機フリーダムのパイロットであるキラ・ヤマトはロックオンを行いながら敵機の射線に入らないように位置取りし続け、ロックオンが完了した直後に機動性の落ちる砲撃形態に移行して即座に射撃するという運用によりこの隙を埋めている。しかし、雑兵相手にしか通用しない手法なためか、エース級を相手にしている時にシステムを使用したことは殆ど無い。
改良
C.E.75年以降に開発された高性能モビルスーツに採用されている全天周囲モニター型コクピットは計器類が全て空中投影型ディスプレイに置き換わっているため、本システムを搭載していてもマルチレーダーセンサーは廃止され、メインモニターに映った敵機を直接ロックオンする一般的な仕様に変更された。それに伴い、システム起動時にメインコンソールがせり上がるようなことはなくなり、システムの切り替えもシームレスに行えるようになった。また、システムがより洗練されたのかパイロットの技量向上によるものかは不明だが、ロックオン速度も飛躍的に上昇しており、大多数の対象をほぼ一瞬にてロックオンできるようになったため、前述した隙が生じにくくなっている。
同時ロックオン数
ZGMF-Xシリーズ用のオプション装備ミーティアの火器管制にも使用され、その際は80機以上の同時ロックオンを行う。加えて、キラの操縦技術が向上したことの描写か、フリーダムの同時ロックオン数は『SEED』で7機だったところ、『DESTINY』では12機、『DESTINY』後半に乗り換えたストライクフリーダムでは13機、『FREEDOM』にて搭乗した全天周囲モニター型のライジングフリーダムでは33機、同じく全天周囲モニター型のストライクフリーダム弐式では(標的がミサイルかつ咄嗟だったとはいえ)17機まで増加している。マイティーストライクフリーダムに至っては最早計測不能な域にまでなっているが、これはラクス・クラインによるものであるため、キラが行った場合の同時ロックオン数は明らかではない。これらの描写から、システム自体にロックオン可能数の上限はなく機体状況などをシステムもしくはパイロットが判断して適宜上限を設定している、あるいは単にパイロットの能力的限界数と思われる。特にミーティアの場合、77門が自律誘導機能を持つ対艦ミサイルであり、その大まかな標的指定のためだけにシステムを用いれば良いため、上限が大幅に引き上げられている可能性は高い。
搭載機
使用した描写が存在する機体
マルチレーダーセンサー採用
全天周囲モニター採用
使用した描写が存在しない機体
マルチレーダーセンサー採用
全天周囲モニター採用
余談
- 現実の火器管制システムにおける「複数目標追尾(Multiple Target Tracking, MTT)方式」にあたる。
- 主に用いられるのは「単一目標追尾(Single Target Tracking, STT)方式」であり、これはペンシル・ビームを形成するアンテナを機械的に駆動することにより単一の目標に対してビームを連続的に指向して高精度の目標情報を得ることができる。一方、高精度の方位分解能を実現するためにビーム幅はかなり狭くなっており目標の捜索には不向きとされる。
- MTT方式では高性能な電子走査アンテナを前提とするものの、複数のペンシル・ビームを同時に形成・指向することにより、より柔軟に複数目標の捜索・追尾を行うことができる。
- 主に用いられるのは「単一目標追尾(Single Target Tracking, STT)方式」であり、これはペンシル・ビームを形成するアンテナを機械的に駆動することにより単一の目標に対してビームを連続的に指向して高精度の目標情報を得ることができる。一方、高精度の方位分解能を実現するためにビーム幅はかなり狭くなっており目標の捜索には不向きとされる。
- マルチレーダーセンサーの映る機体を発信源とした同心円状の波動を見る限り、送信アンテナを回転させるのではなく、一定間隔(作中描写では約1秒間)にて全方向に電波を飛ばしてそれを受信する方式(要:電子走査アンテナ)と思われる。
- 設定上のみの用語であり、作中にて呼称されたことは一度もない。外伝作品ですら『ECLIPSE』にて明言されたのが唯一になる。
- キラは、このシステムを使った上で複数の敵機の頭部や腕部、武装のみを同時かつ正確に撃ち抜くという神業を見せている。また、一部書籍にはロック後にマニュアルで照準をずらしているとされるものもある。
- 現実の火器管制システムに例えると、システムが算出した未来位置修正角(目標の位置と射線のなす角)に対してマニュアルにて修正を加えていることになる。
- 放送時の書籍では高い技量を必要する機能とのみ記述されていたが、放送後の書籍ではプロヴィデンスのドラグーン運用にマルチロックオンが使用されており、ストライクフリーダムの操縦に高い空間認識能力を要するとされ、ガンプラのRGシリーズではマルチロックオンシステムの性能発揮には高い空間認識力が必要とした扱いになった。
- ベースとなる機能を搭載した火器運用試験型ゲイツ改とこのシステムを初搭載したドレッドノートは殆ど同時期にロールアウトされている(若干ドレッドノートの方が早い)。
- 設定上はサードステージシリーズでもマルチロックオンが可能とされている。
- 作中でのデスティニーのコクピット正面のメインコンソール中央にある六角形のパネルの画面内に、マルチレーダーセンサーと酷似する球体状のレーダーセンサーが確認できる。ただし、マルチロックオンを使っている描写は無い。
- サードステージに限らず劇中未使用の機体は多く、明確に描写があるのはフリーダム系列とジャスティス・インフィニットジャスティスくらいである。
- そもそもこのシステム、同時に多数の火器が使用できる機体でなければ有用性は低い。最低でも5門以上の火器を同時に使用できるフリーダム系列とは好相性だが、機関砲を除けば2~3門ほどの火器しか持たないジャスティス系列やデスティニーとは相性がそこまで良くはなく、実際にジャスティス系列もミーティア装備時にしか使用していない(エクリプスもビームキャノンが4基追加されるマニューバストライカー装備状態にしか使用していない)。多数の敵機をロックオンしても、それに追従できる火器がなければ効果は薄いため、わざわざロックオン中の隙を晒すのは命取りということだろう。
- フリーダム系列にて使用される際はフルバーストと併用されることが多いが、フルバーストに必須というわけではない。
- 従来のシステムはメインモニターとマルチレーダーセンサーが完全に独立してることに加えて、マルチレーダーセンサーは点状の敵影と地形の輪郭くらいしか表示しないため、無差別に攻撃するでもない限りは双方の機影を対応付けながらロックオンする必要があった。それが全天周囲モニター型ではメインモニターに統合されたため、ロックオン速度の向上はこの対応付けが不要になったためと考えられる。
- ZGMF-XシリーズのOSを採用したデルタアストレイがマルチロックオンシステムに対応しているかは不明。このデルタアストレイはコクピットが独自の設計とされている。
- 必ずしもミーティアの火器管制に必要というわけでもないらしく、『FREEDOM』ではセカンドステージシリーズ仕様のコンソール(インパルスSpecⅡ)、ニューミレニアムシリーズ仕様のコンソール(デュエルブリッツ・ライトニングバスター)、『DESTINY ASTRAY』では連合・オーブ共通のコンソール(アストレイ ブルーフレームセカンドL、ジャン専用M1アストレイ)でもミーティアのフルバーストをこなしている。
- 『ガンダムビルドダイバーズバトローグ』にてクジョウ・キョウヤがストライクフリーダムでこのシステムを用いた際、相手のガンダム・バルバトスルプスレクスたった1機の全身をロックオンするというとんでもない使い方を見せている。『ECLIPSE』でもエクリプスが同じ使い方を披露したが、エクリプス2号機のパイロットであるケン・ノーランド・スセの反応的に想定された運用ではないらしい。
関連タグ
機動戦士ガンダムSEED 機動戦士ガンダムSEED DESTINY 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM