概要
小説家になろうにて2016年(平成28年)6月から連載を開始した。通称は「転生ごとき」、「転逃げ」。
2020年(令和2年)3月からはMF文庫Jから書籍化しており、既刊3巻。
また、同年10月からは漫画版が少年エースPlusにて連載された(精霊術学院入学直後までを描いており、全4巻)。イラストは木鈴カケル(過去にヤンデレ同人誌を多数手掛けている。)、漫画版での作画はユリシロが担当。
Web版・書籍版共に長らく休止状態にあるが、これについては作者が事情を説明している。
異世界に転生してチート能力で無双…という生易しい物ではなく、タイトル通り、突き抜けている程にヤンデレすぎる妹からの逃避劇が物語の主軸となる。その為、読者の心をこれでもかと抉り取る鬱展開が多分に含まれ、ウェブ版はあまりにも凄惨すぎる描写ゆえにR15指定となっている。漫画版では凄惨な光景を描き込み過ぎてR18指定になりかけた。
ストーリー
高校卒業後の5年間を妹に監禁されていた少年はある時、脱出を試みるが、トラックに轢かれてこの世を去ってしまう。ようやくあの恐ろしい妹から解放されたのかと思いきや、女神により否応無く異世界への転生を通告される。
妹が異世界に転生済みと知った彼はなんとしてでも彼女の魔手から逃れるべく、世界最強クラスの能力を武器に生きていく。
登場人物
主要人物
- ジャック・リーバー
主人公。リーバー伯爵家の長男。前世は日本にどこにでもいそうな少年だったが、両親の交通事故を境に妹が自分を監禁するようになり、やっとの思いで逃げ出すも、トラックに轢かれて異世界に転生する。この為、本能レベルで妹を恐れていて、目の前で惨殺されていく親しかった人々を助けられなかったという無力感に苛まれている。
境遇を哀れんだ女神により、端麗な容姿、最強レベルの能力と裕福な家庭に誕生できる権利をプレゼントされた。そこでの生活は彼が望んでやまなかったありふれた幸せそのものであり、平穏を守るべく能力の研鑽に明け暮れる。
赤ん坊の頃に第65位の精霊〈尊き別離のアンドレアルフス〉の「巣立ちの透翼」という重力を操る精霊術に覚醒し、能力を100パーセント発揮できる「精霊の止まり木(ルースト)」である事が判明する。自分と触れていた対象の重力をなくす事ができ、宙を浮くことも可能。集中力が必要だが、液体に対しても使うことができる。質量減少の影響はきっちり発生するため、宙を浮けばちょっとした風ですっ飛ばされ、浮かせたものを相手に飛ばすことはできても当たったところで全く衝撃を伴わないため、タイミングを合わせて能力を解除するなど工夫が必要となる。
世界最強クラスの優れた才能だが、「精霊の止まり木(ルースト)」の中ではそれほど強い能力ではなく、もっとチートじみた能力が多数あるため、とある人物に「どうせなら、俺の能力も、そういうバカげたチートにしてくれればよかったのにな」と言ったこともある。
のちに精霊術学院戦闘科Sクラスに進学した。
- 妹
主人公の前世での妹でこの作品のラスボ…鬼畜ヒロイン。なお、メインヒロインは公式に否定されている。
主人公を「兄さん」と呼び、基本的には誰に対しても敬語で話す。トラック事故で兄を巻き込んで心中し、異世界転生のきっかけを作った元凶で、彼女も異世界転生しており、彼女から逃げ切る事が主人公の目的の一つとなっている。
その性格は主人公を監禁した挙句、彼の目の前で親しくしていた人々を何十人も痛ぶっては殺害するなどサイコパス度が天元突破した猟奇連続殺人鬼のヤンデレであり、自分が兄を愛する為なら周りがどうなろうが、兄が発狂しようが御構い無しでトラックに制裁されるまで悪行三昧だった(協力者の力で警察には見つからなかった)。おまけに異世界転生後はさらに手を付けられなくなり片手片足を失った状態で疾走する、倒したはずなのになぜか存在するなどさながらホラー映画の化け物と化している。しかも思考こそ正常ではないが、用意周到で頭が非常にキレるのでタチが悪い。
その本質は臆病で存在するはずの敵対を都合のいい解釈をして誤魔化し続け、相手と本気で向き合ったことがない。用意周到なのも結局は自分が圧倒的に有利な状況でないと戦えないからである。
というか、最初から兄との子供を産むつもりで、避妊もせずに5年も行為に及んでいるが妊娠することはなかったという。
転生後も引き続き子作りを狙っている。
好きな曲は「アルプス一万尺」の替え歌で、彼女のテーマソングとなっている。
現世での容姿はイラストや漫画版では赤黒い片目の隠れたサイドテールの少女、その瞳は地獄の炎のように赤く輝いている…。漫画版ではホラー漫画じみた描写により、猟奇性に拍車が掛かった。
- 前世の幼馴染み
ジャックの前世での幼馴染の少女。7歳の夏の日に隣に引っ越してきて以来の付き合いで妹にとっても姉のような立場で兄以外で唯一付き合いがあった。ある理由から兄と親しい人間で唯一兄の目の前で妹に殺されていない。
しかし、5年間の監禁生活で心をすり減らしたジャックは彼女の名前を思い出せなくなっている。
- フィリーネ・ポスフォード
ジャックの幼馴染である少女。ヒロインの一人。通称「フィル」。
7歳の時に木から落ちそうになっていた所をジャックに助けられたのが馴初めでジャックを「じーくん」と呼び、彼の妻になるとまで公言しており、純粋な人柄はジャックにとっても心の支えとなっている。
精霊〈バルバトス〉の「無欠の辞書」という動物と意思疎通できる精霊術の使い手。能力は試練の迷宮で召喚された魔物にも有効。精霊術学院では諜報科Aクラスに所属している。
- ラケル
ジャックとフィルの師匠。青髪と巨乳が特徴のエルフ。年齢は100歳以上。(外見年齢は15歳程)。ヒロインの一人。
森で倒れていた所をジャックに救われ、その恩返しとして彼らの師匠となった。
ぼんやりとした雰囲気だが、ジャックに魔鈴さんもかくやというスパルタ修行を課すが、性的な事柄に関してはあまり免疫がなく、おまけに大食いというギャップ萌えする一面を持つ。
盗みを司る精霊〈忠実なる影法師のシャックス〉の「神意の接収」という精霊術の使い手。見て技術を盗むを究極系にした能力で、目にした相手の精霊術を模倣し同時に二つまで使用することができる。弱点は「精霊の止まり木(ルースト)」並みの出力はだせないことと、模倣しただけでは熟練度が低くしっかり鍛えないと使いこなせない。
精霊術学院戦闘科Sクラス
- アゼレア・オースティン
オースティン家侯爵家の次女でヒロインの一人。赤い髪が特徴。
『炎神』と称されたブレンダン・マスグレイヴ八段を開祖とする炎神天照流の門下生で「オースティン家始まって以来の神童」と呼ばれる。その名に恥じない才能の持ち主であると同時にかなりの努力家。自信過剰な性格である一方、性的な事柄に関しては一切耐性がない。
精霊〈アイム〉の「黎明の灯火」の使い手で炎を操る。
- ルビー・バーグソン
ケットシーの少女。
「屑拾いのバーグソン」の異名を取るホゼア・バーグソン八段の門下生で、両親と死別し、スラム街で育った。その境遇ゆえに伝統を重んじる貴族たちからは軽蔑の対象となっている。
実体のある幻覚を操る精霊術「一重の贋界」の使い手。どちらかというと諜報向きの能力なので純粋な戦闘能力は他のメンバーより劣る。
- ガウェイン・マクドネル
竜人族の血を引く少年。デンホルム・バステード九段の門下生で、名のある騎士の家系に生まれた。
12歳とは思えない高校生ほどはあろうかという長身の持ち主で、非常に堅物だが、婦女の守護を旨とする騎士道の体現者であり、普段は軽蔑しているルビーとて例外ではない。
金属を司る精霊ベリトの「不撓の柱石」の使い手。
- エルヴィス=クンツ・ウィンザー
「天才王子」と呼ばれているラエス王国の第3王子。しかし、母親が敗戦国の献上品として嫁いできため侮られている。そのためか、かなり腰の低い性格。
ジャックと同じ「精霊の止まり木」であり、精霊〈傍観する騒乱のパイモン〉の「争乱の王権」という精霊術の使い手。「王眼」という感覚器官によって膨大な情報を知覚することができ、知覚した空気の情報を書き変えて攻撃するのが得意。弱点は無差別に情報が入ってくるため情報量が多くなると集中力が乱れることと、攻撃規模が大きすぎて味方がいる状況ではうかつに攻撃できないなど集団戦に向いていない。
- トゥーラ・クリーズ
ラケルの師匠。精霊術学院の学園長で、年齢はとうに400歳は超えているが、小人族とエルフ族との間に生まれた為、肉体年齢が人間でいう12歳で止まっている。
精霊術師界の最高峰「霊王」の座を30年も守護し続けている最強の精霊術師。精霊〈儚き不滅のフェネクス〉の「清浄の聖歌」の使い手。「精霊の止まり木」であり、本来は音を操る精霊術だがそれを独力で昇華させ、空気の振動を操り衝撃波を放つ、分子振動で炎を放つ、地面を振動させるなど多彩な技を持つ。
側近である老紳士クライヴはなんと彼の夫。
悪霊ギルド
- 悪霊王ビフロンス
悪霊ギルドを率いる正体不明の闇ブローカー。
- アーロン・ブルーイット
悪霊ギルドの幹部。仮面で顔の半分を隠した男性。
精霊〈外なる偶像のモラクス〉の「試練の迷宮」の使い手。迷宮を作り出す精霊術で迷宮内ならこの世界には存在しない魔物を召喚することもできる。
- ベニーとビニー
悪霊ギルドに所属する双子の兄妹。
精霊ナベリウスの「三矢の文殊」の使い手。その能力で生まれながらに精神を共有している。
その他
- 女神
生前に悪行を犯さなかったと判断した主人公を異世界に導いた自称神。
過酷な前世を哀れんだ彼に世界最強クラスの精霊術と裕福な家庭環境を与えた。
明らかに妹の残忍な悪行を知っているにもかかわらず、彼女の転生した異世界に送るなど不可解な点が目立つ。悲劇の上塗りの元凶とも妹の共犯者ともいえるその正体は…
- カラム・リーバー
ジャックの父親。リーバー伯爵家現当主でダイムグルド領の領主。
家族の幸せを願うよき父親である為、早くも精霊術に覚醒した息子のバックアップに心血を注ぐ。かつてはプレイボーイだった様子で妻からは呆れられていた。
- マデリン・リーバー
ジャックの母親。10代後半でジャックを産んだ為、現在はまだ20代前半である。
ジャックの成長を穏やかに見守る母親の鑑ともいうべき人物。
- アネリ
リーバー家の使用人でツインテールが特徴的な少女(メイン画像の人物)。10代前半。
乳児期のジャックの面倒を見ていたが…。
- 川越怜奈
前世でジャックが所属していた部活のマネージャーの少女。
(ジャックを除けば)作中で初めて登場した妹の被害者であり、妹から「兄に惚れていた」という一方的な難癖を付けられて、拷問されて殺された可哀想な娘。(ちなみに拷問内容はコレとコレ。リンク先閲覧注意)
用語
- 精霊術
世界を構成する精霊達をその身に宿すことで行使できる魔法のような物。亜人を含めた全ての人間一人に付き精霊一柱の能力を行使できるが、あくまで一般的な人々が使えるのは精霊の力の一部にしか過ぎず、これを「分霊」と呼ぶ。しかし、この世に72人だけ、精霊の本体「本霊」を宿している「精霊の止まり木(ルースト)」が存在し精霊の力を100パーセント使える。分霊持ちと「精霊の止まり木(ルースト)」の最大の違いは化身(アバター)と呼ばれる精霊本体を実体化させられるかどうか。化身の会話能力の有無は個人差がある。宿る精霊が同じでも発現する能力は宿主によって変わる。
名前は全てソロモン72柱に由来し、作中の「精霊王創世録」ではソロモン王の伝承同様に、精霊王が指輪で彼らを使役していたと語られている。
人間に近い種族の一つ。姿形は我々の想像するエルフの姿そのものである。
しかし、その長命さ故に時間の感覚が常人とは異なり、自分がいつ食事をしたかすらも忘れてしまうらしく、餓死が最大の死因となっている。
この欠点を補う為、人間と婚姻するエルフ族が多い。
北方に住むとされる身長の低い種族で物作りが得意。
エルフとの交配が可能である。
- 王都レイナーディア
精霊術学院の存在する大都会。知性を持つものに優劣を付けないという国教「指輪教」の総本山として知られる。人間をはじめ、ハーフリングやエルフといった人種のるつぼとなっている。しかし、多民族国家の宿命ゆえか、身分による差別やスラム街が存在している。
- 王立精霊術学院
精霊術ギルドが母体となった組織で、精霊術を極めんとする者達の学び舎。
各国から才能溢れた若者が揃っており、入学には推薦状が必要となる。
「戦闘科」や「諜報科」など使用用途に応じた学科が存在し、入学時の試験で好成績を収めたものほど高ランクのクラスに入る事が出来る。
関連リンク
関連タグ
他作品
継母の連れ子が元カノだった:同作者の作品。妹様に削られた精神を回復させる目的で書かれた。そのためこの鬱作品とは温度差がまるで異なり殺人も起きない平和な作品なので安心してほしい。
…こっちはこっちでぶっ飛んでる思考のヒロインがいるが。
無職転生~異世界に行ったら本気出す~:本作に無職転生のオマージュが入っているのは見ればわかるという作者の発言がある。主人公が才能はあるが最強ではない、前世を後悔して自分を鍛えるなどが共通。
ひぐらしのなく頃に:本作がひぐらしの文化的末裔みたいな小説という作者の発言がある。前半で徹底的に主人公を追い込んでラストで逆転する(予定)構成が同じ。
アラフォー賢者の異世界生活日記:こちらは姉が屑で弟の幸せを破壊して寄生するタイプ(弟が農家になった時は生活についていけず猫を被れず逃走)で主人公が神に成り変わった4匹の屑妖精達によって命を奪われて異世界転生した形であるが、賢者のアバターを育てていた為、こちらは屑姉が盗賊→ゾンビ→悪霊となっても返り討ちに出来ている。
吉良吉影:連続猟奇殺人犯。スタンド能力によって死体ごと爆破して証拠隠滅していた。
ヤンデレクイーン:ヤンデレ界の中でもトップクラスとされる我妻由乃の通称。しかし、こちらは彼女なりに恋慕している相手の事を最優先に考えているなどの違いがある。