ロードカナロア
せかいのろーどかなろあ
その速さ、海を渡る。
どれほどのスプリンターが世界の壁に阻まれたことか。
そんな過去を一蹴する圧勝劇だった。
電光石火の末脚は海を渡り、香港を突き抜けた。
龍王の目覚め。それは、新たな伝説の始まりだった。
≪『ヒーロー列伝』No.75≫
龍王の棲むところ
この場所は誰にも
奪われたくないと思った。
頂上からの眺めが
こんなにも美しいものだとは。
明け渡せと迫る声は
すべて撃ち払ってやる。
海の向こうにそびえる山も
いっそ征服してやろう。
聴け、わが咆哮を。
ここは龍王の棲み家なのだ!
≪『名馬の肖像』2017年スプリンターズステークス≫
2010年12月5日の小倉競馬場での新馬戦でデビューし初勝利。
3歳のはじめは善戦が続き、同期のオルフェーヴルがクラシック三冠馬となったが、4月のドラセナ賞を皮切りに、ロードカナロアは短距離オープン戦を順調に勝ち上がり、11月26日のGⅢ京阪杯で重賞初勝利。
古馬になった2012年。
GⅢシルクロードステークスを勝利するも、GⅠ初挑戦となった高松宮記念では、同じく安田厩舎のカレンチャンに敗れて3着に終わり、1200m戦で初めて敗北した。
続く函館スプリントステークス(GⅢ)でも外に持ち出したのが仇となり、2着に終わる。ここで主戦騎手が福永祐一から岩田康誠に代わった。
岩田に代わった初戦のセントウルステークス(GⅡ)も2着だったが、スプリンターズステークスでは、春秋スプリント制覇を狙ったカレンチャンを抑えGⅠ初勝利を飾る。
次に香港で行われた香港スプリントに出走。ここまでの日本馬の成績は前年のカレンチャンが5着に入ったのが最高であり、苦戦が続いていたが、好位から抜け出し、2+1/2馬身差を付け優勝。日本馬による同競走初優勝を成し遂げた。
この活躍が評価され、JRA賞では最優秀短距離馬に選出された。
5歳となった2013年。
阪急杯(GⅢ)を勝利すると、前年勝てなかった高松宮記念を勝ち、GⅠ2勝目を挙げた。
続いて陣営は1600mの安田記念を選択。ここでも勝利し、2階級制覇を達成。
しかし、秋の初戦となるセントウルステークスは58kgの斤量が響いてハクサンムーンの2着となり連勝が5で止まった。
そして負ければ引退の覚悟で臨んだ本番のスプリンターズステークスでは、末脚を発揮し、ハクサンムーンにリベンジ。サクラバクシンオー以来となる、スプリンターズステークス連覇を達成した。
そして、年末の香港スプリントを以て引退することを表明。現地でも1番人気に推された本馬は直線で抜け出すと、1200m戦としては異例の5馬身差を付けて圧勝し、有終の美を飾った。
この勝利はワールドベストレースホースランキングで128ポンドが付けられ、スプリンターとしては25戦全勝で引退したブラックキャビア(130ポンド)に次ぐ2位の評価となった。
そして、2年連続での香港スプリントでの勝利を評価され、2年連続で最優秀短距離馬を受賞。さらには同年に引退したオルフェーヴルを差し置いて年度代表馬にも輝いた。
競走成績は19戦13勝2着5回。連対を外したのは2012年の高松宮記念だけで(それでも3着)、まさに「龍王」と呼ばれるだけの成績を残した。
現役引退後は種牡馬となり、初年度産駒が2015年に誕生。
初年度産駒の中でもアーモンドアイは牝馬三冠を達成しただけでなくジャパンカップでは芝2400mの世界記録を打ち立てる大活躍で2018年の年度代表馬となり、ディープインパクト・ジェンティルドンナ父娘以来2組目の父娘年度代表馬受賞となった。
そして同年には、顕彰馬にも選出された。
アーモンドアイ以外だと、ドバイターフをジャスタウェイに次ぐ1分45秒77のラップタイムで制し、同年天皇賞秋ではサイレンススズカの夢の続きといえるハイペースで駆け抜け、さらに翌年には日本馬初のサウジカップ制覇を成し遂げたパンサラッサが代表的な産駒となっている。
2019年に亡くなったキングカメハメハの後継種牡馬として活躍してはいるのだが、なにせディープインパクトという目の上の瘤が大きく、アーモンドアイの現役ラストイヤーとなった2020年から5年連続でリーディング2位。とくに2023年はそのディープインパクトが陥落する中、同父のドゥラメンテ相手にリードしながらもジャパンC、有馬記念で逆転を喫しリーディングサイアー獲得に失敗。海外の賞金(主にサウジカップ)を含めれば勝っていたのだが、リーディングサイアーは国内の賞金のみでの争い。この年は産駒で国内GⅠ2勝に留まったのに対し、向こうは3冠牝馬リバティアイランドを始め国内GⅠ級6勝。産駒の総数では上回ったが質で押し負ける格好となった。パンサラッサが国内路線だったらば、ファストフォースが下半期も現役だったらば、あるいはブレイディヴェーグが牝馬クラシックに順調に使えていたならば、等々タラレバは山程あるのだが・・・。
すでに死亡しているあちらに対し、ロードカナロアは存命ながらも種付け料の上昇でブレーキがかかりつつあり時間の問題。果たして龍王は種牡馬においても王になれるのか、はたまた2番手の馬のまま終わるのか。この数年は勝負所になるだろう。
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