概要
山根恭平は日本の特撮映画「ゴジラ」(1954年)に登場する古生物学者。演じたのは名バイプレーヤーの志村喬。
登場作品
「ゴジラ」(1954年)
「ゴジラの逆襲」(1955年)
「ゴジラVSデストロイア」(1995年)
人物
日本における古生物学の権威の一人で、性格は生真面目で頑固。
恵美子という娘がいる。大戸島の巨大生物災害で家族を失った新吉という少年を養子として引き取っている(新吉の長男長女が「ゴジラVSデストロイア」にキーパーソンとして登場する→詳細は家族の項を参照)。
南海サルベージの尾形秀人や物理学者の芹沢大助を我が子のように目をかけていた。
「ゴジラ(1954年)」劇中での山根恭平
大戸島で発生した正体の不明の巨大生物に関する事件を受けて「大戸島災害調査団」の一人として恵美子、尾形と共に島に赴き、調査の途中で山の尾根の向こうから現れた巨大生物の存在を確認する。
本土に帰るとその生物を大戸島の伝承に倣ってゴジラと命名し、ゴジラ対策の公聴会で島の家屋を踏み潰したゴジラの足跡に埋まっていたトリロバイト(三葉虫)とそこから検出された高濃度の放射性物質を根拠に「ゴジラは200万年のジュラ紀の生物の生き残り」「ゴジラは度重なる核実験によって住処を追われて出現したと推察される」と説明した。
ゴジラに対しては「貴重な古代生物の生き残り」であり、「核兵器でも死なないゴジラをどうやって殺せるというのか、むしろ核の洗礼を受けてもなおも生き続ける不思議な生命力を研究すべきだ」と考え、「核の脅威その物であるゴジラを野放しにすべきではない」と主張する尾形と意見の相違で対立している。
しかし、ゴジラによる東京の壊滅を目の当たりにした後はそういった発言は見られなくなり、そして芹沢が命を賭して作動させたオキシジェンデストロイヤーによってゴジラが滅びていく様を見届けるが、あのゴジラが最後の一匹とは思えないとし「人類が核実験を続ければ、きっと第二・第三のゴジラが現れるだろう」という新たなゴジラの出現を予見した。
「ゴジラの逆襲(1955年)」劇中での山根恭平
2匹目のゴジラ対策会議にアドバイザーとして登場している。出番はほんのわずかである。
「ゴジラVSデストロイア(1995年)」劇中での山根恭平
演者の志村喬がすでに故人だったためモノクロ写真のみのカメオ出演。
義孫の山根健吉の会話中に登場するにとどまった。
小説「ゴジラ」中での山根恭平
田中友幸が怪奇幻想作家の香山滋に依頼して書かれた原作小説「ゴジラ」の中では描かれ方が異なる。
映画劇中の「世間の評価とは裏腹に世捨て人のように生きる古生物学者」の姿と異なり 小説版ではマッドサイエンティストのように描かれている。
昭和29年国会専門委員会における山根恭平博士の「ゴジラに対する」発言(要約)
- 200万年前ジュラ紀から白亜紀に生息した海生爬虫類から陸上獣類に進化する過程の中間生物であり大戸島の伝承に倣ってこれを「呉爾羅(ゴジラ)」と呼称する。(←ジュラ紀の設定に誤りあり)
- 頭部から推定して50メートルほどの大きさがある。
- 海底洞窟に潜んでいた生物が度重なる水爆実験で安住の地を追いだされたと推測される。
その物的証拠として
- 生物の足跡から200万年前に絶滅したトリロバイト(三葉虫)の発見。
- およびその殻からビフロカタス層の赤粘土に含まれる岩砕を採取。
- その粘土からガイガーカウンターの放射能定量分析によるストロンチウム90の発見。
- これらの中からゴジラに付着していた水爆の放射性物質を多量に発見した。
(出典:増補改訂版「超最新ゴジラ大図鑑」バンダイ刊行192ページより要約)
※ちなみに「200万年前」に関しては、実際には学術的に誤りではある。しかし「200万年前とは、現人類の先祖と言われるアウストラロピテクスが生存していたと思しき時代。原案の香山滋は、『ゴジラとはすなわち人類の原罪であり、ある意味もう一つの人類』というメッセージを込めるため、あえて『200万年前』と設定した」という説もある。
家族
実娘。尾形秀人という結婚前提の交際をしていた恋人がいたが、結ばれることはなかった。演じた河内によると、「死んだ芹沢のことを思いながらひっそりと生きてきた」とのこと(「「ゴジラ(1954)」・「ゴジラVSデストロイア」より)
義息。旧姓は山田。ゴジラ上陸で家族を失って疎開、山根家の養子となる。大戸島の漁師だった政治(ゴジラが大戸島を襲撃した際に死亡)の弟。「vsデストロイア」では再登場の予定だったが演者の鈴木氏と連絡が取れず1954年版から写真のみのカメオ出演となった。(「ゴジラ(1954)」・「ゴジラVSデストロイア」より)
香山滋の小説版では大戸島の出身という点は変わっていないが、劇場版における尾形に相当する役割をほぼ彼が担っており、実質的な主人公として活躍する。
義孫。28歳。民放局のニュースキャスター。物理学者の伊集院研作の酸素に関する研究ミクロオキシゲンがオキシジェンデストロイヤーに結び付くのではと危惧する恵美子の頼みで彼に接触する。(「ゴジラVSデストロイア」より)
義孫。新吉の息子で22歳。ゴジラに関する卒業論文が不真面目とされ東都大学留年中。三枝未希のファンでGサミットに参加する。暴走状態で危険なゴジラとデストロイアを東京で戦わせ、消滅させる作戦を提案する。(「ゴジラVSデストロイア」より)
山根博士の分身たち
志村喬はその後の東宝特撮シリーズでもバイプレーヤーとして活躍した。
山根恭平と同じような科学者・博士・医者などの役回りで登場することが多かった。
- 三大怪獣地球最大の決戦(1964年) - 塚本博士
- 地球防衛軍(1957年)- 安達博士
- モスラ(1961年) - 天野貞勝
- 妖星ゴラス(1962年) - 園田謙介
- フランケンシュタイン対地底怪獣(1965年) - 広島衛戍病院・軍医
- ノストラダムスの大予言(1974年) - 病院長
『怪獣黙示録』の中のキョウヘイ・ヤマネ教授
アニメ版『GODZILLA』の前日単である小説『怪獣黙示録』に登場した戦略生物学教授で、舞台となる世界が異なるため、「ゴジラ」における山根博士とは別人。
西暦2030年に、大戸島に漂着したカメーバの「甲羅が何かに穿たれたかのように抉られ、傷口の周囲の溶解したかのような傷跡」から、「高加速荷電粒子ビームのようなものを放つ能力を持つ怪獣により襲撃された」と結論付け、大戸島に伝わる龍神:呉爾羅の名を取り、ゴジラと命名した。
「荷電粒子ビームを放つことができる生物など、それまでの常識の範疇では考えられなかったため、結論を出したヤマネ教授自身も困惑の色を隠せなかったのではないか」と証言者は語っている。
これ以降の動向については語られていない。
関連商品
2024年1月発売
メディコム・トイ社製 安楽安作劇場「ゴジラ(1954)山根博士説明資料版」
山根博士が国会で行った映写機をつかった説明に出てくる、イラストと写真の合成画像のゴジラを26センチ高のソフトビニール人形として商品化。山(丘)が付属する。