概要
空間鉄道警備隊(英名:Space Defence Force)は松本零士原作のアニメ「銀河鉄道物語」に登場する銀河鉄道株式会社に属する組織であり、同社の運営する空間鉄道網の安全を担う保安部隊である。通称は「SDF」。
業務内容はおおよそ日本の鉄道警察隊を思い浮かべていただければいいが、作品の部隊が宇宙空間であるため、列車・ステーションの流星群からの防衛、各国要人の特別列車の護衛、さらには有事においては星間国家間紛争への介入や侵略勢力との交戦など対応する案件の規模がデカい。なお、警察隷下である鉄道警察隊に対し、SDFは銀河鉄道株式会社が独自に運営する私設部隊なので、より詳しくみると、国鉄時代の鉄道公安職員が近いかもしれない...が、保有する火器は一般的な警察のそれを遥かに超えているため、実態としては警備隊というより銀河鉄道株式会社の私設軍隊とも言える規模である。
組織形態
銀河鉄道の運行・安全を総括する管理局直属の部隊であり、「始発駅」たる惑星ディスティニーに司令部がある。SDF司令である藤堂司令の下、001~099の合計99編成の車両とおよそ90の小隊(※1)により運営されている。有事には管理局のオペレーターに通報が入り、それを受けて藤堂司令が警報および出動命令を発令。オペレーターを介して出動命令の下った小隊に通達がなされ、命令を受けた小隊は即座に出動する。
複数の銀河を連絡するほどの規模(※2)の空間鉄道網を100に満たない小隊でカバーする性質上、所属する小隊の練度は高く、場合によっては小隊ごとに戦艦級の火砲が装備されている。これは、銀河鉄道自体の運営方針として銀河鉄道の運行スケジュールを守るため、場合によっては星間国家であろうと対峙することがあるため。特にアルフォート星団帝国との戦いを経た後は、同戦争でもたらされたコスモマトリクスシステムを複数の車両に配備するなど、有事への対応力を強化している。
どの星間国家・勢力からも独立した銀河鉄道株式会社直属の部隊であるため、迅速な部隊展開や中立的な行動を行えるが、それは同時に管理局や銀河鉄道株式会社上層部の決定には抗えないという弱点にもなっており、同じく管理局に属する特務情報部などの妨害を受けたり、上層部からの決定に従わざるを得ない事件が生じることもある(※3)。
一方で、少ない戦力で広大な運行区間をカバーする組織ではあるが福利厚生の方はしっかりしており、シリウス・スピカ・ベガのエース級の3小隊が合同で慰安旅行に繰り出すことを許可したり、事態収拾後に小隊メンバーの家族のいる惑星の近くにいた場合にはディスティニーへの帰還前に寄り道すること許したりと結構人情味のある組織でもある。ただし、休暇中であろうと即応できる(列車がそこにある&メンバーがそのまま同乗している)状態ならば休暇中であろうと即座に呼び戻される場合もある(その被害を一番受けたのは多分この人)。
- ※1:暫定推測。車両は99編成だが、一部の小隊は支援車両として複数編成を所有しているため、小隊の総数は99には及ばないと思われるため
- ※2:設定では地球のある銀河系に加え、アンドロメダ銀河、マゼラン星雲まで路線を拡大しているため、少なくとも250万光年クラスの運行区間がある。
- ※3:その最たるものが2期で描かれた「ブルーローズ事件」と「惑星エウメネスの悲劇」である。
- ブルーローズ事件:美しい青い薔薇が咲き誇る惑星を舞台にした事件で、惑星を治めるブルーローズ伯爵夫人は当初銀河鉄道の駅の建設に難色を示していたが、あくまで乗降なしの一時停車駅であることを条件に駅の建設を承諾。だが、列車事故による周囲の汚染や、薔薇の美しさに目の眩んだ乗客による勝手な下車や薔薇の盗難、そしてこれに対する夫人の抗議を銀河鉄道側が無視したことにより、我慢の限界を迎えた伯爵夫人は青薔薇の生息地を荒らす乗客を襲撃。これを受けて有紀渉以下シリウス小隊の面々が出動し、管理局の命令による伯爵夫人を「殺害」するという悲劇が起きる。この一件は渉やバルジ、当時同小隊所属だったローレンス(のちのケフェウス小隊長)の間に深い傷を残すこととなった。
- 惑星エウメネスの悲劇:一隻の宇宙船が銀河鉄道の軌道に接近、管理局の警告も虚しくその宇宙船と銀河鉄道の列車が衝突事故を起こしてしまう。運転手1名が死亡、乗客にも多数の負傷者が出たことから列車は最寄りの開拓惑星エウメネスへと着陸し、現地の住民の手当を受ける。だが、衝突した宇宙船には致死率の高いウイルスが封じられており、それに感染した乗員・乗客およびエウメネスの住人は次々に発症。衝突した宇宙船の保有企業側も対抗策を有していなかったため、銀河鉄道管理局は惑星エウメネスの放棄を決定。シリウス小隊隊員たちの抗議も虚しく、同惑星の住民が全て死亡したことを確認すると気化爆薬を惑星全体に浸透させ、惑星表面全体を焼却するという非情な作戦を実行した。いくらバイオハザードを封じ込めるためとはいえ、一企業の私設部隊がただそこにいただけの開拓民ごと「滅菌」したという点で銀河鉄道の非情さを端的に表した事件である。
所属部隊
001~099までの全99車両を有する。小隊名は恒星の名前から付けられているのが特徴。(一部例外あり)
シリウス小隊
名前の由来:おおいぬ座の一等星シリウス(太陽を除き最も明るい恒星)
部隊章:おおいぬ座+黒い犬の横顔
制服の色:紺(TVアニメ1期)→黒(TVアニメ2期〜)
専用列車:001ビッグワン
シリーズにおいて主役的な役割を果たす小隊。専用列車に001のトップナンバーをいただくことからも分かるように、SDFの中でもトップクラスのエース級部隊である。自然災害による立ち往生、ハイジャック、バイオハザード、爆破テロ、要人警護、避難民護衛などありとあらゆる任務に対応しており、対星間国家の有事にも対応できる火力を持つコスモマトリクス砲を装備するなど装備面でも抜きん出た性能を誇る。
なお、専用列車であるビッグワンは、有紀渉とともに特攻した際に一度失われるも再建され、その後アルフォート軍との戦いで大破したため、外見を大幅にリニューアル&先頭車両にコスモマトリクス砲の専用機構を装備する形で再建された。
(左:〜アルフォート戦時 / 右:アルフォート戦後)
スピカ小隊
部隊章:乙女座+乙女の全身像
制服の色:赤
専用列車:034フレイムスワロー
シリーズでシリウス小隊と行動を共にすることの多い小隊。電子情報戦に特化しており、有事には適正力の情報分析や飛来する物体の衝突ルートの解析などで活躍する。一方で戦闘力はそれほど高くなく、アニメ1期ではアルフォート軍との衝突で列車を放棄せざるを得ない状態になったこともあった。その後、車両は再建されたうえでビッグワン同様コスモマトリクス砲を装備し大幅な戦力の増強が施された。ちなみにフレイムスワローはSDF車両の量産計画「プロメテウス計画」で生産された車両なので、リゲル小隊のブルーギャリスンと外見がよく似ている。
なお、小隊名に違わず隊長であるジュリア以下全員が女性である。また、特務情報部の陰謀でシリウス小隊が一時解散された際にはルイが所属していた。
ベガ小隊
制服の色:緑
専用列車:042アイアンベルガー
1期においてシリウス・スピカ両小隊と共に行動することが多かった小隊。ビッグワンより二回りほど巨大かつ重武装な専用列車アイアンベルガーを運用し、主に宇宙海賊や障害排除を得意とする肉体派部隊。自称「宇宙一の猛者」。ペンシルバニア鉄道S1型蒸気機関車を模した先頭車両にはカバーに収納された巨大砲塔、客車部分には3両に分割収納された巨大主砲「素粒子砲」を装備、さらには状況に応じて巨大列車砲「グスタフ」(80cm列車砲の片割れの名前がついているが、デザインはカール自走臼砲に近い)を連結し、現場では鬼神のような働きをみせる。
だが、アルフォート軍の圧倒的な攻勢を前に苦戦を強いられ、最期はシリウス小隊のマシントラブル解決の時間稼ぎのため出力70%の状態で出撃し備砲の一斉掃射によりアルフォート艦隊の多数を撃沈する大戦果をあげるも残存戦力に即座に反撃され、アイアンベルガーは爆沈、村瀬隊長以下隊員全員が殉職した。
ケフェウス小隊
名前の由来:ケフェウス座δ星(「宇宙の灯台」とも呼ばれる基準となる恒星)
部隊章:ケフェウス座+ケフェウス
制服の色:白
専用列車:002飛龍
2期においてアルフォート戦役で全滅したベガ小隊の穴を埋める形で結成されたエリート部隊。隊長が規律・規範・論理を第一とするガイ・ローレンスであるためか、隊員全員が機械のように冷徹で人間味が薄い...と公式設定では説明されているが、実際のところはオフでは結構はっちゃけていたりする(ジャン:ツッコミ役兼ガヤ、キム:ギャンブラーかつ結構軟派、コーニー:自分の体型を気にしている&プロ顔負けの料理上手&ベガ小隊の隊員と恋仲だった)。
新造された車両のためかビッグワン同様にコスモマトリクス砲を先頭車両に装備している。なお、星の名前が付けられているSDF各小隊にあって、珍しく星座名がついている小隊。これは名前の由来がケフェウス座のδ星(慣用名を持たない)であるためと考えられる。
それ以外の小隊・車両
- 009スーパーアンビュランス
- その名前の通りの救急医療車両。SDF各小隊とともに出動し現場での応急処置などを行う。2期でも惑星エウメネスでのバイオハザードに対応すべく出動したが、現地では車両の消毒などを優先し住民にも高圧的に接するなどお世辞にも医療に関わる者のあるべき姿とは言えない醜態を晒した。
- アルファード小隊
- デネブ小隊
- カストル小隊
- リゲル小隊
- ツバン小隊
- アンタレス小隊
- アルゴル小隊
- エルシェマリ小隊
- 名前の由来:てんびん座のβ星ズベンエスシャマリ?
- 専用列車:035リブガンランナー
- 設定のみ語られる小隊であり、専用車両のデザインも不明。
- アクルウルス小隊
- 名前の由来:南十字星のα星アクルックス(星座名がそのまま車両名になっている)
- 専用列車:046サウザンクロス
- アップルガードともども「C計画」で建造された量産型車両を保有する小隊。実は現SDF司令である藤堂が隊長を務め、ジュリアと村瀬は当時の隊員だったという名誉ある小隊でもある。その割にはあまり華々しい活躍はできておらず、偽ビッグワン討伐戦では主砲である450mmコスモブラスターを放つも敵の強靭なシールドに阻まれダメージを与えられなかった。
- 087囚人護送列車
- 名前の通り、凶悪犯などを刑務所惑星に護送するための特別列車。先頭車両のデザインなどが一部銀河鉄道999映画第二作に登場した幽霊列車によく似ている。
- アルビレオ小隊
- フォーマルハウト小隊
- 名前の由来:みなみのうお座のα星フォーマルハウト
- 専用車両:098グレートマザー(※4)
- 設定のみで登場したことがない。
- ミザール小隊
- 専用列車:098シルバーベア(※4)
- ドラマCD「最果ての天使アンジェラ」に登場、同作の主役小隊でもある。辺境の惑星ザイボルに駐屯する小隊で、例外的に惑星ディスティニー所属ではない。SDF内では完全に左遷先扱いであり、小隊をシュミット三姉妹に牛耳られていることもあり、歴代隊長は3ヶ月と経たずに追い出されていった過去がある。なお、シルバーベアはシュミット三姉妹の末っ子ローラの趣味で魔改造されている。
- 偽ビッグワン
- 巨大軍需企業「ヘッケラー社」が藤堂司令用の専用車両として開発した新型戦闘車両。だが製造された車両が傭兵崩れの盗賊ジャック・ブルームに盗み出されたため、SDFの総力を上げて捜索されることに。アルフォート戦役で重要な役割を演じたビッグワンをモデルを造られたため外見的にも似ているところがある(襲撃を受けた列車の乗員・乗客が救助に来た本物のビッグワンを見て錯乱するレベル)が、性能はさらに向上しており、一度はビッグワンや飛龍を完膚なきまで叩きのめす。だが、飛龍を取り逃したことで手の内がバレ、さらに松本作品における大鉄則「やっぱり最後はマンパワー」に則り、熟練した手腕と連携を誇るシリウス小隊隊員の手で操縦されるビッグワンには到底及ばず、デイビッドの曲芸飛行で全弾を回避うえに学の精密射撃によりシールドが大破。主砲を再充填して反撃しようと後退するもビッグワンのコスモマトリクス砲をまともに食らい、消滅した。なお、ブルームに盗み出されたのはヘッケラー社とブルームの間でなされていた秘密契約に則ったもので、ブルームに実地試験として暴れてもらう予定だった様子。さらにこの一件には銀河鉄道の上層部が関与していたようで...?
- ※4:公式にて番号が重複。シルバーベアの方が後発であり、グレートマザーが設定のみの存在から、シルバーベアの方が正式な098と思われる。
空間装甲擲弾兵
空間鉄道警備隊の中でも特に優秀な隊員のみが所属を許される特殊部隊。学の兄である護も一時期在籍していた。通称「SPG」。
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