「お前たち『ショッカー』の野望を打ち砕き」
「人類の平和を守るため」
「大自然が遣わした正義の使者」
「『仮面ライダー』」
最初に
石ノ森章太郎氏は晩年に「萬画宣言」を出しており、正確には本タグも『仮面ライダー(萬画)』とすべきなのだろうが、ここでは表記しやすさや一般的な普及率を鑑みて「漫画」と表記させていただく。以降、気に入らない方は脳内で「漫」の字を「萬」に変換していただきたい。
概要
漫画の王様・石ノ森章太郎が1970年から講談社の「週刊ぼくらマガジン」に連載したSF漫画。同誌の廃刊に伴い、1971年に「週刊少年マガジン」に移籍した。現在では中央公論社や秋田書店から単行本が発売されている。
本作はよく「原作版」と書かれたりするが、TV版とは内容が異なるパラレルな世界観であり、TVと漫画は同時並行して作成されたためどちらも原作ではない。いわばメディアミックスの一環なのだ。
連載当時の世情を反映し、環境問題などにも触れられている。仮面ライダー1号の冒頭の発言にもある通り、「自然」対「文明」の戦いの縮図とも取れる作品になっている。諌山陽太郎の『漫画・特撮ヒーローの倫理学』(鳥影社・2006年)では、「『文明』対『自然』の対決を描いた『ウルトラマン』とは対になる作品であり、ショッカーとは『悪』の『こころ』を持った科学特捜隊に他ならないのだ」と考察されていた。この後も石ノ森作品では環境問題に関する風刺が登場することが多い。
本作では中盤にて本郷猛が死亡するという衝撃的な展開となり、一文字隼人に主役がバトンタッチされることとなる。
なお、映画『仮面ライダーTheFirst』の原作はTV版ではなく本作である。
仮面ライダーのデザイン
漫画版のライダーはTV版のスーツよりも触覚が太いのが特徴で、胸板もかなり分厚く大きい。仮面ライダー1号=本郷猛は感情を表に出すと顔に手術痕が現れるため、それを隠すために仮面を着用するという設定になっていた。
「いまは『これ』が…『おれの顔』なんだ…! 『本郷猛』の仮面をかぶった…!」(ライダーの仮面をかぶった直後の本郷の台詞)
登場人物
仮面ライダーの協力者たち
- 本郷猛:原作とあまり変わらないが藤岡弘、の超濃い顔をイメージして紙面を開くとそのイケメンさに面食らう。
- 一文字隼人:元はショッカーライダーの一員だったが頭に傷を負ったことで記憶を取り戻し、ショッカーライダーを倒して自らが死んだ本郷の後を継ぎ「仮面ライダー2号」となった。「てめぇはその泡でも被ってろ! 臭いからな!」「イエース仮面ライダーだ!」「天麩羅にでもなってやがれ!」など、台詞が一々平成ライダーっぽい。
- 緑川ルリ子:本郷猛の恩師、緑川博士の娘。本郷が緑川博士を殺したと勘違いしてしまう。頭に傷を負った一文字を助け出し、彼を蘇生させたため、ぶっちゃけこの人がいなければ地球はショッカーの物になっていた。
- 緑川博士:本郷の恩師。生体科学の研究の第一人者であり、ショッカーに拉致されて改造人間手術に無理矢理協力させられていた。本郷と共に脱走するが蜘蛛男に絞殺される。
- 立花藤兵衛:本郷家に仕える老執事。剣道の有段者。猛を「坊ちゃま」と呼び、猛からは「藤兵衛」と呼び捨てにされている。後にテレビマガジンにて石ノ森氏が連載した漫画版『仮面ライダーアマゾン』にも登場する。
- 滝二郎:ショッカーの犯罪を捜査するFBI捜査官。光線銃を使いこなす。勿論滝和也がモデル。
ショッカー
- 蜘蛛男:最初の怪人。腕が4本もある。
- 蝙蝠男:TV版よりずっとコウモリっぽい外見で、背中に翼を生やしている。
- コブラ男:TV版よりずっとコブラっぽい外見で、改造手術前から蛇姫と付き合っているリア獣。
- 蛇姫メドウサ:漫画オリジナル怪人。全身タイツに頭から機械の蛇が生えた女性の姿をしている。頭からは毒針やビームを発射する。
- うつぼ男:1号ライダーに負けた蜘蛛男を回収した怪人。『仮面ライダーオーズ』1000回記念エピソードにカメオ出演した。
- 蜂女:空気。
- ショッカー戦闘員:TV版に輪をかけてダサい。上官の怪人ごとに衣装が異なる。
- ショッカーライダー:本郷を始末するために創り出された12人のバッタ型改造人間。一撃でライダーを倒すほどの威力の光線銃で武装している。
- ビッグマシン:ショッカーの日本征服作戦「10月計画」の総指揮を行っていた怪人。機械を狂わせる超音波を放つ能力を有する。
- ショッカー首領:ショッカーの支配者。部下からはただ単に「ボス」、あるいは「ゴットショッカー」と呼ばれている。基本冷酷な性格ではあるが、改造人間自体が貴重(莫大な金がかかっているのだぞ、などと言っている)である為、寛大な処置を施すことが多い大物。十面鬼ゴルゴスは彼の爪の垢を煎じて飲むべきだ。なお、TV版同様声のみで怪人や配下の者たちに指令を下しており、作品自体も途中で終わってしまった為、後に仮面ライダーEVEで語られるまでは、その正体は謎に包まれていた。
派生作品
石ノ森章太郎氏は講談社の幼年雑誌『たのしい幼稚園』でも初代ライダーのコミカライズを書き下ろしている。
小説作品『仮面ライダーEVE』はTV版ではなく本作から繋がる世界観となっている。
のちのオマージュ
- 『仮面ライダーSPIRITS』:ストロンガーとコマンダー軍団との戦いが、「雨の中」「正義のライダーと悪のライダー12人が戦い」「悪のライダーの一人は正義の心を取り戻す」という本作に酷似した展開になっている。
- 『仮面ライダー龍騎』:13人の仮面ライダーのバトルロワイヤル。
- 『仮面ライダーオーズ』:鴻上ファウンデーションの製作した映画「仮面ライダーオーズ対ショッカー」に漫画版(並びにそれを原作とした「仮面ライダーTheFirst」)の要素が多く取り入れられている。
- 『スーパーヒーロー大戦』:ビッグマシンという名前の巨大ロボが登場。
- 『仮面ライダードライブ』:下級ロイミュードのモチーフがそれぞれ蜘蛛、蝙蝠、コブラになっている。
関連項目
仮面ライダー3号:前述した「たのしい幼稚園」版に登場するキャラ。後にスーパーヒーロー大戦GPに登場する。