概要
総合出版社『朝日新聞出版』が刊行する児童向け学習漫画の1つ。作画担当はトリル。
キャッチコピーは「トイレの扉を開けるとそこは戦国時代だった!?」。
構成
韓国の教育出版社『아이세움』(アイセウム)が発刊した一大学習漫画シリーズ『살아남기』(サラナムギ=生き残る)の日本語訳版『かがくるBOOK 科学漫画サバイバルシリーズ』の好評を受け、テーマを日本史に置き換えた朝日新聞出版独自の姉妹編『日本史BOOK 歴史漫画サバイバルシリーズ』のうち戦国時代にスポットを当てた作品。全1巻。
ひょんな事から群雄割拠の真っ只中にある戦国時代に迷い込む羽目になった小学生3人が、木下藤吉郎の力を借りながら現代に帰る方法を探し歩く中で織田信長や武田信玄との出会いを重ね、おぼろげにしか知らない戦国時代の何たるかをその身を以って実体験する。
『桶狭間の戦い』の少し前(1555年頃)から『山崎の戦い』の開戦直後(1582年)までを舞台としているが、途中で遭遇する約30年のタイムワープが前後編の大きな区切りとなっており、研究成果の充実から更なる真相に迫った時代考証に基づく幕間ページはいかにも学習教材の体裁を保っている一方、本編の内容は歴史の大筋にこそ沿ってはいるものの大胆な脚色に終止し、本家であるサラナムギシリーズ同様に児童好みのストレートな下ネタを随所に絡めたドタバタギャグ漫画の傾向が強い。
登場人物
主人公
- リュウ
主人公その1。
底無しの元気と明るさが取り柄だがデリカシーに欠け、気の赴くままに先走っては何かと騒動を巻き起こすトラブルメーカー。『戦国バトル』(作中に登場する架空のテレビゲーム)を通じて知った信長に強く憧れている一方、歴史の知識は全く備えていない。
- ジュン
主人公その2。
現代に迷い込んだ藤吉郎と最初に出会った物語のキーパーソン。おおまかな歴史の知識を活用して冷静な行動を心掛ける3人組の知恵袋だが、時には真顔で「ポルトガルでは『こんにちは』を『ネコダイスキ』と言います」と大胆な嘘を吐く事もある。
- カノン
主人公その3。
3人組の紅一点にしてリーダー的存在。成績は良いが歴史を苦手としており、知識はそこそこ。見た目に反して腕っ節が強い上、いざピンチを迎えると忍者顔負けの運動能力を発揮する。
戦国武将
- 木下藤吉郎
とある合戦の折、危機に瀕して目に止まった納屋に飛び込んだまでは良かったが、何らかの原因によって生じた時空の歪みの影響で現代に迷い込んでしまった。リュウたちが甲府でタイムワープを経て再会した時には羽柴秀吉と名を改め、江州長浜城を居城とする戦国大名に出世していた。
- 織田信長
信玄を始め今川義元、斎藤道三など列強に囲まれる尾張の地から天下統一の壮大な夢に向かって邁進し、戦に明け暮れる猛将。藤吉郎曰く「ちょっとでも怒らせたら首が飛ぶ」という苛烈な性格に見合った剣術の腕を持つが、珍しい物には目が無い。
- 武田信玄
甲州躑躅ヶ崎館の主。
強大な勢力を誇る大名の1人でありながら「天下は望んで手に入るものではなく、それよりも国を豊かにするほうが先決」の長期的計画を忠実に実行している。自身が定めた国法『甲州法度之次第』(こうしゅうはっとのしだい)の素晴らしさと他に類を見ない『京間六帖敷閑所』(きょうまろくじょうじきかんじょ=京間造り六畳一間の水洗式便所)が自慢の種。
新たに信長に仕えた智将。
藤吉郎がリュウたちを連れて毛利征伐に向かった最中、本能寺で謀反を起こす(本能寺の変)。
その他
藤吉郎の妻。
戦国時代に迷い込んだリュウたちを理由も聞かず快く迎え入れる優しい心の持ち主であり、大名となってなお信長に叱られてばかりの藤吉郎を陰から支える才女。
- 佐助
織田家忍者隊に所属する少年忍者。
リュウたちとさほど変わらない年頃の少年だが、信長が直接の拝謁を許している数少ない腕利きの1人であり、甲府入り以降はリュウたちの保護者として同行を続ける。
- お頭
織田家忍者隊の頭領。
分身の術を始め、風を呼び起こして竜巻と共に大量の木の葉を巻き上げる忍法「木の葉の舞」を使う相当の実力者。
甲府に渡ったリュウたちを襲った盗賊団の首領。
武田家の強さの秘密である金山の内情に詳しく、実際に何度も金を盗み出したその技術と知識を買った信玄の一存で盗賊団もろとも素破(すっぱ=諜報任務を主とする忍者)として雇われる運びとなった。
余談
ベストセラー
2016年3月30日の発刊から瞬く間に初版3万部を売り切り、1巻完結形式の学習漫画史上において需要に対する増版がまるで追い付かない状態が続くという異様な売れ行きを展開し、わずか半年以内で7刷10万部に達して以降も記録更新中。
ただし、この爆発的人気には特徴的な購買層分布が表れており、本来の購読対象年齢である小学生に匹敵する割合で20~30代成人が主力購読層を占めている実情がある。つまり、『斬新で魅力的な学習漫画』であると共に『秀逸で闊達な健全ショタ漫画』という特色を見出した成人購読者の多さが大きく起因しており、pixiv上に存在する投稿作品とその傾向を見れば想像に難くない。
この流れについて、作者曰く「小学34年生が対象年齢の『戦国時代のサバイバル』をよろしくお願いします」と軽妙なジョークを披露している。
おまけ問題
発刊を契機として日を追う毎に増えるファンとの交流が加速化する中、今なお続く強力な人気の後押しへの返礼を兼ねた個人活動として特製のアクリルキーホルダー4種を制作し、一部関係者への贈答用を除いて通信販売を行った所、これもまた大変な盛況を見せた。
それと言うのも、「1つずつの単品購入も可能だが全4種の一括購入者には何かおまけが付随する」という特典を加味した点が大きく、受付が始まるや熱烈なファンからの注文が殺到して商品本体よりもおまけの在庫が先に尽きてしまう事態に陥り、あっという間に一括購入コースはおまけの追加製造待ちのために一時差し止めとなってしまい、代替措置として「単品購入コースでキーホルダー全4種を注文した者は一括購入者と同じ扱いとする」という見なしを採択して引き続き注文予約を受け付けた。
ところが、ようやく新たな在庫が到着して販売再開に漕ぎ着けたかと思いきや、本人の談を要約すると「おまけの1つとして封入した小冊子が欲しいと頼み込む編集部の関係者に渡したら会社で会議にかけられて偉い人から発禁を喰らった」という事態に発展し、予約者を含む第2期購入者に向けて「おまけは缶バッジのみとなりました」とする仕様変更が通知されるに至った。
第1期購入者の多くは、喜びの声と共にキーホルダーとその特典内容を収めた写真を各所で掲載しており、これを目にして食指が動いた第2期購入者の一部はこの特典削減の事実と経緯に愕然とし、一括購入コースで逸早く商品を買い求めた指折り数えるほどの第1期購入者は二度と出回らない完全版を入手する幸運に恵まれた天地の差が付くほどの結果となってしまった。
ただし、賢明な記事読者であればこの流れについて「同じく朝日新聞出版が刊行する『落第忍者乱太郎』やそれを基にした『忍たま乱太郎』の成年向け同人誌は咎めないのか」「そもそも同人レベルの個人誌に対して出版社の裁量で発禁命令を下すのは強権行為ではないか」という至極当然な疑問に辿り着き、ひいては『出版社による一個人に対する同人活動の否定』に繋がる大問題と捉えるには充分である。
※実際に出版社が発禁処分に踏み切った同人誌問題の代表例に『ドラえもん最終話同人誌問題』が挙げられ、この時は小学館が同人誌筆者に対して「原作者である藤子・F・不二雄が作り上げた世界観の歪曲に繋がる著作権侵害」を通告し、これを真摯に受けた筆者が謝罪に併せて在庫の完全廃棄処分、謝罪文と誓約書の提出、さらに売上の一部を藤子プロに支払う事で和解成立となった。
しかし、これはあくまでも問題視された同人誌の流布を出版社権限によって断絶すべき複数の要因が絡み合った極めて特異な例であり、通告の中心人物となった知的財産管理課長の大亀哲郎(だいき てつろう)曰く「今回はやりすぎだが、節度あるルールが守られている以上、(漫画文化のすそ野としての)同人誌そのものを全否定はしない」と述べ、原作を毀損しない範囲内での同人活動の在り方には肯定の意思を示唆している。