概要
明確な基準はないが、生前・没後にわたって大きな影響をもった近代~昭和戦前戦後の小説家を呼ぶことが多い。
そのため、現代作家、または近世以前の作家、あるいは生前・没後いずれかで有名でない作家、小説での功績が少ない作家は、あまり「文豪」と呼ばれない。ただ、考え方には差が大きく、特に卓越した数人しか認めない人もいれば、著名な文学者に対する一種の敬称のように用いられている場合もある。
おおよそ文豪と呼ばれている人たち(日本)
日本の近代文学の黎明期に活躍した二葉亭四迷、紅露時代と並び称された尾崎紅葉・幸田露伴、
文壇の主流となった自然主義では島崎藤村・国木田独歩・田山花袋・徳田秋声・正宗白鳥・岩野泡鳴、
反自然主義文学では「高踏派」の森鴎外、「余裕派」の夏目漱石、
同様に反自然主義的スタンスをとった「耽美派」の谷崎潤一郎、永井荷風、
江戸文芸の伝統を継いで独特の物語世界を築き上げたロマン派の泉鏡花、社会派の徳冨蘆花、
人道主義を掲げた「白樺派」の有島武郎・武者小路実篤・志賀直哉・里見弴ら、
明治・大正期に短編小説で活躍した「新芸術主義」の芥川龍之介、菊池寛、詩人としても名高い室生犀星、佐藤春夫、
昭和の戦前・戦後にまたがって活躍した芸術派のうち「新感覚派」の川端康成、横光利一を筆頭に「新興芸術派」の井伏鱒二、梶井基次郎、「新心理主義」の堀辰雄と伊藤整、「無頼派」(新戯作派)から始まった太宰治、坂口安吾、織田作之助など
「第一次戦後派」の野間宏、椎名麟三、武田泰淳らを経て「第二次戦後派」の三島由紀夫、大岡昇平、安部公房、堀田善衛らを最後に、文豪と呼ばれる作家の系譜は途絶える。彼らに続いて現れた島尾敏雄や芥川賞がきっかけで大きく名が売れ始めた安岡章太郎、吉行淳之介、遠藤周作、小島信夫、庄野潤三などの「第三の新人」、そして昭和30年代にデビューした大江健三郎・開高健・北杜夫らと村上春樹、村上龍などそれ以降の作家は純文学と大衆小説との境目が曖昧になっていった(大衆小説作家でも文学賞受賞例が多くなったことから)ことで文豪と呼ばれることはなくなった。
なお、文豪の定義に歴史小説や詩も含めるならば江戸川乱歩、北原白秋、萩原朔太郎、横溝正史、山本周五郎、吉川英治、井上靖、場合によっては司馬遼太郎、大佛次郎、池波正太郎などの時代小説作家らも挙げられうる。一方、政治色が強い小林多喜二、徳永直、葉山嘉樹などのプロレタリア文学作家、火野葦平などの国策文学作家、石坂洋次郎、石川達三などの大衆文芸や通俗小説作家、または松本清張、夢野久作などの推理小説作家、小松左京や星新一などのSF小説作家、宮沢賢治や新美南吉などの児童小説作家を含むことはなく、一つの基準として純文学に精通した人物が採り上げられることが多い。
ちなみに「文豪」としてイメージされるのは概ね男性作家であり、高名な近代文学者であっても樋口一葉、与謝野晶子や野上弥生子、宇野千代などの女性作家が含まれることは少ない。
余談
村上春樹は日本の文豪10人を挙げている(実際は9人しか思いつかなかった。あるいは10人目は自分であることを仄めかしているとも)。夏目漱石、芥川龍之介、森鴎外、島崎藤村、太宰治、谷崎潤一郎、志賀直哉、川端康成、三島由紀夫の9人である。
日本電気(NEC)が開発したワープロ専用機に「文豪」という機種があったが、上記の安部公房はこの機種(及び前身のNWP-10N)の開発に携わっており、遺作も同機のフロッピーディスクから見つかった。
関連作品
タイトルに「文豪」を含む作品
- 文豪とアルケミスト:DMM.comのブラウザゲーム。錬金術によって転生した著名な文学者が文学を守る為に戦うゲーム。略称「文アル」。各小説家の作品に触れていたりもするが、文壇の人間関係に軸を置いたものである。実は新潮社や講談社など大手出版社も協力していたりするなど、今までのように名前を借りただけのものとは違っており、バックボーンなども考え込まれているものである。
- 文豪ストレイドッグス:朝霧カフカ原作の漫画。著名な文学者の名前とその作品名を借りた超能力バトルもの。実在した文豪とはほぼ無関係。略称「文スト」。
- 文豪シリーズ:ドラマCD。天国にいる文豪たちを描いたコメディ。
- 文豪失格:「文豪シリーズ」を原作とした漫画。
検索のヒント
上記のように「文豪」を冠した作品が多いので、それらを除外したい場合は完全一致検索やマイナス検索を活用するとよい。
また、上記4作品には実在した文豪と同名のキャラクターが登場するため、実在した文豪について検索する場合も同様。
逆に、作品を投稿する方々には、作品タグや棲み分けタグを適切につけるよう、お願いします。
その他関連作品
ラヴヘブン:タイトルに文豪が含まれない作品だが、文豪と同姓同名の人物が登場する。こちらにも作品名が追加されているタグで投稿するのが望ましい。
仮面ライダーセイバー:「文豪にして剣豪」がコンセプトの作品。