概要
コウチュウ目(鞘翅目)に分類される昆虫のこと。
成虫は名前の通り全身が甲冑に覆われるような虫。本体のほとんどの外骨格だけでなく、前翅まで硬くなるのが特徴。甲虫のこのような前翅は鞘翅(しょうし)・エリトラ(elytra)という。これは普段では左右密着しながら中胸から腹部末端までピッタリ覆い被さるため、甲虫の背面は頭・前胸・前翅の3パーツだけ見えるようになる(ハネカクシなど前翅が短く腹部がはみ出す種類もいる)。
飛翔用の後翅は、普段では前翅の下に折り畳まれる(退化して飛べない種類もいる)。
似たような特徴はカメムシにも見られるが、そっちは針のような口と硬化が不完全(後半が半透明)な前翅で甲虫から区別できる。
全身が硬くて防御力が高いが、多くが前翅に覆われる腹部背面だけ柔らかかい。ほとんどの種類は飛んでいる際に前翅がぱかっと開くため、これが鳥などの天敵が狙う弱点となる。腹部だけなくなった甲虫がしばしば見えるのはこれが原因である(ハナムグリのようにこの弱点を克服し、前翅を開かなくても支障なく後翅を出して飛行する種類もいる)。
幼虫はワーム状だが、芋虫のような腹脚はなく、また蛆とは異なり胸部の脚を持つ。コガネムシ科やクワガタムシなどの幼虫は、いわゆる地虫である。
蛹は昆虫として典型的で、白くて柔らかく、翅や脚などが露出して成虫の形がよく分かる。無防備のため多くが繭に保護される(テントウムシのように繭を作らない例外もいる)。
非常に種数が多く、多様である。2017年時点で分かっているだけで36万種(全昆虫の1/3以上、全動物の1/4以上!)も存在し、地球の全生物、植物や菌類やバクテリアまで含めたすべての中で最も種類が多いとまでされている。
昆虫の中では脈翅類(ヘビトンボ、ウスバカゲロウなど)とネジレバネが近縁。特に後者はかつて甲虫とも考えられた。
「甲虫」という名前は、昔では甲羅を持った生き物を指して亀も含まれる。また、「甲虫」と書くと、カブトムシとも読める。
余談
世界の大型甲虫は神話の英雄や神が学名の由来になったものが多い(主にギリシャ神話由来だが、多くはギリシャにはいない)。主に真性カブトムシ族のカブトムシに使われる。
- ヘラクレスオオカブト/アルキデスヒラタクワガタ:ギリシャ神話の英雄ヘラクレスとその幼名から。
- アトラスオオカブト:ギリシャ神話の天を支える巨人アトラス。
- ケンタウロスオオカブト:ギリシャ神話の半人半馬の怪物ケンタウロスから。
- サタンオオカブト:ローマ神話の農耕の神サターンまたは旧約聖書における悪魔王のサタンから。
- アクティオンゾウカブト:ギリシャ神話における自分の猟犬に食べられた狩人の名前から。
- アヌビスゾウカブト:エジプト神話の狗面人身の冥府神から。
- マルスゾウカブト:ローマ神話の戦の神マルスから。
- ネプチューンオオカブト:ローマ神話の海神ネプチューンに由来。
- アンタエウスオオクワガタ:ギリシャ神話の巨人に由来。
- ダイオウヒラタクワガタ:アレクサンダー大王に由来。
- ゴライアスハナムグリ:旧約聖書に登場するダビデに倒された巨人『ゴリアテ』から。
- タイタンオオウスバカミキリ:ギリシャ神話の巨神族の総称『ティターン』から。
甲虫を主題にした作品
関連タグ
甲虫名タグ
▲付きは他の意味に多く使われる(曖昧さ回避)。