概要
本作の敵勢力の1つで、人間とは異なる高次元存在。「脳人レイヤー」と呼ばれる異次元世界に潜んでいる。
本編が最終回を迎えても具体的な組織構成を含め語られていない部分が非常に多い。
分かっているのは彼らの世界の名が「イデオン」であり、過去に滅亡した王族があったぐらいである。
脳人レイヤー内には拠点となる空間が存在し、巨大なステンドグラスのようなものや西洋の著名な絵画が多数飾られた、どことなく聖堂のような厳かな雰囲気となっている。
最大の特徴として、本作の怪人枠である「ヒトツ鬼との特異な関係性」が挙げられる。
従来の戦隊の幹部怪人と、ソレに使役される一般怪人と上下関係とは異なり、脳人から見たヒトツ鬼は彼らと同一の勢力にすら属しておらず、あくまでも討伐対象に過ぎない立場にある。
そのため「悪の組織」よりは「主人公達と共通のターゲットを狙うライバルチーム」に類する立ち位置とも解釈できるかもしれない。しかし、ヒトツ鬼を人間に戻すために戦うドンブラザーズとは異なり、彼等はヒトツ鬼達を宿主の人間ごと消し去るのを目的としており、元の人間に戻す行為を「無意味」とすら考えている。
上記の無慈悲な振る舞いに対しては、ドンモモタロウ(桃井タロウ)さえも「クロクマの罪は重いとは言え、元は普通の配達員だったはず。勝手に消すとは……許せん!」と苦言を呈して攻撃を仕掛けた程である。
その為、ドンブラザーズは「ヒトツ鬼と戦い元の姿に戻す」だけで無く、その上で「脳人からの妨害を防ぎヒトツ鬼(にされた人間)を守らなければならない」という、二重にハードな戦いを強いられる苦境に陥っていた。
また、ヒトツ鬼が倒された際にドロップするセンタイギアについても、コレを収集しているゼンカイザーブラックとは違い、特段の関心を示していない様子。
一方で巨大戦力を持たないため、ヒトツ鬼がヒトツ鬼ングとなってしまうと、撤退を余儀無くされる(ドン32話から登場したブラックロボタロウは、マザーの命令しか聞かないので戦力にならない)。
後述するドン王家に由来する存在であることから、ドンブラザーズ(特にドンモモタロウ)のことはヒトツ鬼に関するスタンスの違いを抜きにしても粛清の対象と認識しており、彼らの打倒のみを目的として動く場合もよくある。
一方で、ムラサメの回収や獣人への対応に奔走させられるシーンもあるし、ヒトツ鬼が絡まない所では人間界を自由奔放に楽しんでいる傾向もある。
実際、人間界での暮らしに関しては元老院からの支給金をソノイはおでん、ソノニはエステ、ソノザは漫画に費やしていた実態がドン46話で明かされている他、敵であるドンブラザーズの拠点である喫茶どんぶらに結構な頻度で出入りしている。
この様に、一般怪人を組織の上下関係では無く「討伐対象の別勢力」としているパターンは、一部の平成ライダーや、近年のウルトラシリーズに多く見られる物であるが、スーパー戦隊シリーズとしては珍しいケースである。
名前の由来はアンチウイルスソフト「ノートン」か。
目的
桃井陣曰く「脳人は人間から得る多くの情報によって構成された世界に住む上位存在」「但し、脳人の世界は揺らぎの影響を多く受ければ滅んでしまい、その揺らぎは“人間が持つ欲望”である」 (何れも要約)とされる。
その為、ソノイ達3人は「欲望に満ちた人間の消去」を実行しているらしい。
つまり脳人達にとってヒトツ鬼を狩るのは、言葉の通り世界を維持するために「自分達の世界を構成する情報」の中にある「有害な情報=人間の欲望」を排除する=灰汁抜きや間引きのような行為と見られる。
実際、劇中の脳人達は散発的に出現するヒトツ鬼を狩っているだけで、組織立って人間界を侵略しようとする意志を見せてはいないし、大規模な破壊・殺戮のような蛮行も働いていない。後述するように脳人監視隊は、好き勝手に横暴を振るい人間を消しているが、それですら半ば個人の趣味のような形であり、被害規模そのものは大したものではない。
人間界に多数のアノーニを忍び込ませ、マスコミや警察にまで紛れ込ませているが、彼らが人間の社会を裏から操っていたりしている様子も特にない。
それどころかクリスマスの時期には戦闘を禁じ、脳人レイヤーを支える人間達への感謝を込め、サンタに扮してプレゼントを配り回るしきたりがあるなど、妙に律儀な振る舞いさえ見せている。
結局明かされなかった部分が多い関係上、断言はできないものの、組織としては基本的に良くも悪くも自分たちの住む世界の維持に腐心しているだけで、いわゆる「悪の組織」「人類の敵」とはかなり毛色が異なる印象もある。
ドンブラザーズとて散発的に出現するヒトツ鬼と戦うのが主である上、戦いにおいてヒトツ鬼に対する明確な目標を持たない点から、本作において「自分たちの世界を守る」目的で戦っている陣営は主に脳人だと評価できる。ただし、その守るべき世界が人間界ではないだけなのだ。
宿主ごとヒトツ鬼を始末してしまうソノイ達が、脳人世界における主流派なのか過激派に過ぎないのかは判然としていない。
ただし、後述するように「元老院」なる支配者層の意を受けている実状に加え、ソノシのような監察官も基本的に同様のスタンスにあるらしいため、少なくとも上層部の意を離れて暴れ回る愚連隊のような連中ではないようだ。
思想・文化
脳人の世界にも『国』や『王族』の概念が存在するらしく、過去に「脳人と人間の共存」を唱えたドン家なる王族が存在していたが、同一族は昔『自分達の世界であるイデオンを壊滅させようとした』大罪により、一族は皆処刑された。だが、その最後の生き残りが寸前に人間界に流されて生き延びており、ソレがドンモモタロウこと桃井タロウであった。
メンバーは単色で統一されたスーツや衣服を身に纏っている他、それぞれ何処かヒーローのような怪人形態を持つ。また左手首には共通して、西洋の盾を模した装飾をあしらったブレスレットを着用しており、戦闘時にはこれを操作して怪人形態(よりは戦闘形態やパワードスーツなどに近い)へと変異する。
このブレスレットは作中では呼称されていないが、プレミアムバンダイ限定で立体物の発売が決定して名称が「脳人ブレス」であると明らかになった。
彼らに多かれ少なかれ共通しているらしい性質として、人間を「欲望に振り回される下等な存在」と見下す選民思想・貴族主義的な価値観が挙げられる。
例えばソノイ達脳人三人衆はそれぞれが人間に対し異なる興味を持っていたが、当初は「どんなものか知りたい」との知的好奇心こそあれ、それを人間の未熟さや欠陥の現れと見做し、自分も同様の感性を得たいとは思っていないかのような冷めた言動を見せていた。また、ソノイやソノザはヒトツ鬼狩りを邪魔する人間を「虫」と呼ぶなど、露骨に見下す態度を見せたシーンもある。
自分たちの世界の維持のために『ヒトツ鬼諸共に宿主の消去』に躊躇いがないのも、そのような意識が根底にあるのかも知れない。
加えて、ヒトツ鬼の絡まない場面でも人間を「どう扱ってもいいもの」と見做して軽んじている節もあり、興味本位で接触しては彼らを困惑・迷惑をかけるなどの問題行為にも少なからず及んでいる。
ソノイは例外で裏表なく人助けに走る良心を見せており、ソノニとソノザも自分本位であるがちょっかいをかける程度(トラブルとして希にヒトツ鬼を自らの手で生んだ)で済んでいたが、ソノシ達脳人監視隊に至っては、手当たり次第に人間を脳人レイヤーに送り込んで消してしまう暴挙に及んでいる。
過ぎた欲望で脳人レイヤーが滅ぶから活動しているはずなのに、無関係な人間を標的とした時点で目的と手段を取り違えており、この行為はソノイから「あれではヒトツ鬼と変わらない」「脳人の恥」と唾棄されている他、彼らは最終的に(これらの行為を咎められたせいとも断じられてはいないが)処刑人達に粛清される末路を辿っているため、脳人基準でも許されない横暴のラインはあるようだ。
反面、自らを「上位存在」と見做して振る舞っているものの、根っこの精神性は人間と大差なさそうな部分も散見される。
そもそも「ファッションリーダー」や「生徒会長」などの地位や概念があるなど、脳人世界の文化からして変に俗っぽい部分が見え隠れしているし、人間界に来て日の浅いソノシ達ですら良くも悪くもコミカルで人間臭い言動を取っている。
そして人間界に長居したソノイ達は次第に人間に感化されていき、当初は否定的に見ていた人間の感性や感情を自分自身のものにしていった。
更に三人衆も監視隊もそろって、自分の死が迫る危機的事態に陥るや否や、たとえ相手が敵であっても恥も外聞もなく助けを求める行動を見せており、その様は「上位存在」を自称する脳人もまた、結局は「下等」と唾棄していた人間と大差ない存在である実態を、如実に露呈しているようだった。
しかし、そうして人間に感化・友愛の念を抱くようになってしまった者は、脳人の価値観において「堕落した」と見做されるらしく、ドン家同様に追放・粛清の対象となってしまう。これはいわば、元老院からすれば「守るべき世界ではない生物の価値観」に染まった状態と断定されるだろう。
種族全体の固有能力かは不明瞭だが、見逃せない点として人間に息を吹きかけると、対象の額に超小型の脳人レイヤーの扉を顕現、その開閉の是非によって内部にヒトツ鬼が宿っているか確認が出来る。
劇中における主な構成員
※ 結局、具体的な組織体系が語られなかったが、便宜上ここでは組織の括りに即して扱う物とする。また上層部として元老院が存在し、人間界に滞在している間、上からの指示は近くの動物を介して伝えられ、その際、動物の目が緑色に光る。
脳人全体で見て駆逐対象に相当するのはヒトツ鬼、自分達の任務の邪魔となる勢力としてドンブラザーズと獣人が存在する(ただし、獣人は最終的に無害化された)。
脳人三人衆
己の欲望に負けた人間を粛清しており、役割から前線に多く赴く。基本的に単独行動だが、同じヒトツ鬼に出くわした場合は協力する場合もある。
ドン37話から脳人三人衆と名乗る様になった。ドン46話でイデオンから追放された。
ソノイ(演:富永勇也) |
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三人衆のリーダー格。キザな物腰で正義感の強いヒーローじみた性格の持ち主だが、ヒトツ鬼には無慈悲で容赦なく消去しにかかる。モチーフは「超人バロム・1」のバロム・1 |
ソノニ(演:宮崎あみさ) |
三人衆の紅一点。興味を持ったものには強く入れ込む一方、そうでないものにはドライな態度を取る気まぐれな気質。モチーフは「正義のシンボルコンドールマン」のコンドールマン |
ソノザ(演:タカハシシンノスケ) |
マイペースだが職務はこなす仕事人タイプ。モチーフは「ザ・カゲスター」のカゲスター |
脳人監視隊
ソノシ(演:廣瀬智紀) |
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ソノイらの監察役。潔癖・高慢・陰険と三拍子揃った典型的な「嫌な奴」。モチーフは「仮面の忍者赤影」の赤影 |
ソノゴ(演:髙井真菜) |
ソノイらの抹殺の為に派遣された戦士の1人。自分の美貌に絶対の自信を持つ苛烈なナルシスト。モチーフはナショナルキッド |
ソノロク(演:小柳心) |
ソノゴと共にソノイらの抹殺のために派遣されたが、ソノシやソノゴの言動には辟易している。親切のつもりで力任せに暴れ回る、「ありがた迷惑」を絵に描いたような乱暴者。モチーフは「超光戦士シャンゼリオン」のシャンゼリオン |
処刑人
ソノナ(演:本橋由香) |
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ソノヤと共に派遣された処刑人。馴れ馴れしく見えるが実際は他人への興味を持たない冷淡な性格。 |
ソノヤ(演:村上幸平) |
ソノナと共に派遣された処刑人。やたら擬音を多用する独特の口調と不敵で凶悪な笑みが特徴。 |
戦闘員
アノーニ |
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脳人に協力する工作員。平時は一般市民から警察、CMの女優まで様々な地位や性別の人間に化けて潜んでいるが、特殊なバイザーで判別出来る。ただし、個体毎の思考差が激しい上、ヒトツ鬼だけならばヒトツ鬼に従う、獣人の捕食対象になっているなどもあり、従来の戦闘員と比べると特異な存在。 |
その他の戦力
狩猟対象(別勢力)
ヒトツ鬼 |
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彼等もアノーニを召喚が出来るが、ソノイが現れた途端指揮権を奪われており、この実態からも彼らの特異な関係性を窺い知れる。 |
獣人 |
脳人の世界で生み出された存在で、ソノイさえも察知すると酷く狼狽する程に危険視されている存在。 |
余談
- 当初は一部ファンからは、幹部の演者繋がりで愛称として『ドンフレグランス』と呼ばれたり、近頃ドンブラザーズ陣営が彼らに接触するシーンが増えてきた実状から、該当シーンでは極一部のファンから「まーたドンフレグランスがドンブラザーズと交流してる」とのネタ的発言が見られる場合もあった。
- 欲望を持ちヒトツ鬼化した人間を消去しようとする脳人だが、ソノイはタロウを敵とみなしつつも正々堂々勝負するためながらも、ドンブラザーズと結果的に協力してタロウを甦らせる手助けをする(敵でありながら擬似的に友と見ているようでもあり、実は倒したくないようにも見える)、ソノニは愛の感情を知ろうと奔走する、ソノザは「胸がザワザワする」と自身の謎の感情を解明すべく、(あと単にハマったのもあり)初恋ヒーローの続きが読みたいが為にわざわざ画材セットを用意して、事実上作者を拉致り、続きを描くよう促す等、実は脳人自体が無意識の内に欲望を抱きつつある様にも見えなくもない。
- 雑誌「暴太郎戦隊ドンブラザーズとあそぼう!」では、欲望を持つ人間を消去する設定は刺激が強すぎるのか、はたまた理解しにくい内容だからか「よくぼうをしはいしようとする上位世界の住人だ!」と少しズレた内容で紹介されている。支配を「牛耳る」との意味で考えなければ、強ち外れとも言い切れないのがまた……。
- 敵対勢力が全員顔出しとなったのはゴーマ族(『五星戦隊ダイレンジャー』)以来29年ぶり、顔出しが3名いる敵対勢力に限っても『獣拳戦隊ゲキレンジャー』の臨獣殿以来15年ぶり、2名以上であれば『特命戦隊ゴーバスターズ』のヴァグラス以来10年ぶり。
- 韓国語での名称は以下の通り。由来は韓国語の反切表(カナダラ表)の子音を左上から数えた「k,n,t+a」だと思われる。
日本語名 | 韓国語名 |
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ソノイ | カオン |
ソノニ | ナオン |
ソノザ | タオン |
関連タグ
暴太郎戦隊ドンフレグランス:そっくりさん
獣人(ドンブラザーズ):第四勢力
ハカイザー:前作の、昭和の東映特撮作品がモチーフの敵幹部繋がり。
宇宙鉄人、衛星兵器XVⅡ、アクマイザー:『仮面ライダーフォーゼ』の映画作品に登場する敵キャラ。他シリーズの特撮作品のヒーローをモデルにした敵組織の前例。こちらはすべて石ノ森章太郎原作。
快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー:スーパー戦隊シリーズにおいて、共通の敵への処遇やスタンスの違いからチーム同士で対立した前例。
三魔神(ジェットマン):脚本家が同じ鳥人戦隊ジェットマンに登場した第三勢力の敵。「自分たちの目的のために人類に味方する人外の存在」点はやや似ているが、こちらは「人間は食糧」と見做しており、悪役としての印象がより強い。
スーパー戦隊の敵陣営 |
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