アントホッパーイマジン
あんとほっぱーいまじん
『仮面ライダー電王』第31・32話に登場する敵イマジン。金融会社「藤代リースサービス」の社長・藤代裕也と契約した。
今まで分裂するイマジンはトータスイマジンやスパイダーイマジンなどがいたが、このアントホッパーイマジンは最初から二人で一人という二重人格の珍しい個体であった。
身長197㎝、体重190㎏。右半身がキリギリス、左半身がアリに酷似した姿をしている。
蟻型はシャベルのような矛を、キリギリス型はバイオリンに似た斧を武器に使う。
緑と黒が基調という点では、同様のカラーリングを持ち、本エピソードで主役を担った仮面ライダーゼロノスのアンチテーゼ的な意味合いもあるのかもしれない。
アリが藤代に憑依した際は、髪型がオールバックとなり白目の部分が黒くなった。
願い事(と扱われた契約内容):「野上愛理を連れてきてほしい」
藤代は、2年前愛理がコーヒーの勉強で他の喫茶店に勤めていた頃の常連客である。
彼女に目をつけて桜井と愛理を「取り合い」していたと語るが、愛理が藤代に格段思い入れある様子もなかったことから、彼女の中では「常連の一人」程度の認識だった模様。
愛理が桜井と婚約したことで身を引くものの、桜井が失踪し、愛理が彼の記憶を失くした話をどこからか聞きつけ「愛理を1000万の借金の保証人にさせ、借金のカタとして結婚を要求する」という自作自演で愛理を我が物にしようと画策。
尾崎正義曰く彼の会社自体「黒い噂」があるとのことで、事実三浦イッセーと結託して新聞報道にまで持ち込んだ際の記事では「架空の借金請求」「被害総額は1億2000万円」と記されており、紛れもない悪徳業者であった様子。
なお、アントホッパーイマジンは電王の抹殺を目的としており、藤代との契約は身体を得るための一手段に過ぎなかった。そのため過去に飛んでおらず、従って対応する時間は描写されていない。
仮に藤代にチケットをかざした場合、愛理を諦めた時期(2005年~2006年頃)と推察される。
イマジンは基本的に「お前の望みを言え。どんな望みでも叶えてやる。お前が払う代償はただ一つ」と持ち掛け契約を結ぶが、アントホッパーイマジンの場合、そのやり取りが省略されている。(後に藤代が「あれ(契約のこと)は夢じゃなかったんだ!」と思いだしている)
そもそも藤代は借金で縛り付けてまで愛理を自分の物にしようとする男であり、欲望に忠実であるがゆえ、イマジンにとってもどんな事を願っているか非常にわかりやすい人間であるといえる(アントホッパーイマジンも「適当に契約するには手頃」と評していた)。
アリが良太郎と侑斗の前に姿を現し、良太郎(良太郎に指名されたリュウタロスがR良太郎としてガンフォームに変身)を廃電車置場に誘導させる(なお、電王を廃車置場に誘導したのは、電車の仮面ライダーである電王への抹殺宣言という説がある)。
暫く潜伏していたが、素通りしたと見せかけて攻撃するガンフォームに反応。ガンフォームを見て「電王の銃使い」と表現、「確か4体いるんだったか」と電王側の内情を把握している様子を見せ、これまでのイマジンとは異なる様子を覗かせる。
序盤こそガンフォームが優勢だったものの、キリギリス体も姿を現し、2対1、かつ遮蔽物や物陰の多い銃使いには不利な地形を利用しガンフォームを圧倒し続ける。
意地になってフォームチェンジやクライマックスフォームさえも拒否するリュウタロスを項目トップの台詞で分析、更には一瞬の隙を突いてデンガッシャー・ガンモードを弾き飛ばし、戦闘不能に追い込んだ。
更には意識の無いガンフォームを蹴って仰向けにし、心臓に下段の踵蹴りを入れるという過激な駄目押しを見せ、そのままとどめを刺そうとしたところを「あえて自分達の前に姿を見せた」点が気になった侑斗により現場に送られたデネブが到着。指鉄砲で攻撃された隙に逃げ切られた。
このダメージでリュウタロスは暫く再起不能、良太郎も入院沙汰となる。
その後藤代を強襲、「お前の体を借りる。望みを叶えてやるから我慢しろ」と、「野上愛理を連れて来ればいいんだったな」と(一方的な)契約を確認した後、夢でなかったことに狼狽える藤代に憑依する。
そのまま憑依してミルクディッパーを襲撃、愛理を拉致し良太郎が到着次第廃工場に来るよう指示。
負傷により動けない良太郎に代わって侑斗が動き、侑斗にカードを使わせないため、彼同意のもとデネブがD侑斗として現場に到着。
藤代に憑依した状態でD侑斗に鉄パイプを突きつけ、電王全体でも希少な憑依者同士の戦闘を繰り広げる。
途中デネブが分離し、侑斗を愛理の元へ向かわせようとするが、侑斗の前にもキリギリスが出現。キリギリスは侑斗に変身を焚き付けるも、そこに病院を強引に抜け出してきた良太郎がM良太郎として到着。電王ソードフォームとの対峙となり、「やはり一匹ずつ叩いていくしかないだろうな」とアリは憑依を解いて、キリギリス共々電王・デネブとの交戦となる。
しかしデネブがダメージの蓄積で戦闘不能に追い込まれ、電王もリュウタロスが本調子でなくクライマックスフォームになれない状況であり、ソードフォームの不利な状況が続く。
そこに最後のカードを消費して侑斗がゼロノスに変身。
アリはゼロノスと対峙して肉弾戦で徹底的に追い込む。キリギリスは藤代のバイクを用いてマシンデンバードとのカーチェイスを繰り広げ、電王に弾き落とされた後轢かれかけたところを手持ちの剣でマシンデンバードから振り落とすという粘りを見せる。
気が抜けない戦いの末、アリはゼロノスが咄嗟に放ったゼロガッシャー・ボウガンモードの光弾を喰らい、ひるんだ所をグランドストライクで撃破された。
キリギリス型もリュウタロスが復帰したことで変身可能となったクライマックスフォームの「俺の必殺技 クライマックスバージョン」(ボイスターズスラッシュ)で撃破された。
ゼロノスカードが使い果たされたことで代償、即ち桜井に関連する記憶は消失されてしまい、藤代は犯行動機はおろか桜井のことを覚えていなかった。
アントホッパーイマジン自体は上記の契約を元に実体化したものの、劇中では過去に飛ぶことなく執拗に電王を狙っており、2対1とはいえガンフォームを圧倒して戦闘不能に追い込み、ソードフォームやゼロノスとも互角以上の戦いを繰り広げるなど、今までの単なるテロリストイマジンとは異なる作為が感じられた。
アリとキリギリス、両個体の外見は同じだが、それもそのはず撮影用のスーツは1体しか存在していない。
これは予算対策の一環であり、劇中では合成・別撮りを駆使して2体いるように見せている(東映公式)。敵イマジンによる久方ぶりの憑依体の登場は、合成の手間を避ける意味もあると思われる。
加えてスーツアクターも伊藤教人による二役。一見合成・同一人物とは思えない映像に仕上がっており、監督・スーツアクターの力量が光るイマジンである。
後にハイパーバトルビデオではウルフイマジン、スパイダーイマジンと共にデンライナーを襲撃している。
その後スーツは『さらば電王』に登場するシャドウイマジンに改造された。
アリの方の声を演じた鳥海氏は今作が平成ライダーシリーズ初出演であり、『未来戦隊タイムレンジャー』で傷害犯ボーグを演じて以来、7年ぶりのニチアサ出演となった。
キリギリスの方の声を演じた関氏も今作で初めて平成ライダーシリーズの怪人の声を担当している。もっとも関氏は以前、仮面ライダーカブトの「ハイパーバトルビデオ」内で、主人公の変身アイテムの声を出している。